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第53話 ハンドレッド、到着
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パーリア王国首都 サーザーに、冒険者パーティー【ハンドレッド】の2人がやってきた。都は今日も変わらず人で溢れており、活気づいている。
お昼時で、買い物を楽しむ人などが多く見受けられる。
「ふぅ。久々に来たけど、相変わらず広いな~」
背伸びをしながら、首都の景色を楽しむのは、ヒーラー兼アタッカーであるゼマ・ウィンビーだ。
彼女は、ここでも活動していた時期があるようだ。
それに対して、ララクは始めてくる都会なので、目を輝かせながら見上げている。
「あんなに大きな建物があるなんて。ジンドの街でも凄いと思っていましたけど、ここはさらに発展していますね」
ララクは様々なお店が入った数階建てのショッピング施設に目をやっていた。木造建築主体の街なので視覚的に圧倒はされるが、圧迫されるというほどではない。昔ながらの様式と発展途上の文化が入り混じった独特な景観になっている。
「あれ、あんたってあそこ出身じゃないんだっけ?」
「あ、はい。もっと田舎から出てきたんです。冒険者パーティーを探しに」
もっとララクが若いころ、彼は地元を離れてジンドの街にやってきた。そこで100回というとんでもない回数の追放宣言を受けることとなったのだ。
「そうだったんだ。案外、地元近いかもね。私も田舎出身だからさ」
「そうなんですか。でも、ゼマさんはそんな風に見えないですね」
ゼマとララクは一度同じクエストをこなしただけで、知り合ったばかりだ。ここにくる山道で軽く交流は深めたものの、まだお互いのことを詳しく知らない。
「そう? 私も都会に似合う女、になったのかもね。おねぇさんに惚れるなよ?」
ゼマはララクの言葉を嬉しそうにしながら受け止めると、体をくねらせて頬に手をあてて独特なポーズをとった。どうやら、ララクを誘惑しているようだ。
「……大丈夫です」
「そこは、少しぐらい照れなさいよ」
冗談と分かっていないのか、分かっていながらなのかは分からないが、ララクは冷たいリアクションをとった。
「すみません。あの、それでこの後は特に急用もないので、宿に向かおうかと思うんですが」
「そうだね~。別に明確な目的があってきたわけじゃないんだもんね。風呂も入りたいしちょっと休もっか。っあ、大浴場がある所ね」
ここ数日間は山でキャンプだったので、ゆったりと休息はとれていない。山にはモンスターが生息しているので、いつ襲われてもおかしくない。なので、交代で睡眠をとるか短く浅い睡眠をとるのが基本だ。
体調不良を起こすほど疲れてはいないが、長旅の後は外敵を気にせず休みたいようだ。
「分かりました。探してみましょう」
ララクは彼女の意見を尊重して、要望通りの宿屋を探すことにする。
冒険者殺し シームルグを倒した報酬がまだ有り余っているので、少しぐらい贅沢な宿にしても問題はないようだ。
ちなみに、報酬金は基本的にリーダーであるララクが管理している。これは、ゼマだとすぐに酒代へと消えそうだから、という至極まっとうな理由によるものだった。
2人は宿屋を探しに、大通りを通過していく。
ここは市場になっていて、軽食やお土産品などを売るお店が並んでいた。
「っあ、チョコバナナだって。買っていい?」
祭りに来た子供のような燥ぎようで、ゼマはそのお店を指さした。
お腹も減っているようだ。
「どうぞ、これ」
ララクは財布から銅貨を取り出して彼女に渡した。ゼマは自分のことを「おねぇさん」と言っていたが、これではララクのほうが兄のように見える。
「サンキュー。あんたもいる?」
「じゃあ、お願いします」
そう言われると彼も小腹が空いている気がしたようで、彼女にお使いを頼んだ。といっても、チョコバナナのお店はほんの少しだけ先なだけだ。
女性と子供に人気なようで、それなりに盛況だった。
ララクはその間に、他のお店を見て回ることにした。
彼が興味を惹かれたのは、道具屋だった。ここは主に冒険者が戦闘で使うような道具から、日常的に使える魔法道具を取り扱っている。
魔法道具とは、スキルが付与された道具、または特殊な素材で作られており魔力を流し込むことでスキルを扱える物、のことを主に差す言葉だ。
「そこのぼっちゃん。見て行ってくれぇい」
ララクに声をかけたのは、店主の老齢なおばあさんだった。少しかすれた声で、彼のことを手招きした。
時間つぶしに丁度いいと、彼はそれに釣られたように店内に入っていく。
(ポーション、ハイポーションか。でもゼマさんがいるし、これは必要ないか)
目に飛び込んできた澄んだ緑色の液体の入った瓶を手に取り、買うか考えだす。が、すぐに却下となった。
(マジカポーション。これは買っておくか)
彼が選んだのは、水色の液体が入った小瓶だ。これはポーションと違って、傷を癒すのではなく魔力を回復してくれる。これがあれば、スキルを使い放題ということだ。
ただし、スキルを使うたびにこれを飲むわけにはいかないので、スキルの無駄撃ちには気をつけたいところだ。
これを購入しようと思ったのは、ララクが大量に魔力を使う事、そしてゼマも同じだからだろう。
使うかどうかは分からないが、金銭的にも余裕があるので購入を決定したようだ。
「これを下さい」
箱に入ったマジカポーションをまとめて買うことにした。普通はかさばるのでいくつもは持てないが、彼は亜空間に物を収納できる【ポケットゲート】というスキルを持っているので問題ない。
「ありがとねぇ。そうだ、これなんかはどうだい?」
店主はしわも多く目を細いので、一見寝ているように見える。が、頭と言葉ははっきりしており、お客であるララクに他の商品をお勧めしだした。
「これは、なんでしょうか?」
「リンク石、っていうんだぁよ。2つで1つ。どちらかが魔力を流せば、もう1つに位置が伝わる」
お会計カウンターの端に会った艶のある四角い2つの石。小さな石板のようでもあった。文字などは書かれていないが。
「あ、聞いたことあります。待ち合わせに便利だって」
この商品は、そこまで高級品でも掘り出し物というわけでもない。冒険者というよりは、一般の人が使うことが多い。
この石は、2つの石を2人で分けて使用する。そして、説明通り魔力を流し込むと、石にざっくりとした位置情報が伝わるのだ。
恋人同士、友人同士で持つことも多い。
冒険者も持っていないことはないが、マストアイテムではない。
パーティーを組んでいれば必然的に一緒に行動することが多い。なので、まずはぐれることがあまりない。
が、方向音痴だったり戦闘スタイル的に大きく離れて戦う場合など、パーティーによっては持っている場合がある。
(リンク石か。ボクなら有効活用できるかも)
あまり冒険者にはウケのいい商品ではないが、彼の興味は引かれたようだ。すぐにリンク石も購入することにした。
「ありがとうなぁ」
店主はおぼつきながらも、会計をすまして行く。すぐに【ポケットゲート】を開いてしまったので、袋は貰わなかった。
そうしてお店をあとにした頃、串に刺さったチョコバナナを食べているゼマがやってきた。
のだが、両手に持った2つのチョコバナナをすでに完食しかけていた。1つはララクの分だったはずだ。
「あれ、もうないんですけど」
「ごめんごめん。美味しかったから食べちゃったよ。っあ、でも少し残ってるよ、ほら」
ゼマは片方の串にまだ少しだけバナナが残っていることを見せる。だが、下のほうの部分なのでチョコが余りかかっていない。
それでも、もうバナナの口になっていたので、ララクは食べることにした。
「はい。あーん」
ゼマはわざとらしくそう言いながら、串をララクの口に近づける。
そしてそれを、ララクはパクリと食べてみせた。
「うん、美味しいです。とても良いバナナを使ってますね」
「あんた、バナナの違いが分かる男なんだね」
「いや、ちょっと言ってみただけです」
ララクは別に食通でもなんでもない。常に金欠状態だったので、どちらかと言えば舌は超えていない方だろう。
2人はチョコバナナを食べ終わると(ほぼゼマが食べた)、宿屋探しを続行するのだった。
お昼時で、買い物を楽しむ人などが多く見受けられる。
「ふぅ。久々に来たけど、相変わらず広いな~」
背伸びをしながら、首都の景色を楽しむのは、ヒーラー兼アタッカーであるゼマ・ウィンビーだ。
彼女は、ここでも活動していた時期があるようだ。
それに対して、ララクは始めてくる都会なので、目を輝かせながら見上げている。
「あんなに大きな建物があるなんて。ジンドの街でも凄いと思っていましたけど、ここはさらに発展していますね」
ララクは様々なお店が入った数階建てのショッピング施設に目をやっていた。木造建築主体の街なので視覚的に圧倒はされるが、圧迫されるというほどではない。昔ながらの様式と発展途上の文化が入り混じった独特な景観になっている。
「あれ、あんたってあそこ出身じゃないんだっけ?」
「あ、はい。もっと田舎から出てきたんです。冒険者パーティーを探しに」
もっとララクが若いころ、彼は地元を離れてジンドの街にやってきた。そこで100回というとんでもない回数の追放宣言を受けることとなったのだ。
「そうだったんだ。案外、地元近いかもね。私も田舎出身だからさ」
「そうなんですか。でも、ゼマさんはそんな風に見えないですね」
ゼマとララクは一度同じクエストをこなしただけで、知り合ったばかりだ。ここにくる山道で軽く交流は深めたものの、まだお互いのことを詳しく知らない。
「そう? 私も都会に似合う女、になったのかもね。おねぇさんに惚れるなよ?」
ゼマはララクの言葉を嬉しそうにしながら受け止めると、体をくねらせて頬に手をあてて独特なポーズをとった。どうやら、ララクを誘惑しているようだ。
「……大丈夫です」
「そこは、少しぐらい照れなさいよ」
冗談と分かっていないのか、分かっていながらなのかは分からないが、ララクは冷たいリアクションをとった。
「すみません。あの、それでこの後は特に急用もないので、宿に向かおうかと思うんですが」
「そうだね~。別に明確な目的があってきたわけじゃないんだもんね。風呂も入りたいしちょっと休もっか。っあ、大浴場がある所ね」
ここ数日間は山でキャンプだったので、ゆったりと休息はとれていない。山にはモンスターが生息しているので、いつ襲われてもおかしくない。なので、交代で睡眠をとるか短く浅い睡眠をとるのが基本だ。
体調不良を起こすほど疲れてはいないが、長旅の後は外敵を気にせず休みたいようだ。
「分かりました。探してみましょう」
ララクは彼女の意見を尊重して、要望通りの宿屋を探すことにする。
冒険者殺し シームルグを倒した報酬がまだ有り余っているので、少しぐらい贅沢な宿にしても問題はないようだ。
ちなみに、報酬金は基本的にリーダーであるララクが管理している。これは、ゼマだとすぐに酒代へと消えそうだから、という至極まっとうな理由によるものだった。
2人は宿屋を探しに、大通りを通過していく。
ここは市場になっていて、軽食やお土産品などを売るお店が並んでいた。
「っあ、チョコバナナだって。買っていい?」
祭りに来た子供のような燥ぎようで、ゼマはそのお店を指さした。
お腹も減っているようだ。
「どうぞ、これ」
ララクは財布から銅貨を取り出して彼女に渡した。ゼマは自分のことを「おねぇさん」と言っていたが、これではララクのほうが兄のように見える。
「サンキュー。あんたもいる?」
「じゃあ、お願いします」
そう言われると彼も小腹が空いている気がしたようで、彼女にお使いを頼んだ。といっても、チョコバナナのお店はほんの少しだけ先なだけだ。
女性と子供に人気なようで、それなりに盛況だった。
ララクはその間に、他のお店を見て回ることにした。
彼が興味を惹かれたのは、道具屋だった。ここは主に冒険者が戦闘で使うような道具から、日常的に使える魔法道具を取り扱っている。
魔法道具とは、スキルが付与された道具、または特殊な素材で作られており魔力を流し込むことでスキルを扱える物、のことを主に差す言葉だ。
「そこのぼっちゃん。見て行ってくれぇい」
ララクに声をかけたのは、店主の老齢なおばあさんだった。少しかすれた声で、彼のことを手招きした。
時間つぶしに丁度いいと、彼はそれに釣られたように店内に入っていく。
(ポーション、ハイポーションか。でもゼマさんがいるし、これは必要ないか)
目に飛び込んできた澄んだ緑色の液体の入った瓶を手に取り、買うか考えだす。が、すぐに却下となった。
(マジカポーション。これは買っておくか)
彼が選んだのは、水色の液体が入った小瓶だ。これはポーションと違って、傷を癒すのではなく魔力を回復してくれる。これがあれば、スキルを使い放題ということだ。
ただし、スキルを使うたびにこれを飲むわけにはいかないので、スキルの無駄撃ちには気をつけたいところだ。
これを購入しようと思ったのは、ララクが大量に魔力を使う事、そしてゼマも同じだからだろう。
使うかどうかは分からないが、金銭的にも余裕があるので購入を決定したようだ。
「これを下さい」
箱に入ったマジカポーションをまとめて買うことにした。普通はかさばるのでいくつもは持てないが、彼は亜空間に物を収納できる【ポケットゲート】というスキルを持っているので問題ない。
「ありがとねぇ。そうだ、これなんかはどうだい?」
店主はしわも多く目を細いので、一見寝ているように見える。が、頭と言葉ははっきりしており、お客であるララクに他の商品をお勧めしだした。
「これは、なんでしょうか?」
「リンク石、っていうんだぁよ。2つで1つ。どちらかが魔力を流せば、もう1つに位置が伝わる」
お会計カウンターの端に会った艶のある四角い2つの石。小さな石板のようでもあった。文字などは書かれていないが。
「あ、聞いたことあります。待ち合わせに便利だって」
この商品は、そこまで高級品でも掘り出し物というわけでもない。冒険者というよりは、一般の人が使うことが多い。
この石は、2つの石を2人で分けて使用する。そして、説明通り魔力を流し込むと、石にざっくりとした位置情報が伝わるのだ。
恋人同士、友人同士で持つことも多い。
冒険者も持っていないことはないが、マストアイテムではない。
パーティーを組んでいれば必然的に一緒に行動することが多い。なので、まずはぐれることがあまりない。
が、方向音痴だったり戦闘スタイル的に大きく離れて戦う場合など、パーティーによっては持っている場合がある。
(リンク石か。ボクなら有効活用できるかも)
あまり冒険者にはウケのいい商品ではないが、彼の興味は引かれたようだ。すぐにリンク石も購入することにした。
「ありがとうなぁ」
店主はおぼつきながらも、会計をすまして行く。すぐに【ポケットゲート】を開いてしまったので、袋は貰わなかった。
そうしてお店をあとにした頃、串に刺さったチョコバナナを食べているゼマがやってきた。
のだが、両手に持った2つのチョコバナナをすでに完食しかけていた。1つはララクの分だったはずだ。
「あれ、もうないんですけど」
「ごめんごめん。美味しかったから食べちゃったよ。っあ、でも少し残ってるよ、ほら」
ゼマは片方の串にまだ少しだけバナナが残っていることを見せる。だが、下のほうの部分なのでチョコが余りかかっていない。
それでも、もうバナナの口になっていたので、ララクは食べることにした。
「はい。あーん」
ゼマはわざとらしくそう言いながら、串をララクの口に近づける。
そしてそれを、ララクはパクリと食べてみせた。
「うん、美味しいです。とても良いバナナを使ってますね」
「あんた、バナナの違いが分かる男なんだね」
「いや、ちょっと言ってみただけです」
ララクは別に食通でもなんでもない。常に金欠状態だったので、どちらかと言えば舌は超えていない方だろう。
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