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第二話 入学式は波乱の幕開け
4 学校へ行こう!
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朝食を終えたら、早速制服を着てみた。
「うーん、なんかちょっと大きいような気がする?」
姿見なんていう洒落たものは持ち込んでいない私は、洗面台の鏡で確認する。
男子の制服なんてサイズ感がわからず、いいのか悪いのかイマイチわからない。そしてネクタイなんて結べる気がしない。
神高……に聞いてみてもし無反応なら、常盤さんに言って制服を見てもらい、ネクタイを結んでもらおう。
そう考えた私が寝室を出てリビングに顔を出すと、既に制服に着替えていた神高が、ソファに座って新聞を読んでいた。
なんか、朝のお父さんっぽい構図だな、オイ。
「ねえ神高、これってなんか大きいかな?
実は採寸が間に合わなくて、既製品を用意してもらったんだけど」
恐る恐る声をかけてみると、神高がちらりと目線だけこちらへ向けた。
「……男女の骨格の差でしょう。同じ身長でも肩幅などが違ってくるでしょうし」
無反応化と思いきや、なんと的確な答えが返って来た。確かに、肩が少し余る気がするんだよね。
「間に合わせというのなら、どうせ後日ちゃんと作り直すのでは?」
「うん、そう言われてる」
神高の問いに、私は頷く。
「ならば、しばらくの辛抱です。
それから、ネクタイくらいちゃんと結びなさい」
「……結び方を知らない」
ネクタイのことを正直に言うと、神高は大きく息を吐き、バサリと新聞をテーブルに置いた。
「女子の制服はリボンタイですから、ネクタイの練習をしていなかったのも仕方ないかもしれませんね」
そう、そうなんだよ!
今度の制服は可愛いなぁ、ってくらいしか考えていなかったんだって!
ちなみに中学の制服は地味なセーラーだった。
なんか文句を言われるかと思いきや、そうでもなかったことにホッとする私に、神高がゆっくりと歩み寄る。
そして手早くネクタイを結んでくれた。
にしても、距離が近いぞ。
男とこんな近距離になるなんて、家族以外であっただろうか?
いや、ないな。
「早く覚えてください、困るのはそちらです」
最後に文句はなかったが小言をチクリと言われたものの、これで制服はバッチリだ。
にしても、神高が意外と親切だぞ?
それとも世話を焼くように言われているからとか?
それはあるかも、なにせわざわざ私につけられたボディガードみたいな存在だし。
そんなこんなをしていると、そろそろ寮を出る時間となった。
あ、ちゃんと持参するお茶は、沸かして水筒に詰めたよ。やっぱり飲み慣れたお茶っていいよね。茶葉が無くなったら送ってもらおうっと!
まあ、それはともかくとして。
この三階は高等部の新一年生のフロアらしく、廊下は同じように入学式へ向かう生徒たちでざわついていた。
入学式と言っても、私以外は中学からの持ち上がりだ。
けれど制服はデザインが変わるし校舎も移動となって環境が変わるため、気分がどこか浮足立つものらしい。
廊下のあちらこちらで制服姿を見せ合う様子が見られる。
こういう光景って、田舎も都会も変わらないんだな。
それにしても、同じ高校に行くはずだった友達も、今頃入学式準備でてんやわんやかな。
いや、今はバスで山越え中か、ぼちぼち学校に着いた頃かも。
それに比べれば、私ってば楽しているな。
私がそんな風に、故郷の友人たちに思いを馳せていると、二つ隣の扉が開く。
「おぅい、安城君!」
そして朝あったばかりの顔がニコリと笑う。
「あ、徳倉君。さっきぶりです」
私も小さく手を振ると、徳倉君が近寄って来た。
「食堂で会うかと思ってたのに、来なかったね」
どうやら食堂で私を探してくれたらしい徳倉君は、とてもいい人だと思う。
「うん、部屋で食べたんです。
寮監の常盤さんが気を使ってくれたみたいで、食事を持ってきてくれて」
「ああ、食堂に来たらきっと目立っただろうし、それがよかったかもね」
私の話を聞いて、徳倉君も訳知り顔で頷く。
すると、徳倉君の部屋から続いて人が出て来て、徳倉君と話している私の方を見た。
「お、コイツがさっき言ってた新入り君?」
そう話しかけてくるのは、背が高くてすらりとした体格の男子だ。
「そう、安城明日香君だよ」
「どうぞよろしく」
徳倉君に紹介されたので私はペコリと頭を下げる。
すると相手に「ヒュゥ♪」と口笛を鳴らされる。
「噂を聞いてどんなのが来るのかって思ってたら、すっげぇ普通じゃん。
俺はコイツのルームメイトの松川洋也、よろしくな」
そして、こちらもまたフレンドリーに応対された。
っていうか私ってどんな奴だと思われていたんだろう。
その噂が気になるところだ。
「ねえ、学校まで一緒に行こうよ!」
「いいですよ……あ」
徳倉君の安易に頷きかけて、私は駄弁っている間黙って立っていた神高の方を向く。
こちらは昨日の夕刻からの短い付き合いでも、あんまり集団で行動するタイプに見えない。
「一緒に登校」なんてうざったいと思われるだろうか。
そう心配してじっと見ていると、神高が短く息を吐いた。
「どうせ、向かう場所は一緒なのですから、誰と一緒でも構わないでしょう」
「そっか、そうだね!
じゃあ一緒に行きましょう!」
神高の了解を得たところで、改めて徳倉君に返事をしようと振り返ると。
「すごい、神高君が普通に会話してるよ」
「アイツ、教師相手でもガン無視するのにな」
徳倉君と松川君がヒソヒソしていた。
神高よ、君は同級生からどう思われているんだ?
「うーん、なんかちょっと大きいような気がする?」
姿見なんていう洒落たものは持ち込んでいない私は、洗面台の鏡で確認する。
男子の制服なんてサイズ感がわからず、いいのか悪いのかイマイチわからない。そしてネクタイなんて結べる気がしない。
神高……に聞いてみてもし無反応なら、常盤さんに言って制服を見てもらい、ネクタイを結んでもらおう。
そう考えた私が寝室を出てリビングに顔を出すと、既に制服に着替えていた神高が、ソファに座って新聞を読んでいた。
なんか、朝のお父さんっぽい構図だな、オイ。
「ねえ神高、これってなんか大きいかな?
実は採寸が間に合わなくて、既製品を用意してもらったんだけど」
恐る恐る声をかけてみると、神高がちらりと目線だけこちらへ向けた。
「……男女の骨格の差でしょう。同じ身長でも肩幅などが違ってくるでしょうし」
無反応化と思いきや、なんと的確な答えが返って来た。確かに、肩が少し余る気がするんだよね。
「間に合わせというのなら、どうせ後日ちゃんと作り直すのでは?」
「うん、そう言われてる」
神高の問いに、私は頷く。
「ならば、しばらくの辛抱です。
それから、ネクタイくらいちゃんと結びなさい」
「……結び方を知らない」
ネクタイのことを正直に言うと、神高は大きく息を吐き、バサリと新聞をテーブルに置いた。
「女子の制服はリボンタイですから、ネクタイの練習をしていなかったのも仕方ないかもしれませんね」
そう、そうなんだよ!
今度の制服は可愛いなぁ、ってくらいしか考えていなかったんだって!
ちなみに中学の制服は地味なセーラーだった。
なんか文句を言われるかと思いきや、そうでもなかったことにホッとする私に、神高がゆっくりと歩み寄る。
そして手早くネクタイを結んでくれた。
にしても、距離が近いぞ。
男とこんな近距離になるなんて、家族以外であっただろうか?
いや、ないな。
「早く覚えてください、困るのはそちらです」
最後に文句はなかったが小言をチクリと言われたものの、これで制服はバッチリだ。
にしても、神高が意外と親切だぞ?
それとも世話を焼くように言われているからとか?
それはあるかも、なにせわざわざ私につけられたボディガードみたいな存在だし。
そんなこんなをしていると、そろそろ寮を出る時間となった。
あ、ちゃんと持参するお茶は、沸かして水筒に詰めたよ。やっぱり飲み慣れたお茶っていいよね。茶葉が無くなったら送ってもらおうっと!
まあ、それはともかくとして。
この三階は高等部の新一年生のフロアらしく、廊下は同じように入学式へ向かう生徒たちでざわついていた。
入学式と言っても、私以外は中学からの持ち上がりだ。
けれど制服はデザインが変わるし校舎も移動となって環境が変わるため、気分がどこか浮足立つものらしい。
廊下のあちらこちらで制服姿を見せ合う様子が見られる。
こういう光景って、田舎も都会も変わらないんだな。
それにしても、同じ高校に行くはずだった友達も、今頃入学式準備でてんやわんやかな。
いや、今はバスで山越え中か、ぼちぼち学校に着いた頃かも。
それに比べれば、私ってば楽しているな。
私がそんな風に、故郷の友人たちに思いを馳せていると、二つ隣の扉が開く。
「おぅい、安城君!」
そして朝あったばかりの顔がニコリと笑う。
「あ、徳倉君。さっきぶりです」
私も小さく手を振ると、徳倉君が近寄って来た。
「食堂で会うかと思ってたのに、来なかったね」
どうやら食堂で私を探してくれたらしい徳倉君は、とてもいい人だと思う。
「うん、部屋で食べたんです。
寮監の常盤さんが気を使ってくれたみたいで、食事を持ってきてくれて」
「ああ、食堂に来たらきっと目立っただろうし、それがよかったかもね」
私の話を聞いて、徳倉君も訳知り顔で頷く。
すると、徳倉君の部屋から続いて人が出て来て、徳倉君と話している私の方を見た。
「お、コイツがさっき言ってた新入り君?」
そう話しかけてくるのは、背が高くてすらりとした体格の男子だ。
「そう、安城明日香君だよ」
「どうぞよろしく」
徳倉君に紹介されたので私はペコリと頭を下げる。
すると相手に「ヒュゥ♪」と口笛を鳴らされる。
「噂を聞いてどんなのが来るのかって思ってたら、すっげぇ普通じゃん。
俺はコイツのルームメイトの松川洋也、よろしくな」
そして、こちらもまたフレンドリーに応対された。
っていうか私ってどんな奴だと思われていたんだろう。
その噂が気になるところだ。
「ねえ、学校まで一緒に行こうよ!」
「いいですよ……あ」
徳倉君の安易に頷きかけて、私は駄弁っている間黙って立っていた神高の方を向く。
こちらは昨日の夕刻からの短い付き合いでも、あんまり集団で行動するタイプに見えない。
「一緒に登校」なんてうざったいと思われるだろうか。
そう心配してじっと見ていると、神高が短く息を吐いた。
「どうせ、向かう場所は一緒なのですから、誰と一緒でも構わないでしょう」
「そっか、そうだね!
じゃあ一緒に行きましょう!」
神高の了解を得たところで、改めて徳倉君に返事をしようと振り返ると。
「すごい、神高君が普通に会話してるよ」
「アイツ、教師相手でもガン無視するのにな」
徳倉君と松川君がヒソヒソしていた。
神高よ、君は同級生からどう思われているんだ?
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