37 / 54
第37話
しおりを挟む
「ふぅ、やるぞ。気張れ、ボク」
ララクは深く息を吐いた。そして、姿勢を低くすると、大樹林から飛び降りる。その際、少し前に飛んで、滑空するような態勢で落ちていく。
「おいシットニン、頼むぞ」
「へいへ~い」
適当に返事をしたシットニンは、再び小型の闇を発射する【拘束する闇】を連続発動する。
ララクが飛び立った先に背の高い木はなく、足場にするところはない。
闇使いシットニンは、(なにか策はあるんだろう)と予想しながら、とりあえず攻撃魔法を発動した。
それを見たララクは、ここである確信をする。
(やっぱり、広範囲攻撃をしてこない。
つまり、あいつのスキルは、視認している相手にしか使えない)
ララクは闇スキルをいくつか所持している。その中で一番メジャーなのが、広範囲に闇を展開する【自由を奪う闇】だ。触れただけで全体的な機動力が下がってしまうかなり厄介なスキル。
この開けた場所で最適とも言えるスキルだが、シットニンはそれを発動しなかった。
その理由は、ハライノスの【ディスキル】にあると考えたのだ。
【ディスキル】は、対象を明確に視認しつつ、ある程度封印するスキルの事を知らなければならない。
空中から飛び降りたララクの元に、【拘束する闇】が次々と迫り来る。
「っふ、っと……」
ララクはその闇を、ふわりと体を半回転しながら見事に避けていく。体が空に放り出されているとは思えない動きだった。
そこで、ハライノスは違和感の正体に気が付く。
「あいつ!【ディスキル】!」
魔人ハライノスは即座に封印スキルをララクへと使用した。ララクが使用したスキルを正確には分からなかったが、それでも【ディスキル】発動条件は満たしていた。
「きたな」
ララクは計算通りだ、と眉を細める。
彼の体はさっきよりも勢いよく地面に向かって落下していく。
ララクに抱えられていたスキルは【空中浮遊】。これにより、空中にいながら闇を的確に避けることが可能だったのだ。
「これで避けられないだろっ!」
大きくニヤつくハライノス。彼はこれで、シットニンの放った闇がララクに炸裂すると踏んだのだ。自分が発動した攻撃ではないが、まるで自らのスキルのような発言をしていた。
「【伸縮自在】っ!」
ララクは自分の体が重力に引っ張られる感覚を取り戻すと、すぐに次の手を打つ。それは、ゼマのクリスタルロッドに付与もされているスキルだった。武器だけではなく、生物も対象にとって使用することが出来る。
体を自由に変化させることが出来るようになったララクは、右腕を前方に伸ばす。そしてその手で、ハライノスたちにかなり近い樹木を掴んだ。
そして【伸縮自在】を解除すると、その掴んだ木の方へとするすると移動していく。
「あらま。【拘束する闇】」
闇使いシットニンは、追加で闇スキルを発動した。狙うはもちろん、木を掴んでいるララクの右手だ。これが当たれば、一定時間、その手を動かすことは困難になる。
「っふ、っと」
闇使いが瞬時に動くことを、ララクは予想していた。やる気がなさそうで、しっかりと仕事はこなす。そんなシットニンの冒険者としての腕を見込んでいたのだ。
ララクは右腕を後ろへと強く引っ張り、せっかく掴んだ樹木から手を放してしまう。その間にララクの腕の長さは元に戻る。それだけではなく、なんの支えもなくなったので、再び空中へ放り出されている状態となった。
だが、ここからが正念場だった。
「【シールドクリエイト】」
ララクはこのタイミングで盾を作り出した。この瞬間にも、シットニンの闇がいくつか狙いに来ている。が、ここで防御しても、攻撃がヒットする前に彼の体は落下する。標高はかなり高いので、うまく着地しなければ大ダメージを受ける危険性がある。
なので、彼がこの盾を作り出した理由は、守りのためじゃなかった。
その証拠に、生成した盾は、ただ盾の形をした木造の粗悪品だった。
そしてその盾を出現させた位置は、手元ではなく、自分の足元だった。
「【ハイジャンプ】!」
そしてさらに、新たなスキルを発動する。か細い少年の脚に魔力が集まり、跳躍力を底上げしていく。
その脚を使い、【シールドクリエイト】で作り出した木の盾を強く蹴りとばす。彼がこれを作り出した目的は、足場にするためだったのだ。
ララクはハライノスに向かって、垂直に跳んでいく。【ジャンプアップ】+【ハイジャンプ】の2つの跳躍力関連のスキルによって、一時的に元の力以上の出力を出していた。
風を味方につけながら、真っ向からハライノスに向かって飛来する。
ここで追い打ちをかけるように、追加で攻撃スキルを発動していく。
ララクは深く息を吐いた。そして、姿勢を低くすると、大樹林から飛び降りる。その際、少し前に飛んで、滑空するような態勢で落ちていく。
「おいシットニン、頼むぞ」
「へいへ~い」
適当に返事をしたシットニンは、再び小型の闇を発射する【拘束する闇】を連続発動する。
ララクが飛び立った先に背の高い木はなく、足場にするところはない。
闇使いシットニンは、(なにか策はあるんだろう)と予想しながら、とりあえず攻撃魔法を発動した。
それを見たララクは、ここである確信をする。
(やっぱり、広範囲攻撃をしてこない。
つまり、あいつのスキルは、視認している相手にしか使えない)
ララクは闇スキルをいくつか所持している。その中で一番メジャーなのが、広範囲に闇を展開する【自由を奪う闇】だ。触れただけで全体的な機動力が下がってしまうかなり厄介なスキル。
この開けた場所で最適とも言えるスキルだが、シットニンはそれを発動しなかった。
その理由は、ハライノスの【ディスキル】にあると考えたのだ。
【ディスキル】は、対象を明確に視認しつつ、ある程度封印するスキルの事を知らなければならない。
空中から飛び降りたララクの元に、【拘束する闇】が次々と迫り来る。
「っふ、っと……」
ララクはその闇を、ふわりと体を半回転しながら見事に避けていく。体が空に放り出されているとは思えない動きだった。
そこで、ハライノスは違和感の正体に気が付く。
「あいつ!【ディスキル】!」
魔人ハライノスは即座に封印スキルをララクへと使用した。ララクが使用したスキルを正確には分からなかったが、それでも【ディスキル】発動条件は満たしていた。
「きたな」
ララクは計算通りだ、と眉を細める。
彼の体はさっきよりも勢いよく地面に向かって落下していく。
ララクに抱えられていたスキルは【空中浮遊】。これにより、空中にいながら闇を的確に避けることが可能だったのだ。
「これで避けられないだろっ!」
大きくニヤつくハライノス。彼はこれで、シットニンの放った闇がララクに炸裂すると踏んだのだ。自分が発動した攻撃ではないが、まるで自らのスキルのような発言をしていた。
「【伸縮自在】っ!」
ララクは自分の体が重力に引っ張られる感覚を取り戻すと、すぐに次の手を打つ。それは、ゼマのクリスタルロッドに付与もされているスキルだった。武器だけではなく、生物も対象にとって使用することが出来る。
体を自由に変化させることが出来るようになったララクは、右腕を前方に伸ばす。そしてその手で、ハライノスたちにかなり近い樹木を掴んだ。
そして【伸縮自在】を解除すると、その掴んだ木の方へとするすると移動していく。
「あらま。【拘束する闇】」
闇使いシットニンは、追加で闇スキルを発動した。狙うはもちろん、木を掴んでいるララクの右手だ。これが当たれば、一定時間、その手を動かすことは困難になる。
「っふ、っと」
闇使いが瞬時に動くことを、ララクは予想していた。やる気がなさそうで、しっかりと仕事はこなす。そんなシットニンの冒険者としての腕を見込んでいたのだ。
ララクは右腕を後ろへと強く引っ張り、せっかく掴んだ樹木から手を放してしまう。その間にララクの腕の長さは元に戻る。それだけではなく、なんの支えもなくなったので、再び空中へ放り出されている状態となった。
だが、ここからが正念場だった。
「【シールドクリエイト】」
ララクはこのタイミングで盾を作り出した。この瞬間にも、シットニンの闇がいくつか狙いに来ている。が、ここで防御しても、攻撃がヒットする前に彼の体は落下する。標高はかなり高いので、うまく着地しなければ大ダメージを受ける危険性がある。
なので、彼がこの盾を作り出した理由は、守りのためじゃなかった。
その証拠に、生成した盾は、ただ盾の形をした木造の粗悪品だった。
そしてその盾を出現させた位置は、手元ではなく、自分の足元だった。
「【ハイジャンプ】!」
そしてさらに、新たなスキルを発動する。か細い少年の脚に魔力が集まり、跳躍力を底上げしていく。
その脚を使い、【シールドクリエイト】で作り出した木の盾を強く蹴りとばす。彼がこれを作り出した目的は、足場にするためだったのだ。
ララクはハライノスに向かって、垂直に跳んでいく。【ジャンプアップ】+【ハイジャンプ】の2つの跳躍力関連のスキルによって、一時的に元の力以上の出力を出していた。
風を味方につけながら、真っ向からハライノスに向かって飛来する。
ここで追い打ちをかけるように、追加で攻撃スキルを発動していく。
7
お気に入りに追加
292
あなたにおすすめの小説
転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! 〜物作りチートで楽々異世界生活〜
かむら
ファンタジー
剣持匠真は生来の不幸体質により、地球で命を落としてしまった。
その後、その不幸体質が神様によるミスだったことを告げられ、それの詫びも含めて匠真は異世界へと転生することとなった。
思ったよりも有能な能力ももらい、様々な人と出会い、匠真は今度こそ幸せになるために異世界での暮らしを始めるのであった。
☆ゆるゆると話が進んでいきます。
主人公サイドの登場人物が死んだりなどの大きなシリアス展開はないのでご安心を。
※感想などの応援はいつでもウェルカムです!
いいねやエール機能での応援もめちゃくちゃ助かります!
逆に否定的な意見などはわざわざ送ったりするのは控えてください。
誤字報告もなるべくやさしーく教えてくださると助かります!
#80くらいまでは執筆済みなので、その辺りまでは毎日投稿。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~
夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。
全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。
花粉症だった空は歓喜。
しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。
(アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。
モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。
命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。
スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。
*作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。
*小説家になろう・カクヨムでも公開しております。
異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む
大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。
一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる