36 / 113
第36話 彼女の才能
しおりを挟む
(【伸縮自在】を使ってくれたんだ。よし、これで攻めれる)
一瞬だが、攻撃を喰らったことでシームルグがのけぞったので、今がチャンスだとララクは攻めることにした。
「【テレポート】」
行き先はシームルグの頭上だ。
「ジュロロォォォォ」
しかし、ララクのスキル発動と同時にシームルグもスキルを発動しようとしていた。どうやら攻撃を喰らったことでご立腹のようだ。
「い、いない!?」
ララクが【テレポート】した瞬間、シームルグはすでに空中から姿を消していた。
ララクが辺りに目をやると、シームルグが高速で移動したことによる残像が見えていた。
そしてシームルグが超高速で移動した先は、ゼマのいる地上だった。
【ソニックバード】
効果……飛行能力、速度を格段に強化して敵に突進する。翼の性能によって威力と速度は変動する。
こちらも翼を持った種族のみ発動できる、鳥類特有のスキルだ。シームルグは元々の飛行性能が高いので、このスキルの性能も格段に強化されている状態だ。
「う、嘘でしょ!?」
自分に向かってくることは分かったものの、音速に近いスピードを誇るその攻撃を、ゼマが避けることは出来なかった。
「っぐぅわぁぁぁぁ」
速度に加えてシームルグは体重も相当だ。大石が目に見えぬスピードで放り投げられたといってもいいだろう。
そんな攻撃をまともに受ければ、軽装備のゼマがただで済むはずはなかった。
【ソニックバード】を受けた彼女の体は、石ころのように吹っ飛んでいった。
「ゼマさん!」
パーティーメンバーが強烈な攻撃を受けたことを知り、声を荒げるが、人の心配をしている場合ではなかった。
シームルグはその勢いを保ちつつ大きく旋回して、今度は空中にいるララクへと【ソニックバード】で突っ込んできた。
「っく、ぐぅぅぅう」
本当なら【テレポート】で避けるのが最善だったが、そんな隙を相手は与えてはくれなかった。
ララクは咄嗟に、生成していたゴールデンソードを両手持ちにして、その刃の腹でシームルグの嘴を防いでいた。
攻撃は止めることに成功したが、勢いと衝撃は打ち消すことは出来なかった。
【空中浮遊】でなんとか滞空を維持しようするも、シームルグの押す力が凄まじいので、それの動きを完全停止させることは出来ない。
徐々にララクの体が後ろへと下がっていく。
他にスキルを発動して対処したいところだが、一瞬でも力を弱めればこのまま力負けしてしまうだろう。
「ジュロロロロオロロロロ」
お嬢際が悪いと言わんばかりにシームルグが叫ぶ。そして、突進の力が強まっていく。
(どうする。どうすればいい?)
冷静であろうとするも、目の前に巨大なモンスターがいる状態なので、精神的にも気圧されそうだった。
「……ララク、待ってな」
ララクとシームルグの激突を、地上から薄れゆく意識の中で見ていた者がいた。
それは、頭から血を流しているボロボロのゼマだった。
瀕死寸前に思える彼女だったが、頭の傷や突進により折れた骨や打撲傷が、瞬時に癒えていた。
これが、彼女の言う「ヒット&ヒール」の神髄だ。
攻撃をすれば相手の注意を引くことになるので、今回のように怒りの一撃を喰らうこともある。
強烈な攻撃は当たらなければ意味がない。そしてそれと同じく、回復してしまえばダメージはなかったことになる。
彼女は【クイックヒーリング】【ヒーリング】を同時に使用していた。【クイックヒーリング】であってもこの傷を完治させるのには時間が掛かる。だが、【回復力上昇】で強化された【ヒーリング】も使用しているので、時間さえあれば傷は全て治ることだろう。
「……ふぅ、ふぅ……」
アイアンロッドを杖のように使って立ちあがる。足にも怪我を負っていたが、それも徐々に癒えていくだろう。
そして彼女は、治療が完了するのを待つことなく、さらに攻撃を仕掛けるつもりだった。
姿勢は【刺突】とほぼ同じ。繰り出すのもその進化系と言われるスキルだ。
だが、ただの【刺突】と違って動作が長く集中力が必要だ。
それを、完治しきれていない体でやるのは至難の業だ。
しかし、ゼマはこれぐらいで倒れることはない。
「【刺突……乱舞】!」
一瞬で何度も突きを食らわせるスキルだ。相手に向かって棒を放つだけではなく、すぐさま自分の元へと戻す必要がある。
そして、再び敵へと突きを繰り出す。それを繰り返すのだ。
もともとの技術がなければ、【刺突乱舞】の性能は低下する。
さらに【伸縮自在】によって伸びてしまえば、引き戻すまでの時間がかかってしまう。
一瞬で自分の元へと戻すには、【伸縮自在】を解除する必要がある。
そうすれば自然と元に戻っていく。
しかし、一瞬の乱舞の中でスキルの発動と解除を行うのは困難だ。
だが、ゼマはそれをやってのけた。
持ち前の戦闘センスで、初見のスキルを使いこなしてしまったのだ。
一瞬だが、攻撃を喰らったことでシームルグがのけぞったので、今がチャンスだとララクは攻めることにした。
「【テレポート】」
行き先はシームルグの頭上だ。
「ジュロロォォォォ」
しかし、ララクのスキル発動と同時にシームルグもスキルを発動しようとしていた。どうやら攻撃を喰らったことでご立腹のようだ。
「い、いない!?」
ララクが【テレポート】した瞬間、シームルグはすでに空中から姿を消していた。
ララクが辺りに目をやると、シームルグが高速で移動したことによる残像が見えていた。
そしてシームルグが超高速で移動した先は、ゼマのいる地上だった。
【ソニックバード】
効果……飛行能力、速度を格段に強化して敵に突進する。翼の性能によって威力と速度は変動する。
こちらも翼を持った種族のみ発動できる、鳥類特有のスキルだ。シームルグは元々の飛行性能が高いので、このスキルの性能も格段に強化されている状態だ。
「う、嘘でしょ!?」
自分に向かってくることは分かったものの、音速に近いスピードを誇るその攻撃を、ゼマが避けることは出来なかった。
「っぐぅわぁぁぁぁ」
速度に加えてシームルグは体重も相当だ。大石が目に見えぬスピードで放り投げられたといってもいいだろう。
そんな攻撃をまともに受ければ、軽装備のゼマがただで済むはずはなかった。
【ソニックバード】を受けた彼女の体は、石ころのように吹っ飛んでいった。
「ゼマさん!」
パーティーメンバーが強烈な攻撃を受けたことを知り、声を荒げるが、人の心配をしている場合ではなかった。
シームルグはその勢いを保ちつつ大きく旋回して、今度は空中にいるララクへと【ソニックバード】で突っ込んできた。
「っく、ぐぅぅぅう」
本当なら【テレポート】で避けるのが最善だったが、そんな隙を相手は与えてはくれなかった。
ララクは咄嗟に、生成していたゴールデンソードを両手持ちにして、その刃の腹でシームルグの嘴を防いでいた。
攻撃は止めることに成功したが、勢いと衝撃は打ち消すことは出来なかった。
【空中浮遊】でなんとか滞空を維持しようするも、シームルグの押す力が凄まじいので、それの動きを完全停止させることは出来ない。
徐々にララクの体が後ろへと下がっていく。
他にスキルを発動して対処したいところだが、一瞬でも力を弱めればこのまま力負けしてしまうだろう。
「ジュロロロロオロロロロ」
お嬢際が悪いと言わんばかりにシームルグが叫ぶ。そして、突進の力が強まっていく。
(どうする。どうすればいい?)
冷静であろうとするも、目の前に巨大なモンスターがいる状態なので、精神的にも気圧されそうだった。
「……ララク、待ってな」
ララクとシームルグの激突を、地上から薄れゆく意識の中で見ていた者がいた。
それは、頭から血を流しているボロボロのゼマだった。
瀕死寸前に思える彼女だったが、頭の傷や突進により折れた骨や打撲傷が、瞬時に癒えていた。
これが、彼女の言う「ヒット&ヒール」の神髄だ。
攻撃をすれば相手の注意を引くことになるので、今回のように怒りの一撃を喰らうこともある。
強烈な攻撃は当たらなければ意味がない。そしてそれと同じく、回復してしまえばダメージはなかったことになる。
彼女は【クイックヒーリング】【ヒーリング】を同時に使用していた。【クイックヒーリング】であってもこの傷を完治させるのには時間が掛かる。だが、【回復力上昇】で強化された【ヒーリング】も使用しているので、時間さえあれば傷は全て治ることだろう。
「……ふぅ、ふぅ……」
アイアンロッドを杖のように使って立ちあがる。足にも怪我を負っていたが、それも徐々に癒えていくだろう。
そして彼女は、治療が完了するのを待つことなく、さらに攻撃を仕掛けるつもりだった。
姿勢は【刺突】とほぼ同じ。繰り出すのもその進化系と言われるスキルだ。
だが、ただの【刺突】と違って動作が長く集中力が必要だ。
それを、完治しきれていない体でやるのは至難の業だ。
しかし、ゼマはこれぐらいで倒れることはない。
「【刺突……乱舞】!」
一瞬で何度も突きを食らわせるスキルだ。相手に向かって棒を放つだけではなく、すぐさま自分の元へと戻す必要がある。
そして、再び敵へと突きを繰り出す。それを繰り返すのだ。
もともとの技術がなければ、【刺突乱舞】の性能は低下する。
さらに【伸縮自在】によって伸びてしまえば、引き戻すまでの時間がかかってしまう。
一瞬で自分の元へと戻すには、【伸縮自在】を解除する必要がある。
そうすれば自然と元に戻っていく。
しかし、一瞬の乱舞の中でスキルの発動と解除を行うのは困難だ。
だが、ゼマはそれをやってのけた。
持ち前の戦闘センスで、初見のスキルを使いこなしてしまったのだ。
0
お気に入りに追加
1,163
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~
鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合
戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる
事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる
その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊
中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。
終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人
小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である
劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。
しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。
上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。
ゆえに彼らは最前線に配備された
しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。
しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。
瀬能が死を迎えるとき
とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる