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第三話
10 思ったのと違う
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私は確かに、神高にお願いをした。
「あそこの中の生徒に気付かれないように、窓から入れないかな?」
一番鉢巻を持っていると当たりをつけた男子グループが、三階の教室に陣取っていたから、そこまで上げてもらおうという作戦だったんだけど。
なのに、向かいの校舎から私をぶん投げるとか、酷くないっ!?
それにしても神高は、女子にしては背のある方な私を軽々と持ち上げてくれたけどさ。
抱えるとかじゃなくて、まるでバスケットボールみたいに片手に載せるんだよ? どういうこと? どんだけ力持ちなの?
けれど、今はそんなことを考えている場合ではなくて。
「ハン! カモが一人でのこのこ来やがったぜ!
神高を連れていないとか馬鹿だろう!」
私を見下す発言をしているのは、ヒョロっとした体格の、顔色が青白い男子だった。
見るからにインドア派で、一緒にいる仲間の男子も、どっちかと言うと体育会系ではなさげなのばっかり。
なのにこのゲームで鉢巻の数を稼いでいるんだから、能力がスゴいのかな?
私はそう予測すると、着地で打ったお尻をさすりながら立ち上がる。
そこへ、ヒョロ男子が突撃してくる。
「テメェも寝とけやぁ!」
これは、今までと同じだったら返り討ちパターンなんだけど。
私はなんとなく、まともに組み合わずに右に避けた方がいい予感がした。
「ほいっとな」
なわけで大きく右に跳ぶと、ヒョロ男子の背後からイスが結構なスピードで飛んできた。
ああ、本日何度目かの念動力ですね。
でもこれ、当たると大怪我じゃ済まないと思うんだけど、そうなったらあの万智先輩とかがすっ飛んできそう。
そしてめっちゃ叱られるよね。
そんなことを呑気に思う私の一方、ヒョロ男子が「チッ」と舌打ちする。
「運がいい奴」
まあ、その通りですよ。
私、昔からこういうタイミングでの運は、抜群にいいので!
イス飛ばしでの不意打ちに失敗した相手方だが、ヒョロ男子は体勢を立て直してまた向かってくる。
けど身体の動きはもたついているし、腕を取って捻り倒すのは簡単に思えるんだけど。
私は何故だか、このヒョロ男子に障らない方がいい気がしていた。
なので、ちょうど床に箒が落ちていたので、それを拾って構える。
鍬の柄で弟たちをあしらってきた、私の華麗な柄裁きを見よ!
「ほい、ほい、ほいっと」
「わ、わ、わっ……」
私が繰り出す箒の柄に、ヒョロ男子は防戦一方になり、いきなり形勢逆転である。
「武器を使うなんて卑怯だ!」
いやいや、武器違うし、箒だし。
私とヒョロ男子の位置が近いせいで、念動力男子はイス飛ばしができない状態。
他にも二人いるんだけど、彼らは参加してこないから、多分襲撃向けの能力じゃないと見た。
なもんで、私が箒の柄で突き続けていると、やがてヒョロ男子の体力の限界がきたみたいで。
「わわっ!」
自分の足に躓いて盛大にコケて、受け身もとれずにしこたま背中を打っていた。ありゃあ、痛いぞぉ?
しかし私は容赦をせず、そのコケたヒョロ男子の胸に、箒の柄をドン!と押し付け。
「鉢巻、ゲットぉ!」
ヒョロ男子の腕に巻いてあった鉢巻を奪った。
勝利!
「嘘だ、『無能』に負けるなんて!」
外野と化していた他二名から、そんな台詞が漏れるが。
「いやいや、『無能』云々よりもさ、ココの生徒って身体を鍛えてい無さ過ぎでしょうが」
私は呆れ顔でボヤく。
そう、これまでにも派手派手しい能力の生徒がそれなりにいた。
ここにもいた念動力とか、どういうカラクリか相手の動きを止める力とか。
しかし、である。
それもこれも、能力が効かないと意味がないわけで。
そして能力に自信がある生徒ほど、体力がない。
これが他の、いわゆる普通の学校であれば、男子は体格がいい方が序列は上になる。
実際に喧嘩をしなくても、やはり「喧嘩が強そう」というのが、男子にとっての正義であるみたいなのだ。
けれどこの学園だと、幼い頃から『能力』という絶対の序列が存在するわけで。
どうもそれが、男子の本能みたいなのを弱めているっぽいんだよね。
だから、能力が通用しないとただの体力のない男子に成り下がる。
そんな連中、ガキ大将君を除くにしても、無駄に元気なウチの弟たちと比べても、相手にならんわ。
かくして、ヒョロ男子の心が折れたのが他の男子にも影響したのか、念動力男子他二名の鉢巻も、あっさり確保に成功したところで。
「片付いたようですね」
全部が終わってから、神高が私が飛んできた窓から入ってきた。
「ねえ、このヒョロ男子ってなんの能力?」
「誰がヒョロ男子だ!?」
私が神高に尋ねるのに文句が上がるが、私も神高もまるっと無視だ。
「ああ、雷です。
威力が弱いですが、スタンガン程度のショックはありますね」
「へー、そうなんだぁ」
まさに、触れなかったらどうってことない能力だな。
もっと格闘の技を磨けば、ヒーローみたいに活躍できるかもよ?
「あそこの中の生徒に気付かれないように、窓から入れないかな?」
一番鉢巻を持っていると当たりをつけた男子グループが、三階の教室に陣取っていたから、そこまで上げてもらおうという作戦だったんだけど。
なのに、向かいの校舎から私をぶん投げるとか、酷くないっ!?
それにしても神高は、女子にしては背のある方な私を軽々と持ち上げてくれたけどさ。
抱えるとかじゃなくて、まるでバスケットボールみたいに片手に載せるんだよ? どういうこと? どんだけ力持ちなの?
けれど、今はそんなことを考えている場合ではなくて。
「ハン! カモが一人でのこのこ来やがったぜ!
神高を連れていないとか馬鹿だろう!」
私を見下す発言をしているのは、ヒョロっとした体格の、顔色が青白い男子だった。
見るからにインドア派で、一緒にいる仲間の男子も、どっちかと言うと体育会系ではなさげなのばっかり。
なのにこのゲームで鉢巻の数を稼いでいるんだから、能力がスゴいのかな?
私はそう予測すると、着地で打ったお尻をさすりながら立ち上がる。
そこへ、ヒョロ男子が突撃してくる。
「テメェも寝とけやぁ!」
これは、今までと同じだったら返り討ちパターンなんだけど。
私はなんとなく、まともに組み合わずに右に避けた方がいい予感がした。
「ほいっとな」
なわけで大きく右に跳ぶと、ヒョロ男子の背後からイスが結構なスピードで飛んできた。
ああ、本日何度目かの念動力ですね。
でもこれ、当たると大怪我じゃ済まないと思うんだけど、そうなったらあの万智先輩とかがすっ飛んできそう。
そしてめっちゃ叱られるよね。
そんなことを呑気に思う私の一方、ヒョロ男子が「チッ」と舌打ちする。
「運がいい奴」
まあ、その通りですよ。
私、昔からこういうタイミングでの運は、抜群にいいので!
イス飛ばしでの不意打ちに失敗した相手方だが、ヒョロ男子は体勢を立て直してまた向かってくる。
けど身体の動きはもたついているし、腕を取って捻り倒すのは簡単に思えるんだけど。
私は何故だか、このヒョロ男子に障らない方がいい気がしていた。
なので、ちょうど床に箒が落ちていたので、それを拾って構える。
鍬の柄で弟たちをあしらってきた、私の華麗な柄裁きを見よ!
「ほい、ほい、ほいっと」
「わ、わ、わっ……」
私が繰り出す箒の柄に、ヒョロ男子は防戦一方になり、いきなり形勢逆転である。
「武器を使うなんて卑怯だ!」
いやいや、武器違うし、箒だし。
私とヒョロ男子の位置が近いせいで、念動力男子はイス飛ばしができない状態。
他にも二人いるんだけど、彼らは参加してこないから、多分襲撃向けの能力じゃないと見た。
なもんで、私が箒の柄で突き続けていると、やがてヒョロ男子の体力の限界がきたみたいで。
「わわっ!」
自分の足に躓いて盛大にコケて、受け身もとれずにしこたま背中を打っていた。ありゃあ、痛いぞぉ?
しかし私は容赦をせず、そのコケたヒョロ男子の胸に、箒の柄をドン!と押し付け。
「鉢巻、ゲットぉ!」
ヒョロ男子の腕に巻いてあった鉢巻を奪った。
勝利!
「嘘だ、『無能』に負けるなんて!」
外野と化していた他二名から、そんな台詞が漏れるが。
「いやいや、『無能』云々よりもさ、ココの生徒って身体を鍛えてい無さ過ぎでしょうが」
私は呆れ顔でボヤく。
そう、これまでにも派手派手しい能力の生徒がそれなりにいた。
ここにもいた念動力とか、どういうカラクリか相手の動きを止める力とか。
しかし、である。
それもこれも、能力が効かないと意味がないわけで。
そして能力に自信がある生徒ほど、体力がない。
これが他の、いわゆる普通の学校であれば、男子は体格がいい方が序列は上になる。
実際に喧嘩をしなくても、やはり「喧嘩が強そう」というのが、男子にとっての正義であるみたいなのだ。
けれどこの学園だと、幼い頃から『能力』という絶対の序列が存在するわけで。
どうもそれが、男子の本能みたいなのを弱めているっぽいんだよね。
だから、能力が通用しないとただの体力のない男子に成り下がる。
そんな連中、ガキ大将君を除くにしても、無駄に元気なウチの弟たちと比べても、相手にならんわ。
かくして、ヒョロ男子の心が折れたのが他の男子にも影響したのか、念動力男子他二名の鉢巻も、あっさり確保に成功したところで。
「片付いたようですね」
全部が終わってから、神高が私が飛んできた窓から入ってきた。
「ねえ、このヒョロ男子ってなんの能力?」
「誰がヒョロ男子だ!?」
私が神高に尋ねるのに文句が上がるが、私も神高もまるっと無視だ。
「ああ、雷です。
威力が弱いですが、スタンガン程度のショックはありますね」
「へー、そうなんだぁ」
まさに、触れなかったらどうってことない能力だな。
もっと格闘の技を磨けば、ヒーローみたいに活躍できるかもよ?
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