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第3話 戦いの始まり
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「おサルさん、意外とやるじゃない。けど、この姿の私には勝てないでしょう?」
変身した姿は、紫色の体をして筋肉質で、頭には2本の角が生えていた。
口は大きく、ギザギザとした歯を見せながら高らかに声を発していた。
「ま、魔王直属だと!? もしや、召喚される勇者を狙って潜伏していたのか?」
敵の正体を知ったエレガンは、姫を自分の後ろにつかせる。
彼女は双剣を装備している。
そしてそれを、いつでも抜けるように準備をする。
「察しが良いね、エレガン。でも、そんなあんたでも、私の変身魔法には気がつかなかったでしょう? 私は暗殺が専門なの」
余裕の笑みを浮かべながら、べらべらと喋り続けるデギナ。
彼女は明らかに、エレガンたち人間とは違う。
デギナの種族は魔人。
魔力と呼ばれる、人間の中にもある目に見えない力に恵まれた種族だ。
魔力を使った超常現象である魔法の扱いに長けており、運動能力も人間よりは高い。
しかし、完全な上位種ではなく、生産業や武器の扱いなどは人間の方が優れていると言われている。
しかしそれでも、驚異的な生物なことには間違いない。
「気安く名前を呼ぶな。それに暗殺だと? 失敗して、私たちにも姿をさらすとは。魔王の部下というのも、大したことはないな」
あえて挑発するエレガン。冷静な相手よりも、怒りに任せて戦う相手の方がやりやすい。騎士であるエレガンは、すでに戦闘態勢に入っているのだ。
「ふん。いいのよ。だって、あなたたちはこの後、私に殺されるんだから」
態度を変えることなく、片腕を少しだけ上にあげる。
すると、その手の平に紫色の光の粒がいくつも現れる。
これが彼女の魔法だ。
生物には使用できる魔法が、生まれつき決まっていると言われている。
個体差が激しい生物も多く、魔人はその1つ。
キリに化けていたのが変身魔法で、今からデギナが行うのは闇属性と言われる魔法の一種だ。
「ダボル!」
正式名称「ダーク・ボール」
魔力を集中させ球体にする魔法だ。
その威力は、使用者によって大きく変動する。
デギナが片腕を振り下ろすと、その動きに合わせて生成した禍々しい魔力の塊が、一直線にエレガンの元に飛んでいった。
「闇の使い手か。しかし、この程度」
エレガンは両腕を腹の前でクロスさせ、双剣の柄を握りしめる。
そしてそのまま、刀身を抜き放つ。
その勢いのまま、剣と剣の切っ先が、放たれたダボルを切り裂いた。
ダボルはXの文字を書くように引き裂かれ、爆散した。
当然、エレガンとその後ろにいるティアラは無事だった。
「あら、綺麗な剣こと」
エレガンが抜いた双剣の名は、サファイズ。
彼女が所属するピース王国の国宝級の装備だ。
その名の通り、青き光を眩く輝かせるサファイアをふんだんに使っている。
キレ味と頑丈さは言うまでもなかった。
「おい、そこのサルよ。死にたくなかったら、こっちにこい!」
ナイフ攻撃の際、後退したとはいえ、サルの位置は魔人デギナにかなり近かった。
それを見かねたエレガンが、言葉が通じるかは分からないが、念のため呼びかけたのだった。
「ウキっ!」
意思疎通が出来たようで、素早くティアラの傍に駆け寄る。
これで、騎士エレガンの後ろで姫とサルが守られている形になった。
「優しいのねぇ。あんなやつのこと、どうでもいいのかと」
「こいつはまだ、監視状態だ。王の命令で、今は私の守るべき対象だ」
「エレガン、あなた……」
「姫はそやつが逃げないように見張っていてください。下手に動かれては邪魔ですから。この魔人は、私にお任せください」
彼女の家柄であるライトアーム家は、代々ピース王国に使えている騎士一族だ。
王のため、そして国民のために命を懸ける。
それに誇りを抱いていて生きているのだ。
だからこそ、ティアラ姫も信頼していた。
「あっそ。なら、仲良く死ぬのね!」
もう一度、デギナはダボルを唱えた。
紫色の豪速球が、再びエレガンを襲う。
「無駄だ!」
双剣サファイズを使って同じように切り裂く。
今度はそのまま、デギナに向かって走り出した。
「近づいてくるなんて、いい度胸ねぇ!」
それを迎え撃つように、ダボルで牽制するデギナ。
しかし、走りながらもエレガンの剣筋が狂うことはなく、正確にダボルを消滅させていく。
そして剣の間合いに敵が入ると、双剣を力いっぱい振り下ろす。
「おっと、危ない」
戦闘中も軽口を叩きながら、するっとその攻撃を避ける。
しかし、まだエレガンの攻撃は終わらない。
重量のある双剣を振り戻して、すぐさま斬撃を幾度も繰り出す。
今度は2本同時ではなく、タイミングをずらしながら攻撃していた。
だが、デギナはそれを紙一重で綺麗に避け切ってしまう。
その攻撃をうっとうしいと思ったのか、後ろに大きく飛んで距離を保つ。
衣装部屋は、城の部屋の中でもかなり広い方だ。物が多いのでその分、広く作られているのだ。
おそらく、戦闘になることを考えて、狭い廊下よりもこの部屋にサルたちを移動させたのだろう。
ここに来るよう促したのは、キリに変身したデギナだった。
「意外と俊敏じゃないか。でかい図体のわりには」
「レディに向かって失礼ね。でも、あなたのほうこそ大したことないじゃない。そんな剣技じゃあ、何年経っても私には届かないわよ」
エレガンの攻撃を避けるデギナは、まだまだ余裕を残していた。
確かに彼女の言う通り、このままではいくらやっても結果は同じだろう。
しかしそれを、エレガンが考えていないはずはなかった。
変身した姿は、紫色の体をして筋肉質で、頭には2本の角が生えていた。
口は大きく、ギザギザとした歯を見せながら高らかに声を発していた。
「ま、魔王直属だと!? もしや、召喚される勇者を狙って潜伏していたのか?」
敵の正体を知ったエレガンは、姫を自分の後ろにつかせる。
彼女は双剣を装備している。
そしてそれを、いつでも抜けるように準備をする。
「察しが良いね、エレガン。でも、そんなあんたでも、私の変身魔法には気がつかなかったでしょう? 私は暗殺が専門なの」
余裕の笑みを浮かべながら、べらべらと喋り続けるデギナ。
彼女は明らかに、エレガンたち人間とは違う。
デギナの種族は魔人。
魔力と呼ばれる、人間の中にもある目に見えない力に恵まれた種族だ。
魔力を使った超常現象である魔法の扱いに長けており、運動能力も人間よりは高い。
しかし、完全な上位種ではなく、生産業や武器の扱いなどは人間の方が優れていると言われている。
しかしそれでも、驚異的な生物なことには間違いない。
「気安く名前を呼ぶな。それに暗殺だと? 失敗して、私たちにも姿をさらすとは。魔王の部下というのも、大したことはないな」
あえて挑発するエレガン。冷静な相手よりも、怒りに任せて戦う相手の方がやりやすい。騎士であるエレガンは、すでに戦闘態勢に入っているのだ。
「ふん。いいのよ。だって、あなたたちはこの後、私に殺されるんだから」
態度を変えることなく、片腕を少しだけ上にあげる。
すると、その手の平に紫色の光の粒がいくつも現れる。
これが彼女の魔法だ。
生物には使用できる魔法が、生まれつき決まっていると言われている。
個体差が激しい生物も多く、魔人はその1つ。
キリに化けていたのが変身魔法で、今からデギナが行うのは闇属性と言われる魔法の一種だ。
「ダボル!」
正式名称「ダーク・ボール」
魔力を集中させ球体にする魔法だ。
その威力は、使用者によって大きく変動する。
デギナが片腕を振り下ろすと、その動きに合わせて生成した禍々しい魔力の塊が、一直線にエレガンの元に飛んでいった。
「闇の使い手か。しかし、この程度」
エレガンは両腕を腹の前でクロスさせ、双剣の柄を握りしめる。
そしてそのまま、刀身を抜き放つ。
その勢いのまま、剣と剣の切っ先が、放たれたダボルを切り裂いた。
ダボルはXの文字を書くように引き裂かれ、爆散した。
当然、エレガンとその後ろにいるティアラは無事だった。
「あら、綺麗な剣こと」
エレガンが抜いた双剣の名は、サファイズ。
彼女が所属するピース王国の国宝級の装備だ。
その名の通り、青き光を眩く輝かせるサファイアをふんだんに使っている。
キレ味と頑丈さは言うまでもなかった。
「おい、そこのサルよ。死にたくなかったら、こっちにこい!」
ナイフ攻撃の際、後退したとはいえ、サルの位置は魔人デギナにかなり近かった。
それを見かねたエレガンが、言葉が通じるかは分からないが、念のため呼びかけたのだった。
「ウキっ!」
意思疎通が出来たようで、素早くティアラの傍に駆け寄る。
これで、騎士エレガンの後ろで姫とサルが守られている形になった。
「優しいのねぇ。あんなやつのこと、どうでもいいのかと」
「こいつはまだ、監視状態だ。王の命令で、今は私の守るべき対象だ」
「エレガン、あなた……」
「姫はそやつが逃げないように見張っていてください。下手に動かれては邪魔ですから。この魔人は、私にお任せください」
彼女の家柄であるライトアーム家は、代々ピース王国に使えている騎士一族だ。
王のため、そして国民のために命を懸ける。
それに誇りを抱いていて生きているのだ。
だからこそ、ティアラ姫も信頼していた。
「あっそ。なら、仲良く死ぬのね!」
もう一度、デギナはダボルを唱えた。
紫色の豪速球が、再びエレガンを襲う。
「無駄だ!」
双剣サファイズを使って同じように切り裂く。
今度はそのまま、デギナに向かって走り出した。
「近づいてくるなんて、いい度胸ねぇ!」
それを迎え撃つように、ダボルで牽制するデギナ。
しかし、走りながらもエレガンの剣筋が狂うことはなく、正確にダボルを消滅させていく。
そして剣の間合いに敵が入ると、双剣を力いっぱい振り下ろす。
「おっと、危ない」
戦闘中も軽口を叩きながら、するっとその攻撃を避ける。
しかし、まだエレガンの攻撃は終わらない。
重量のある双剣を振り戻して、すぐさま斬撃を幾度も繰り出す。
今度は2本同時ではなく、タイミングをずらしながら攻撃していた。
だが、デギナはそれを紙一重で綺麗に避け切ってしまう。
その攻撃をうっとうしいと思ったのか、後ろに大きく飛んで距離を保つ。
衣装部屋は、城の部屋の中でもかなり広い方だ。物が多いのでその分、広く作られているのだ。
おそらく、戦闘になることを考えて、狭い廊下よりもこの部屋にサルたちを移動させたのだろう。
ここに来るよう促したのは、キリに変身したデギナだった。
「意外と俊敏じゃないか。でかい図体のわりには」
「レディに向かって失礼ね。でも、あなたのほうこそ大したことないじゃない。そんな剣技じゃあ、何年経っても私には届かないわよ」
エレガンの攻撃を避けるデギナは、まだまだ余裕を残していた。
確かに彼女の言う通り、このままではいくらやっても結果は同じだろう。
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