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第90話 おねぇさん
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「あんたもしかして、大技使おうとしてない?」
彼女はララクの作戦を知らないはずなのに、見事に言い当ててみせた。マジカポーションで回復したのを、強力なスキルを使うためと判断したようだ。
「はい。それがボクの全力ですから」
ガッディアに言われたことを自分の中でずっと彼は考えていた。そして、団体戦では使用しなかった【分身】を戦略の主軸にしようとしていた。
「何もさ、それってやみくもに戦う事じゃないと思うんだよね」
「やみくもってわけじゃ……」
ララクとゼマが意見の食い違いを起こしていると、【アイアンショット】が役目を終えて鉄が消滅していった。
急に辺りは静かになったが、それもつかの間、アイアンデーモンが動き出す。
「お喋りはそこまでだっ!」
強化されたピッケルを振り上げながら、ララクの元へと落下していく。地面に落ち立った瞬間、目の前の金の盾にピッケルを打ちつける。
すると、ピッケルの先端が盾に食い込んでいき、そこからヒビが全体に広がっていく。そして、金の盾は細かく砕けていった。
「まずいっ!」
会話に気を取られて、まだ防御態勢が整っていなかった。自分を守っていた盾が消滅し、目の前には大鎌のようなピッケルを持った鉄の悪魔がこちらを睨んでいる。
「【刺突】!」
近距離まで来たアイアンデーモンは、ララクを刺し殺そうとピッケルの先で彼を攻撃する。
彼は今、武器を所持していない状態だ。
咄嗟に防御手段をとれずに、まともに食らいそうになる。
しかし、それを助ける救世主がいた。
「こっちに来なっ!」
アイアンデーモンが攻撃を仕掛ける前に、すでにゼマはアイアンロッドをララクの元まで伸ばしていた。そして、前の戦いでガッディアを縛り上げたように、【伸縮自在】の効果を使ってララクに棒を巻きつける。
そしてそのまま、真っすぐに伸びている箇所だけ【伸縮自在】を解除する。すると、するするとロッドが縮まっていく。しかし、彼を拘束した部分はまだ伸ばしたままなので、ララクは固定されたまま彼女の元へと引っ張られていった。
一気にララクが移動したことにより、アイアンデーモンの放った【刺突】は空振りとなる。
「す、すいません」
ゼマは自分の元へと彼を連れてくると、すぐに拘束を解除した。回復がヒーラーの仕事だが、彼女はその前の回避の部分を手助けしてくれたのだ。
「まだ付き合い短いけどさ、あんたってもっと作戦ちゃんと考えるタイプじゃなっかった?」
今までの2人で行ってきた戦闘は、ララクが作戦を考えて彼女に指示を出していた。しかし、まだ彼から戦闘のオーダーは彼女に通達されていない。
「……そうですけど」
「さっきの【テレポート】もそうだし、魔力の使い過ぎ。
もし、大技使ってそれでも倒せなかったら? なにも出来なくなって死ぬかもしれないよ」
ゼマはララクが無暗にスキルを使いすぎているのではないかと危惧しているようだ。彼は全く何も考えずに使っているわけではないが、確かに今日は感情を優先して行動していることが多々あった。
「……確かに、一理ありますね」
彼の中で【分身】を使用して相手を追い詰める作戦は考えられていた。しかし、そのあとのことは考えていない。
いつもは失敗したとしても、新たな作戦を考えればいい。
何故なら、戦闘に使える膨大な魔力が残っているからだ。
しかし、魔力を消費すぎた今日に限っていえば、【分身】を使った後に残る魔力は僅かだろう。
逃げようにも【テレポート】さえ使えなくなるだろう。
「大人しくお前らも吸収されろぉぉぉお」
アイアンデーモンが雄たけびを上げる。自分の攻撃を、スキルを使って防御する2人にいら立っている様子だ。
「リーダー、また作戦考えてよ。それまで、私が時間稼ぎするからさ」
改めてゼマはアイアンロッドを構え直す。彼女の持つそのロッドはいつ限界を迎えて壊れるか分からない。ロッドを失えば、彼女の戦う術が一気に減少する。
しかし、そんなことを恐れる女ではない。
「ゼマさん、すいません」
「いいんだよ。いつも言ってるでしょ。おねぇさんに任せなさいって」
そう言うと、ゼマは荒ぶるアイアンデーモンに向かっていく。彼女はララクをリーダーとして扱いつつも、年下の子供としても扱っている。
だからこそ、ララクの至らない部分を指摘することが出来るのだろう。
彼女はララクの作戦を知らないはずなのに、見事に言い当ててみせた。マジカポーションで回復したのを、強力なスキルを使うためと判断したようだ。
「はい。それがボクの全力ですから」
ガッディアに言われたことを自分の中でずっと彼は考えていた。そして、団体戦では使用しなかった【分身】を戦略の主軸にしようとしていた。
「何もさ、それってやみくもに戦う事じゃないと思うんだよね」
「やみくもってわけじゃ……」
ララクとゼマが意見の食い違いを起こしていると、【アイアンショット】が役目を終えて鉄が消滅していった。
急に辺りは静かになったが、それもつかの間、アイアンデーモンが動き出す。
「お喋りはそこまでだっ!」
強化されたピッケルを振り上げながら、ララクの元へと落下していく。地面に落ち立った瞬間、目の前の金の盾にピッケルを打ちつける。
すると、ピッケルの先端が盾に食い込んでいき、そこからヒビが全体に広がっていく。そして、金の盾は細かく砕けていった。
「まずいっ!」
会話に気を取られて、まだ防御態勢が整っていなかった。自分を守っていた盾が消滅し、目の前には大鎌のようなピッケルを持った鉄の悪魔がこちらを睨んでいる。
「【刺突】!」
近距離まで来たアイアンデーモンは、ララクを刺し殺そうとピッケルの先で彼を攻撃する。
彼は今、武器を所持していない状態だ。
咄嗟に防御手段をとれずに、まともに食らいそうになる。
しかし、それを助ける救世主がいた。
「こっちに来なっ!」
アイアンデーモンが攻撃を仕掛ける前に、すでにゼマはアイアンロッドをララクの元まで伸ばしていた。そして、前の戦いでガッディアを縛り上げたように、【伸縮自在】の効果を使ってララクに棒を巻きつける。
そしてそのまま、真っすぐに伸びている箇所だけ【伸縮自在】を解除する。すると、するするとロッドが縮まっていく。しかし、彼を拘束した部分はまだ伸ばしたままなので、ララクは固定されたまま彼女の元へと引っ張られていった。
一気にララクが移動したことにより、アイアンデーモンの放った【刺突】は空振りとなる。
「す、すいません」
ゼマは自分の元へと彼を連れてくると、すぐに拘束を解除した。回復がヒーラーの仕事だが、彼女はその前の回避の部分を手助けしてくれたのだ。
「まだ付き合い短いけどさ、あんたってもっと作戦ちゃんと考えるタイプじゃなっかった?」
今までの2人で行ってきた戦闘は、ララクが作戦を考えて彼女に指示を出していた。しかし、まだ彼から戦闘のオーダーは彼女に通達されていない。
「……そうですけど」
「さっきの【テレポート】もそうだし、魔力の使い過ぎ。
もし、大技使ってそれでも倒せなかったら? なにも出来なくなって死ぬかもしれないよ」
ゼマはララクが無暗にスキルを使いすぎているのではないかと危惧しているようだ。彼は全く何も考えずに使っているわけではないが、確かに今日は感情を優先して行動していることが多々あった。
「……確かに、一理ありますね」
彼の中で【分身】を使用して相手を追い詰める作戦は考えられていた。しかし、そのあとのことは考えていない。
いつもは失敗したとしても、新たな作戦を考えればいい。
何故なら、戦闘に使える膨大な魔力が残っているからだ。
しかし、魔力を消費すぎた今日に限っていえば、【分身】を使った後に残る魔力は僅かだろう。
逃げようにも【テレポート】さえ使えなくなるだろう。
「大人しくお前らも吸収されろぉぉぉお」
アイアンデーモンが雄たけびを上げる。自分の攻撃を、スキルを使って防御する2人にいら立っている様子だ。
「リーダー、また作戦考えてよ。それまで、私が時間稼ぎするからさ」
改めてゼマはアイアンロッドを構え直す。彼女の持つそのロッドはいつ限界を迎えて壊れるか分からない。ロッドを失えば、彼女の戦う術が一気に減少する。
しかし、そんなことを恐れる女ではない。
「ゼマさん、すいません」
「いいんだよ。いつも言ってるでしょ。おねぇさんに任せなさいって」
そう言うと、ゼマは荒ぶるアイアンデーモンに向かっていく。彼女はララクをリーダーとして扱いつつも、年下の子供としても扱っている。
だからこそ、ララクの至らない部分を指摘することが出来るのだろう。
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