私には未来が見える ※ただし生活密着型

黒辺あゆみ

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プロローグ

1 私が能力者⁉

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私、安城明日香あんじょうあすかは十五歳の女子で、高校へ入学したばかりのピッカピカの一年生だ。
 突然だが、私には未来が見えるらしい。
 他人がこんなことを聞くと、たぶん頭がおかしいと思わるだろう。
 だがお偉い人が調べて分かった事実なので、おそらく真実なのだと思われる。
 ……さっきから「らしい」「だろう」「思われる」と、仮定形を連発しているが、仕方ない。
 だって当の私本人が、未だに信じることができないのだから。
 何故ならば、未来が見えると言っても、大予言ができたり他人の未来を占ったりが出来るわけではなかったりするのだ。
 じゃあ、どんな未来が見えるのかって?
 そう、例えば家の畑に植えている野菜の出来が良さそうだとか、今日は雨が降りそうだとか、そんなことだ。
 コラ! 今「ショボいな⁉」とか思ったでしょう⁉
 それ、本人が一番思っているからね!
 あ、でも一番役に立つのは、テストのヤマ勘が当たることかな。
 昔からこれだけは外さなかったので、友達連中からは「ヤマ師の安城」と呼ばれてたっけ。
 けれど私は今まで、これらのことを「勘がいいだけ」だと考えていたのだ。
 だってそうじゃない?
 野菜の出来なんて、ウチが農家だから経験でわかるんだって思うし、天気だって天気予報をどこかで聞いたのかなって程度で済まされるじゃない。
 テストはまあ、異様にヤマ勘が強いのかなってくらいで。
 でもそんな呑気な日常が、ある日ガラッと変わるなんて、誰が思うっていうの?
 私みたいな能力者が集まるとかいう学校に、突然行く羽目になってさぁ。

「安城、鏡に向かってなにをブツブツ言っているんですか、不気味ですよ」

ここ数日の怒涛の日々を振り返っていた私に、部屋の入り口からツッコミが入った。
 実は私、高校から寮暮らしをしている。
 今、空いたドアにもたれて部屋の中を覗いているのは、寮のルームメイトでクラスメイトの神高征人かみたかまさと
 大事なことだからもう一度言おう。
 私のルームメイトは神高征人。
 男っぽい名前の女子ではなく、名前から推測される通りの男子である。
 しかもクール系のイケメンだったりする。
 ちくしょう、朝から爽やかじゃないか。
 そんな神高が女子である私のルームメイトだなんて、どうしてなのか。
 答えは、私が入ったのが男子寮だからだ。
 それだけではない。私は男子生徒ということになっている。
 このことが、未だに納得できない。

「何故、どうして!?
 私は十五歳の乙女なんだからね!?
 ちょっと実家の農作業の手伝いのおかげで逞しい身体をしていても。
 髪も農作業で邪魔になるからとバッサリ切っていて、当然こんがり日焼けをしていても。
 乙女であることには変わりないっ!!」

心からの叫びに、しかし神高はあきれ顔でため息を吐いた。

「君の主張はわからなくもないですが、それについてはさんざん話し合ったんでしょう?
 早く出ないとホームルームに遅れますよ」

「うがぁ!
 乙女の苦悩をさらっと流された!
 それに部屋を覗かないでよね!」

噛みつかんばかりの私の苦情に、しかし神高はあっさり反論する。

「ドアを開けっぱなしでブツブツ言っている君が悪いのだと思いますが。
 いいから早くしなさい、連帯責任はごめんです。
 ちなみにネクタイをちゃんと結べていませんよ」

そう言って肩をすくめるしぐさが、また似合っていて憎らしい。
 なおかつネクタイが変だと指摘された。
 仕方ないじゃんか、中学の制服はネクタイしなかったし。
 農家は普段ネクタイなんてしないから、ウチの父ちゃんだってネクタイを結べないと思う。
 しかし変だと言われてそのままにするわけにいかず。
 モタモタと結び直そうとするのだが、なかなか上手く結べない私のどんくささに焦れたのか。
 神高が部屋に入ってきてネクタイを取り上げ、スマートに結んでくれた。
 イケメンはネクタイを結ぶ様もかっこいいとはびっくりだ。
 しかも至近距離からのガン見に耐えられるなんて、乙女として負けた気分になる。

「君は早く結べるようになった方がいいですよ」

「練習します……、あ」

小言を言いながらネクタイから手を離した神高を見て、私は脳裏にひらめくものがあった。

「神高、タオル持って行った方がいいよ。
 ハンカチタオルとかじゃない、普通のタオル」
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