転生したら自殺した元カノ似のモブ子に出会ったのでラブコメだけどハーレムから脱却します!

高見南純平

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第6話 ここどこなの??

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「亡くなった彼女にそっくりだったから、つい声をかけてしまったと」

「うん。信じられないかもしれないけど……」

「……」

 校舎を出て少し歩いたところにある中庭で、ベンチに座りながら海利と話をしていた。
 そこで、自分が大学生で墓参りをしていたこと、虎頭心火に突然なってしまったこと、などを包み隠さず話した。

 そして、以前付き合っていた彼女が飛び降り自殺をしたことも。

 それを聞いた海利は、じっと黙り込んだ。
 こんな話突然聞かされたらそうなるだろうな。
 俺だって訳が分からないんだ。

「……重い」

「え?」

 海利が急に呟いたので、上手く聞き取れずに聞き返してしまった。

「話が重すぎる。なんで急に飛び出して怒鳴り散らしたのか、なんとなく予想してたけど、それをはるかに凌駕したわ」

 俺が事情を説明しているとき、自殺と言うワードが出た瞬間に海利の表情が曇りだした。
 初対面の人に話す内容ではないとは自分でもよく分かっていたので躊躇したが、今回は状況が状況だけに話すしかなかった。

「ちなみに、どんなの想像してた?」

「まあ、恋愛関係だろうなとは思ってたけど。浮気されたとか、ひどいフラれ方をしたりとか」

 交際していた女性、というところまでは海利の予想は合っていた。
 すぐさまに俺の正体を見破った時も感じたが、こいつは勘が鋭いみたいだな。
 そのおかげで、話がスムーズに進むけど。

「それだったらよかったのにな……」

 何か別れた理由があれば、俺だってこんなに引きずることはなかっただろう。
 けれど、真里菜は何も言わずに姿を消してしまった。

 俺に不満があったのか、他に男がいたのか。
 それに、何故自殺したのか。
 真相は今でもわかっていない。

「……悪かったよ、さっきは」

 突然、海利が謝りだした。
 何故だ?
 俺はお前に感謝することはあっても、謝られることはないと思うけど。

「さっきって?」

「心火はそんなことしないって、屋上で怒ったろ。
 ちょっと強く当たりすぎたな、って。
 突然ここにきて、そんな事情のある彼女と再会したら、誰でも冷静でいられなくなるわ」

 彼は屋上で俺に壁ドンをしたことを謝っているようだ。
 別に気にしなくていいのに。
 少女漫画みたいな貴重な経験ができた。

「そのおかげで俺のことに気付いてもらえたんだし、結果オーライでしょ」

「さんきゅ」

 なんだろう。
 虎頭心火の体のせいか、海利とはさっき会ったばかりとはとても思えなかった。
 意思疎通がちゃんとできてるし、お互いを気遣えてる。

 元いた場所に友達がいなかったわけじゃないけど、親友と呼べる人はいない。
 とくにこの1年は、あんまし人と関わってなかったしな。

 そうだよ。
 思えばこんなにちゃんと人と話したの久しぶりだ。

 話し合える友達がいるって単純だけど、いいもんだな。
 そういう意味でも、虎頭心火が羨ましいよ。

「そういえば、あんた年上だったんだな。めちゃめちゃタメ口で話してたけど」

「いいってこのままで。敬語だと距離感じるし、それに今は虎頭心火なんだし」

「っそ。じゃあ、あんたのことなんて呼べばいい? 名前教えてくれよ」

 その質問に俺は少し戸惑った。
 そっか、大学生とは言ったけど自己紹介はまだか。
 うーん、でもな~。

 俺は名前を言うのがなんだか恥ずかしくなってきた。
 虎頭心火で通じるなら、それはそれでいいし。

「心火でいいでしょ、そこは」

「気持ちがわりぃんだよ、性格違うのに心火って呼ぶのに抵抗あるっていうか。女子連中がいる時は心火で通すけど、2人の時は大学生のあんたとして接する。そのほうがあんたも喋りやすいだろ?」

 確かに海利の意見は一理ある。俺も、自分の名前を呼んでくれた方が違和感がないとは思うんだけど……。

「なんか言えない理由でもあるのか?」

「そういうわけじゃ……」

「じゃあ、言えよ」

 俺は仕方なく本名を教えることにした。
 本当に特別な理由はない。
 元居た場所だったら普通に自己紹介できる。

 けど、ここだとなんだか恥ずかしかった。

「田中、田中たける

「……それ、まじか?」

 海利は俺が思った通りのリアクションをした。
 少し小馬鹿にしている表情で、しまいには鼻で笑い始めた。

 こいつらからしたら、俺の名前なんて普通の中の普通だろう。
 大学でさえ普通過ぎるっていじられていた。

 虎頭心火の時点で嫌な予感はしていた。
 海利って名前はほとんど聞いたことがないし、お嬢様のシュリビアスがいるくらいだからな。

「だから、言いたくなかったんだ」

「あんた、それ珍しすぎるよ。今どきそんな名前どこ探してもいないぜ?」

 ん?
 今なんて言ったこいつ。
 珍しいって言ったか。
 いやいや、そんなわけない。

「まじ? 田中って全国的に上位だったと思うけど」

 詳しくは覚えていないけど、確か同じ苗字が多いランキングで4位か5位だったと思う。
 クラスに2人いてもおかしくない苗字なんだけどな。

「いや~、ほとんど聞いたことねぇな。上位って言ったら、花京院とか道明寺とかだろ」

「嘘だろ?! そんなの漫画でしか見たことないぞ」

 海利のリアクションは俺が思っていたものとは違っていた。
 普通だと馬鹿にされるかと思ったが、まさかのその逆だった。

 これって、つまり。

「……あんたさ、どこから来たんだ?」

 俺の頭にふとよぎった考えを海利も思ったようだ。

「分からない。うすうす感じてはいたけど、俺がいた場所、いや世界が……違う?」

 少し前まで生活していたところは、美男美女で溢れてはいなかった。青髪やピンク髪の地毛は日本にはいないはずだ。

 虎頭心火の精神と移り変わっただけではなく、俺はオレの知らない世界に迷い込んでしまったようだ。

「おいおい、なんかスケールでかくなってきたな」

「まだそうと決まったわけじゃない。もっと確かめてみよう。そもそも、ここは日本?」

 俺は海利との常識の違いを探るために様々な質問をすることにした。

「ああ、当たり前だろ。さらにいえば、ここは東京にある私立 逢魔ヶ時おうまがどき学園だ」

「逢魔ヶ時って、学校名イカつ過ぎるだろ」

「これも普通だ。あとはなんだろうな……」

 頭を悩ませる海利。
 日本は合っているみたいだし、今のところ変なのは名前ぐらいか。

 待てよ、もうひとつあるか。


 分かっている事
 その④
 ここにいる人たちは全員が美男美女で、髪型や顔立ちが派手な者がいる。

「なぁ、この世界にブスとか不細工って言葉あるか?」

 俺からしたらここで見かけた学生は皆顔が整っていた。先生にいたってもだ。
 なら、そもそもそういう概念がないのではないかと思ったのだ。

「なんだ、それ? どういう意味だ?」

「ビンゴだ。やっぱりおかしい」

 予想的中だ。髪の色が薄かったり、装飾品が少なかったりと菜乃川春乃や海利と比べれば、他の生徒は見劣りする。しかし、地味に見えるだけで不細工では決してない。

「だから、どういう意味だよ」

「うーん、説明するのもなんか嫌だけど、不細工ってのは顔が整っていない人の事」

「んー、ピンとこねぇな」

 海利の反応を見て確信した。
 やはりこの世界には顔が整っていない人間はいない。
 なにそれ、夢の国かよ。

「じゃあさ、美女とか、かわいいとかそういう言葉はあるか?」

「ああ、それは使うな」

 なるほど、肯定的な意味の言葉はあるのか。

「美女って例えばどのレベルの人のことを言う?
 春乃とかルニール、だっけ? あの辺は可愛いか?」

「あぁ、まぁ、可愛い部類だな。その辺で行くと沙理弥とか、国語の久三長くみなが先生は相当美人だな」

 虎頭心火に近しい人物の多くは、美女に分類されるのか。
 今思えば、さっき教室で虎頭心火を取り囲んでいた春乃らへんは、派手でオーラがある感じだった。

「じゃあ、他のクラスメイト達は?」

「うーん、普通って感じだな」

 まじかよ。あれで普通かよ。
 俺の世界だったら、全員アイドルとか女優になってても可笑しくはないというのに。

「男もそんな感じ? 大体普通で、たまにイケメンがいるみたいな」

「そうだな、そんな感じだ。あ、イケメンって言葉はあるぞ」

 ふぅ、なんとなく理解できた。
 やっぱりこの世界は俺のいた世界と明らかに違う。

「すごいなここは。俺から見ればな、ここにいる全員が美男美女なんだよ。
 ちなみに海利、お前は相当なイケメンだ。心身ともにな」

 学校中を見たわけではないが、おそらくこの学校で1番のイケメンは海利だろう。
 チャラくは見えるが、それを差し引いてもかっこよすぎる。
 性格もなんだかんだ優しいしな。

「なんだよ。急に褒めるな」

 照れくさくなったのか、海利は急にそっぽを向いてしまった。
 俺の正体がバレてからは、少し怖い印象だった海利だが、よく考えればまだ高校生。
 褒められたら素直に喜んだりするんだな。
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