【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平

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第79話 鉄の悪魔

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 そして、ハンドレッドがここへやってきて1時間が経過していく。

「ふぅ、少し一休みしますか」

 ララクは額に汗を掻いており、それを腕で軽く拭った。
 今も発掘ポイントにピッケルを突っ込んでいたところで、地面には様々な鉱石が落ちている。
 そしてそれを、またも【ポケットゲート】にしまっていく。

「全然、見つからない」

 ゼマは少し不満そうにしていた。体力には自信があるのでそこまで疲れているわけではない。さすがは、冒険者といったところだ。
 しかし、ずっとピッケルを上げては下すの繰り返しので、飽きてきているのかもしれない。

 それにお目当ての魔晶石が、ひとかけらも見つからないのも原因の1つだろう。

「ブルーン鉱石に、レッディ鉱石。魔晶石は残念ながらないですね」

 青や赤に輝く鋼鉄の塊を拾っては、亜空間へとしまっていく。魔晶石自体は、そこまでレアリティの高い代物ではない。純度の高く質のいいものだと、入手が困難なのだ。
 それにもかかわらず、今のところ魔晶石のようなものすら発見できていない。

「はぁ、愛しの魔晶石、早く出ておいで~」

 絶対にあっちから返事は帰ってこないので、彼女の呼びかけは空虚な魔鉱山に流れていくだけだった。

 ララクは一度、ここで気持ちのリセットもかねて、休息をとろうとした。
 しかし、何かに気がつき洞穴の先に首を動かした。

 【ライトファイアー】で照らしてはいるが、それでも全ての場所に光が行き届いているわけではない。暗闇はまだまだ先へと広がっている。

「ゼマさん、おそらく」

 その言葉だけで、ゼマには何のことか伝わった。

「モンスター? ちょうどいいじゃん」

 単純作業に飽きていたのか、モンスターとの戦いを望んでいるような口ぶりだった。
 普通はクエスト以外ならば、モンスターとの戦闘は避けたいところ。

 2人は魔鉱山の先を警戒する。その際、【ウェポンクリエイト・ハード】で作り出したピッケルは一時的に消滅させていた。

「うぅ、ぉぉ」

 人のうめき声のような音と共に、それは姿を現した。
 洞窟と同じ高さほどの人型をしているが、これはれっきとしたモンスターだ。

 体のほとんどが鉱物で出来ている。
 しかし、ガッディアが変化した鎧魔人とは少し毛色が違う。

 あちらは鎧なので、形が整っておりシンメトリーになっている。

 が、これはいわば鉱物の集合体のようなもので、体のあちこちが出っぱていたりと、かなり不安定さを感じた。

「これは、アイアンデーモン!」

 ララクはモンスターの知識をそれなりに持っている。なので、このアイアンデーモンと呼ばれるモンスターの情報も知っている。

 このモンスター自体は、それほどレベルが高くなく驚異的なモンスターではない。もちろん、冒険者でなければ、逃げるに限るが。

 しかし、アイアンデーモンの恐ろしいところは別にある。

「もしかしてこれって、人?」

 ゼマは気がついた。

 アイアンデーモンの体は一見すると鉄などの鉱物で形成されているようだ。が、よく見ると、体の節々に人間の肌や人工的な服の一部が見え隠れしている。

 顔もほとんどは鉄の塊だが、目などは人間の物だ。

「おそらく。アイアンデーモンは、寄生型のモンスターでもあります」

「まじか」

 それを知って、ゼマは苦い顔をする。つまり、モンスターの中に人間が吸収されてしまっている状態ということだ。
 さっきのうめき声は、その人物の声ということになる。

「うぅ、おぉお」

 ララクたちを確認したアイアンデーモンは、声を漏らしながらゆっくりと近づいてくる。

(どうする? 中の人を傷つけないようにしないと。そもそもここじゃ、戦いづらい)

 いつものように戦闘前の作戦会議を脳内で行っていたが、それよりも早くゼマが動き出していた。

「ララク、【耐久値強化】ってあるんだっけ?」

 彼女は既にこの狭い中でアイアンロッドを構えていた。

「はいっ。【耐久値強化】」

 彼女の意図を察したララクは、ヒビの入ったアイアンロッドの耐久性能を強化し始める。まだ修復前なので、傷は修復されていない。
 なので、一時的に壊れにくくする必要があったのだ。

「よく分かんないけど、こうすればいいんでしょ! 【刺突乱舞】」

 肘を引きアイアンロッドを腰のほうへと引っ張る。そして、向かってくるアイアンデーモンに、突きの乱舞をお見舞いする。

 棒は、振り下ろすだけではなく突きの性能も高い。なので、こういった狭い空間でも問題なく戦えるのが強みだ。
 さらに、今回も【伸縮自在】で長さを拡張したわけだが、洞窟内は攻略しきれないほど奥に続いている。
 なので、どれだけ伸ばそうともつっかえてしまうことはなかった。

 それもあり、いつも通りの動きで乱舞を発動したのだ。

 アイアンデーモンの動きが遅い事、避ける空間がないこと、が要因で、【刺突乱舞】は綺麗に敵へとヒットしていく。

(す、凄い正確さだ。ちゃんと、人に当たらないようにしている)

 普段の行動は大雑把だが、棒の扱いとなると彼女は繊細な動きを見せる。

 肌が露出している部分はさけて、鉱物が固まっている部分のみに正確に当てていく。採掘にも近く、みるみるアイアンデーモンの鉄の部分が削れ落ちて行く。
 それにともない、中の人物の服の部分などが徐々に増えていく。

 人の部分が増えれば、それだけそこに当たる危険性が増える。

 だが、そんなことなど不安にさせない、精密さと尋常ではないハイスピードで、アイアンデーモンを粉々に砕いていった。

 そして、寄生し続けられなくなったようで、あっけなく鉱物部分が地面へと落ちて行った。

 すると、アイアンデーモン本体ともいえるその落ちた鉄たちは、微かに体を動かしている。カタカタと音を鳴らしながら、吸い込まれるように洞窟の奥へと転がっていった。

 寄生先から引きはがされたので、尻尾まいて逃げた、という状況だ。

 アイアンデーモンが先ほどまでいた場所には、1人の女性が寝転んでいる。
 息が浅いが、かろうじて意識はあった。

 彼女の目はぼやけており、徐々に自分を助けてくれた人たちの顔を確認できた。

「き、君は……」

 そして少年のほうの顔に見覚えがあることに気がつく。
 それはララクのほうも同じだった。

 彼女の恰好は、ダボッとしたシャツに、下はつなぎだ。特徴的なのは頭のヘルメットだろう。この場所に適した装備だ。
 彼女もまた、冒険者の1人だ。

「カリーエさんじゃないですかっ!」

 まさか知った顔が寄生されていたとは思わなく、声をあげて彼女へと近づく。
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