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第二話 地味女の夏休みの始まり
5 アルバイト二日目・午後の事情聴取
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せっかく助けてやったのだから、なにか弁明があってもいいのではないか。
由紀は新開会長の気持ちを汲んで、混みあうカウンターに座らせてもよかったのだ。
ちょっと隣の客との距離が近いが、好きで座るのだから気にしないだろう。
由紀のジト目に、近藤が深くため息を吐く。
「……なにが聞きたいんだよ」
根負けした近藤は、案外押しに弱いようだ。
ともあれ、早速由紀は質問する。
「二人って、どいういう関係?」
そもそもこれがわからない。
これに近藤は素直に答えた。
「アイツは昔近所に住んでた、いわゆる幼馴染だ」
「ほう、幼馴染」
元不良と生徒会長が幼馴染だなんて、なんだか少女漫画に在りそうなベタな設定である。
「幼稚園に通っていた頃はよく遊んだらしいが、正直あまり覚えていない」
首を捻りながら近藤が告げる。
――まあ、幼児期の記憶なんてそんなもんよね。
別に近藤が薄情なわけではないだろう。
由紀だって幼稚園で誰と遊んだかなんて、さっぱり覚えていない。
そして新開会長は小学校に上がると同時に引っ越したという。
彼女の引っ越し先が校区が同じなので、一緒の小学校だったのだが、家が遠くなると自然と会う回数も減る。
それに小学生になると、男子と女子で遊び仲間がはっきり分かれることがある。
近藤もその例にもれず、新開会長よりも男子の友達と遊ぶようになり。
中学に入って近藤がグレると、さらに近寄らなくなった。
「たまに学校で顔を合わせると向こうが挨拶をしてくるし、一応先輩なんで頭を下げる程度の付き合いだったな」
そんな中、近藤が中学二年の夏に両親が離婚する。
「その時母さんについてここへ引っ越したから、中学を転校してな」
近藤は新開会長との縁も、そこで切れたものだとばかり思っていたという。
――近藤って母子家庭なのか。
これは由紀の聞いたことのない情報である。
ともあれ、新開会長とは道が分かれたと思っていた近藤だったが、不良を卒業して高校生になった入学式に再会する。
『また弘樹と同じ学校に通うのね』
新開会長にそう嬉しそうに笑顔で言われ、それ以来なにかと顔を合わせてはちょっかいを出されることに。
だが近藤は、そんな彼女を疑問に思ったらしい。
「アイツは小学校でも中学校でも成績が抜群に良かった。
もっと上の進学校に行けたはずなのに、どうしてあの高校にしたのか」
由紀たちの通う高校は一応進学コースはあるものの、有名進学校というわけではない。
――新開会長、近藤と同じ高校に行きたかったからここにしたのかな?
でも彼女は一つ年上なのだから、近藤がこの高校を本当に受験するかは賭けだったはず。
「新開会長って、二年からの転校生だっけ?」
「いや、一年の入学式からあの高校にいる」
近藤も気になったらしく、一応情報収集をしたらしい。
「……近藤の方は、なんでウチの高校を受けたのさ?」
由紀の質問に、近藤は即答した。
「近いからだな。
母さんに余計な金をかけさせたくない」
――まぁ、学校が遠かったら通学費が余計にかかるもんね。
というか、近藤のこの考え方がわかっていたからこそ、新開会長はあの高校を選んだのか。
それにどこを受験するのか、それこそ二年生のうちから学校からアンケートをとられることがある。
その情報を新開会長がどこからかゲットしたとか。
だがこの場合だと、かなりの執念を窺わせる。
――それでも、予想が外れる可能性も大きいわけだ。
賭けに出たのは恋のなせる業か。
近藤が新開会長の恋心に気付いていないのか、はたまた気付かないフリをしていたいのか。
普通の女子でいたい地味女は、突っ込まないに限る。
由紀は新開会長の気持ちを汲んで、混みあうカウンターに座らせてもよかったのだ。
ちょっと隣の客との距離が近いが、好きで座るのだから気にしないだろう。
由紀のジト目に、近藤が深くため息を吐く。
「……なにが聞きたいんだよ」
根負けした近藤は、案外押しに弱いようだ。
ともあれ、早速由紀は質問する。
「二人って、どいういう関係?」
そもそもこれがわからない。
これに近藤は素直に答えた。
「アイツは昔近所に住んでた、いわゆる幼馴染だ」
「ほう、幼馴染」
元不良と生徒会長が幼馴染だなんて、なんだか少女漫画に在りそうなベタな設定である。
「幼稚園に通っていた頃はよく遊んだらしいが、正直あまり覚えていない」
首を捻りながら近藤が告げる。
――まあ、幼児期の記憶なんてそんなもんよね。
別に近藤が薄情なわけではないだろう。
由紀だって幼稚園で誰と遊んだかなんて、さっぱり覚えていない。
そして新開会長は小学校に上がると同時に引っ越したという。
彼女の引っ越し先が校区が同じなので、一緒の小学校だったのだが、家が遠くなると自然と会う回数も減る。
それに小学生になると、男子と女子で遊び仲間がはっきり分かれることがある。
近藤もその例にもれず、新開会長よりも男子の友達と遊ぶようになり。
中学に入って近藤がグレると、さらに近寄らなくなった。
「たまに学校で顔を合わせると向こうが挨拶をしてくるし、一応先輩なんで頭を下げる程度の付き合いだったな」
そんな中、近藤が中学二年の夏に両親が離婚する。
「その時母さんについてここへ引っ越したから、中学を転校してな」
近藤は新開会長との縁も、そこで切れたものだとばかり思っていたという。
――近藤って母子家庭なのか。
これは由紀の聞いたことのない情報である。
ともあれ、新開会長とは道が分かれたと思っていた近藤だったが、不良を卒業して高校生になった入学式に再会する。
『また弘樹と同じ学校に通うのね』
新開会長にそう嬉しそうに笑顔で言われ、それ以来なにかと顔を合わせてはちょっかいを出されることに。
だが近藤は、そんな彼女を疑問に思ったらしい。
「アイツは小学校でも中学校でも成績が抜群に良かった。
もっと上の進学校に行けたはずなのに、どうしてあの高校にしたのか」
由紀たちの通う高校は一応進学コースはあるものの、有名進学校というわけではない。
――新開会長、近藤と同じ高校に行きたかったからここにしたのかな?
でも彼女は一つ年上なのだから、近藤がこの高校を本当に受験するかは賭けだったはず。
「新開会長って、二年からの転校生だっけ?」
「いや、一年の入学式からあの高校にいる」
近藤も気になったらしく、一応情報収集をしたらしい。
「……近藤の方は、なんでウチの高校を受けたのさ?」
由紀の質問に、近藤は即答した。
「近いからだな。
母さんに余計な金をかけさせたくない」
――まぁ、学校が遠かったら通学費が余計にかかるもんね。
というか、近藤のこの考え方がわかっていたからこそ、新開会長はあの高校を選んだのか。
それにどこを受験するのか、それこそ二年生のうちから学校からアンケートをとられることがある。
その情報を新開会長がどこからかゲットしたとか。
だがこの場合だと、かなりの執念を窺わせる。
――それでも、予想が外れる可能性も大きいわけだ。
賭けに出たのは恋のなせる業か。
近藤が新開会長の恋心に気付いていないのか、はたまた気付かないフリをしていたいのか。
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