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第15話
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「怪しさ満点じゃん。
話がしたいなら、降りて来いよ、薄気味悪男」
盾殴りのナゲキスは、木の上にいるその男にメンチを切る。イラついているだけではなく、しっかりと腰を落とし、警戒心を高めていた。
「っふ、礼儀は大事か~。よっしっ」
うすら笑いを常に浮かべている魔人の男は、木の枝から降り立とうとした。
その瞬間、爆破精霊・マノワルが戦闘が始まると勘違いをしてしまった。
「っば、ばくはーーーー!」
溜まりに溜まった爆破欲を放出するべく、主人アシトンの命令もないのに、マノワルは魔人の男たちに向かって急襲する。
マノワルの体は煮えたぎり少しずつ膨張し始める。マノワルは自分自身が爆発することで攻撃スキルを持っている。普通、生物がそんなことしたらただの自爆だが、不確かな肉体を持っている精霊であれば、ノーリスクである。
「ちょ、ちょっとマノワル!」
アシトンはとっさに動きを制御しようとする。いくら怪しいからといって、話し合う前に攻撃すればこちらの方が加害者となる。
アシトンが精霊マノワルの力を抑えつけようとする前に、怪しげな男の方がスキルを発動する。
「礼儀ねぇのはそっちじゃねぇか。
大人しくしてろ、精霊ちゃん。
【ディスキル】っ!」
魔人の男は、手のひらを前に向けてスキルを宣言する。その方向は、向かってくるマノワルではなく、その使役者・アシトンだった。
「っえ、なに??」
アシトンの体を、紺色の亡霊のような魔力の光が漂う。
しかし、彼女の体に特に異常はなかった。頭もはっきりしているし、体の自由も効く。
なにか相手に不利益を与えるスキルを喰らったと感じたアシトンだが、効果に検討がつかなかった。
しかし、確実に男が放った【ディスキル】は発動し、その効果を発揮した。
「っば、ばく……」
異常が起きたのは、暴れ狂う精霊マノワルだった。
今にも爆発しそうなマノワルが、一瞬で跡形もなく消えてしまった。
それを見た魔人の男は、さらに不敵に笑う。
「マノワル!? どういうこと?」
精霊を失ったアシトンは焦りを見せ始める。こんなことは初めてだったからである。アシトンが強制的にマノワルを消すことはあっても、マノワルの方から自発的に消えたことはない。あるとすれば、アシトンの魔力が切れて、【精霊召喚・爆破】の効果がなくなるといった状況ぐらいである。
「(なんだあのスキルは) アシトン! もう一回スキル使って」
盾殴りのナゲキスは、マノワルが消失したことを異常事態だと捉えていた。瞬間的に姿を消したあの現象は、なにかの攻撃を喰らって崩壊した、というのは全く違うものだと考えていた。魔人の男が放った【ディスキル】というスキル。
ナゲキスは聞いたこともなかったが、その名前からある程度予想することは可能である。
「は、はい。【精霊召喚・爆破】! ……ダメです、マノワルが出てこない!」
アシトンは気色悪い感覚に襲われていた。魔力も十分にある、精霊マノワルも自分の中に眠っている感覚はある。どうやら消えた後は、アシトンの体に戻ったようである。
しかし、それなのにスキルが発動できない。
スキルの明確なイメージが出来なかったら、心理的な問題でスキルが上手く発動しないことは極稀だがある。スキルは半自動で発動するもので、あとの半分は使用者のイメージや動きで補うのが通常である。
「そりゃそうだろうよ。
俺の【ディスキル】は、スキルを使えなくする。
悪質だが、いい力だろ?」
【ディスキル】詳細
効果……対象が持つスキルを使用不可能にする。
この世界の戦闘は、ほぼスキルに頼っている。攻撃する時だけではなく、パッシブにより基本性能も向上する。
しかしそれが使えなくなってしまえば、いくらレベルが高くとも、決定打の足りない性能になってしまう。
それを実現させるのが、この【ディスキル】なのである。
話がしたいなら、降りて来いよ、薄気味悪男」
盾殴りのナゲキスは、木の上にいるその男にメンチを切る。イラついているだけではなく、しっかりと腰を落とし、警戒心を高めていた。
「っふ、礼儀は大事か~。よっしっ」
うすら笑いを常に浮かべている魔人の男は、木の枝から降り立とうとした。
その瞬間、爆破精霊・マノワルが戦闘が始まると勘違いをしてしまった。
「っば、ばくはーーーー!」
溜まりに溜まった爆破欲を放出するべく、主人アシトンの命令もないのに、マノワルは魔人の男たちに向かって急襲する。
マノワルの体は煮えたぎり少しずつ膨張し始める。マノワルは自分自身が爆発することで攻撃スキルを持っている。普通、生物がそんなことしたらただの自爆だが、不確かな肉体を持っている精霊であれば、ノーリスクである。
「ちょ、ちょっとマノワル!」
アシトンはとっさに動きを制御しようとする。いくら怪しいからといって、話し合う前に攻撃すればこちらの方が加害者となる。
アシトンが精霊マノワルの力を抑えつけようとする前に、怪しげな男の方がスキルを発動する。
「礼儀ねぇのはそっちじゃねぇか。
大人しくしてろ、精霊ちゃん。
【ディスキル】っ!」
魔人の男は、手のひらを前に向けてスキルを宣言する。その方向は、向かってくるマノワルではなく、その使役者・アシトンだった。
「っえ、なに??」
アシトンの体を、紺色の亡霊のような魔力の光が漂う。
しかし、彼女の体に特に異常はなかった。頭もはっきりしているし、体の自由も効く。
なにか相手に不利益を与えるスキルを喰らったと感じたアシトンだが、効果に検討がつかなかった。
しかし、確実に男が放った【ディスキル】は発動し、その効果を発揮した。
「っば、ばく……」
異常が起きたのは、暴れ狂う精霊マノワルだった。
今にも爆発しそうなマノワルが、一瞬で跡形もなく消えてしまった。
それを見た魔人の男は、さらに不敵に笑う。
「マノワル!? どういうこと?」
精霊を失ったアシトンは焦りを見せ始める。こんなことは初めてだったからである。アシトンが強制的にマノワルを消すことはあっても、マノワルの方から自発的に消えたことはない。あるとすれば、アシトンの魔力が切れて、【精霊召喚・爆破】の効果がなくなるといった状況ぐらいである。
「(なんだあのスキルは) アシトン! もう一回スキル使って」
盾殴りのナゲキスは、マノワルが消失したことを異常事態だと捉えていた。瞬間的に姿を消したあの現象は、なにかの攻撃を喰らって崩壊した、というのは全く違うものだと考えていた。魔人の男が放った【ディスキル】というスキル。
ナゲキスは聞いたこともなかったが、その名前からある程度予想することは可能である。
「は、はい。【精霊召喚・爆破】! ……ダメです、マノワルが出てこない!」
アシトンは気色悪い感覚に襲われていた。魔力も十分にある、精霊マノワルも自分の中に眠っている感覚はある。どうやら消えた後は、アシトンの体に戻ったようである。
しかし、それなのにスキルが発動できない。
スキルの明確なイメージが出来なかったら、心理的な問題でスキルが上手く発動しないことは極稀だがある。スキルは半自動で発動するもので、あとの半分は使用者のイメージや動きで補うのが通常である。
「そりゃそうだろうよ。
俺の【ディスキル】は、スキルを使えなくする。
悪質だが、いい力だろ?」
【ディスキル】詳細
効果……対象が持つスキルを使用不可能にする。
この世界の戦闘は、ほぼスキルに頼っている。攻撃する時だけではなく、パッシブにより基本性能も向上する。
しかしそれが使えなくなってしまえば、いくらレベルが高くとも、決定打の足りない性能になってしまう。
それを実現させるのが、この【ディスキル】なのである。
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