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第14話
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クインクウィからデュペルに変身した地点から、さほど歩くことはなく、目的の大池へと辿り着いた。
池に到着すると、そこにはチームAの面々が想像もしていなかった光景が広がっていた。
「っえ、カエルの、死体?」
自称副リーダーのデュペルは、異様な現場の状況に言葉を詰まらせていた。
大池の周辺には、いくつものゲゲガエルの死体が無造作に転がっていた。
あおむけの状態で死んでいる個体もおり、死亡状態はまちまちである。
しかし、1つだけ共通点があった。
「これって、泥ですよね?」
アシトンが足元にあるカエルの死体を見ながら分析していた。彼女はしゃがみ込み、その泥に触れた。カエルにも泥に対しても、一切躊躇することはなかった。
「い、いたっ!」
泥に触れた瞬間、ひどく痺れるような痛みがアシトンを襲う。泥の中に刃物が隠されていたわけでも、カエルが生きていて攻撃したわけでもない。
泥に触れてダメージを受けた。
それはつまり、これが自然で出来たものではなく、スキルによって何者かによって生み出されたものということである。
「アシトン、大丈夫?」
ナゲキスが心配する。
「はい。突然の事で、大げさに声が出てしまいました」
確かに激痛ではあったが、耐えられないほどではなかった。彼女の体は、レベルアップによる防御力上昇により、ある程度は鍛えられているからである。
「そっか。それにしても、この泥はひどいね。そこら中、汚れてんじゃん」
ナゲキスは、周囲を見渡し、カエルだけではなく、地面、木々、そして池にまで泥の侵食がなされていることを確認する。
「……討伐対象のカエルがすでに死亡。でも、ここに来るのは、チームAの俺たちだけだよね?
もしかして、他に参加パーティーいた?」
デュペルは親指を軽くかみながら悩み込む。スキルによって交代し、いざバトルだ、とやる気を出していた矢先の奇怪な出来事だったので、物凄く困惑していた。
「ギルドマスターの方は、最初、私たちとあと1つパーティーが参加する予定、って言ってた気がします。そこに、ララクさん、たちのパーティーが追加されました。
だから、他に参加者がいるとは思えません。いるとしたら、村の人とかですかね?」
記憶力が良いのか、彼女は今日話した内容を、だいたい記憶しているようだった。その横で浮遊している爆発の精霊・マノワルは、口を開けながらただ漂っていた。マノワルもアシトンの中で潜みながら会話を効いているはずなのだが、全く理解していなかった。する気もないのだろう。
「けどさぁ、村の人たちじゃ対処できなかったから、私たち冒険者に依頼したわけでしょ? 普通そうなったら、自分たちは手を引かない?」
盾殴りのナゲキスはそれなりに冒険者としての歴が長いので、経験に基づき意見を述べた。
「うーん、考えても分かんないなぁ! とりあえずさ、もう少し先進んでみようよ。ほら、原因はどうあれ、目的は達成されてるわけだし」
デュペルはこれ以上知恵を絞ったら頭が沸騰しそうだったので、思考を放棄した。しっかりとリーダーとして行動しているクインクウィとは真逆に近い性格と言える。
「一理ありますね。この池周辺は、カエルの異常発生が起きています。クエストには、その原因はまだ解明できていないと。
もしかすると、この泥は、それと関わりがあるのかもしれません」
「先に進めば、原因が掴めるかも、ってことか」
アシトンとナゲキスは、デュペルの指示通り行動することに決めた。パーティーの指針を決めるという点では、リーダーらしい働きが出来ていると言えるだろう。それが例え、直感的なものだとしても。
デュペルを先頭に、チームAのメンツはぬかるんだ池の側を歩いていく。精霊マノワルは、つまらなそうにしながら、主人アシトンの後ろにゆっくりとついていく。
予め渡されていた地図には、この先にもいくつか池がある。近くにあるもう1つの池へ行こうと、この場を去ろうとした時だった。
デュペル率いるチームAに、声をかける者が現れた。その声は、彼ら全員が聞いたことのない人物のものだった。
「おーい、そこの冒険者さんたちー、ちょっとお話いいかい?」
その声は、少ししゃがれた若い男のものだった。それほど遠くない場所から、デュペルたちに問いかけてくる。
「ん? おい、なんかあそこに変なのいるよ」
盾殴りのナゲキスが、声の方を向くと、すぐにその存在に気がついた。上斜め右方向、そこは樹木の枝があるところである。
その上に、3人の冒険者と思わしき格好をした者たちが立っていた。
一番前にいるのが、声を出した怪しげな男だった。
「変なのって、まぁ、そりゃそうか。
俺たちはふつーうの冒険者パーティーだぞ」
ケタっと笑う男。彼の格好は、オーソドックスな魔法使いの格好だ。色合いは違うが、アシトンの格好に似ている。
長帽子を被っており、その左右の脇から細長い角が飛び出ている。つまり彼は、魔人、またはその血を引いた種族ということになる。
池に到着すると、そこにはチームAの面々が想像もしていなかった光景が広がっていた。
「っえ、カエルの、死体?」
自称副リーダーのデュペルは、異様な現場の状況に言葉を詰まらせていた。
大池の周辺には、いくつものゲゲガエルの死体が無造作に転がっていた。
あおむけの状態で死んでいる個体もおり、死亡状態はまちまちである。
しかし、1つだけ共通点があった。
「これって、泥ですよね?」
アシトンが足元にあるカエルの死体を見ながら分析していた。彼女はしゃがみ込み、その泥に触れた。カエルにも泥に対しても、一切躊躇することはなかった。
「い、いたっ!」
泥に触れた瞬間、ひどく痺れるような痛みがアシトンを襲う。泥の中に刃物が隠されていたわけでも、カエルが生きていて攻撃したわけでもない。
泥に触れてダメージを受けた。
それはつまり、これが自然で出来たものではなく、スキルによって何者かによって生み出されたものということである。
「アシトン、大丈夫?」
ナゲキスが心配する。
「はい。突然の事で、大げさに声が出てしまいました」
確かに激痛ではあったが、耐えられないほどではなかった。彼女の体は、レベルアップによる防御力上昇により、ある程度は鍛えられているからである。
「そっか。それにしても、この泥はひどいね。そこら中、汚れてんじゃん」
ナゲキスは、周囲を見渡し、カエルだけではなく、地面、木々、そして池にまで泥の侵食がなされていることを確認する。
「……討伐対象のカエルがすでに死亡。でも、ここに来るのは、チームAの俺たちだけだよね?
もしかして、他に参加パーティーいた?」
デュペルは親指を軽くかみながら悩み込む。スキルによって交代し、いざバトルだ、とやる気を出していた矢先の奇怪な出来事だったので、物凄く困惑していた。
「ギルドマスターの方は、最初、私たちとあと1つパーティーが参加する予定、って言ってた気がします。そこに、ララクさん、たちのパーティーが追加されました。
だから、他に参加者がいるとは思えません。いるとしたら、村の人とかですかね?」
記憶力が良いのか、彼女は今日話した内容を、だいたい記憶しているようだった。その横で浮遊している爆発の精霊・マノワルは、口を開けながらただ漂っていた。マノワルもアシトンの中で潜みながら会話を効いているはずなのだが、全く理解していなかった。する気もないのだろう。
「けどさぁ、村の人たちじゃ対処できなかったから、私たち冒険者に依頼したわけでしょ? 普通そうなったら、自分たちは手を引かない?」
盾殴りのナゲキスはそれなりに冒険者としての歴が長いので、経験に基づき意見を述べた。
「うーん、考えても分かんないなぁ! とりあえずさ、もう少し先進んでみようよ。ほら、原因はどうあれ、目的は達成されてるわけだし」
デュペルはこれ以上知恵を絞ったら頭が沸騰しそうだったので、思考を放棄した。しっかりとリーダーとして行動しているクインクウィとは真逆に近い性格と言える。
「一理ありますね。この池周辺は、カエルの異常発生が起きています。クエストには、その原因はまだ解明できていないと。
もしかすると、この泥は、それと関わりがあるのかもしれません」
「先に進めば、原因が掴めるかも、ってことか」
アシトンとナゲキスは、デュペルの指示通り行動することに決めた。パーティーの指針を決めるという点では、リーダーらしい働きが出来ていると言えるだろう。それが例え、直感的なものだとしても。
デュペルを先頭に、チームAのメンツはぬかるんだ池の側を歩いていく。精霊マノワルは、つまらなそうにしながら、主人アシトンの後ろにゆっくりとついていく。
予め渡されていた地図には、この先にもいくつか池がある。近くにあるもう1つの池へ行こうと、この場を去ろうとした時だった。
デュペル率いるチームAに、声をかける者が現れた。その声は、彼ら全員が聞いたことのない人物のものだった。
「おーい、そこの冒険者さんたちー、ちょっとお話いいかい?」
その声は、少ししゃがれた若い男のものだった。それほど遠くない場所から、デュペルたちに問いかけてくる。
「ん? おい、なんかあそこに変なのいるよ」
盾殴りのナゲキスが、声の方を向くと、すぐにその存在に気がついた。上斜め右方向、そこは樹木の枝があるところである。
その上に、3人の冒険者と思わしき格好をした者たちが立っていた。
一番前にいるのが、声を出した怪しげな男だった。
「変なのって、まぁ、そりゃそうか。
俺たちはふつーうの冒険者パーティーだぞ」
ケタっと笑う男。彼の格好は、オーソドックスな魔法使いの格好だ。色合いは違うが、アシトンの格好に似ている。
長帽子を被っており、その左右の脇から細長い角が飛び出ている。つまり彼は、魔人、またはその血を引いた種族ということになる。
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