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第二話 入学式は波乱の幕開け

12 ダブルパンダは目立ちます

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こうして二人連れ立ってコンビニに向かうんだけど、その道中にジロジロ見られている。

「おい、神高が誰かとつるんでるぞ」

「珍しいこともあるんだな」

「誰、あの人?」

「知らないの? あのね……」

男子も女子も、こっちを見てヒソヒソやっている。
 うーん、どこまでもパンダだな。
 そしてダブルパンダで影響大と。
 でも先輩パンダたる神高は、そいういうのを全スルーしてすたすた歩く。
 なるほど、一々反応しては駄目なんですね、パンダ先輩!
 そんなパンダの心得を学びつつ、噂のコンビニに到着したんだけど。
 そこは思い描いていたこじんまりとして店舗なんかじゃなくて、もっと広い建物だった。
 しかも二階建て。

「これコンビニ違うし!」

地元で車に乗って買い出ししていたショッピングセンターくらいはあるよ。
 私のツッコミに、神高がチラリと視線を寄越す。

「なんでも買えるってことは、コンビニで合っているでしょう?」

なんでもここは生活用品全般が揃っていて、寮や学校の食堂の仕入れ先でもあるので、生鮮品も置いてあるとか。
 衣類なんかも置いてあって、有名メーカーのショップが入っているらしい。
 まあ、買い物に行くのも簡単じゃない所だし、学生に不便がないようにって考えるとこうなるのかもだけど。にしてもすごくないか?
 でもお店が小さくてがっかりすることはあっても、広い分には嬉しいもの。早速店内に突撃だ!
 店内は一回に生鮮品や医薬品、二回に衣類という、ショッピングセンターにありがちな配置になっていた。
 それにしても、服があるのは助かると言える。
 なにせ私だって一応女子で、持って来た衣類は当然女子仕様。それでもパンツルックを好んでいるので、男子寮にいても浮くことは無いだろうけど、やっぱり色とかデザインが女子っぽいのよ。
 男子寮で生活するなら、そのあたりのことも考えなきゃいけないのかも。
 学校が神高という番人を用意してくれたとはいえ、男子の集団の中で生活するには自衛が大事。
 それに神高曰くここの商品全般が、学生向けに低価格になっているとか。
 それは有難い!
 けど衣類のことは置いておくとして、まずは入ってすぐの生鮮品コーナーを回ってみる。
 生徒の中には自炊派が結構いるようで、買い物をしている姿が見られる。
 そしてその中に徳倉君と松川君がいた。

「おぅい、二人とも!」

私が声をかけると、二人して振り向いてくれたんだけど。

「徳倉君、それどうしたんですか!?」

徳倉君の足首に朝には見られなかった包帯を巻いてあるのに、驚いた私は急いで駆け寄る。

「へへっ、ちょっとドジっちゃってさぁ」

ばつが悪そうな顔をする徳倉君の頭を、松川君が軽く小突く。

「コイツ『遠目』しながら歩いて、階段を踏み外してやんの」

「だって、安城君がどうしてるかなって気になったんだもん!」

「もん!」って言い方が可愛いぞ、徳倉君。
 でも今『遠目』って聞こえたぞ。
 遠くを見ながら歩いたってこと?
 足元をお留守で階段を歩くと危ないんだよ?

「大事なかったですか?」

痛々しい包帯姿に思わず眉を下げる私に、徳倉君が「平気、平気!」って笑う。

「軽く捻っただけだってさ。
 洋也(ひろや)が引っ張ってくれたから落ちずに済んだし」

「だって、安城がなんか階段がどうのってずっと言ってたじゃん?
 マジになったら笑えるなって思って見てたら、本気で落ちかけるとか」

そう話す松川君は呆れ顔だ。

「ぶー!
 僕が一番恥ずかしいんだから、そういうこと言わない!」

「まあまあ、でも骨折とかじゃなくてよかったです」

そして徳倉君はなにを買いに来たかというと、買い溜めのお菓子の補充をしにきたという。
 あ、お菓子と言えば!

「私、友達にあげようと思って、バターケーキを持ってきているんです。
 でも神高は甘いの食べないって拒否られちゃって、良かったら二人とも食べる?」

「わぁ、いいのっ!?
 じゃあさ、こっちの部屋でお菓子パーティーしようよ!
 安城君の歓迎パーティーってことで!」

こうして徳倉君と盛り上がる私は、数歩離れた所で神高が険しい顔をしているなんて、気付くこともなかった。
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