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第二話 噂の「ハルカ」
35 再びの
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お昼を少し過ぎた時刻になると、春香はカウンターで焼きそばを食べ始めた。由梨枝が買い物に行った時に焼きそば麺が安かったらしく、これが本日の賄いとなっている。
喫茶店で焼きそばを食べる絵というのもなかなかないが、由梨枝の焼きそばは美味しいに違いないので、由紀はもうしばらくで来るであろう休憩を楽しみにしておく。
「やっぱさぁ、撮影で出るお弁当より、断然ママのご飯の方がいいわ」
焼きそばをズルズル食べながらしみじみと言う春香に、由紀は素朴な疑問をぶつける。
「ああいう時のお弁当って、高級なお店のが出るんじゃないの?」
先日テレビでロケ弁の特集をやっていて、「いいもの食べてるなぁ」と思ったものだが。これに春香が「わかってないなぁ」という顔をした。
「どんな弁当でもね、毎日食べると飽きるのよ」
たとえ高級店の日替わり弁当でも、ローテーションの種類は知れている。それにああいった弁当はどうしても味が濃くなってしまうそうで、お茶の飲む量が増えてお腹がタプタプになるらしい。
「やっぱりそうなのかぁ」
飽きるという気持ちは、由紀にも少しわかる。
母も自身も料理が苦手で、父もそれなりに仕事が忙しい西田家だ。中学までは給食があったが、高校になってからはそれがない。なので由紀の学校での昼食は基本コンビニで買っていくか、学食だ。
でも由紀の学校の学食は運動部向けにボリュームたっぷりなメニューとなっているので、それほど量がいけるわけではない女子には多すぎる。なので学食の利用は、遅刻しそうでコンビニに寄る暇がなかった時くらいだった。加えてコンビニのおにぎりやサンドイッチは、毎日買っても買いきれないほど種類豊富なわけではなく、結果マンネリ化してくるのだ。
「私も毎日お昼ご飯にコンビニで同じような物ばっかり買っているとさ、新商品を見たらテンションあがっちゃって。たまに『これ美味しいか?』というヤツも構わずに買っちゃうんだよね」
「わかるわそれ。ゲテモノ系でも目新しいっていうだけで、美味しそうに見えるのよ」
由紀は春香と二人で深く頷き合う。おかしなところで意見が合ってしまった。だがそれほどまでに、「食事メニューに飽きた」というのは深刻な問題なのだ。
この会話が聞こえたのか、近藤が厨房からカウンターに顔を覗かせ、しかめっ面をした。
「お前ら、仮にも食いもの屋でそんな寂しい話をするな」
「すんませんねぇ、寂しい食生活で」
由紀が近藤に軽口を叩いていた、その時。
カランコロン
入り口ドアが来客を告げた。
「いらっしゃ、いませー……」
由紀が前半は元気よく、後半は脱力して声をかける。入り口から現れたのは、黒のストレートロングヘアを風になびかせた女子。
「こんにちは、弘樹」
――また来たよ。
新開会長が近藤に挨拶するのと、由紀が内心でツッコむのが重なる。まるで再現VTRのような挨拶に、脱力しそうになった。実は新開会長は初めて来店した日から今まで、毎日通っているのだ。それにしても彼女はだいたいティータイムに来るのだが、今日は早い来店である。
――長く居座って、近藤との接触を図ろうとしているのかも。
なにせ近藤は、新開会長がいると表に出てこない。その近藤はといえば、新開会長が入ろうとする姿が見えたのか、とっくに厨房の奥に隠れてしまっていた。行動の早い男である。
「なにあれ、カンジ悪ぅ」
頬張っていた焼きそばを飲み込んだ春香が、ボソリと呟く。この意見に由紀も同意で、思えば新開会長は最初から店に来たら近藤にしか挨拶をしない。由紀はともかく、由梨枝のことも無視である。
「あら春香ちゃん、いたのね」
この声が聞こえたのか、新開会長がこの時初めて気が付いたというように、カウンター席に座る春香を見た。
喫茶店で焼きそばを食べる絵というのもなかなかないが、由梨枝の焼きそばは美味しいに違いないので、由紀はもうしばらくで来るであろう休憩を楽しみにしておく。
「やっぱさぁ、撮影で出るお弁当より、断然ママのご飯の方がいいわ」
焼きそばをズルズル食べながらしみじみと言う春香に、由紀は素朴な疑問をぶつける。
「ああいう時のお弁当って、高級なお店のが出るんじゃないの?」
先日テレビでロケ弁の特集をやっていて、「いいもの食べてるなぁ」と思ったものだが。これに春香が「わかってないなぁ」という顔をした。
「どんな弁当でもね、毎日食べると飽きるのよ」
たとえ高級店の日替わり弁当でも、ローテーションの種類は知れている。それにああいった弁当はどうしても味が濃くなってしまうそうで、お茶の飲む量が増えてお腹がタプタプになるらしい。
「やっぱりそうなのかぁ」
飽きるという気持ちは、由紀にも少しわかる。
母も自身も料理が苦手で、父もそれなりに仕事が忙しい西田家だ。中学までは給食があったが、高校になってからはそれがない。なので由紀の学校での昼食は基本コンビニで買っていくか、学食だ。
でも由紀の学校の学食は運動部向けにボリュームたっぷりなメニューとなっているので、それほど量がいけるわけではない女子には多すぎる。なので学食の利用は、遅刻しそうでコンビニに寄る暇がなかった時くらいだった。加えてコンビニのおにぎりやサンドイッチは、毎日買っても買いきれないほど種類豊富なわけではなく、結果マンネリ化してくるのだ。
「私も毎日お昼ご飯にコンビニで同じような物ばっかり買っているとさ、新商品を見たらテンションあがっちゃって。たまに『これ美味しいか?』というヤツも構わずに買っちゃうんだよね」
「わかるわそれ。ゲテモノ系でも目新しいっていうだけで、美味しそうに見えるのよ」
由紀は春香と二人で深く頷き合う。おかしなところで意見が合ってしまった。だがそれほどまでに、「食事メニューに飽きた」というのは深刻な問題なのだ。
この会話が聞こえたのか、近藤が厨房からカウンターに顔を覗かせ、しかめっ面をした。
「お前ら、仮にも食いもの屋でそんな寂しい話をするな」
「すんませんねぇ、寂しい食生活で」
由紀が近藤に軽口を叩いていた、その時。
カランコロン
入り口ドアが来客を告げた。
「いらっしゃ、いませー……」
由紀が前半は元気よく、後半は脱力して声をかける。入り口から現れたのは、黒のストレートロングヘアを風になびかせた女子。
「こんにちは、弘樹」
――また来たよ。
新開会長が近藤に挨拶するのと、由紀が内心でツッコむのが重なる。まるで再現VTRのような挨拶に、脱力しそうになった。実は新開会長は初めて来店した日から今まで、毎日通っているのだ。それにしても彼女はだいたいティータイムに来るのだが、今日は早い来店である。
――長く居座って、近藤との接触を図ろうとしているのかも。
なにせ近藤は、新開会長がいると表に出てこない。その近藤はといえば、新開会長が入ろうとする姿が見えたのか、とっくに厨房の奥に隠れてしまっていた。行動の早い男である。
「なにあれ、カンジ悪ぅ」
頬張っていた焼きそばを飲み込んだ春香が、ボソリと呟く。この意見に由紀も同意で、思えば新開会長は最初から店に来たら近藤にしか挨拶をしない。由紀はともかく、由梨枝のことも無視である。
「あら春香ちゃん、いたのね」
この声が聞こえたのか、新開会長がこの時初めて気が付いたというように、カウンター席に座る春香を見た。
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