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第三話 眼鏡とコーヒー
53 田島のデート大作戦
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「ふんふん」
田島がスマホにメモを取るのを横目に、近藤が由紀を見た。
「おめぇ、着替えにたいして時間かけなかったじゃねぇか」
「だって私はお洒落な服なんて持ってないから、悩みようがない」
女子にもいろいろな人種がいるのである。女子皆お洒落族だと思うことなかれ。
「逆に春香ちゃんみたいな人を急に誘うと、きっとすっごくキレられると思うけど」
『そういうのは事前に行っときなさいよね、女子には色々準備があるんだから!』
こんなことを言って相手に噛みつきそうだ。由紀の例えに、近藤は「確かに」と頷く。愛花のことも、春香くらいのレベルだと考えて行動すると、失敗しないのではなかろうか。
「なるほど、春香ちゃん基準と……」
田島はそんなことまでいちいちメモった後、次の質問にうつる。
「でさぁ、二人はどこに行った? あ、近藤は黙ってろよな」
あの時由紀たちの巡ったコースを尋ねた田島が、なにか言いかけた近藤を片手で制した。たぶん以前近藤に聞いても、適当に答えられたのだろう。
「えーっと、私の家まで迎えに来たから、そっから出発して、休憩がてらコンビニに寄りながらチマチマ進んでぇ。途中のアイスクリームの屋台くらいじゃない? 行きの道で寄ったのって」
「アイス? そんなんあったのか?」
メモ代わりのスマホから、田島が顔を上げる。どうやら近藤からの聴取では出てこなかったワードらしい。情報収集でいかに近藤が戦力外だったかが窺える。
「可愛いキッチンカーの屋台だったよ、結構お客がいたかな」
「どのあたりだった?」
思い出しながら言う由紀に田島が地図を写したスマホを出すが。
――地図の見方がわからん。
悩む由紀の横から近藤が手を伸ばしてきて、無言で地図を動かしてその場所を示す。
「へぇ、ここかぁ。いつもいるのか曜日で決まっているのか、調べとこう」
田島がとりあえず地図に印を入れた。
あとはハンバーガーに驚いたことや、新しい施設で足湯を楽しんだり、お土産を買いに行って試食巡りをしたりしたと話すと、田島は一々頷く。
「よっしゃ、これを参考にプランを練るぜ!」
「まあ、頑張って」
握りこぶしを突き上げる田島に、由紀は一応声援を送る。
「女の前で空回りすんなよ」
近藤はそんな忠告めいたことを言う。確かに、田島は愛花の前で舞い上がってしまいそうな雰囲気ではある。その気にさせた由紀としては、失敗して心の傷を負われては責任を感じるところなので、もう一つ助言をした。
「バイクってさ、カッコつけなくても乗っているだけでカッコよく見えるから。いつも通りがいいんじゃないの?」
あの強面近藤もヘルメットを被ってバイクに乗れば、そこそこイケメンに見えてしまう不思議現象が起こるのだから。
「……そうか?」
目を瞬かせる田島に、由紀はさらに続ける。
「そうそう。だからいつもツーリングしている風に乗っていればいいんだって」
これに、田島も大きく頷いて近藤を見た。
「なるほど、いつも通りな。確かにコイツに上手く女子を連れまわせるとは思えんしな!」
「ほっとけ」
しかめ面でツッコむ近藤に、由紀は小さく笑う。
――いつも通りにしているからこそ、素の表情が見えるっていうのもあるけどね。
ああして一日近藤と一緒にいて案外気疲れしないというのは、新発見であった。きっと愛花も、初めて見る田島の姿を発見することだろう。
「愛花ちゃんも、きっといつもの田島くんを見たいんじゃないの? せいぜいデートを楽しむがいいさ」
きっとあのアイスクリーム屋台のお姉さんやハンバーガー屋の店員さんが、由紀の時同様に「デートを楽しんでくださいね!」と応援してくれることだろう。
知りたいことを知れた田島が、由紀に向かって手を合わせた。
「マジ神様西田様だ! 土産買ってくるからな!」
「拝むのをやめれ」
田島とそんなことを言い合っていた時。
「……やっぱり、あなただったのね」
女性の低く唸るような声がした。
「ひゃっ!?」
由紀は驚いたあまり、肩を跳ねさせて声の方を振り向く。するとそこにいたのは――
「新開、会長?」
「あれって、生徒会長か?」
由紀の呟きに、田島の声が重なる。
新開会長はこちらから二つテーブルを挟んだ位置に仁王立ちしている。
――偶然居合わせた、って雰囲気じゃないな。
由紀と近藤はヤバそうな雰囲気に視線を交わすが、田島がどういうことかわからずに戸惑っているのがわかる。
田島がスマホにメモを取るのを横目に、近藤が由紀を見た。
「おめぇ、着替えにたいして時間かけなかったじゃねぇか」
「だって私はお洒落な服なんて持ってないから、悩みようがない」
女子にもいろいろな人種がいるのである。女子皆お洒落族だと思うことなかれ。
「逆に春香ちゃんみたいな人を急に誘うと、きっとすっごくキレられると思うけど」
『そういうのは事前に行っときなさいよね、女子には色々準備があるんだから!』
こんなことを言って相手に噛みつきそうだ。由紀の例えに、近藤は「確かに」と頷く。愛花のことも、春香くらいのレベルだと考えて行動すると、失敗しないのではなかろうか。
「なるほど、春香ちゃん基準と……」
田島はそんなことまでいちいちメモった後、次の質問にうつる。
「でさぁ、二人はどこに行った? あ、近藤は黙ってろよな」
あの時由紀たちの巡ったコースを尋ねた田島が、なにか言いかけた近藤を片手で制した。たぶん以前近藤に聞いても、適当に答えられたのだろう。
「えーっと、私の家まで迎えに来たから、そっから出発して、休憩がてらコンビニに寄りながらチマチマ進んでぇ。途中のアイスクリームの屋台くらいじゃない? 行きの道で寄ったのって」
「アイス? そんなんあったのか?」
メモ代わりのスマホから、田島が顔を上げる。どうやら近藤からの聴取では出てこなかったワードらしい。情報収集でいかに近藤が戦力外だったかが窺える。
「可愛いキッチンカーの屋台だったよ、結構お客がいたかな」
「どのあたりだった?」
思い出しながら言う由紀に田島が地図を写したスマホを出すが。
――地図の見方がわからん。
悩む由紀の横から近藤が手を伸ばしてきて、無言で地図を動かしてその場所を示す。
「へぇ、ここかぁ。いつもいるのか曜日で決まっているのか、調べとこう」
田島がとりあえず地図に印を入れた。
あとはハンバーガーに驚いたことや、新しい施設で足湯を楽しんだり、お土産を買いに行って試食巡りをしたりしたと話すと、田島は一々頷く。
「よっしゃ、これを参考にプランを練るぜ!」
「まあ、頑張って」
握りこぶしを突き上げる田島に、由紀は一応声援を送る。
「女の前で空回りすんなよ」
近藤はそんな忠告めいたことを言う。確かに、田島は愛花の前で舞い上がってしまいそうな雰囲気ではある。その気にさせた由紀としては、失敗して心の傷を負われては責任を感じるところなので、もう一つ助言をした。
「バイクってさ、カッコつけなくても乗っているだけでカッコよく見えるから。いつも通りがいいんじゃないの?」
あの強面近藤もヘルメットを被ってバイクに乗れば、そこそこイケメンに見えてしまう不思議現象が起こるのだから。
「……そうか?」
目を瞬かせる田島に、由紀はさらに続ける。
「そうそう。だからいつもツーリングしている風に乗っていればいいんだって」
これに、田島も大きく頷いて近藤を見た。
「なるほど、いつも通りな。確かにコイツに上手く女子を連れまわせるとは思えんしな!」
「ほっとけ」
しかめ面でツッコむ近藤に、由紀は小さく笑う。
――いつも通りにしているからこそ、素の表情が見えるっていうのもあるけどね。
ああして一日近藤と一緒にいて案外気疲れしないというのは、新発見であった。きっと愛花も、初めて見る田島の姿を発見することだろう。
「愛花ちゃんも、きっといつもの田島くんを見たいんじゃないの? せいぜいデートを楽しむがいいさ」
きっとあのアイスクリーム屋台のお姉さんやハンバーガー屋の店員さんが、由紀の時同様に「デートを楽しんでくださいね!」と応援してくれることだろう。
知りたいことを知れた田島が、由紀に向かって手を合わせた。
「マジ神様西田様だ! 土産買ってくるからな!」
「拝むのをやめれ」
田島とそんなことを言い合っていた時。
「……やっぱり、あなただったのね」
女性の低く唸るような声がした。
「ひゃっ!?」
由紀は驚いたあまり、肩を跳ねさせて声の方を振り向く。するとそこにいたのは――
「新開、会長?」
「あれって、生徒会長か?」
由紀の呟きに、田島の声が重なる。
新開会長はこちらから二つテーブルを挟んだ位置に仁王立ちしている。
――偶然居合わせた、って雰囲気じゃないな。
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