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第51話 行列
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「冒険者、に見えるな。だが、なぜあれほどの人数がこんな朝早くに?」
4人はギルドに視線を移すと、そこに大勢の鎧や武器を持った冒険者が集まっていることに気がつく。
ギルドはやっているので、開店待ちというわけではないことは分かっていた。
その集団の1人がデフェロットたちに気がついた。
「おい、もしかしてあいつらじゃない?」
それを聞いた集団が一斉にデフェロットたちのほうを振り向く。
その動きを見て、疾風怒濤の4人は一瞬だけ「ビクッ」と体が止まった。
「えーと確か目撃情報によりゃ、つり目のヤバい奴に、美人の狐女、あとは渋いタンク。それと、あれが例の子供だと思うぞ」
詳しく知っていそうな冒険者が、持っている情報と4人の容姿を照らし合わせた。どうやら、彼らは4人の帰りを待っていたようだ。
「おいおい、なんだよ。あいつら近づいてくんぞ」
「ちょ、なに? 怖いんだけど」
「おい、俺の後ろに下がるな」
「す、すいません。怖くて」
いつもの癖なのか、タンクであるガッディアの背後に身を隠す3人。だが、ガッディアはモンスターから身を守ったことは何度もあるが、同業者となると話は変わってくる。
数で言えば、あちら側の方が圧倒的に多い。
「な、なんのようだ? おまえたち。……ん? なにか見た顔ばかりだな」
彼らの元にやってくる冒険者たちの顔に、ガッディアは見覚えがあった。それを聞いた他の3人も、微かに思い出していく。
「あ、こいつら、俺たちが聞き込みした相手じゃねぇか」
「そういえばそうかもね」
ジュタの情報を得るために、あちこちのギルドを疾風怒濤は探し回っていた。そして、そこで冒険者に片っ端から声をかけた。
その人たちが、何故か今度は彼らを探しにここで待っていたのだ。
「おう、そうだよ。なぁ、その子が「隠れスキルが分かる」って子だろ?」
「あん? まぁ、そうだけどよ」
冒険者たちの目線は、デフェロットたちではなく、明らかにジュタの方を向いていた。がたいのいいガッディアの陰に隠れているが、少し顔が出てしまっている。
「ぼ、僕になにかようですか?」
大勢の人間に押し寄せられることなど経験したことがないので、圧迫感で気絶しそうなほど動揺している。
「隠れスキルで馬鹿みてぇに強くなった冒険者がいたらしくてな。だから、おいらたちにもそれがあれば、もっと強くなれると思ったんだよ」
冒険者の1人が期待に胸を膨らませながら饒舌に語った。
「そうそう。なんか、巨獣を倒せるぐらいでっかくなっちまったとか」
「いや、俺は水の中でも生活できるようになるって聞いたぞ」
「私は一瞬で敵を倒せるスキルを持った、って聞いたけど?」
どうやら、随分噂話に尾ひれがついているようだ。これが最近、隠れスキルを得たことにより強くなった弱小ヒーラーのことを言っているとしたら、だいぶ情報が間違っている。
(もしや、ララクのことか?)
ガッディアだけ、なんとなく彼の話をしているんじゃないかと予想できた。しかし、確証はなかったので、声には出さなかった。
「その噂はよく分かんねぇが、つまりこいつにお前らも鑑定して欲しい、ってことか?」
だんだんと彼らの行動理由が、デフェロットに伝わっていく。
「そうなんだよ。なぁ、いいだろ??」
冒険者たちはジュタに詰め寄っていく。それをみて、ジュタはさらに怯えていく。
「こいつが良ければな。どうすんだよ、ジュタ」
デフェロットは、鑑定する際にジュタが、自分たちに条件を出してきたことを思い出す。無条件で鑑定するのは損した気分になるが、自分のことではないので、ジュタ本人に決めさせることにした。
「え、あ、もうバレてしまったから仕方ないですよね……。あの調べるのはいいんですけど、その代わりこれ以上は噂を広めないで貰ってもいいでしょうか?」
怯えながらも頭は回っているようで、しっかりと交渉しだした。これは、冒険者たちには特にデメリットがないので、みなすぐにこの条件を飲んだ。
「あの、皆さんは先にギルドに行ってもらって大丈夫です。たぶん、この人数となると時間がかかるので」
彼が【サーチング・スニークスキル】を発動するのに、それほど時間はかからない。が、一気に対象にできる数は決まっている。
さらに、これもスキルなので魔力を消費する。魔力が自然に回復するのを待つ時間も出てくると考え、ジュタは長時間かかることを予期したようだ。
「わかった。俺らはそのまま宿に行く。近くの宿だ。分かんなかったら、自力で探せ」
「早くお風呂に入りたーい」
「ジュタ、頑張れよ」
デフェロットたちは、オーク討伐を報告するために、ギルドに歩いていった。彼らはジュタのスキルを独占したいわけではないので、彼を貸し出すのは特に抵抗はなかった。
オーク退治では戦闘はしていないので、体力も余っていると判断されたのかもしれない。
「じゃあ、さっそく調べてくれ」
「いや、俺が先だ」
「ちょっと、押さないでよ」
冒険者の集団がさらに、ジュタへと詰め寄る。
「あの危ないので、並んでもらってもいいでしょうか? 時間はかかりますけど、全員調べますので」
それを聞いた冒険者たちは、綺麗な一列になっていく。
謎の行列はかなり目立っており、何の列か分からずに、並び始めた人もいた。
4人はギルドに視線を移すと、そこに大勢の鎧や武器を持った冒険者が集まっていることに気がつく。
ギルドはやっているので、開店待ちというわけではないことは分かっていた。
その集団の1人がデフェロットたちに気がついた。
「おい、もしかしてあいつらじゃない?」
それを聞いた集団が一斉にデフェロットたちのほうを振り向く。
その動きを見て、疾風怒濤の4人は一瞬だけ「ビクッ」と体が止まった。
「えーと確か目撃情報によりゃ、つり目のヤバい奴に、美人の狐女、あとは渋いタンク。それと、あれが例の子供だと思うぞ」
詳しく知っていそうな冒険者が、持っている情報と4人の容姿を照らし合わせた。どうやら、彼らは4人の帰りを待っていたようだ。
「おいおい、なんだよ。あいつら近づいてくんぞ」
「ちょ、なに? 怖いんだけど」
「おい、俺の後ろに下がるな」
「す、すいません。怖くて」
いつもの癖なのか、タンクであるガッディアの背後に身を隠す3人。だが、ガッディアはモンスターから身を守ったことは何度もあるが、同業者となると話は変わってくる。
数で言えば、あちら側の方が圧倒的に多い。
「な、なんのようだ? おまえたち。……ん? なにか見た顔ばかりだな」
彼らの元にやってくる冒険者たちの顔に、ガッディアは見覚えがあった。それを聞いた他の3人も、微かに思い出していく。
「あ、こいつら、俺たちが聞き込みした相手じゃねぇか」
「そういえばそうかもね」
ジュタの情報を得るために、あちこちのギルドを疾風怒濤は探し回っていた。そして、そこで冒険者に片っ端から声をかけた。
その人たちが、何故か今度は彼らを探しにここで待っていたのだ。
「おう、そうだよ。なぁ、その子が「隠れスキルが分かる」って子だろ?」
「あん? まぁ、そうだけどよ」
冒険者たちの目線は、デフェロットたちではなく、明らかにジュタの方を向いていた。がたいのいいガッディアの陰に隠れているが、少し顔が出てしまっている。
「ぼ、僕になにかようですか?」
大勢の人間に押し寄せられることなど経験したことがないので、圧迫感で気絶しそうなほど動揺している。
「隠れスキルで馬鹿みてぇに強くなった冒険者がいたらしくてな。だから、おいらたちにもそれがあれば、もっと強くなれると思ったんだよ」
冒険者の1人が期待に胸を膨らませながら饒舌に語った。
「そうそう。なんか、巨獣を倒せるぐらいでっかくなっちまったとか」
「いや、俺は水の中でも生活できるようになるって聞いたぞ」
「私は一瞬で敵を倒せるスキルを持った、って聞いたけど?」
どうやら、随分噂話に尾ひれがついているようだ。これが最近、隠れスキルを得たことにより強くなった弱小ヒーラーのことを言っているとしたら、だいぶ情報が間違っている。
(もしや、ララクのことか?)
ガッディアだけ、なんとなく彼の話をしているんじゃないかと予想できた。しかし、確証はなかったので、声には出さなかった。
「その噂はよく分かんねぇが、つまりこいつにお前らも鑑定して欲しい、ってことか?」
だんだんと彼らの行動理由が、デフェロットに伝わっていく。
「そうなんだよ。なぁ、いいだろ??」
冒険者たちはジュタに詰め寄っていく。それをみて、ジュタはさらに怯えていく。
「こいつが良ければな。どうすんだよ、ジュタ」
デフェロットは、鑑定する際にジュタが、自分たちに条件を出してきたことを思い出す。無条件で鑑定するのは損した気分になるが、自分のことではないので、ジュタ本人に決めさせることにした。
「え、あ、もうバレてしまったから仕方ないですよね……。あの調べるのはいいんですけど、その代わりこれ以上は噂を広めないで貰ってもいいでしょうか?」
怯えながらも頭は回っているようで、しっかりと交渉しだした。これは、冒険者たちには特にデメリットがないので、みなすぐにこの条件を飲んだ。
「あの、皆さんは先にギルドに行ってもらって大丈夫です。たぶん、この人数となると時間がかかるので」
彼が【サーチング・スニークスキル】を発動するのに、それほど時間はかからない。が、一気に対象にできる数は決まっている。
さらに、これもスキルなので魔力を消費する。魔力が自然に回復するのを待つ時間も出てくると考え、ジュタは長時間かかることを予期したようだ。
「わかった。俺らはそのまま宿に行く。近くの宿だ。分かんなかったら、自力で探せ」
「早くお風呂に入りたーい」
「ジュタ、頑張れよ」
デフェロットたちは、オーク討伐を報告するために、ギルドに歩いていった。彼らはジュタのスキルを独占したいわけではないので、彼を貸し出すのは特に抵抗はなかった。
オーク退治では戦闘はしていないので、体力も余っていると判断されたのかもしれない。
「じゃあ、さっそく調べてくれ」
「いや、俺が先だ」
「ちょっと、押さないでよ」
冒険者の集団がさらに、ジュタへと詰め寄る。
「あの危ないので、並んでもらってもいいでしょうか? 時間はかかりますけど、全員調べますので」
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