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五章 ソルディング領
52話 騒動の終結
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「それでは、そちらは?」
隊長は青年と少女にも質問を向ける。
青年は気を悪くすることなく、気軽に答えた。
「ああ、今回は許可を得て出て来たから、ちゃんと身分証がある」
「はぁい、宰相様から貰ったもんね!」
少女が懐から、二人分の身分証を差し出した。
その一つを確認した隊長は、すぐに顔色を変えた。
「オルディア・ルドルファン……!?
ルドルファンという名は、もしや王族!?」
隊長の驚きは、すぐにパレットたちにも伝わった。
――え、王族!?
目を瞬かせるパレットの隣で、ジーンも目を見張る。
そんな二人の足元で、ミィがあくびをした。
「そう! 王太子のオル様!」
混乱する一同に、少女が胸を張り、青年は肩を竦める。
「……王太子、え、本当に?」
どうも冗談ではないようだ。
パレットにとっては驚いたどころの話ではなく、脳が理解に追い付かない。
この二人と一緒に現れたジーンは知っていたのかと視線を向ければ、あちらも慌てて首を横に振った。
――王子様が、どうしてお供が一人だけでフラフラしているの!?
衝撃から覚めないパレットたちに、オルディアが向き直った。
「名乗りが遅れたな。
私はルドルファン王国の王太子で第一王子、オルディアだ。
我が国の貴族が君たちに迷惑をかけた」
「大迷惑だよね! 私はオル様付きの魔法使いアリサ!」
少女がバーモントを蹴り飛ばしながら、元気に名乗る。
この事実はパレットたちのみならず、反乱集団の若者たちにも衝撃を与えたようだ。
「隣の国の、王族!?」
そう言ってざわつく彼らの顔色は悪い。
王族相手に武器を振るったとなれば、その罪はさらに重くなる。
そのくらいの判断はつくようだ。
オルディアは隊長に声をかけた。
「彼らは反乱とは名ばかりの、お粗末な集団だ。
君たちからもよく事情を聞いておいてくれ」
これに、隊長も頷いた。
「は、実は近隣の村から『若者が連れられて出て行った』との相談が集まっておりまして。
我々も調査に乗り出したばかりでした。
もし実際に反乱を起こしていれば、厳しい罰は免れなかったでしょう」
農村での怪しい動きは、領主様の耳に入っていたようだ。
領主様を信頼していたポルト村の村長は正しかったのだ。
ここで、パレットは自分がこの街にやって来た目的を思い出した。
「倉庫の中に武器と攻撃の魔法具があるはずですから、調べてください」
武器諸々がどういった経緯でここに集まったのか、調べて王城に持ち帰らねばならないので、数の確認も大事だ。
「わかりました」
了解の返事をした隊長に、ジーンが悔しそうな顔をして告げた。
「すまない、一人だけこの場から逃げられてしまった。
おそらくあいつが、この集団を集めた奴だと思うのですが」
ジーンが追っていたのは、どうやら扇動した人物であったようだ。
それがジーンからあっさりと逃げたとなると、ますます怪しい。
――絶対、ただの旅人じゃないわ。
その背後に貴族の気配がすることは、帰ってから室長に相談するべき事案であろう。
ここで領の兵士に話しても困らせるだけだ。
一方で様々な事実を突きつけられた反乱集団の若者たちは、憔悴した様子を見せていた。
自分たちが行おうとしていたことの重大さが、ようやく頭に染み込んできたに違いない。
ここでちゃんと理解させておかないと、恐らく彼らは同じ過ちを犯すだろう。
反乱集団を連れて行こうとした兵士に、パレットは声をかけた。
「少し、彼らと話をしてもいいでしょうか?」
「構いません」
パレットは兵士に連れて行かれる若者たちの前に立った。
「あなた方がどういうつもりで、こんなことをしたのか知りません。
ですがが、あなた方がいなくなった村がどうなるのか、少しでも想像しましたか?」
パレットに熱弁を振るっていた若者が、パレットを見た。
パレットも彼を鋭く睨む。
「ここに来るまでに寄った村はどこも、人手不足にあえいでいましたよ。
ポルト村では、飢え死にするかもしれないと相談していましたっけね」
彼らのうちの数人が身体を震わせた。
おそらくポルト村の者なのだろう。
そんな面々の顔を、パレットはぐるりと見渡した。
「たとえ反乱が成功して、あなた方が勝利したとしても。
故郷の村と家族がなくなっていたら、本末転倒でしょう」
王様が贅沢をしているから自分たちが貧しいのだと語っていた。
彼らは貧しさが悪いのだと言うのかもしれないが、貧しくとも犯罪に走らない者もいる。
ポルト村の村長は、暮らしは少しづつ良くなっていると言っていた。
ここに集まった者はみな、自分の利益ばかりに執着し、村の現状を見ていない。
彼らはある意味、王城で大半を占める貴族とよく似ている。
だからこそ、こんなことに利用されたのだ。
「帰る場所があるということは、とても幸せなことです。
少なくとも私はそう思います。
みなさんは違いますか?」
反乱集団の誰も、パレットに反論する者はいなかった。
オルディアもパレットの言葉に頷く。
「帰る場所があるのは幸せか、確かにその通りだ。
この真理に、人は失いかけないと気付かない。
なんとも哀れなことだ」
若者たちは少し前の威勢の良さが消えて、下を向いたまま顔を上げない。
彼らはそのまま静かに兵士に連れられて行った。
隊長もパレットからここに連れて来られた経緯を聞いて、足早に出て行った。
叔父の行方を確かめるのだろうが、このような暴挙に出た以上、もう街を出ている可能性が高い。
倉庫を見張る兵士以外でこの場に残ったのは、パレットたちとオルディアにアリサ、そしてバーモントだ。
「こいつは余計なことをするかもしれないので、私が直接領主館まで連れて行き、牢に入れる」
未だぐるぐる巻きのまま床に転がっているバーモントを、オルディアが睨む。
バーモントはアリサから「うるさい」と言われて、口に猿轡をされている。
なのでもごもごと喋っているようだが、なにを話したいのかは謎だ。
「魔法具を隠し持っても、無駄だもんね!」
アリサがバーモントをツンツンと突く。
いささか緊張感に欠ける二人に、パレットは尋ねる。
「あの、何故ルドルファン王国の貴族がこのようなことをしたのか、聞いてもいいでしょうか?」
聞ける話ならば報告しなければならないし、聞けない話ならばパレットよりも偉い人が考えるべき問題になる。
パレットの質問に、オルディアは軽く頷いた。
「隠すことではない、国内では既に解決済みのことだからな。
こいつは、数年前に我が国で謀反を起こした一味の残党だ」
そうしてオルディアの口から語られた話によると。
ルドルファン王国では数年前、公爵家が関与する謀反があり、それは当時国に現れたばかりの聖女様を巡る、大変な騒動だった。
聖女様は幾度も危うい目にあい、それを救ったのがルドルファン王国の宰相で、王弟でもあるイクスファード・ルドルファンだ。
騒ぎが収まった後、聖女様はイクスファードと婚儀を上げた。
現在聖女様は聖獣様に囲まれて、夫婦で幸せに暮らしているという。
この話を聞いて、パレットは噂の聖女様に思いを馳せる。
――聖女様も、何事もなく幸せなわけじゃなかったのね。
パレットは少しだけ、聖女様に親近感を覚えた。
謀反を企てた首謀者はすでに刑に服しているが、その者は謀反のための武器や攻撃の魔法具を大量に用意していたと見られている。
なのでルドルファン王国は今でも、国を挙げて残党を捜索しているところだとか。
「この男はどうやらそれらの武器を持ち出して、武器商人となったようだ。
無事に捕まえることができてよかった」
最近マトワール王国で、ルドルファン製の攻撃の魔法具が出回っているとの噂を聞きつけた。
恐らく残党の仕業だと睨んだ国王の命令により、王太子自らが出張って来たのだという。
「大方この領地に潜んでいたのが、領主が王弟に代わってやり辛くなったのだろう」
「……そんな事情があったんですか」
オルディアの話に、パレットは驚くばかりだ。
オルディアはさらりと語ってくれたが、これは国家規模の話ではなかろうか。
いち会計事務担当の文官であるパレットには手に余る内容だ。
話が終わると、オルディアはジーンを興味深そうに眺めていた。
「それにしても、この国の騎士が荒事を行うとは思わなかった」
隣の国の王太子にも、王都の騎士の現状が聞こえているらしい。
これにジーンが肩を竦める。
「私は庶民の生まれの元兵士ですから。
このパレットも同じく庶民です」
「ほう、庶民から取り立てるようになったのか」
ジーンの言葉を聞いて、オルディアが軽く目を見張る。
なにはともあれ、反乱騒ぎは解決したと言っていいだろう。
パレットはこのことを室長に報告して、今後の指示を仰ぎたいところだが、いかんせん今は疲れた。
――安心したら、眠くなってきたわ。
なにしろ時刻が時刻である。
もうじき夜明けを迎える頃ではなかろうか。
このような時間に、さすがに頭がはっきりと働かない。
「いろいろあって疲れただろうから、とりあえずこの場は解散だ。
ここの領主も交えて、明日改めて話をしたい」
「はぁ、そうしていただけると助かります」
オルディアの判断で、パレットたちはひとまず宿へ戻ることになった。
隊長は青年と少女にも質問を向ける。
青年は気を悪くすることなく、気軽に答えた。
「ああ、今回は許可を得て出て来たから、ちゃんと身分証がある」
「はぁい、宰相様から貰ったもんね!」
少女が懐から、二人分の身分証を差し出した。
その一つを確認した隊長は、すぐに顔色を変えた。
「オルディア・ルドルファン……!?
ルドルファンという名は、もしや王族!?」
隊長の驚きは、すぐにパレットたちにも伝わった。
――え、王族!?
目を瞬かせるパレットの隣で、ジーンも目を見張る。
そんな二人の足元で、ミィがあくびをした。
「そう! 王太子のオル様!」
混乱する一同に、少女が胸を張り、青年は肩を竦める。
「……王太子、え、本当に?」
どうも冗談ではないようだ。
パレットにとっては驚いたどころの話ではなく、脳が理解に追い付かない。
この二人と一緒に現れたジーンは知っていたのかと視線を向ければ、あちらも慌てて首を横に振った。
――王子様が、どうしてお供が一人だけでフラフラしているの!?
衝撃から覚めないパレットたちに、オルディアが向き直った。
「名乗りが遅れたな。
私はルドルファン王国の王太子で第一王子、オルディアだ。
我が国の貴族が君たちに迷惑をかけた」
「大迷惑だよね! 私はオル様付きの魔法使いアリサ!」
少女がバーモントを蹴り飛ばしながら、元気に名乗る。
この事実はパレットたちのみならず、反乱集団の若者たちにも衝撃を与えたようだ。
「隣の国の、王族!?」
そう言ってざわつく彼らの顔色は悪い。
王族相手に武器を振るったとなれば、その罪はさらに重くなる。
そのくらいの判断はつくようだ。
オルディアは隊長に声をかけた。
「彼らは反乱とは名ばかりの、お粗末な集団だ。
君たちからもよく事情を聞いておいてくれ」
これに、隊長も頷いた。
「は、実は近隣の村から『若者が連れられて出て行った』との相談が集まっておりまして。
我々も調査に乗り出したばかりでした。
もし実際に反乱を起こしていれば、厳しい罰は免れなかったでしょう」
農村での怪しい動きは、領主様の耳に入っていたようだ。
領主様を信頼していたポルト村の村長は正しかったのだ。
ここで、パレットは自分がこの街にやって来た目的を思い出した。
「倉庫の中に武器と攻撃の魔法具があるはずですから、調べてください」
武器諸々がどういった経緯でここに集まったのか、調べて王城に持ち帰らねばならないので、数の確認も大事だ。
「わかりました」
了解の返事をした隊長に、ジーンが悔しそうな顔をして告げた。
「すまない、一人だけこの場から逃げられてしまった。
おそらくあいつが、この集団を集めた奴だと思うのですが」
ジーンが追っていたのは、どうやら扇動した人物であったようだ。
それがジーンからあっさりと逃げたとなると、ますます怪しい。
――絶対、ただの旅人じゃないわ。
その背後に貴族の気配がすることは、帰ってから室長に相談するべき事案であろう。
ここで領の兵士に話しても困らせるだけだ。
一方で様々な事実を突きつけられた反乱集団の若者たちは、憔悴した様子を見せていた。
自分たちが行おうとしていたことの重大さが、ようやく頭に染み込んできたに違いない。
ここでちゃんと理解させておかないと、恐らく彼らは同じ過ちを犯すだろう。
反乱集団を連れて行こうとした兵士に、パレットは声をかけた。
「少し、彼らと話をしてもいいでしょうか?」
「構いません」
パレットは兵士に連れて行かれる若者たちの前に立った。
「あなた方がどういうつもりで、こんなことをしたのか知りません。
ですがが、あなた方がいなくなった村がどうなるのか、少しでも想像しましたか?」
パレットに熱弁を振るっていた若者が、パレットを見た。
パレットも彼を鋭く睨む。
「ここに来るまでに寄った村はどこも、人手不足にあえいでいましたよ。
ポルト村では、飢え死にするかもしれないと相談していましたっけね」
彼らのうちの数人が身体を震わせた。
おそらくポルト村の者なのだろう。
そんな面々の顔を、パレットはぐるりと見渡した。
「たとえ反乱が成功して、あなた方が勝利したとしても。
故郷の村と家族がなくなっていたら、本末転倒でしょう」
王様が贅沢をしているから自分たちが貧しいのだと語っていた。
彼らは貧しさが悪いのだと言うのかもしれないが、貧しくとも犯罪に走らない者もいる。
ポルト村の村長は、暮らしは少しづつ良くなっていると言っていた。
ここに集まった者はみな、自分の利益ばかりに執着し、村の現状を見ていない。
彼らはある意味、王城で大半を占める貴族とよく似ている。
だからこそ、こんなことに利用されたのだ。
「帰る場所があるということは、とても幸せなことです。
少なくとも私はそう思います。
みなさんは違いますか?」
反乱集団の誰も、パレットに反論する者はいなかった。
オルディアもパレットの言葉に頷く。
「帰る場所があるのは幸せか、確かにその通りだ。
この真理に、人は失いかけないと気付かない。
なんとも哀れなことだ」
若者たちは少し前の威勢の良さが消えて、下を向いたまま顔を上げない。
彼らはそのまま静かに兵士に連れられて行った。
隊長もパレットからここに連れて来られた経緯を聞いて、足早に出て行った。
叔父の行方を確かめるのだろうが、このような暴挙に出た以上、もう街を出ている可能性が高い。
倉庫を見張る兵士以外でこの場に残ったのは、パレットたちとオルディアにアリサ、そしてバーモントだ。
「こいつは余計なことをするかもしれないので、私が直接領主館まで連れて行き、牢に入れる」
未だぐるぐる巻きのまま床に転がっているバーモントを、オルディアが睨む。
バーモントはアリサから「うるさい」と言われて、口に猿轡をされている。
なのでもごもごと喋っているようだが、なにを話したいのかは謎だ。
「魔法具を隠し持っても、無駄だもんね!」
アリサがバーモントをツンツンと突く。
いささか緊張感に欠ける二人に、パレットは尋ねる。
「あの、何故ルドルファン王国の貴族がこのようなことをしたのか、聞いてもいいでしょうか?」
聞ける話ならば報告しなければならないし、聞けない話ならばパレットよりも偉い人が考えるべき問題になる。
パレットの質問に、オルディアは軽く頷いた。
「隠すことではない、国内では既に解決済みのことだからな。
こいつは、数年前に我が国で謀反を起こした一味の残党だ」
そうしてオルディアの口から語られた話によると。
ルドルファン王国では数年前、公爵家が関与する謀反があり、それは当時国に現れたばかりの聖女様を巡る、大変な騒動だった。
聖女様は幾度も危うい目にあい、それを救ったのがルドルファン王国の宰相で、王弟でもあるイクスファード・ルドルファンだ。
騒ぎが収まった後、聖女様はイクスファードと婚儀を上げた。
現在聖女様は聖獣様に囲まれて、夫婦で幸せに暮らしているという。
この話を聞いて、パレットは噂の聖女様に思いを馳せる。
――聖女様も、何事もなく幸せなわけじゃなかったのね。
パレットは少しだけ、聖女様に親近感を覚えた。
謀反を企てた首謀者はすでに刑に服しているが、その者は謀反のための武器や攻撃の魔法具を大量に用意していたと見られている。
なのでルドルファン王国は今でも、国を挙げて残党を捜索しているところだとか。
「この男はどうやらそれらの武器を持ち出して、武器商人となったようだ。
無事に捕まえることができてよかった」
最近マトワール王国で、ルドルファン製の攻撃の魔法具が出回っているとの噂を聞きつけた。
恐らく残党の仕業だと睨んだ国王の命令により、王太子自らが出張って来たのだという。
「大方この領地に潜んでいたのが、領主が王弟に代わってやり辛くなったのだろう」
「……そんな事情があったんですか」
オルディアの話に、パレットは驚くばかりだ。
オルディアはさらりと語ってくれたが、これは国家規模の話ではなかろうか。
いち会計事務担当の文官であるパレットには手に余る内容だ。
話が終わると、オルディアはジーンを興味深そうに眺めていた。
「それにしても、この国の騎士が荒事を行うとは思わなかった」
隣の国の王太子にも、王都の騎士の現状が聞こえているらしい。
これにジーンが肩を竦める。
「私は庶民の生まれの元兵士ですから。
このパレットも同じく庶民です」
「ほう、庶民から取り立てるようになったのか」
ジーンの言葉を聞いて、オルディアが軽く目を見張る。
なにはともあれ、反乱騒ぎは解決したと言っていいだろう。
パレットはこのことを室長に報告して、今後の指示を仰ぎたいところだが、いかんせん今は疲れた。
――安心したら、眠くなってきたわ。
なにしろ時刻が時刻である。
もうじき夜明けを迎える頃ではなかろうか。
このような時間に、さすがに頭がはっきりと働かない。
「いろいろあって疲れただろうから、とりあえずこの場は解散だ。
ここの領主も交えて、明日改めて話をしたい」
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