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第34話 分断

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「あんた、あんな高威力の魔法も使えるんだ」

「えぇまあ、ですが……」

 ぶつかり合う豪風に目をやるが、ララクは安心していない様子だった。
 これで打ち消しあえばいいと思い繰り出したが、そう都合よくはいかなかった。

 徐々にララクの【スピントルネード】が、こちら側へと押し戻されていった。見た目ではどちらも同じだが、風の威力はシームルグの放った【ウィングトルネード】のほうが勝っていたようだ。

「ちょっと、負けてんじゃん」

「すみません。やはり、翼の運動が加わっている分、あちら側の方が優れているみたいです」

「冷静に分析するのはいいけど、何か策はあるの? 私1人じゃ正面突破は出来そうにないし、作戦があるなら従うけど?」

 ゼマは今までの戦い方が通じないことを悟り、力によるごり押しは断念したようだ。彼女が今まで戦っていたのはレベル50前後だ。シームルグは今までの相手よりもはるかに強いことを肌で感じていたのだ。

「まずは近づかないとですね。それか遠距離技で対抗するか」

 竜巻同士がぶつかり合っていることで、僅かではあるが作戦を練る時間を確保できていた。
 ララクの【スピントルネード】が少しづつ戻されてはいるものの、完全に消えるまでには時間があるだろう。

「私、遠距離技は持ってないんだよね。あんたは?」

「スピードの優れた風系統でも友好的ではないとすると……」

 ララクは何か手はないかと、自分の所持しているスキルを片っ端から思い出す。それと同時に、パーティーメンバーであるゼマにも目をやった。
 今回はソロではない。仲間の力を借りることができる。

「……使ったことないんですけど、このスキルなら相手を攻撃出るかもです」

「なんでもいいから、試してみるしかないでしょ」

 ララクは今までのクエストで、今だに使用してこなかったスキルがいくつもある。もちろん、どんなスキルを所持しているかは全て把握している。

「はい。まず、その武器にスキルを使います」

「これ?」

 ララクの言った武器とは、ゼマの持っているアイアンロッドのことだ。

「はい。【伸縮自在】」

 ララクはロッドに手を近づけえ、使用は初めてのスキルを発動した。
 これは、軟体戦士ワントムが使いこなすスキルだ。

「【伸縮自在】って、もしかして」

 スキル自体は見たことも聞いたこともなかったが、名前を聞いて何となく効果は理解できた。

「ええ、これを使えば……」

 スキルの説明を仕様としたとき、ララクは感じ取った。
 竜巻のぶつかり合う異常な轟音のなかに、何か別の音を感じ始めた。
 音だけではなく、直感的に危険を感じ取っていく。

「……何かくるよ」

 それはゼマも同じようだった。

 彼らが会話を中断して警戒を始めた瞬間だった。

 2つの竜巻の下部に、突如大きな穴が開き始める。
 そしてそこから、全く別の竜巻が貫通してきたのだ。

「ゼマさん、避けて!」

「あんたもねっ!」

 2人はあらかじめ予期していたために、3つ目の竜巻を避けることに成功した。
 その竜巻は、今までと違い縦ではなく横向きで彼らを襲ってきた。レーザーのように一直線の軌道でララクたちを襲ったのだ。

 これは、シームルグが新たに発動したスキルだ。

【トルネードブレス】
 効果……息を吐きだす力を利用して竜巻を口から放つスキル。口の大きさ、肺活量によって威力は変動する。

 シームルグは翼ではなく、今度は口を利用して竜巻を発生させたのだ。
 【ウィングトルネード】【スピントルネード】は回転力と威力に重きを置いており、風系統でありながらスピードはあまりでない。だが、一度巻き込まれれば逃れることは困難だ。

 なので、ララクたちは作戦会議がすることが出来た。

 そして、シームルグもその間に新たなスキル【トルネードブレス】を発動していたのだ。

 こちらは逆に、一瞬で標的の所まで到達させることが可能なスピードを持っていた。

「っく、ゼマさん」

 咄嗟のことだったので、2人は別方向にジャンプして回避した。そのため、分断された状態になってしまった。

 先に放った2つの竜巻スキルは、【トルネードブレス】が貫通したことにより消滅していた。しかし、最後のスキルに関しては今もなお持続している。
 地面と平行しており、風の力で山の土を抉り取っていた。
 持続時間は長くないが、もう少しだけこの場に留まることだろう。

 そのため、しばらくは分断された状態が維持される、ということになる。
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