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第40話 別れ
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「ステーキ、ステーキ♪」
上機嫌でフォークとナイフを使いながら、ゼマは目の前にある鉄板にのったステーキにかぶりつく。
「うぅーん、うますぎぃ」
とろけてしまいそうなほど表情を緩ませる。そのあと、ビールを喉に流し込んで「ぶは~」と息を吐く。豪快で見ごたえのある飲みっぷりと食べっぷりだ
牛豚と呼ばれる家畜モンスターで、脂肪と肉のバランスが良いのが特徴。少し値段ははるが、ゼマは躊躇なくこのステーキを頼んだ。
肉汁が、彼女のぷっくりとした唇についていた。
「いっぱい食べますね」
ララクが頼んだのは、一般的なカルボナーラだ。レシピはシンプルだが、濃厚な卵と牛乳を使っており、味はかなり濃い。
彼らは自分たちへのご褒美だと奮発して、ギルド内にある酒場で食事を楽しんでいた。主にゼマだが。最初から決めていたわけではないが、味の濃いものを多く摂取していた。
依頼主は組織ではなく、1人の冒険者だったのでそこまで報酬金は高くなかった。しかし、国から特別報酬が追加で支払われたのだ。
これで、ララクが冒険者狩りと激闘を繰り広げたセファー山を本格的に開拓できると、国の役人たちが喜んでいるそうだ。
まだ別個体のシームルグや他に危険生物がいるかもしれないので、慎重に調査を進めることになるだろう。
「空腹を回復することは出来ないからね。食べれる時に食べとかないと。
あんたも酒はいいけど、もっと食べたり飲んだら?」
「そうですね……。あ、すいません。メロンソーダとプリンを貰えますか?」
近くにいたウェイターに追加注文する。彼の食べているカルボナーラはあと少しでなくなりそうなので、デザートを頼むにはちょうどいいタイミングだ。
「見た目は幼いけど、しっかりしてる。でも、ちゃんと子供っぽいとこもあんだね」
お子様見たな注文をしたことが少しおかしかったようで、ゼマはにやついていた。
「ですかね。あと、一応ですけど成人してますから」
「いやー、みえないね~」
ララクは18歳で、この国では酒を飲める年齢であり成人とされている。選挙権もしっかりと持っている。
のだが、目がマルっとしていて口も小さなので、-3歳かそれよりも若く見られることが多い。
酔っ払ったゼマにちょくちょくからかわれながらも、ララクは食事を進めていく。しばらくしてテーブルに運ばれてきたプリンが好みの味だったようで、無邪気に微笑みながらな完食していった。
そしてメロンジュースをストローで飲んで、満腹で幸せな食後の時間を楽しんでいた。
そこに、仕事がひと段落した様子の受付嬢が近づいてきた。
「改めてお疲れ様。依頼主も上の人も大喜びだって」
「ゼマさんのおかげでなんとか倒せました。1人だと、達成できたかは分かりません」
「ま、そうね」
謙遜することなく答えるゼマ。実際、彼女のアシストがなければ、止めは刺せなかったかもしれない。
それほどの相手だったのだ。
「いい仲間が見つかってよかったね。それで……もう、すぐに首都に向かうの?」
「そう、ですね。ゼマさんが良ければ」
「私はなんでもいいよ。拠点がある訳じゃないし」
冒険者によっては1つのギルドでクエストを行うが、複数のギルドを転々としている者も多い。
今のゼマはどちらかというと後者のようだ。
「だそうなので、準備が出来次第行こうかと」
シームルグのような相手でも戦えるということが今回のクエストで分かった。冒険者パーティー【ハンドレッド】は、上級クエストも問題なく行えるということだ。
ならば、ここに留まる別の理由がない限りは、首都のギルドで上級クエストを扱う
「そっか。寂しくなわるわね。でも、たまには顔出しなさいよ」
「はい。お世話になりました」
「じゃあ、元気でね」
短いながらも別れの挨拶を交わすと、受付嬢はカウンターへと戻っていった。
ララクはそんな彼女の姿を見ていると、あることを思い出した。
「あの、ほんとにありがとうございました」
ララクはその場から立ち上がり、深く頭を下げた。
それを聞いて、受付嬢は驚いた様子で足を止めて振り返る。
「っえ、どうしたの?」
別れの言葉を言い終わったあとだったので、なぜもう一度感謝を伝えられたのか不思議そうだった。
「よく考えたら、ずっと変わらずボクのことを見守っていてくれていたな、って。初めてここに来た時も、ボクが色んなパーティーを追放されてい時も、そしてソロになった後も。
あなたが、応援し続けてくれたから、頑張れた、のかもしれません」
周囲の中には、なりふりかまわずパーティーに所属しては追放されたことや、ヒーラーだが弱小だったことを馬鹿にしたり卑下する者もいた。
冒険者は実力社会なので、そういった価値観を持った者は多い。
だが、彼女だけは、追放され続けていた時から、ララクのことを気にかけていた。
彼女がララクに好意的だったのは、強くなった時からではなかったのだ。
ララクは、自分が初めてソロで行ったクエスト【小鬼たちが大量発生】をクリアして報告しに行ったときのことを思い出したのだ。
あの時彼女は、ララクが無事に帰ってきてソロで帰ってきたことを喜んでくれた。
だが、その時はまだ、彼がケルベアスを倒したという事実は知らなかった。つまり、受付嬢は彼が強い冒険者だから喜んだんじゃないのだ。
ずっと寄り添ってきた冒険者が、クエストを成功したから喜んでくれていたのだ。
そう考えたララクは、改めて彼女にお礼を伝えることにしたのだ。
「なんだかほっとけなかったからね。少しでもあなたの力に慣れてたなら、よかったわ」
「はい。もっと冒険者として活躍できるよう、頑張ります」
その言葉を最後に、2人のやり取りは終わった。
その会話を、ステーキを食べながらゼマが聞いていた。
「いい別れの挨拶じゃない」
「はぁ、なんだか照れ臭かったですけど」
「食事と一緒。感謝は言える時に言っとかないとね。あ、そういえば【伸縮自在】ありがとね。めっちゃ便利だった」
思い出したかのように、戦いでの補助に対して礼を伝えた。
「いえ。あの良ければ、永続的に効果を付与することもできますけど?」
「そんなこともできるの? 戦いやすかったし、頼もうかな」
「お安い御用です。【スキル付与】+【伸縮自在】」
ゼマの傍にあるアイアンロッドに、同じようにスキル効果を与える。違うのは、ララクの言ったように半永久的に性能が変化し続けるということだ。
つまり、いちいちララクがスキルを使わなくとも、ゼマの意志でいつでも伸び縮み出来るようになるのだ。
「これで大丈夫です。ただ、不用意に魔力を使うと誤って効果が発動してしまう可能性があるので気をつけてください。
でも、ゼマさんなら使いこなせそうですけど」
大胆な戦い方はしているが、レベル40以上というだけあって、繊細にスキルを使いこなせる才能も持ち合わせている。と、ララクはゼマのことを大いに評価していた。
「まぁ、なんだかんだなんでもできちゃうからね。けど、あんたの足引っ張んないように頑張るよ。
よーし、新しい土地でも張り切っていくぞ~」
ビールジョッキを持って、テーブルに置かれたメロンソーサのグラスに、コツンとぶつける。1人で勝手に乾杯を行ったのだ。
「よろしくお願いします」
新しい仲間と冒険に胸を高鳴らせながら、ララクはメロンソーダを飲みほした。
上機嫌でフォークとナイフを使いながら、ゼマは目の前にある鉄板にのったステーキにかぶりつく。
「うぅーん、うますぎぃ」
とろけてしまいそうなほど表情を緩ませる。そのあと、ビールを喉に流し込んで「ぶは~」と息を吐く。豪快で見ごたえのある飲みっぷりと食べっぷりだ
牛豚と呼ばれる家畜モンスターで、脂肪と肉のバランスが良いのが特徴。少し値段ははるが、ゼマは躊躇なくこのステーキを頼んだ。
肉汁が、彼女のぷっくりとした唇についていた。
「いっぱい食べますね」
ララクが頼んだのは、一般的なカルボナーラだ。レシピはシンプルだが、濃厚な卵と牛乳を使っており、味はかなり濃い。
彼らは自分たちへのご褒美だと奮発して、ギルド内にある酒場で食事を楽しんでいた。主にゼマだが。最初から決めていたわけではないが、味の濃いものを多く摂取していた。
依頼主は組織ではなく、1人の冒険者だったのでそこまで報酬金は高くなかった。しかし、国から特別報酬が追加で支払われたのだ。
これで、ララクが冒険者狩りと激闘を繰り広げたセファー山を本格的に開拓できると、国の役人たちが喜んでいるそうだ。
まだ別個体のシームルグや他に危険生物がいるかもしれないので、慎重に調査を進めることになるだろう。
「空腹を回復することは出来ないからね。食べれる時に食べとかないと。
あんたも酒はいいけど、もっと食べたり飲んだら?」
「そうですね……。あ、すいません。メロンソーダとプリンを貰えますか?」
近くにいたウェイターに追加注文する。彼の食べているカルボナーラはあと少しでなくなりそうなので、デザートを頼むにはちょうどいいタイミングだ。
「見た目は幼いけど、しっかりしてる。でも、ちゃんと子供っぽいとこもあんだね」
お子様見たな注文をしたことが少しおかしかったようで、ゼマはにやついていた。
「ですかね。あと、一応ですけど成人してますから」
「いやー、みえないね~」
ララクは18歳で、この国では酒を飲める年齢であり成人とされている。選挙権もしっかりと持っている。
のだが、目がマルっとしていて口も小さなので、-3歳かそれよりも若く見られることが多い。
酔っ払ったゼマにちょくちょくからかわれながらも、ララクは食事を進めていく。しばらくしてテーブルに運ばれてきたプリンが好みの味だったようで、無邪気に微笑みながらな完食していった。
そしてメロンジュースをストローで飲んで、満腹で幸せな食後の時間を楽しんでいた。
そこに、仕事がひと段落した様子の受付嬢が近づいてきた。
「改めてお疲れ様。依頼主も上の人も大喜びだって」
「ゼマさんのおかげでなんとか倒せました。1人だと、達成できたかは分かりません」
「ま、そうね」
謙遜することなく答えるゼマ。実際、彼女のアシストがなければ、止めは刺せなかったかもしれない。
それほどの相手だったのだ。
「いい仲間が見つかってよかったね。それで……もう、すぐに首都に向かうの?」
「そう、ですね。ゼマさんが良ければ」
「私はなんでもいいよ。拠点がある訳じゃないし」
冒険者によっては1つのギルドでクエストを行うが、複数のギルドを転々としている者も多い。
今のゼマはどちらかというと後者のようだ。
「だそうなので、準備が出来次第行こうかと」
シームルグのような相手でも戦えるということが今回のクエストで分かった。冒険者パーティー【ハンドレッド】は、上級クエストも問題なく行えるということだ。
ならば、ここに留まる別の理由がない限りは、首都のギルドで上級クエストを扱う
「そっか。寂しくなわるわね。でも、たまには顔出しなさいよ」
「はい。お世話になりました」
「じゃあ、元気でね」
短いながらも別れの挨拶を交わすと、受付嬢はカウンターへと戻っていった。
ララクはそんな彼女の姿を見ていると、あることを思い出した。
「あの、ほんとにありがとうございました」
ララクはその場から立ち上がり、深く頭を下げた。
それを聞いて、受付嬢は驚いた様子で足を止めて振り返る。
「っえ、どうしたの?」
別れの言葉を言い終わったあとだったので、なぜもう一度感謝を伝えられたのか不思議そうだった。
「よく考えたら、ずっと変わらずボクのことを見守っていてくれていたな、って。初めてここに来た時も、ボクが色んなパーティーを追放されてい時も、そしてソロになった後も。
あなたが、応援し続けてくれたから、頑張れた、のかもしれません」
周囲の中には、なりふりかまわずパーティーに所属しては追放されたことや、ヒーラーだが弱小だったことを馬鹿にしたり卑下する者もいた。
冒険者は実力社会なので、そういった価値観を持った者は多い。
だが、彼女だけは、追放され続けていた時から、ララクのことを気にかけていた。
彼女がララクに好意的だったのは、強くなった時からではなかったのだ。
ララクは、自分が初めてソロで行ったクエスト【小鬼たちが大量発生】をクリアして報告しに行ったときのことを思い出したのだ。
あの時彼女は、ララクが無事に帰ってきてソロで帰ってきたことを喜んでくれた。
だが、その時はまだ、彼がケルベアスを倒したという事実は知らなかった。つまり、受付嬢は彼が強い冒険者だから喜んだんじゃないのだ。
ずっと寄り添ってきた冒険者が、クエストを成功したから喜んでくれていたのだ。
そう考えたララクは、改めて彼女にお礼を伝えることにしたのだ。
「なんだかほっとけなかったからね。少しでもあなたの力に慣れてたなら、よかったわ」
「はい。もっと冒険者として活躍できるよう、頑張ります」
その言葉を最後に、2人のやり取りは終わった。
その会話を、ステーキを食べながらゼマが聞いていた。
「いい別れの挨拶じゃない」
「はぁ、なんだか照れ臭かったですけど」
「食事と一緒。感謝は言える時に言っとかないとね。あ、そういえば【伸縮自在】ありがとね。めっちゃ便利だった」
思い出したかのように、戦いでの補助に対して礼を伝えた。
「いえ。あの良ければ、永続的に効果を付与することもできますけど?」
「そんなこともできるの? 戦いやすかったし、頼もうかな」
「お安い御用です。【スキル付与】+【伸縮自在】」
ゼマの傍にあるアイアンロッドに、同じようにスキル効果を与える。違うのは、ララクの言ったように半永久的に性能が変化し続けるということだ。
つまり、いちいちララクがスキルを使わなくとも、ゼマの意志でいつでも伸び縮み出来るようになるのだ。
「これで大丈夫です。ただ、不用意に魔力を使うと誤って効果が発動してしまう可能性があるので気をつけてください。
でも、ゼマさんなら使いこなせそうですけど」
大胆な戦い方はしているが、レベル40以上というだけあって、繊細にスキルを使いこなせる才能も持ち合わせている。と、ララクはゼマのことを大いに評価していた。
「まぁ、なんだかんだなんでもできちゃうからね。けど、あんたの足引っ張んないように頑張るよ。
よーし、新しい土地でも張り切っていくぞ~」
ビールジョッキを持って、テーブルに置かれたメロンソーサのグラスに、コツンとぶつける。1人で勝手に乾杯を行ったのだ。
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