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第二話 入学式は波乱の幕開け
7 ようやく受付終了
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彼女に微笑みかけられるが、思うでしょうって言われても。
「いえ、わたしはなんにも知らないので、なんとも言えないというか」
私がそう返すと、姫様が微かに目を見開く。
「あなた……」
姫様がなにかを言いかけた時
「一体なにを揉めている!」
そんな怒鳴り声と共に現れたのは。
小柄で可愛い系なのに、頑張って怖い雰囲気を出そうとしている健気なマルチーズ、じゃない万智先輩だった。
「万智君を連れてきましたぁ!」
万智先輩がやってくる後ろから、生徒会の人がそう叫びながら走って追いかけて来た。
どうやらあの人が万智先輩を呼びに行ったらしい。
なんか万智先輩って、昨日も登場がこのパターンだった気がするけど。
この人、学園のトラブル回収係かなんかなの?
それって面倒事を押し付けてるって言わない?
ともあれ現場に到着した万智先輩は、ここに鴻上先輩がいるのを見て眉をひそめたものの、まずは姫様に歩み寄る。
「姫宮、君は新入生の体調管理を自ら申し出たんだろう?」
なるほど、姫様は姫宮だから姫なのね。
可愛い人は名前まで可愛いのか。
あ、でももし家族に男の子がいたら、イジられそうで可哀想かも。
そんな私の内心は置いておいて、厳しい表情の万智先輩に言われ、姫様がビクッと肩を震わせる。
「え、ええ。
私は癒すことだけしかできないんですもの、少しでも役に立ちたくて」
「だったら黙って役目に集中しろ、余計な私語は慎め」
「……はい」
叱られて小さく囁くように返事をする姫様の前に、あのツンケン女子が出る。
「万智、姫が怯えているでしょう。もっと優しく話しなさい」
命令口調で万智先輩に告げるツンケン女子に、万智先輩がイラっとしたのが、はたから見てもわかる。
「ここを任されているのは姫宮だけだろう。
余計な揉め事を起こすなら、取り巻き連中は撤収だ」
うわぉ、万智先輩も取り巻きって言っちゃったよ。
鴻上先輩といい、直球だなぁ。
「鴻上といい、二年の男子は口が悪い生徒が多いらしいですね」
「口が悪いとは言いがかりだな、単に正直なだけだ」
ツンケン女子さんと万智先輩が、しばし睨み合う。
ちなみに、両者を比べるとツンケン女子さんの方が身長が高いせいで、万智先輩は傍から見ると、迫力で負け気味だ。
万智先輩頑張れ!
私の内心での応援が実ったのか。
「……いいでしょう、私以外は他で待機です」
ツンケン女子さんが引き下がるようで、周りにそう指示を出す。
けどさ、万智先輩が言いたいのはあなたも含めた全員だと思うよ。
実際、万智先輩はキレそうな目をしているし。
けれど、人数が減っただけでもよしとしたらしい。
「邪魔をするのならば、即刻姫宮にも撤収してもらうぞ」
万智先輩はそう言って、この間も受付作業を続けている生徒会たちの横に立つ。
どうやらしばらく、この場に留まるようだ。
「次、こっちへどうぞ」
するとこのタイミングで、受付をしている女子に私が呼ばれた。
「氏名をどうぞ」
「安城明日香です」
「安城明日香、Cクラスですね。こちらをどうぞ」
名前を告げると、クラスを教えられて薄い冊子を渡される。
「入学式は体育館であります、係員の誘導に従ってください。
……それから、あなたが何年かぶりの外部生ね。
ようこそ誠心学園高等部へ」
「あ、ありがとうございます」
ニコリと笑みを向けられ、私はホンワカした気分になる。
普通に対応してくれると心に沁みるなぁ。
私が受付を済ませると、見張るように立っている万智先輩が、何故かまだここにいる鴻上先輩と話していた。
「で? 鴻上はどうしてここにいるんだ。
先生からの説教は済んだのか?」
「済んだ済んだ、朝からうるせぇったらねぇの。
で、寮へ戻っていると後輩が教祖様御一行に絡まれてたから、口を挟んだってワケよ」
「教祖様御一行」のセリフが聞こえたらしいツンケン女子さんが、またすごい目で鴻上先輩を睨むが、口に出してはなにも言わない。
一応万智先輩の注意を守るつもりのようだ。
ともあれ、私の揉め事で駆り出されたと思われる万智先輩に、一応お礼を言いに行くことにした。
あのままだったら、変なことになっていたかもしれないしね。
「万智先輩、さっきはありがとうございました。
なんか、昨日忠告してもらったばかりなのに、お騒がせしちゃったんでしょうか?」
ペコリと頭を下げる私に、万智先輩はため息を一つ漏らして言った。
「……いや、今回はもらい事故みたいなものだ。
お前が神高と一緒にいるから、目をつけられただけだろう」
そうなのかな?
確かに姫様は神高のことを親しげに名前で呼んでいたし。
二人は実は仲良しさんなのかな?
いくら初等部からの付き合いとはいえ、名前呼びは特別感がある気がする。
実際、私は小中学校で一緒だった子たち全員と、名前で呼び合ったりはしない。
特別に仲良しとそれなりに仲良しには、区別をつけるものだ。
「いえ、わたしはなんにも知らないので、なんとも言えないというか」
私がそう返すと、姫様が微かに目を見開く。
「あなた……」
姫様がなにかを言いかけた時
「一体なにを揉めている!」
そんな怒鳴り声と共に現れたのは。
小柄で可愛い系なのに、頑張って怖い雰囲気を出そうとしている健気なマルチーズ、じゃない万智先輩だった。
「万智君を連れてきましたぁ!」
万智先輩がやってくる後ろから、生徒会の人がそう叫びながら走って追いかけて来た。
どうやらあの人が万智先輩を呼びに行ったらしい。
なんか万智先輩って、昨日も登場がこのパターンだった気がするけど。
この人、学園のトラブル回収係かなんかなの?
それって面倒事を押し付けてるって言わない?
ともあれ現場に到着した万智先輩は、ここに鴻上先輩がいるのを見て眉をひそめたものの、まずは姫様に歩み寄る。
「姫宮、君は新入生の体調管理を自ら申し出たんだろう?」
なるほど、姫様は姫宮だから姫なのね。
可愛い人は名前まで可愛いのか。
あ、でももし家族に男の子がいたら、イジられそうで可哀想かも。
そんな私の内心は置いておいて、厳しい表情の万智先輩に言われ、姫様がビクッと肩を震わせる。
「え、ええ。
私は癒すことだけしかできないんですもの、少しでも役に立ちたくて」
「だったら黙って役目に集中しろ、余計な私語は慎め」
「……はい」
叱られて小さく囁くように返事をする姫様の前に、あのツンケン女子が出る。
「万智、姫が怯えているでしょう。もっと優しく話しなさい」
命令口調で万智先輩に告げるツンケン女子に、万智先輩がイラっとしたのが、はたから見てもわかる。
「ここを任されているのは姫宮だけだろう。
余計な揉め事を起こすなら、取り巻き連中は撤収だ」
うわぉ、万智先輩も取り巻きって言っちゃったよ。
鴻上先輩といい、直球だなぁ。
「鴻上といい、二年の男子は口が悪い生徒が多いらしいですね」
「口が悪いとは言いがかりだな、単に正直なだけだ」
ツンケン女子さんと万智先輩が、しばし睨み合う。
ちなみに、両者を比べるとツンケン女子さんの方が身長が高いせいで、万智先輩は傍から見ると、迫力で負け気味だ。
万智先輩頑張れ!
私の内心での応援が実ったのか。
「……いいでしょう、私以外は他で待機です」
ツンケン女子さんが引き下がるようで、周りにそう指示を出す。
けどさ、万智先輩が言いたいのはあなたも含めた全員だと思うよ。
実際、万智先輩はキレそうな目をしているし。
けれど、人数が減っただけでもよしとしたらしい。
「邪魔をするのならば、即刻姫宮にも撤収してもらうぞ」
万智先輩はそう言って、この間も受付作業を続けている生徒会たちの横に立つ。
どうやらしばらく、この場に留まるようだ。
「次、こっちへどうぞ」
するとこのタイミングで、受付をしている女子に私が呼ばれた。
「氏名をどうぞ」
「安城明日香です」
「安城明日香、Cクラスですね。こちらをどうぞ」
名前を告げると、クラスを教えられて薄い冊子を渡される。
「入学式は体育館であります、係員の誘導に従ってください。
……それから、あなたが何年かぶりの外部生ね。
ようこそ誠心学園高等部へ」
「あ、ありがとうございます」
ニコリと笑みを向けられ、私はホンワカした気分になる。
普通に対応してくれると心に沁みるなぁ。
私が受付を済ませると、見張るように立っている万智先輩が、何故かまだここにいる鴻上先輩と話していた。
「で? 鴻上はどうしてここにいるんだ。
先生からの説教は済んだのか?」
「済んだ済んだ、朝からうるせぇったらねぇの。
で、寮へ戻っていると後輩が教祖様御一行に絡まれてたから、口を挟んだってワケよ」
「教祖様御一行」のセリフが聞こえたらしいツンケン女子さんが、またすごい目で鴻上先輩を睨むが、口に出してはなにも言わない。
一応万智先輩の注意を守るつもりのようだ。
ともあれ、私の揉め事で駆り出されたと思われる万智先輩に、一応お礼を言いに行くことにした。
あのままだったら、変なことになっていたかもしれないしね。
「万智先輩、さっきはありがとうございました。
なんか、昨日忠告してもらったばかりなのに、お騒がせしちゃったんでしょうか?」
ペコリと頭を下げる私に、万智先輩はため息を一つ漏らして言った。
「……いや、今回はもらい事故みたいなものだ。
お前が神高と一緒にいるから、目をつけられただけだろう」
そうなのかな?
確かに姫様は神高のことを親しげに名前で呼んでいたし。
二人は実は仲良しさんなのかな?
いくら初等部からの付き合いとはいえ、名前呼びは特別感がある気がする。
実際、私は小中学校で一緒だった子たち全員と、名前で呼び合ったりはしない。
特別に仲良しとそれなりに仲良しには、区別をつけるものだ。
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