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第7話
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「君は……ラ、ララク?」
最初にララクの存在を思い出したのは、戦闘にいた女性戦士 クインクウィだった。紫の髪と溌剌とした風貌が特徴的な冒険者だ。彼女が冒険者パーティー風心雷心のリーダーである。
「覚えていてくれたんですね。嬉しいです」
ララクは自分の存在など、とうの昔に忘れているのではないかと思い込んでいた。加入期間も短く、役にたったどころか、足手まといだったからである。
それにララクが所属していたのは1年近く前の事である。
「ん? おぉ、懐かしい顔じゃないか。俺も覚えているよ。まだ、冒険者を続けていたんだな」
次に声をかけたのは、体格のいい初老の男性 ねんごろのトーマガイだった。彼もかすかだが、ララクの顔を覚えていた。が、実は瞬時に名前を思い出すことは出来なかった。なのでクインクウィが名前を出してくれてほっとしていた。
「ララク~? うわ~、思い出した。成長期、こなかったんだね」
いきなり嫌味を言ったのは、盾殴りのナゲキスだった。意外にも彼女は、ララクの事をよく覚えていた。でなければ、具体的な罵倒のワードが出てこないだろう。
「ラ、ララクくん! こちらの女性は??」
かつての仲間 氷刃のシェントルマは、ララクとの再会よりも、隣にいるゼマに興味津々だった。
透き通った水色の髪から飛び出した犬耳をピーンと伸ばしていた。犬人のような獣人は、耳や尻尾に感情が出てしまうことが多い。
どうやら彼は今も婚活中なようで、ビビッときた女性には積極的に行くようにしているのである。なので、ひとめぼれ、というほど確証めいたものではない。
「っあ、実はボク新しくパーティーを作りまして。そこに加入してくれたのが、ゼマさんです」
軽くゼマに対して手を向けて、ララクは彼女をかつての仲間に紹介した。
それを聞いて、すぐに反応したのは、煽り癖のある盾殴りのナゲキスだった。
「ララクがパーティー? あ~、な~るほどね。どうせ、また追放され続けたんでしょ。んで、仕方なく自分で作ることにしたんだ。
良かったじゃん、入ってくれる人がいて」
悪気が一切ない、といったカラッとした態度で、ナゲキスは自分の予想をすらすらと述べた。考える前に喋りだしてしまうタイプなのである。
「まぁ、そんなところです」
ララクは久々のナゲキスの悪態に多少たじろぐが、否定はしなかった。ほぼ間違っていなかったからである。風心雷心を去った後、いくつものパーティーを追放され、その回数が100回を超えた。
その後、自分に回復スキルが乏しいことを知り、ヒーラーを募集したのである。そこで偶然現れたのが、ゼマだったのである。
「すまんなララク。ナゲキスの言葉は聞き流してくれ。
そうだ、こっちも新しい仲間が増えたんだ。
アシトン、前に来てくれるかい」
風心雷心のリーダー クインクウィは、後ろの方へと声をかける。
すると、180㎝は超える巨体のトーマガイの後ろから、16歳ぐらいの少女が前に出てきた。
「どうも、アシトンです。あなたのことは、一度だけ聞いたことがあります」
彼女はオレンジ色の髪をしており、その上に魔法使いが愛用するうえが尖がった水色の長帽子を被っていた。着ている服も鮮やかな水色のローブだった。顔は幼いが、見た目は立派な魔法使いだった。
「ララクです。よろしくね」
ララクは基本敬語だが、同年代、あるいは年下の場合はため口で話すことが多い。見た目年齢的には、少女アシトンと同じぐらいか、それよりもララクのほうが若く見える。
一通り挨拶を終えた冒険者パーティー ハンドレッドと風心雷心の面々。
それを察したギルドのマスターが、受付の方から声をかけてきた。
「もしかして、あなたたちが、風心雷心さんかい?」
どうやらギルドマスターは、彼らがここに来ることを事前に知っていたようだ。
「はい。クエスト「カエル掃討作戦」に参加することになった風心雷心です。私がリーダーのクインクウィです」
代表してクインクウィが丁寧に説明した。
「首都からわざわざありがとうね」
ギルドマスターは笑顔で会釈した。
そのやりとりを聞いたララクがクインクウィに話しかける。
「クエストをしに来たんですね。でも、皆さんが首都から来たってことは、結構難易度の高いクエストなんですか?」
ララクはギルドマスターの発言から、風心雷心が首都を拠点として活動していると思った。ララクが追放されたとき、クインクウィが宣言した通りだからである。
首都のギルドには、地方のギルドからクエストが流れてくることがある。地方は常に人手不足だからである。
なので彼らがここに来るのはおかしなことではないのだが、簡単にクリアできるようなクエストならば、国境近くのこの村に足を運ぼうとは思わない。と、ララクは予想したのだ。
「強力なモンスターが相手、というよりは、モンスターが異常発生しているみたいなんだ。っあ、これを読んだ方が早いな」
クインクィは旅の鞄から、今回のクエストの内容が書かれた依頼書を取り出し、ララクに手渡した。
「カエル掃討作戦」
国境近くのハスビエということろのギルドマスターです。最近、村の周辺にカエル型のモンスターが大量発生しています。原因を追究するために池を調査しようと思っても、カエルに足止めされてしまいます。
このままでは村だけではなく、国境の大橋を占拠される危険もあります。
出来るだけ人手が欲しいので、今回は合同クエストとさせていただきます。
どうか、お願いいたします。
依頼主 ハスビエのギルドマスター
ギルドマスターが直々に書いたということもあり、簡潔かつ詳細にクエスト内容が記されていた。
モンスターの大量発生は、季節や繁殖期などの関係でたまに起きる現象だ。
ララクが気になったのは、合同クエストというワードだった。
「合同クエストということは、他にもパーティーが参加するんですか?」
ララクは振り返り、ギルドマスターに直接確認をした。
合同クエストは文字通り、複数の冒険者パーティーで行われる大規模クエストである。
クエスト報酬などの分配などで揉めるケースもあるので、あまり依頼者側から指定されることは少ない。
それだけ、危機的状況ということなのだろう。
「そうなのよ。あともう1つパーティーが来る予定なんだけど。
もうすぐ来るんじゃないかしら」
ギルドマスターがそう言った直後、再び扉の外から足音が聞こえ始める。
どうやら、そのもう1つのパーティーがやってきたようだ。
風心雷心とハンドレッドは、入りの邪魔になると少し後ろに下がる。
そして、ギルドの扉が、勢いよく開けられた。
最初にララクの存在を思い出したのは、戦闘にいた女性戦士 クインクウィだった。紫の髪と溌剌とした風貌が特徴的な冒険者だ。彼女が冒険者パーティー風心雷心のリーダーである。
「覚えていてくれたんですね。嬉しいです」
ララクは自分の存在など、とうの昔に忘れているのではないかと思い込んでいた。加入期間も短く、役にたったどころか、足手まといだったからである。
それにララクが所属していたのは1年近く前の事である。
「ん? おぉ、懐かしい顔じゃないか。俺も覚えているよ。まだ、冒険者を続けていたんだな」
次に声をかけたのは、体格のいい初老の男性 ねんごろのトーマガイだった。彼もかすかだが、ララクの顔を覚えていた。が、実は瞬時に名前を思い出すことは出来なかった。なのでクインクウィが名前を出してくれてほっとしていた。
「ララク~? うわ~、思い出した。成長期、こなかったんだね」
いきなり嫌味を言ったのは、盾殴りのナゲキスだった。意外にも彼女は、ララクの事をよく覚えていた。でなければ、具体的な罵倒のワードが出てこないだろう。
「ラ、ララクくん! こちらの女性は??」
かつての仲間 氷刃のシェントルマは、ララクとの再会よりも、隣にいるゼマに興味津々だった。
透き通った水色の髪から飛び出した犬耳をピーンと伸ばしていた。犬人のような獣人は、耳や尻尾に感情が出てしまうことが多い。
どうやら彼は今も婚活中なようで、ビビッときた女性には積極的に行くようにしているのである。なので、ひとめぼれ、というほど確証めいたものではない。
「っあ、実はボク新しくパーティーを作りまして。そこに加入してくれたのが、ゼマさんです」
軽くゼマに対して手を向けて、ララクは彼女をかつての仲間に紹介した。
それを聞いて、すぐに反応したのは、煽り癖のある盾殴りのナゲキスだった。
「ララクがパーティー? あ~、な~るほどね。どうせ、また追放され続けたんでしょ。んで、仕方なく自分で作ることにしたんだ。
良かったじゃん、入ってくれる人がいて」
悪気が一切ない、といったカラッとした態度で、ナゲキスは自分の予想をすらすらと述べた。考える前に喋りだしてしまうタイプなのである。
「まぁ、そんなところです」
ララクは久々のナゲキスの悪態に多少たじろぐが、否定はしなかった。ほぼ間違っていなかったからである。風心雷心を去った後、いくつものパーティーを追放され、その回数が100回を超えた。
その後、自分に回復スキルが乏しいことを知り、ヒーラーを募集したのである。そこで偶然現れたのが、ゼマだったのである。
「すまんなララク。ナゲキスの言葉は聞き流してくれ。
そうだ、こっちも新しい仲間が増えたんだ。
アシトン、前に来てくれるかい」
風心雷心のリーダー クインクウィは、後ろの方へと声をかける。
すると、180㎝は超える巨体のトーマガイの後ろから、16歳ぐらいの少女が前に出てきた。
「どうも、アシトンです。あなたのことは、一度だけ聞いたことがあります」
彼女はオレンジ色の髪をしており、その上に魔法使いが愛用するうえが尖がった水色の長帽子を被っていた。着ている服も鮮やかな水色のローブだった。顔は幼いが、見た目は立派な魔法使いだった。
「ララクです。よろしくね」
ララクは基本敬語だが、同年代、あるいは年下の場合はため口で話すことが多い。見た目年齢的には、少女アシトンと同じぐらいか、それよりもララクのほうが若く見える。
一通り挨拶を終えた冒険者パーティー ハンドレッドと風心雷心の面々。
それを察したギルドのマスターが、受付の方から声をかけてきた。
「もしかして、あなたたちが、風心雷心さんかい?」
どうやらギルドマスターは、彼らがここに来ることを事前に知っていたようだ。
「はい。クエスト「カエル掃討作戦」に参加することになった風心雷心です。私がリーダーのクインクウィです」
代表してクインクウィが丁寧に説明した。
「首都からわざわざありがとうね」
ギルドマスターは笑顔で会釈した。
そのやりとりを聞いたララクがクインクウィに話しかける。
「クエストをしに来たんですね。でも、皆さんが首都から来たってことは、結構難易度の高いクエストなんですか?」
ララクはギルドマスターの発言から、風心雷心が首都を拠点として活動していると思った。ララクが追放されたとき、クインクウィが宣言した通りだからである。
首都のギルドには、地方のギルドからクエストが流れてくることがある。地方は常に人手不足だからである。
なので彼らがここに来るのはおかしなことではないのだが、簡単にクリアできるようなクエストならば、国境近くのこの村に足を運ぼうとは思わない。と、ララクは予想したのだ。
「強力なモンスターが相手、というよりは、モンスターが異常発生しているみたいなんだ。っあ、これを読んだ方が早いな」
クインクィは旅の鞄から、今回のクエストの内容が書かれた依頼書を取り出し、ララクに手渡した。
「カエル掃討作戦」
国境近くのハスビエということろのギルドマスターです。最近、村の周辺にカエル型のモンスターが大量発生しています。原因を追究するために池を調査しようと思っても、カエルに足止めされてしまいます。
このままでは村だけではなく、国境の大橋を占拠される危険もあります。
出来るだけ人手が欲しいので、今回は合同クエストとさせていただきます。
どうか、お願いいたします。
依頼主 ハスビエのギルドマスター
ギルドマスターが直々に書いたということもあり、簡潔かつ詳細にクエスト内容が記されていた。
モンスターの大量発生は、季節や繁殖期などの関係でたまに起きる現象だ。
ララクが気になったのは、合同クエストというワードだった。
「合同クエストということは、他にもパーティーが参加するんですか?」
ララクは振り返り、ギルドマスターに直接確認をした。
合同クエストは文字通り、複数の冒険者パーティーで行われる大規模クエストである。
クエスト報酬などの分配などで揉めるケースもあるので、あまり依頼者側から指定されることは少ない。
それだけ、危機的状況ということなのだろう。
「そうなのよ。あともう1つパーティーが来る予定なんだけど。
もうすぐ来るんじゃないかしら」
ギルドマスターがそう言った直後、再び扉の外から足音が聞こえ始める。
どうやら、そのもう1つのパーティーがやってきたようだ。
風心雷心とハンドレッドは、入りの邪魔になると少し後ろに下がる。
そして、ギルドの扉が、勢いよく開けられた。
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