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第一話 予定が狂った夏休み
6 職員室前の攻防
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そう言えば彼の名前は近藤弘樹だったか。珍しく一人だが、取り巻きの軍団も夏休みに浮かれて、金魚のフンをしている場合ではないのかもしれない。
それにしても、近藤とは最近ほとほと縁がある。二度あることは三度ある、三度目の正直、ことわざは様々あるが、本当に律儀に三回目の遭遇をしなくてもいいだろうに。
由紀が微妙な顔をしているのを見た近藤も、微妙な顔をしている。新開会長はそんな二人の空気を読んでいるのかいないのか。
「この娘のプリント持ってあげなさいよ、かわいそうじゃない」
眉を寄せて思いもよらないことを言い出した。提案でもお願いでもない、やんわりとした命令形である。不良が天敵の地味系女子の由紀にとっては小さな親切大きなお世話、しかも職員室はすぐそこだ。
「俺、今帰るところだぞ」
「ちょっと手助けするくらい、いいじゃないの。本当は私が手伝ってあげたいけれど、急いでいるから代わりに、ね?」
不機嫌な近藤に、新開会長は臆することがない。近藤も新開会長に対して、普通に会話している。
――この二人って、知り合いなの?
不良とスーパー生徒会長な女子生徒の、意外な交友関係に由紀が驚いていると、さらに意外な変化があった。
新開会長の纏うピンク色が、近藤が近寄るとより華やかに色付いたのだ。
ピンクは恋の色。つまり新開会長は、近藤に恋をしているのだ。
――へぇ、ほぉ、ふぅうん?
生徒会長と不良の恋。なんだか青春小説のタイトルみたいだ。由紀とて女子高生の端くれ。人が纏う色が見える体質のせいで、若干性格が枯れているのは否めないものの、それ以外は普通の女の子である。こんな格好の恋バナを、誰かに話したくて仕方ない。
でも不良を敵に回すのは怖い。現在由紀は、頬がニマニマしないように最大限筋肉を緊張させているところだ。
「それに女の子には優しくしないと、いつも言ってるでしょう?」
「……ああくそ」
きっかけは由紀だが、新開会長は近藤との押し問答を楽しんでいるようだ。
だがこの近藤という男、みんなのアイドル新開会長に好意を寄せられているというのに、照れもしなければニコリともしない。全く女心がわからん男である。いや、こういうキャラが新開会長の好みなのか。
由紀が出来る限り顔を動かさないように視線だけで二人を見比べていると、用事があるらしい新開会長が話を切り上げた。
「じゃあね弘樹、そのうち店に顔を出すわ」
「……ああ」
新開会長は近藤にヒラリと手を振り、由紀にニコリと笑って廊下を去って行った。
――いいものを見た。
惜しむらくは、誰かに話すには近藤相手だと躊躇われるということだ。
ともあれ新開会長が去り、この場に近藤と二人残された由紀はどうすればいいのか。突っ立っている近藤をちらりと見る。
「あの、職員室ってそこだし、別に持ってもらうほどじゃあないから」
由紀は「不良はノーサンキュー!」とデカデカと書いてある風な顔で、近藤にきっぱりと断る。
「……おら、よこせそれ」
それなのに、近藤は由紀からプリントを奪い去った。
「あ、だからいいってば!」
――人の話を聞いているのかコイツ!?
ジトリとした視線を向けると、近藤がため息を吐いた。
「アイツ、ぜってぇその辺で見てる。ここでスルーした後でネチネチ言われるのが嫌なんだよ」
なるほど、親切ではなく保身なのか。
とにかくそんなわけで、由紀は職員室までの短い距離を近藤と歩くことになった。背の高い近藤は当然歩幅が広いので、女子高生の平均程度の身長である由紀は、チョコチョコと小走りで付いて行く。
その由紀に、近藤が振り向きもせずにボソリと言った。
「おめぇ、いつか公園にいただろう」
なんと試験中の帰りに目撃した時のことが、近藤にバレていた。
それにしても、近藤とは最近ほとほと縁がある。二度あることは三度ある、三度目の正直、ことわざは様々あるが、本当に律儀に三回目の遭遇をしなくてもいいだろうに。
由紀が微妙な顔をしているのを見た近藤も、微妙な顔をしている。新開会長はそんな二人の空気を読んでいるのかいないのか。
「この娘のプリント持ってあげなさいよ、かわいそうじゃない」
眉を寄せて思いもよらないことを言い出した。提案でもお願いでもない、やんわりとした命令形である。不良が天敵の地味系女子の由紀にとっては小さな親切大きなお世話、しかも職員室はすぐそこだ。
「俺、今帰るところだぞ」
「ちょっと手助けするくらい、いいじゃないの。本当は私が手伝ってあげたいけれど、急いでいるから代わりに、ね?」
不機嫌な近藤に、新開会長は臆することがない。近藤も新開会長に対して、普通に会話している。
――この二人って、知り合いなの?
不良とスーパー生徒会長な女子生徒の、意外な交友関係に由紀が驚いていると、さらに意外な変化があった。
新開会長の纏うピンク色が、近藤が近寄るとより華やかに色付いたのだ。
ピンクは恋の色。つまり新開会長は、近藤に恋をしているのだ。
――へぇ、ほぉ、ふぅうん?
生徒会長と不良の恋。なんだか青春小説のタイトルみたいだ。由紀とて女子高生の端くれ。人が纏う色が見える体質のせいで、若干性格が枯れているのは否めないものの、それ以外は普通の女の子である。こんな格好の恋バナを、誰かに話したくて仕方ない。
でも不良を敵に回すのは怖い。現在由紀は、頬がニマニマしないように最大限筋肉を緊張させているところだ。
「それに女の子には優しくしないと、いつも言ってるでしょう?」
「……ああくそ」
きっかけは由紀だが、新開会長は近藤との押し問答を楽しんでいるようだ。
だがこの近藤という男、みんなのアイドル新開会長に好意を寄せられているというのに、照れもしなければニコリともしない。全く女心がわからん男である。いや、こういうキャラが新開会長の好みなのか。
由紀が出来る限り顔を動かさないように視線だけで二人を見比べていると、用事があるらしい新開会長が話を切り上げた。
「じゃあね弘樹、そのうち店に顔を出すわ」
「……ああ」
新開会長は近藤にヒラリと手を振り、由紀にニコリと笑って廊下を去って行った。
――いいものを見た。
惜しむらくは、誰かに話すには近藤相手だと躊躇われるということだ。
ともあれ新開会長が去り、この場に近藤と二人残された由紀はどうすればいいのか。突っ立っている近藤をちらりと見る。
「あの、職員室ってそこだし、別に持ってもらうほどじゃあないから」
由紀は「不良はノーサンキュー!」とデカデカと書いてある風な顔で、近藤にきっぱりと断る。
「……おら、よこせそれ」
それなのに、近藤は由紀からプリントを奪い去った。
「あ、だからいいってば!」
――人の話を聞いているのかコイツ!?
ジトリとした視線を向けると、近藤がため息を吐いた。
「アイツ、ぜってぇその辺で見てる。ここでスルーした後でネチネチ言われるのが嫌なんだよ」
なるほど、親切ではなく保身なのか。
とにかくそんなわけで、由紀は職員室までの短い距離を近藤と歩くことになった。背の高い近藤は当然歩幅が広いので、女子高生の平均程度の身長である由紀は、チョコチョコと小走りで付いて行く。
その由紀に、近藤が振り向きもせずにボソリと言った。
「おめぇ、いつか公園にいただろう」
なんと試験中の帰りに目撃した時のことが、近藤にバレていた。
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