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第85話 【ストーンズ】
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ララクは記憶を辿っていく。
ディバソン、カリーエのパーティー【ストーンズ】にいた時代のことを。
1年ほど前のことだ。
ララクはヒーラー兼ディバソンの二番弟子として、パーティーに加入していた。
【ストーンズ】は他のパーティーと違い、ララクをヒーラー目的で加入させたわけではない。
このパーティーは、かなり入れ替えが激しかった。ディバソンはそれなりに知名度と実力があり、2人とも社交的。勧誘も欠かさない。
しかし、ディバソンのノリに合わなく辞めていく弟子が多かった。
元々冒険者自体、師匠制をとっていることが少ない。それは人によって、スキルの傾向が激しいからだ。特に人間という種族は、千差万別。
とにかくモンスターを倒せばレベルは上がって強くなっていくので、あまり人から教えられるという文化が根付いていない。
もちろん、皆無というわけではない。山仕事、など専門的知識が必要な場合は、師匠制は友好的だ。パッシブスキルでは得れないことを学ぶことが出来る。
様々な事情があって、弟子が入っては出てを繰り返していた。
そんな時に、ヒーラーでありパーティーを探していたララクと出会った。
当時のララクは、追放を繰り返されていた真っただ中だったので、弟子でもいいので固定のパーティーで経験を積みたかった。
やはり、追い出され続けるというのは、精神的にも時間的にもマイナスなことが多い。
そして、ララクがストーンズに加入して少し経った時のこと。
その日は、クエストで山に3人で訪れていた。
内容はこうだ。
【鉱石を集めてくれ!】
国の兵士の剣をリニューアルするってことで、うちにも注文が入った。だが、鉱石のストックがこのままじゃ足りそうにない。
鉄鉱石、ブルーン鉱石、何でもいいからとにかく量がいる。
出来るだけ早く、取集してくれると助かる。
依頼主・鍛冶屋「デゲッズ」 店主
武器を使用するのは、冒険者だけとは限らない。国防のために修練し、治安を守るために日夜励んでいる兵士たちにも武器を必須だ。
国の都市などは、自然に囲まれている。それはすなわち、モンスターに囲まれているという事でもある。
いちおう、周辺一帯の山や平原などは国の所有物とされている。が、厳密にいえば自然、そしてモンスターの物といえる。
なので、いつモンスターが生活圏内に入ってくるか分からない。
そんなモンスターに備えて国に勤めているのが兵士で、さらに行動範囲を広げてクエストをこなすのが冒険者といえる。
もちろん、レベルアップにはモンスターとの戦闘は欠かせないので、兵士がクエストに行くこともある。
そんな兵士たちの武器を新調するための物資が、不足してしまっているようだ。
「ララク、へばるなよ」
「は、はい」
ディバソンを先頭に、ストーンズは山道を登っていた。
当時のララクのレベルは20代後半。パッシブスキルもないので、レベルのわりには少々身体能力は低かった。
なので、山登りは彼に堪えるものだった。
「大丈夫、転んだって私が起き上がらせてあがるよ」
ディバソンの後ろにララクが、そしてさらに後方にカリーエが縦に並んでいる状態だった。
パーティーの隊列的に、支援型のヒーラーは後方か中央にいるのが一般的だ。
特にララクは、戦闘スキルを1つも持っていないので、カリーエがすぐに守れるようにしている。
「あと少しすれば、採掘エリアに入るぞ。それまでは山登りを楽しめ。がっはっはっは」
山登りは彼の得意分野であり、今のところ疲弊した様子は一切ない。街からの移動距離も含めると、かれこれ1,2時間は歩いている。
「た、楽しむか」
「そうだよ。辛いかもしれないけど、こういうのは体力だけじゃなくて気力も大事だからね」
カリーエはララクの背中を軽く押しながら、山道の激しい傾斜を進んでいく。
半ばピクニック気分な2人に挟まれながら、ララクは荒く息を吐きながら歩き進めてくる。
そんなご一行の後ろをつけているものたちがいた。
それらの名は、山岳ウルフ。5匹の群れで行動している。鼻をひくひく動かしながら、静かに人間たちの後ろについていっている。
山などに生息しており、これらも山登りは得意分野だ。
暗殺者のようにゆっくりと近づいて行く。
そして一番後ろのカリーエを狙い、狼の集団が襲いかかろうとした。その時だった。
ディバソン、カリーエのパーティー【ストーンズ】にいた時代のことを。
1年ほど前のことだ。
ララクはヒーラー兼ディバソンの二番弟子として、パーティーに加入していた。
【ストーンズ】は他のパーティーと違い、ララクをヒーラー目的で加入させたわけではない。
このパーティーは、かなり入れ替えが激しかった。ディバソンはそれなりに知名度と実力があり、2人とも社交的。勧誘も欠かさない。
しかし、ディバソンのノリに合わなく辞めていく弟子が多かった。
元々冒険者自体、師匠制をとっていることが少ない。それは人によって、スキルの傾向が激しいからだ。特に人間という種族は、千差万別。
とにかくモンスターを倒せばレベルは上がって強くなっていくので、あまり人から教えられるという文化が根付いていない。
もちろん、皆無というわけではない。山仕事、など専門的知識が必要な場合は、師匠制は友好的だ。パッシブスキルでは得れないことを学ぶことが出来る。
様々な事情があって、弟子が入っては出てを繰り返していた。
そんな時に、ヒーラーでありパーティーを探していたララクと出会った。
当時のララクは、追放を繰り返されていた真っただ中だったので、弟子でもいいので固定のパーティーで経験を積みたかった。
やはり、追い出され続けるというのは、精神的にも時間的にもマイナスなことが多い。
そして、ララクがストーンズに加入して少し経った時のこと。
その日は、クエストで山に3人で訪れていた。
内容はこうだ。
【鉱石を集めてくれ!】
国の兵士の剣をリニューアルするってことで、うちにも注文が入った。だが、鉱石のストックがこのままじゃ足りそうにない。
鉄鉱石、ブルーン鉱石、何でもいいからとにかく量がいる。
出来るだけ早く、取集してくれると助かる。
依頼主・鍛冶屋「デゲッズ」 店主
武器を使用するのは、冒険者だけとは限らない。国防のために修練し、治安を守るために日夜励んでいる兵士たちにも武器を必須だ。
国の都市などは、自然に囲まれている。それはすなわち、モンスターに囲まれているという事でもある。
いちおう、周辺一帯の山や平原などは国の所有物とされている。が、厳密にいえば自然、そしてモンスターの物といえる。
なので、いつモンスターが生活圏内に入ってくるか分からない。
そんなモンスターに備えて国に勤めているのが兵士で、さらに行動範囲を広げてクエストをこなすのが冒険者といえる。
もちろん、レベルアップにはモンスターとの戦闘は欠かせないので、兵士がクエストに行くこともある。
そんな兵士たちの武器を新調するための物資が、不足してしまっているようだ。
「ララク、へばるなよ」
「は、はい」
ディバソンを先頭に、ストーンズは山道を登っていた。
当時のララクのレベルは20代後半。パッシブスキルもないので、レベルのわりには少々身体能力は低かった。
なので、山登りは彼に堪えるものだった。
「大丈夫、転んだって私が起き上がらせてあがるよ」
ディバソンの後ろにララクが、そしてさらに後方にカリーエが縦に並んでいる状態だった。
パーティーの隊列的に、支援型のヒーラーは後方か中央にいるのが一般的だ。
特にララクは、戦闘スキルを1つも持っていないので、カリーエがすぐに守れるようにしている。
「あと少しすれば、採掘エリアに入るぞ。それまでは山登りを楽しめ。がっはっはっは」
山登りは彼の得意分野であり、今のところ疲弊した様子は一切ない。街からの移動距離も含めると、かれこれ1,2時間は歩いている。
「た、楽しむか」
「そうだよ。辛いかもしれないけど、こういうのは体力だけじゃなくて気力も大事だからね」
カリーエはララクの背中を軽く押しながら、山道の激しい傾斜を進んでいく。
半ばピクニック気分な2人に挟まれながら、ララクは荒く息を吐きながら歩き進めてくる。
そんなご一行の後ろをつけているものたちがいた。
それらの名は、山岳ウルフ。5匹の群れで行動している。鼻をひくひく動かしながら、静かに人間たちの後ろについていっている。
山などに生息しており、これらも山登りは得意分野だ。
暗殺者のようにゆっくりと近づいて行く。
そして一番後ろのカリーエを狙い、狼の集団が襲いかかろうとした。その時だった。
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