【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平

文字の大きさ
上 下
86 / 113

第85話 【ストーンズ】

しおりを挟む
 ララクは記憶を辿っていく。
 ディバソン、カリーエのパーティー【ストーンズ】にいた時代のことを。

 1年ほど前のことだ。
 ララクはヒーラー兼ディバソンの二番弟子として、パーティーに加入していた。

【ストーンズ】は他のパーティーと違い、ララクをヒーラー目的で加入させたわけではない。

 このパーティーは、かなり入れ替えが激しかった。ディバソンはそれなりに知名度と実力があり、2人とも社交的。勧誘も欠かさない。
 しかし、ディバソンのノリに合わなく辞めていく弟子が多かった。

 元々冒険者自体、師匠制をとっていることが少ない。それは人によって、スキルの傾向が激しいからだ。特に人間という種族は、千差万別。
 とにかくモンスターを倒せばレベルは上がって強くなっていくので、あまり人から教えられるという文化が根付いていない。

 もちろん、皆無というわけではない。山仕事、など専門的知識が必要な場合は、師匠制は友好的だ。パッシブスキルでは得れないことを学ぶことが出来る。

 様々な事情があって、弟子が入っては出てを繰り返していた。

 そんな時に、ヒーラーでありパーティーを探していたララクと出会った。

 当時のララクは、追放を繰り返されていた真っただ中だったので、弟子でもいいので固定のパーティーで経験を積みたかった。
 やはり、追い出され続けるというのは、精神的にも時間的にもマイナスなことが多い。

 そして、ララクがストーンズに加入して少し経った時のこと。
 その日は、クエストで山に3人で訪れていた。

 内容はこうだ。

【鉱石を集めてくれ!】

 国の兵士の剣をリニューアルするってことで、うちにも注文が入った。だが、鉱石のストックがこのままじゃ足りそうにない。
 鉄鉱石、ブルーン鉱石、何でもいいからとにかく量がいる。
 出来るだけ早く、取集してくれると助かる。

      依頼主・鍛冶屋「デゲッズ」 店主


 武器を使用するのは、冒険者だけとは限らない。国防のために修練し、治安を守るために日夜励んでいる兵士たちにも武器を必須だ。

 国の都市などは、自然に囲まれている。それはすなわち、モンスターに囲まれているという事でもある。
 いちおう、周辺一帯の山や平原などは国の所有物とされている。が、厳密にいえば自然、そしてモンスターの物といえる。
 なので、いつモンスターが生活圏内に入ってくるか分からない。

 そんなモンスターに備えて国に勤めているのが兵士で、さらに行動範囲を広げてクエストをこなすのが冒険者といえる。
 もちろん、レベルアップにはモンスターとの戦闘は欠かせないので、兵士がクエストに行くこともある。

 そんな兵士たちの武器を新調するための物資が、不足してしまっているようだ。

「ララク、へばるなよ」

「は、はい」

 ディバソンを先頭に、ストーンズは山道を登っていた。
 当時のララクのレベルは20代後半。パッシブスキルもないので、レベルのわりには少々身体能力は低かった。
 なので、山登りは彼に堪えるものだった。

「大丈夫、転んだって私が起き上がらせてあがるよ」

 ディバソンの後ろにララクが、そしてさらに後方にカリーエが縦に並んでいる状態だった。
 パーティーの隊列的に、支援型のヒーラーは後方か中央にいるのが一般的だ。
 特にララクは、戦闘スキルを1つも持っていないので、カリーエがすぐに守れるようにしている。

「あと少しすれば、採掘エリアに入るぞ。それまでは山登りを楽しめ。がっはっはっは」

 山登りは彼の得意分野であり、今のところ疲弊した様子は一切ない。街からの移動距離も含めると、かれこれ1,2時間は歩いている。

「た、楽しむか」

「そうだよ。辛いかもしれないけど、こういうのは体力だけじゃなくて気力も大事だからね」

 カリーエはララクの背中を軽く押しながら、山道の激しい傾斜を進んでいく。

 半ばピクニック気分な2人に挟まれながら、ララクは荒く息を吐きながら歩き進めてくる。

 そんなご一行の後ろをつけているものたちがいた。

 それらの名は、山岳ウルフ。5匹の群れで行動している。鼻をひくひく動かしながら、静かに人間たちの後ろについていっている。
 山などに生息しており、これらも山登りは得意分野だ。

 暗殺者のようにゆっくりと近づいて行く。

 そして一番後ろのカリーエを狙い、狼の集団が襲いかかろうとした。その時だった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

無限の成長 ~虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ~

りおまる
ファンタジー
主人公アレクシスは、異世界の中でも最も冷酷な貴族社会で生まれた平民の少年。幼少の頃から、力なき者は搾取される世界で虐げられ、貴族たちにとっては単なる「道具」として扱われていた。ある日、彼は突如として『無限成長』という異世界最強のスキルに目覚める。このスキルは、どんなことにも限界なく成長できる能力であり、戦闘、魔法、知識、そして社会的な地位ですらも無限に高めることが可能だった。 貴族に抑圧され、常に見下されていたアレクシスは、この力を使って社会の底辺から抜け出し、支配層である貴族たちを打ち破ることを決意する。そして、無限の成長力で貴族たちを次々と出し抜き、復讐と成り上がりの道を歩む。やがて彼は、貴族社会の頂点に立つ。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...