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第102話 完成

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 彼らが鍛冶屋に依頼してから、4日ほど経った。

 それまでは、首都の観光を2人で楽しんでいた。

 武器屋や道具屋など、冒険に役だつお店にもいくつか寄った。しかし、彼は道具に頼らなくても戦えてしまうので、購入はほとんどしていなかった。武器を依頼している途中、という理由もある。

 他には、ギルド巡りを行った。クエストに行くかどうかはその時決めようと、とりあえずそこら中のギルドに足を運んでいた。

 川仕事専門や、モンスター討伐専用、探し物専用ギルド、といった変わり種も多く存在した。人口が多く、様々な依頼が行きかうので、その分だけ専門的なギルドが存在した。

 冒険者と行っても、=戦闘とは限らない。調達や調査なども行うことがある。なので、レベルが高くなくとも、優秀な冒険者は数多く存在する。
 首都サーザーは、そういった人物たちが輝きやすい都市、といえるだろう。

 そして、頃合いだろうと考えた2人は、テレポートを使って首都からジンドの街に戻ってきていた。

 鍛冶屋 クェイグの店に訪れると、重い扉を開けて店内に入る。

 店主はすでに受付に待機しており、彼らを待ち望んでいた様子だった。根っからの職人な用で、出来た作品をすぐに披露したいのかもしれない。

「来たな。ちょうど、出来てるぞ」

 明確な時間を指定されていたわけではないが、ララクたちは武器が完成したタイミングに来れたようだ。

「仕事が早いですね」

 一度、確認しに来ただけだったようで、もう少しだけ時間がかかるパターンもララクは予想していた。
 そこまで急いでいるわけではないが、早ければそれだけ冒険の日程を早めることが出来る。そして、クエストにも参加することが出来る。

「っお、待ってました」

 一番楽しみにしているのはゼマだった。愛用の武器であり、素材は自分たちで収集したものだ。
 その道中は、短い期間ではあったが順調な物ではなかった。彼女にとっても、前回の戦闘は、やりづらいものがあったことだろう。

「いいもん作らせてもらったぜ。これが、新しい武器だ」

 店主は一瞬だけ店の奥に体を入れて、立てかけておいたそれを持ってくる。そして、広いカウンターの上に、それを置いた。

 長さや形は、前のを基本としているのでそうは変わらない。

 武器の強化は、見た目的にそこまで変化しないこともある。モンスターの素材を使えば、外見に変化はあるが、鉱石だと加工の段階で似てくることがある。

 しかし、今回は例外中の例外だ。

 濃度の高い魔晶石を使ったがゆえに、大幅な変更点があった。

「す、すごい! ピカピカじゃん!」

 ゼマは、新しく改造されたロッドの輝き加減に驚いた。

 目に痛い光ではなく、艶のある光沢感のある輝きだ。

 そのロッドは、端から端まで魔晶石が組み込まれている。アイアンロッドの鉄部分が、水晶に成り代わっている。

 しかし、形状が変わっていないところを見ると、作り直したのではなく強化なのは間違いなさそうだ。

「正式名称があるわけじゃないが、「クリスタルロッド」ってとこだな」

 一瞬で目を奪われる宝石のような神秘さを感じるそれには、ピッタリの名前だった。

 武器の制作と強化は、オーダーメイドだとこのように既存名称がなかったりする。もちろん、武器図鑑などに載っている武器を指定して強化などを施すことも可能だ。

「クリスタルロッド、いいね。一期に華が出た、って感じね」

 ゼマはそれを握りしめると、その場で持ち上げる。手に触れるとひんやりとした感触が伝播してくるが、すぐに慣れる程度のものだった。

 重みもそれほど感じなかった。鉱物が詰まっているので重量はあるが、元と比べると少しだけ重みを感じるぐらいだ。

「かなり作り直したが、芯はもとのままだ。すぐに馴染むはずさ。あとは、これに付与されてたスキルもそのままだ」

 ララクが【スキル付与】を使用して半永久的に組み込んだ【伸縮自在】はまだ健在ということだ。

 咄嗟の思いつきではあったが、その後もゼマの得意戦法になっていった。

「さっすが。もう気に入った!」

 ゼマは、改めてこの店に頼んでよかったと感じていた。そもそも、アイアンロッドもここで購入した商品なので、彼女のお眼鏡に叶う可能性は高かった。

「魔晶石の効果で、魔力操作もさらにスムーズに行くかと思います」

 魔晶石はスキルが組み込まれた鉱物ではない。しかし、魔力は含んでおり、スキル付与などと親和性がある。
【伸縮自在】を使用する時は、対象の物に魔力を流し込む必要がある。

 その時のアシストを、魔晶石はしてくれる効果がある。

 ララクは観光途中に図書館によっていた。その際に魔晶石について少し調べていたのだ。

「よーし、これで少しはあんたに追いつけそうね」

 隣にいるララクに向かって、ゼマはニコッと笑いかける。

「ゼマさんは充分強いですし、ボクとは戦闘スタイルのベクトルが違うような」

 謙遜なのではなく、本心からそう思っているようだ。
 レベル数やスキル数を見ても、ゼマはララクに劣っている。
 だが、これまでの戦闘体験で、彼女の存在の大きさを身を持って感じているはずだ。

「それでも、仲間として強くなりたいんだよね」

 ハンドレッドに加入していなかった場合、彼女は装備強化などを行う必要はなかっただろう。自分に合ったクエストを行えば、問題なく冒険者としてやっていけるはずだ。

 だが、彼と出会ったことで、強さを追い求めることを思い出していた。最初の頃は、彼女もレベルアップなどに勤しんでいたことだろう。

「そうですか、ボクも負けないように切磋琢磨します」

 ララクはゼマの気持ちを聞いて、笑い返した。彼にはこれまで、明確な仲間と呼べる人間はいなかった。
 しかし今は、自分と共に研鑽してくれる相手が出来て、彼は充実感を覚えていた。
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