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第38話
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「【強脚飛蹴】!」
ララクは体を斜めにして、右足を前に突き出す。するとララクの脚を中心に、魔力のオーラで包まれていく。
そして、推進力と威力が倍増した跳び蹴りで、ハライノスへと直行していく。
「あっぶねっ!」
ハライノスは木の枝に乗った状態で、素早く横にステップする。その際、慌てて【ディスキル】を発動して、【強脚飛蹴】の効果を強制中断させる。
だが、スキルによってすでにララクの跳び蹴りは勢いを増しており、完全に威力を消すことは出来なかった。跳躍系のスキル効果は健在なので、鋭い蹴りがハライノスの真横を通り過ぎる。
これにより、ララクの攻撃はハライノスに当たらなかった。が、そのまま彼が立っている枝にララクも足をついた。太い枝にはくっきりとララクの足跡が刻み込まれている。【強脚飛蹴】があのまま続行されていれば、これをへし折っていたことだろう。
足場を確保でき、さらにハライノスへと接近することが可能になったララク。ここから彼の猛追が始まる。
「【旋回強蹴】!」
右足を軸にララクは体を回転させてく。そして左足を宙に放し、その勢いを利用して、ハライノスの体へと回し蹴りを放つ。
「っぐ!」
ハライノスは両腕を体の横に持っていき、ララクの蹴りをガードした。その瞬間、ララクの脚に青紫の光が纏わりつき中に入り込んだ。瞬間的に、【ディスキル】を発動したのだ。
スキル攻撃と通常攻撃には明確な性能差がある。倍以上威力が違うと言っても大げさではない。
まともにララクの【旋回強蹴】を受けていれば、ハライノスの体は吹き飛んでいたはずだ。この一撃で勝負が決まってもおかしくはなかった。何故なら、【格闘適性・脚】などで元からステータスダウンしていたとしても、アクションスキルの強力さは健在。ララクが元仲間から得たスキルは、被った場合その数によって【Ⅱ】や【Ⅴ】の数値によって性能が上がる。
先ほどから連発しているアクションスキルが、今回の戦いのキーカードになるとララクは考えていた。
「【ウィンドナックル】!」
回し蹴りを防がれるやいなや、ララクは右腕での攻撃に切り替える。彼がスキルを宣言すると、か細いその腕に乱流する突風が付与される。
この乱風によって、破壊力だけではなくパンチのスピードも格段に跳ね上がる。
「っう、うわっと!」
魔人ハライノスは、【ディスキル】で風を封殺しながら、たどたどしい足取りで後ろに下がっていく。
スキルが中断されたララクの拳は、ハライノス顔面前で寸止めのような形となって止まった。ララクの腕はリーチが短く、寸前で届かなかったのだ。
「まだだ! 【侵食するダークナックル】!」
ララクは停止した状態で、さらなる殴打系のスキルを発動した。これは闇使いシットニンが使用している闇系統に属するスキル。
ヒットさせた相手に闇が入り込み、防御力を下げてしまうスキルだ。触れた瞬間に効果は発動し、そこに強打を叩き込むので、闇と近接攻撃は相性が良い。
「っげ!」
魔人ハライノスの眼前にある小さな拳が、燃えるように漂う闇を纏いだす。すぐに【ディスキル】を発動しつつ、再び後ろへと下がろうとする。
が、さすがにこの距離では、【ディスキル】発動よりも【侵食するダークナックル】のほうが先に発動し終えてしまうと覚悟を決めた。
だが、ハライノスの危険予知は外れ、ララクの攻撃をまたも直前で回避することに成功した。
「!? っこ、これは!?」
ララクはダークナックル発動時に前へ進もうと強く踏み込んだ。しかし、それに反発するように、足元からグッと何かに引っ張られた。
これにより、ナックルとは逆方向に力が伝わり、スキルの威力がダウン。それが、ハライノスの回避成功につながったのだ。
これを発動したのは、近くの樹林に留まっていた闇使いシットニンだった。
だが、これに一番驚いていたのは、彼自身だった。
「やっば、つい癖で」
彼は反射的にハライノスを助けるように、闇スキルを発動してしまったのだ。あのままララクの闇系統の殴打スキルがヒットしていれば、ララクの勝利にグッと近づく。そうなれば、シットニンも封印されている自分のスキルを取り戻せたはずだ。
シットニンが本能的に使用してしまったスキルの名は【潜伏する闇】。
今までの闇のように射出するのではなく、主に地面などに設置して発動するトラップ型のスキルだ。
設置した場所に人などが入り込むと、すぐさま効果を発揮。円型の特殊な文様が施された魔法陣が展開され、そこから子供ぐらいの細長い腕が伸びてくる。全く可愛らしさはなく、闇で作られた邪悪な腕だ。
今回の場合、その腕の標的はララクの脚だった。蔓のように複雑に絡み合い、ララクの右足を強く引っ張っていく。まるで地獄に轢きずりこむかのような恐怖的瞬間だった。
この闇は他と違い、触れた瞬間にデバフ(不利的効果)を与えることはない。その場に強制的に留まらせる、という行為そのものが相手を阻害する効果、というコンセプトなのだろう。
ここから、逃げられない状態で他の闇スキルでさらに妨害していくのが恐ろしいコンボだ。
ララクは体を斜めにして、右足を前に突き出す。するとララクの脚を中心に、魔力のオーラで包まれていく。
そして、推進力と威力が倍増した跳び蹴りで、ハライノスへと直行していく。
「あっぶねっ!」
ハライノスは木の枝に乗った状態で、素早く横にステップする。その際、慌てて【ディスキル】を発動して、【強脚飛蹴】の効果を強制中断させる。
だが、スキルによってすでにララクの跳び蹴りは勢いを増しており、完全に威力を消すことは出来なかった。跳躍系のスキル効果は健在なので、鋭い蹴りがハライノスの真横を通り過ぎる。
これにより、ララクの攻撃はハライノスに当たらなかった。が、そのまま彼が立っている枝にララクも足をついた。太い枝にはくっきりとララクの足跡が刻み込まれている。【強脚飛蹴】があのまま続行されていれば、これをへし折っていたことだろう。
足場を確保でき、さらにハライノスへと接近することが可能になったララク。ここから彼の猛追が始まる。
「【旋回強蹴】!」
右足を軸にララクは体を回転させてく。そして左足を宙に放し、その勢いを利用して、ハライノスの体へと回し蹴りを放つ。
「っぐ!」
ハライノスは両腕を体の横に持っていき、ララクの蹴りをガードした。その瞬間、ララクの脚に青紫の光が纏わりつき中に入り込んだ。瞬間的に、【ディスキル】を発動したのだ。
スキル攻撃と通常攻撃には明確な性能差がある。倍以上威力が違うと言っても大げさではない。
まともにララクの【旋回強蹴】を受けていれば、ハライノスの体は吹き飛んでいたはずだ。この一撃で勝負が決まってもおかしくはなかった。何故なら、【格闘適性・脚】などで元からステータスダウンしていたとしても、アクションスキルの強力さは健在。ララクが元仲間から得たスキルは、被った場合その数によって【Ⅱ】や【Ⅴ】の数値によって性能が上がる。
先ほどから連発しているアクションスキルが、今回の戦いのキーカードになるとララクは考えていた。
「【ウィンドナックル】!」
回し蹴りを防がれるやいなや、ララクは右腕での攻撃に切り替える。彼がスキルを宣言すると、か細いその腕に乱流する突風が付与される。
この乱風によって、破壊力だけではなくパンチのスピードも格段に跳ね上がる。
「っう、うわっと!」
魔人ハライノスは、【ディスキル】で風を封殺しながら、たどたどしい足取りで後ろに下がっていく。
スキルが中断されたララクの拳は、ハライノス顔面前で寸止めのような形となって止まった。ララクの腕はリーチが短く、寸前で届かなかったのだ。
「まだだ! 【侵食するダークナックル】!」
ララクは停止した状態で、さらなる殴打系のスキルを発動した。これは闇使いシットニンが使用している闇系統に属するスキル。
ヒットさせた相手に闇が入り込み、防御力を下げてしまうスキルだ。触れた瞬間に効果は発動し、そこに強打を叩き込むので、闇と近接攻撃は相性が良い。
「っげ!」
魔人ハライノスの眼前にある小さな拳が、燃えるように漂う闇を纏いだす。すぐに【ディスキル】を発動しつつ、再び後ろへと下がろうとする。
が、さすがにこの距離では、【ディスキル】発動よりも【侵食するダークナックル】のほうが先に発動し終えてしまうと覚悟を決めた。
だが、ハライノスの危険予知は外れ、ララクの攻撃をまたも直前で回避することに成功した。
「!? っこ、これは!?」
ララクはダークナックル発動時に前へ進もうと強く踏み込んだ。しかし、それに反発するように、足元からグッと何かに引っ張られた。
これにより、ナックルとは逆方向に力が伝わり、スキルの威力がダウン。それが、ハライノスの回避成功につながったのだ。
これを発動したのは、近くの樹林に留まっていた闇使いシットニンだった。
だが、これに一番驚いていたのは、彼自身だった。
「やっば、つい癖で」
彼は反射的にハライノスを助けるように、闇スキルを発動してしまったのだ。あのままララクの闇系統の殴打スキルがヒットしていれば、ララクの勝利にグッと近づく。そうなれば、シットニンも封印されている自分のスキルを取り戻せたはずだ。
シットニンが本能的に使用してしまったスキルの名は【潜伏する闇】。
今までの闇のように射出するのではなく、主に地面などに設置して発動するトラップ型のスキルだ。
設置した場所に人などが入り込むと、すぐさま効果を発揮。円型の特殊な文様が施された魔法陣が展開され、そこから子供ぐらいの細長い腕が伸びてくる。全く可愛らしさはなく、闇で作られた邪悪な腕だ。
今回の場合、その腕の標的はララクの脚だった。蔓のように複雑に絡み合い、ララクの右足を強く引っ張っていく。まるで地獄に轢きずりこむかのような恐怖的瞬間だった。
この闇は他と違い、触れた瞬間にデバフ(不利的効果)を与えることはない。その場に強制的に留まらせる、という行為そのものが相手を阻害する効果、というコンセプトなのだろう。
ここから、逃げられない状態で他の闇スキルでさらに妨害していくのが恐ろしいコンボだ。
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