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第45話
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「!? 訳わかんねぇが無意味だ!」
ハライノスはそのスキル名に聞き覚えがあった。しかし、どんな効果だろうと関係はない。宣言通り封印をしてしまえばいいだけだ。
「【ディスキっ……!」
彼がスキル名を叫ぼうとした時だった。彼のスキル発動に横やりが入ってきた。
遥か彼方から、何かが飛来してきて、ハライノスの右頬に直撃したのだ。
「ぶはっ!」
ハライノスは意識が飛びそうになる。が、なんとか耐えきってみせる。そしてグラついた視界、その飛んできた何かの正体を捉える。
「ばのやろぉぉう!」
変形した口で、怒り狂うハライノス。飛来物の正体は、煌びやかに輝くクリスタルロッドだったのだ。
そう、これはゼマが放った攻撃だったのだ。
ララクの指示通り、ずっと陰に潜んでいた。
そしてここぞという時に、自慢のロッドをやり投げのように飛ばしてきたのだ。【伸縮自在】を使うと【ディスキル】される可能性があったので、直接投擲したのだ。
彼女はスローイングが上手くいったことを確認すると、「私、やるぅ!」と舌ベロを出して人知れず喜んでいた。
ヒットしたクリスタルロッドは役目を終えると、そのまま地面へと落下していく。
ハライノスは強く脳を揺らされながらも、首を振って視界を元の位置に戻す。すぐさまそうしなければ、ララクにスキルを発動されると思ったからだ。
だが、ハライノスの瞳に映ったのは、ララクとは別の人物だった。
「だ、誰だお前!」
彼の前に突如として現れ、ララクが立っていた枝上にいるのは、身軽な戦士の格好をした少女だった。
「名前はないよ」
彼女は大きくてつぶらな瞳をハライノスに向けながら、短くそう答えた。
少女はララクと性別も違う別人だが、その容姿はどこか似ている。
よどみのない美麗な金色の髪を、後ろでツインテールにしていた。ララクと同様黒目で、口も小さい。そしてかなり童顔だった。
明らかに違うのは、その装備だ。動きやすく所々露出されているが、戦士のような鎧を着用している。
そして腰には、鞘に納められた刀身の長い刀のような剣が巻き付けられている。
彼女はその剣の柄をすでに両手で握り、剣術の構えをしていた。
「剣士!? なら!」
ハライノスは剣士ならば【剣適性】を所持しているだろうと予想して、ディスキルを発動しようとした。
しかしその瞬間、彼の視界から彼女が姿を消したのだ。
っと思った瞬間、彼の体は斜めに斬りつけらていた。
「っぐ、ぐはぁ! み、見えない!」
ハライノスは全く彼女の攻撃を目で捉えることが出来なかった。何もわからぬまま、傷だけが増えていた。
強烈な痛みが押し寄せ、これがスキル攻撃という事はすぐに理解できた。
問題は、どんなスキルか、である。
「っくそ! 姿を見せろ!」
ハライノスが消えた彼女を探しに振り返った。
すると、再び知らぬ間に彼らの体に斬撃が刻み込まれる。
「っがぁ!
(こいつ! 斬りながら移動してやがる!)」
いまだ少女の姿を追えないハライノスだが、何をされているのかは徐々に理解していた。
彼の予想通り、少女は目にも止まらぬ速さで移動しながら斬っている。
スキル名は【居合い・神速斬撃】。鞘に剣を納刀した状態で放つ、目にもとまらぬ居合切り。さらに彼女は、その勢いを利用して、ハライノスの後方に飛び込みながら斬撃を放っているのだ。
【ディスキル】の最大の弱点をついた、不可視の神業。ララクは、弱体化した自分には不可能な戦略を、剣士であるもう1人の自分に託したのだ。
「お前は私を捉えることはできない。【居合い・神速斬撃】連」
ハライノスの耳に、いまだ再視認できていない彼女の声が届く。そしてそれと同時に、右腹部を瞬間的に斬りつけられた。と痛みを感じた瞬間、今度は左胸部に斬撃が刻み込まれていく。
斬撃移動で迅速な連携攻撃をハライノスに叩き込んでいく。
「っがぃ! ……あ! (ま、ず……)」
多方向から斬られ続けるハライノスの体は、その反動で上下左右に激しく揺られていた。痛みで目を閉じる瞬間も多く、少女を視界に入れる余裕など微塵もなかった。
着ている魔法使いのローブもズタボロになっていた。防具としての機能はそこまで高くないので、服を通り越して彼の肉体にまで、少女の刃は届いていた。深くはないが切り傷がいくつもついており、そこから血液が流れ服に付着して汚れとなっている。
着実に体力を削られていくハライノス。徐々に視界もぼやけていく。
ふらふらとした体で枝の上になんとか立っていると、一度連続斬撃の魔の手が止まった。
そして彼の不明瞭な視界に、再び少女の体が映り込む。
少女は居合の構えを取っており、真っ向勝負を仕掛けようとした。
ハライノスはそのスキル名に聞き覚えがあった。しかし、どんな効果だろうと関係はない。宣言通り封印をしてしまえばいいだけだ。
「【ディスキっ……!」
彼がスキル名を叫ぼうとした時だった。彼のスキル発動に横やりが入ってきた。
遥か彼方から、何かが飛来してきて、ハライノスの右頬に直撃したのだ。
「ぶはっ!」
ハライノスは意識が飛びそうになる。が、なんとか耐えきってみせる。そしてグラついた視界、その飛んできた何かの正体を捉える。
「ばのやろぉぉう!」
変形した口で、怒り狂うハライノス。飛来物の正体は、煌びやかに輝くクリスタルロッドだったのだ。
そう、これはゼマが放った攻撃だったのだ。
ララクの指示通り、ずっと陰に潜んでいた。
そしてここぞという時に、自慢のロッドをやり投げのように飛ばしてきたのだ。【伸縮自在】を使うと【ディスキル】される可能性があったので、直接投擲したのだ。
彼女はスローイングが上手くいったことを確認すると、「私、やるぅ!」と舌ベロを出して人知れず喜んでいた。
ヒットしたクリスタルロッドは役目を終えると、そのまま地面へと落下していく。
ハライノスは強く脳を揺らされながらも、首を振って視界を元の位置に戻す。すぐさまそうしなければ、ララクにスキルを発動されると思ったからだ。
だが、ハライノスの瞳に映ったのは、ララクとは別の人物だった。
「だ、誰だお前!」
彼の前に突如として現れ、ララクが立っていた枝上にいるのは、身軽な戦士の格好をした少女だった。
「名前はないよ」
彼女は大きくてつぶらな瞳をハライノスに向けながら、短くそう答えた。
少女はララクと性別も違う別人だが、その容姿はどこか似ている。
よどみのない美麗な金色の髪を、後ろでツインテールにしていた。ララクと同様黒目で、口も小さい。そしてかなり童顔だった。
明らかに違うのは、その装備だ。動きやすく所々露出されているが、戦士のような鎧を着用している。
そして腰には、鞘に納められた刀身の長い刀のような剣が巻き付けられている。
彼女はその剣の柄をすでに両手で握り、剣術の構えをしていた。
「剣士!? なら!」
ハライノスは剣士ならば【剣適性】を所持しているだろうと予想して、ディスキルを発動しようとした。
しかしその瞬間、彼の視界から彼女が姿を消したのだ。
っと思った瞬間、彼の体は斜めに斬りつけらていた。
「っぐ、ぐはぁ! み、見えない!」
ハライノスは全く彼女の攻撃を目で捉えることが出来なかった。何もわからぬまま、傷だけが増えていた。
強烈な痛みが押し寄せ、これがスキル攻撃という事はすぐに理解できた。
問題は、どんなスキルか、である。
「っくそ! 姿を見せろ!」
ハライノスが消えた彼女を探しに振り返った。
すると、再び知らぬ間に彼らの体に斬撃が刻み込まれる。
「っがぁ!
(こいつ! 斬りながら移動してやがる!)」
いまだ少女の姿を追えないハライノスだが、何をされているのかは徐々に理解していた。
彼の予想通り、少女は目にも止まらぬ速さで移動しながら斬っている。
スキル名は【居合い・神速斬撃】。鞘に剣を納刀した状態で放つ、目にもとまらぬ居合切り。さらに彼女は、その勢いを利用して、ハライノスの後方に飛び込みながら斬撃を放っているのだ。
【ディスキル】の最大の弱点をついた、不可視の神業。ララクは、弱体化した自分には不可能な戦略を、剣士であるもう1人の自分に託したのだ。
「お前は私を捉えることはできない。【居合い・神速斬撃】連」
ハライノスの耳に、いまだ再視認できていない彼女の声が届く。そしてそれと同時に、右腹部を瞬間的に斬りつけられた。と痛みを感じた瞬間、今度は左胸部に斬撃が刻み込まれていく。
斬撃移動で迅速な連携攻撃をハライノスに叩き込んでいく。
「っがぃ! ……あ! (ま、ず……)」
多方向から斬られ続けるハライノスの体は、その反動で上下左右に激しく揺られていた。痛みで目を閉じる瞬間も多く、少女を視界に入れる余裕など微塵もなかった。
着ている魔法使いのローブもズタボロになっていた。防具としての機能はそこまで高くないので、服を通り越して彼の肉体にまで、少女の刃は届いていた。深くはないが切り傷がいくつもついており、そこから血液が流れ服に付着して汚れとなっている。
着実に体力を削られていくハライノス。徐々に視界もぼやけていく。
ふらふらとした体で枝の上になんとか立っていると、一度連続斬撃の魔の手が止まった。
そして彼の不明瞭な視界に、再び少女の体が映り込む。
少女は居合の構えを取っており、真っ向勝負を仕掛けようとした。
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