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第43話 思わぬ出合い

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「あー、もう全然ダメ。進展なし」

「噂すら聞かねぇな」

「まぁ、もともとダメ元で来たんだ。もう少し頑張ろうじゃないか」

 都についた次の日ことだ。
 3人は、「平原の狩人」というギルドで、一時休憩をとっていた。
 すっかり外は暗くなっていた。
 一日中、「隠れスキルが分かる冒険者」を探しているのだが、収穫は一切なかった。

 デフェロットたちが聞いた冒険者の中には「そんな奴がいたら、こっちが教えて欲しい」という者もいた。

 隠れスキルを必要としている冒険者に広まっていない時点で、真偽が怪しくなっていた。

「どうすっかなぁ。まだ金には余裕があるが、長引くようだとクエストもしねぇとだぞ」

 彼らは今日一日中、お金を一銭も稼いでいない。だが、宿代や食事代は消えていく。3人分となると、それなりに金額はいく。
 ケルベアスの素材を売った膨大な金は、彼の言った通りまだ余裕がある。が、あとどれほど捜索をするか分からないので、少々余裕がなくなってきていた。

「クエストをやるのはいいが、そうなると、さらに期間が延びてしまう、か」

 デフェロットとレニナに関しては、元々宿暮らしだったので、首都でクエストをやりながら人探しを続けるのは、あまり問題はなかった。
 しかし、家族とジンドの街に住んでいるガッディアは違う。

「娘ちゃんに会いたくなっちゃった?」

「……まあな。パパ、と懐いてくれるのが今だけなんじゃないかと思うと、今のうちにちゃんと触れ合っておかないといけない気がしてな」

 ガッディアは、離れた場所にいる娘の顔を思い出す。といっても、まだ離れて一週間も経っていない。

「っち。あんまり長い期間はここに入れねぇか」

 リーダーとして、一応メンバーの気持ちをないがしろにする気はないようだ。ガッディアはああいったが、実際問題一家の大黒柱として、クエストなどで稼いでお金を定期的に家に入れなければいけない。娘の養育費も、これからさらに増えることだろう。

 デフェロットが今後の動きを考えている時だった。彼らは、また新しい人物に声をかけられることとなる。

「……あの、すみません。ちょっとお話いいですか?」

 か細い声で、髪の長い小柄な少年が話しかけてきた。前髪が目の所まで伸びており、かろうじて瞳が分かるほど長い。

 ボロボロの布服とマントを着ており、魔法使いらしき装備をしている。ギルド内にいるので、彼も冒険者なようだ。

「あん? なんだよ」

 つい最近、変なおやじとその弟子に絡まれたので、デフェロットは威嚇するように少年を睨む。

 その眼差しに怯えながらも、少年は勇気を出して言葉を紡ぐ。

「あの……人を探しているんですよね?」

 その一言を聞いて、デフェロットだけではなくガッディアたちの顔つきも変わった。今日一日、探し続けていたが、他人からその話を持ち掛けられたのは初めてだった。

「お前、まさかなんか知ってんのか?」

「えぇ、まぁ。実は他のギルドで皆さんが僕を探しているのを知っていたんですけど、なかなか声をかけれなくて。
 すみません」

 どうやら彼がここ、「平原の狩人」というギルドにやってきたのは、彼らに話しかけるためだったらしい。
 だが、人見知りするタイプなのか、すぐに話しかけられなかった。その理由の1つに、デフェロットの雰囲気が怖いと感じたから、は入っている事だろう。

 何故か謝罪する彼の言った言葉の中に、3人は気になることがあった。

「おい今、僕を探してるって、言ったか?」

「……まさか」

「っえ、あんたがスキルを持ってんの?」

 全く見つからないと嘆いた矢先に、探し人からコンタクトをとってくるとは思っていなかったようだ。

「はい。僕のスキルなら、相手が隠れスキルを持っているかが、分かります」

 萎縮しながら喋ってはいるが、あいまいな発言はせずにしっかりと言い切っていた。
 そんな態度を見て、デフェロットたちは冷やかしで言っている、とは感じなかった。

「おいおい、まじかよ! そこら中のギルド行ったかいはあったなぁ」

 疲れもあってか不機嫌そうだったデフェロットだが、それは一瞬で回復した。

 他の2人も、それぞれ喜びを表に出す。

「はぁ~、よかったあぁ。これで明日は探さなくてすむね」

「早く見つかってよかったよ。正直、心の中では焦っていた部分もあった」

 レニナだけではなく、ガッディアも安堵した表情をしている。最低でも、あと数日は捜索を続けなければいけないと考えてたのかもしれない。

「おいお前、名前は?」

「ジュタ・ロロンアルファって言います。一応、冒険者です」

 彼は簡単に自己紹介をする。見たところ、パーティーを組んでいる様子はなかった。まだ若いようだし、デフェロットは「新人か?」と思っていた。

「そうか。おいジュタ、さっそくそのスキルを使ってくれねぇか? 声をかけてきたってことは、お前もそのつもりなんだろ?」

 デフェロットは明らかに友好的に、ジュタと話していた。

「……はい、そのつもりです。ただ、条件があります」

「条件、だと?」

 そのワードを聞いて、デフェロットの顔が険しくなり始める。さっきまで明るく接していた分、その表情はジュタをさらに怯えさす。
 この様子を見る限り、そうとう彼らに声をかけるのに勇気を振り絞ったのだろう。

「まぁ、そんな顔をするな。俺たちは彼に依頼する立場だ。もしこれをクエストとして出せば、それなりにお金がかかる。
 幸い、早く見つかった分、金銭的な余裕はあるじゃないか」

 その口ぶりから察するに、ガッディアは見つけた後のことも想像していたようだ。タダでは見て貰えないことも、予想済みなようだ。

「まぁ~、とりあえず聞いてみるしかないでしょ」

「っち。おい、その条件って何だよ」

 仲間の意見を聞き、少しだけ冷静になるデフェロット。

 他の2人が寛容的だったので、ジュタの怯えようが僅かだが緩和されていく。

「あの、こんなこというのは変なのは分かっているんですが……。僕を、パーティーに入れてくれませんか?」

「はぁ?」

「なんと」

「マジで言ってるの?」

 ジュタの条件に、またもや驚く3人。消極的な子供に見えて、ジュタは意外とだいたんなことを条件に出してきた。
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