【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平

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第31話 実力審査

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「せーのっと!」

 ゼマは棒を振り上げると、走りながら棒の先を地面に叩きつけた。そしてその勢いを利用して、地面を蹴っ飛ばして宙に跳んだ。
 つまり、棒高跳びをしたのだ。

 一時的に空中へとやってきたゼマは、走ることを止められないベヒーモスに攻撃を仕掛ける。

 握った棒を地面から話して、さらに上に向かって掲げる。
 そして両手持ちに帰ると、ベヒーモスの頭上から頭部目掛けて鉄の棒を振り下ろす。

「くらいなっ!」

「ブロォォォオォォ」

 角と角の間にクリンヒットする。堪らず雄たけびを上げるベヒーモス。しかし、元々の防御力が高いようで、頭部に少しだけへこみが出来ているだけだった。
 しかし、【猛烈突進】は強制停止され足を止めた。

「かったいなぁ。うーん、どう料理しようか」

 致命傷になるようなダメージを与えるのにはどうしたらいいか考えるため、ゼマは一度距離をとる。ララクが近づいてきたので、合流する形となった。

「凄い身体能力ですね。驚きましたよ」

「こんなもん朝飯前よ。たぶん、あいつは私1人で倒せるから、あんたはそこで見学して」

「分かりました。でも、危ないと思ったらすぐに助けますから」

「はいはい。分かったよ」

 過保護にされているようで、ゼマはあまりいい気分ではなさそうだった。
 自分から「実力を確かめてくれ」と言い出した彼女だが、それは腕に自信があったから出て来た発言だったようだ

 2人が話していると、ベヒーモスは再び【猛烈突進】の準備をしていた。ベヒーモスは突進が得意なモンスターだ。バッシブにも【突進性能上昇】というスキルもある。
 なので、最初は避けることが出来ても、何度も連続で放たれた場合は回避するのが大変になってくるだろう。

 予備動作を充分に行ったベヒーモスは、満を持して【猛烈突進】を発動した。先程よりもスピードが乗っている。
 地響きを鳴らしながら、一直線にゼマに近づいてくる。

「ララク、ちょっと距離取ってくれる。棒、振り回すからさ」

「りょうかいです」

 指示通りララクはすぐに距離をとる。まだ少しだけ不安ではあったが、ゼマのことを信じることにしたようだ。

「やっぱり、相手の力を利用するのが一番だよねっ」

 鉄棒を両手でギュッと握りしめ、体をぐねらせて振りかぶる。

「ブロォォォォ」

 あとほんの僅かで、岩のような巨体がゼマにぶつかろとした時だった。

「【スイングインパクト】!」

 女性らしい高い声ではあるが、気迫のこもった声を出す。
 そして、迫りくるベヒーモスの顔面に棒をぶつける。

 【スイングインパクト】によって一時的に打撃の威力と、棒の耐久性能が上昇していた。
 ベヒーモスの顔面に攻撃がヒットすると、衝撃波が目に見えるように飛び散った。魔力が込められているので、それにより視覚に映るようになったのだろう。

 これだけで、今の攻撃がどれだけ凄まじいものかが、ララクには感じ取れた。

(突進のスピードを利用したんだ。でも、一歩間違えれば自分に激突してしまうはずだ)

 レベルは50とはいえ、【猛烈突進】を受ければララクであっても大ダメージを受けるだろう。
 それなのに、彼よりも軽装のゼマが恐れることなく迎え撃ったことに軽く衝撃を受けていた。

「……」

 ベヒーモスの体は見事に止まった。角は2本とも折れてしまっており、完全に気絶していた。脳に一番近い場所にヒットしたので、意識を保つことは出来なかったようだ。

 ベヒーモスの顔面は異様にへこんでおり、ゼマの放った【スイングインパクト】の恐ろしさが伝わってくる。

 気を失った猛獣の体は。ゆっくりと地面へと倒れていった。
 中に肉がぎっしりと詰まっているようで、倒れただけで「ドズン」という音と共に土へとめり込んでいった。

「ふぅ。武器が壊れなくてよかった」

 ゼマの武器は、鉄などの鉱物が中心として使われた市販のものだった。
 もともと棒という武器が使い道にバリエーションのある武器なので、癖のない一般的な武器を使用していた。
 正式名称はアイアンロッドである。

「ゼマさん、とんでもない戦い方しますね。いつも、こんなバトルスタイルなんですか?」

「まあね。傷つくことを恐れてたら、戦いなんてできないからね」

「べ、勉強になります。でも、本当にレベル45ですか?」

 ベヒーモスはレベル50だ。それをたったの1人で、しかも2撃のみで気絶まで追い込んだのだ。
 ララクの目には、明らかにそれ以上に力を秘めているように見えたようだ。

「そうだよ。あーでも、ずっとソロだったから、45レベのパーティー冒険者よりは強いかもね。
 それに打撃系のスキルはさ、殺傷能力が低いんだけど、威力自体は高いんだ。
 ほら、まだ息はあるけど、ちゃんと気絶してるでしょ?
 あとは、戦い方しだいじゃない?」

 大雑把なように見えて、しっかりとスキルや自分の強みを分かってこその戦法だった。

 彼女の戦い方は、前線を突き進む戦士のようでもあり、真正面から敵の攻撃を受けるタンクのようでもあった。
 さらにまだ確認はしていないが回復スキルも使えて、ヒーラーとしても機能するという。

(なるほど。これなら、ソロでやってけるはずだ。でもそれならなんで……)

「あの、どうしてパーティーに加入しようと思ったんですか?」

 レベル50のモンスターを討伐できるなら、冒険者として食いっぱぐれることはないだろう。
 なので、ララクには少々疑問に感じたようだ。

「えー、あー、うん。あんたと一緒よ、やっぱずっとソロはきついかなって。だってさ、私が死ぬ時はその場に誰もいないんだよ?
 誰にも死んだことが伝わんないんなんて、ちょっと悲しいかな~って」

「……そうですか。そういう考え方もあるんですね」

 あまりゼマの歯切れがよくなかったので、これ以上は質問しなかった。

「いいんだよ、私の事は。それより、こいつの目が覚める前に移動しちゃおうよ」

「ですね。先を急ぎましょう」

 目の前に倒れているベヒーモスを放置して、2人は先を進もうとする。

 そんな時、彼らを襲いに来る新手がやってきた。
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