【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平

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第99話 頼り

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 悲報を伝え終わったハンドレッドの2人は、病院の廊下を重たい空気を背負ったまま歩いていた。

 それでもゼマは背筋を伸ばして前を見ていた。しかし、ララクは廊下をじっと見つめがら、どんよりと脚を動かした。

「大丈夫、じゃあ、なさそうね」

 そんな彼を横目で見ながら、一応は心配している様子のゼマ。リーダーはララクのほうではあるが、精神的にはまだ彼は幼い。

「すいません。カリーエさんのあんな姿見たら、胸が苦しくて」

 彼女たちと付き合いがある分、ララクはひどく落ち込んでいる。予想はしていたことだったが、実際に人の死を扱うのは、荷が重すぎたようだ。

「そっか。まぁでも、冒険者だったらこういうこともあるからね」

 ゼマは長い事、1人で活動していた。故に、パーティーメンバーの死などは経験したことはない。しかしギルドで他の冒険者と交流することはよくあることだ。昨日まで元気に話していた相手が、次の日にはクエストから帰ってこなかった。なんてことは、よくある話だ。

「……そうですよね。はぁ、ゼマさんは凄いですね。ボクは、言い出せませんでした」

 ララクは、自分自身に怒りを向けていた。伝えなくてはいけないことを、彼は切り出すことが出来なかった。代わりにゼマが直球的に話してくれたことに、少し安心した自分もいたことだろう。

「いいって、いいって。ほら、いつも言ってるでしょ?」

 ゼマはその先のセリフをあえて言わなかった。どうやら、ララクに言わせたいようだ。

「えっと、あ。『おねぇさんに任せなさい』ってやつですか?」

 口癖、とまではいかないが、彼女が良く使う決め文句を思い出した。少し冗談半分に捉えていたようだが、ゼマはそれなりに本気だったようだ。

「そうそう。私、実際に姉だったからさ、大船に乗ったつもりでいなよ」

 彼女はニコッと笑い掛けながら胸を張った。いつもと変わらない態度ではあるが、肩の落ちたララクを元気づけようとしているように思える。

「兄弟、いらっしゃったんですね」

 彼女の過去をララクは何も知らなかった。裏表のない性格なので、この短い期間でもある程度は、彼女の核を捉えることは出来てはいた。
 しかし、ソロ期間での活動や、さらにその前の動向については、ララクは詳しく知らない。

「まあね。でも、頼られるの疲れちゃって、家出したけどね。それからは、ずっとソロ」

 人が自分のことを話すときは照れくさがることもあるが、彼女は澄ました態度で流れるように喋っていた。

「???」

 ゼマの言葉を聞いて、ララクの頭には無数の?マークが浮かび上がった。今しがた「私に任せろ」と言っていた人間が、その次に「頼られるのに疲れた」と言ったのだから当然の疑問だった。

「その顔、ウケるんだけど」

 困惑した表情をしているララクを見て笑うも、彼女は話を続けた。

「矛盾してるよね。自分でもびっくり。姉でいることに疲れてたのに、今はあんたに頼られたいと思ってる」

 考え深そうな顔をしながら、ゼマはどこか思い出にふけているようだった。本当の姉だった時のことを、彼女は思い浮かべていたのかもしれない。

「それが、人なんですね」

 ララクはその矛盾差を、ディバソンと重ねた。
 弟子を愛しているのに、裏切った。
 理解しがたいことだったが、人の不安定さだと考えると、ララクは少し腑に落ちていた。

(きっとゼマさんのように、どのディバソンさんも、本当のあの人だったんだ)

 弟子だったララクは、かつての師の思いをそのまま受けることにした。負の面を否定することは、その人の全てを否定してしまう気がしたからだ。

「っま、あんたももっと人生経験積んだら、頼もしくなれるって。ずっと同じじゃいられないってことはさ、逆に言えば今よりも成長できるってことなんだからさ」

 彼よりも身長の高いゼマは、まるで弟に接するかのように、ララクの頭をポンッと撫でた。

 子供扱いされているようで気分は良くなかったが、実際にララクは彼女に頼っている部分もある。なので、自分の未熟さを受け入れる、という意味でも、その対応を甘んじて受け入れた。

「頑張ります。これからも、ご指導お願いします」

「っかったいな~。仲間なんだから、もっと気楽に行こうよ」

「が、頑張ります」

 ゼマは年上として振舞いながらも、パーティーとしてララクとは同じ高さでありたいと思っているのだろう。もっと言えば、リーダーの彼を、彼女が頼ることも頻繁にあるだろう。
 そんな、不思議な距離感がハンドレッドの間には築かれている。

 会話をしながら歩いていたララクたちは、階段を下りて病院の1階へと向かっていく。
 受付カウンターのすぐそばには待合席が設置されており、そこにどこかで見たことのある人物たちが座っていた。
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