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第54話 再開

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「では、1回の奥に大浴場がありますので、ご利用ください。着替えも貸し出していますので、よろしければご利用ください。
 それではこちら鍵でございます」

「ありがとうございます」

 ララクは大浴場つきと書かれた看板を見て、すぐにこの宿に泊まることを決めた。近くにギルドもあるようなので、利便性も良さそうだと感じていた。
 店主から鍵を受け取ると、2回にある部屋へと向かおうとした。

「っあ、私先に風呂入っちゃうわ。先に部屋行ってて」

「分かりました。ごゆっくり」

 一旦そう言って2人は別れることとなる。

 鍵を持ったララクは、階段を上がろうとした。

 しかし、宿屋に見慣れた声が聞こえてきて足をとめた。

「いやーしかし、とんでもねぇ力だったな」

「あぁ、そうだな。さすが、隠れスキルと言ったところか」

「私、体痛いんだけど」

「ぼ、僕もです」

 店に戻ってきたのは4人組の冒険者パーティーだった。

 硬い髪が上に向かって伸びている剣士と、少し髭の生えた重騎士。そして、銀髪をした若い狐人とララクよりも幼い少年だ。

 その少年のことは見たことがなかったが、他の3人の顔をララクは忘れていなかった。かつて、一緒に戦った仲間なのだから。

「あれ、疾風怒濤の皆さんじゃないですか。お久しぶりです」

 その声を聞いて、疾風怒濤の4人も彼の存在に気がついた。
 彼らと再会するのは、ケルベアスと戦った時以来だった。あれからララクはクエストに明け暮れており、デフェロットたちは隠れスキルを調べていたので、出会う機会がなかったのだ。

「あん? って、なんでお前がここにいんだよ!」

 デフェロットが真っ先に気がつくやいなや、罵声を浴びせる。
 ララクは階段を登りかけているので、少しだけ彼がデフェロットたちを見下ろしているような構図になっていた。それもあって、一瞬でデフェロットのスイッチが入ってしまった。

「ボクもここに宿泊することになりまして」

「っち。せっかくいい気分だったのに、だいなしだぜ」

 舌打ちをして、ララクから顔を反らした。よっぽど、彼のことを嫌っているようだ。根に持つタイプなのか、魔熊の森で起きたことを忘れていないのだろう。

「元気そうじゃないか、ララク」

「ララクに会うとか最悪~」

 ガッディアとレニナは対照的なリアクションをとった。レニナは苦々しい顔を出して拒絶反応を示している。ガッディアは久々に再開して嬉しそうにしていた。

 そして加入したばかりのジュタは、手持ち無沙汰にしながら目が泳いでいた。

「あ、あの、この方は?」

 ララクとジュタは年齢的には数歳離れており、ララクの方が年上だ。しかし、お互いが幼げな顔をしているので、同級生にも見える。

 ララクの方が今までの戦いで成長したせいか、表情に凛々しさが出てきたように見える。

「あー、彼はララクと言ってな、少し前まで仲間だったんだ。まぁ、色々あったんだが、その辺はこいつが気にするからあまり聞かない方がいいかもしれん」

 ガッディアは親指でデフェロットのことを指さすと、ジュタに注意喚起をした。だがその発言が、余計にデフェロットの怒りに火を注ぐことになる。

「こんな奴どうだっていいんだよ! ほら、とっとと部屋戻るぞ」

 デフェロットを戦闘にして、彼らは階段へと歩きはじめる。当然そこにはララクがいるので、通り過ぎることになる。

「っけ、どきやがれ」

 ララクは少しその場を離れると、さきに彼らを登らせることにした。

「はやくベッドにダイブした~い」

 レニナはララクと会話をすることなく、そそくさと階段を登って行ってしまった。

「すまんなララク。機会があれば、また後で話そう」

「はい、ぜひ」

 仲間たちの無礼を謝りながら、ガッディアもララクを通り過ぎていった。

「は、初めまして。その、失礼します」

「初めまして。よろしく」

 2人は短く挨拶をすると、ジュタも2階に登っていった。

(たぶんだけど、新しいメンバーってことだよな。でも、ボクがいうのもなんだけどあんまり強そうに見えなかったけど)

 一瞬しか対面しなかったが、ジュタの何となくの雰囲気は伝わってきた。
 ララクは、デフェロットたちが次に仲間に入れるとしたらもっと腕のいい冒険者だと勝手に考えていたようだ。
 なので、以前のララク以上にひ弱に見えた彼を、疾風怒濤に加入させたのが謎だったようだ。
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