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第30話 遭遇
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セファー山。
ジンドの街から少し離れたところにある大きな山だ。
キノコや山菜が育ちやすく、野性モンスターも多数目撃されている。
しかし、大型のモンスターも生息しているので、冒険者以外は基本的に立ち入り禁止である。
さらにいえば、冒険者であっても油断はできない。
人間を襲うモンスターは数多くおり、中には冒険者を狙う種族もいる。
その最たるモンスターの1つが、今回の標的と言えるだろう。
「山登りってなんかいいよねぇ~。空気が美味しいって言うか」
ゼマは深く鼻から空気を吸い込んで、勢いよく口から出した。
彼女の恰好はローブこそ着ているが、その中は言ってしまえば半袖短パンのような簡素なものだ。なので、木の枝や葉っぱで肌に擦り傷ができる恐れはある。山登りの恰好としてはなっていないが、本人は気にしていなかった。
動きやすさ重視の装備なので、歩きやすそうではあった。
「そうですね。楽しむのはいいですけど、警戒は怠らずに。
シームルグはいつどこから現れるのか分かりませんから」
「わかってるって」
セファー山でのクエストは、常に冒険者狩りの気配に注意を払いながら行わなければいけない。
そもそもクエストはあったとしても、すぐに下山できる範囲内で出来る内容の物ばかりだ。
もし頂上まで登ることができれば、より様々な資源をゲットすることが出来るだろう。
冒険者パーティー・ハンドレッドとして初めてのクエストなわけだが、ゼマからは緊張感のかけらも感じなかった。もちろん酔ってなどはいないが、鼻歌交じりに登山していた。
(大丈夫かな、この人)
そんな彼女を見て少しだけ不安になるも、実際戦っているところを見るまでは評価しづらかった。
2人は坂道を登りきると、比較的平らな場所に出てきた。
「少し休憩しますか?」
「ん? まだ大丈夫でしょ。疲れたら疲労回復してあげようか?」
「いえ、ボクは大丈夫ですけど。あのもしかして、【フィジカルヒーリング】を持っているんですか?」
「もちろん。簡単な回復スキルだったらだいたい持ってるよ」
「羨ましいです」
ララクの言った【フィジカルヒーリング】は、傷を癒すというよりは、疲れを癒すことを重視した回復スキルだ。これを使えば、疲労感が薄まるので長時間の活動には便利だ。しかし、疲労感がないと眠りにつけなかったりして体調が悪くなる危険性もあるので、使い過ぎには注意だ。
「じゃあ、もう少し歩きましょうか」
「おっけー」
2人がシームルグを探しにもう少し上を目指そうとした時だった。
どこからか、巨大な足音が聞こえてくる。ゆっくりではあるが、こちらに近づいてきた。
その音をすでに2人はキャッチしており、警戒を強めた。
能天気に思えたゼマだったが、すでに背中に携えた鉄棒に手をかけていた。
「ララク、敵っぽいよ」
「ええ、そうみたいです」
2人が注視する茂みの中から、そのモンスターは姿を現す。
見事な寸胴体をしており、横幅だけで2、3メートルはありそうな巨体をしている。その下に、野太い鉄柱のような足が4本ついている。
顔はカバに近いが、2本のサイズの違う角が生えているのでイノシシのようにも見える。
種族名 ベヒーモス。
くすんだ紫色をした凶暴なモンスターだ。
人を簡単に丸呑みできる大きな口から、ヨダレをだらだらと流していた。
黄色い爬虫類のような目玉で、すでにララクとゼマをロックオンしている。
「あーあ、完全に捉えられちゃってるよ。クエストには関係ないけど、倒さないと先に進めなさそうね」
「仕方ないです。倒しましょう」
基本的に冒険者は、クエスト以外のモンスターの討伐はしない。それ以外には、食料の調達や武器の強化などでモンスターを狩るぐらいだ。
しかし、いずれにしてもクエストを受けて行うことが多い。その方が報酬金も貰えて、余った素材は自分で使えるからだ。
生態系を壊すわけにはいかないので、むやみな狩猟は行わない。
が、自分の命が危険ならば別だ。
それに今回はまだクエストが始まってすらいない。なので、尻尾まいて下山するわけにもいかなかった。
「りょうかい。あんたはそこで見てて。私の実力、見せてあげる」
ゼマは武器の棒を抜き取ると、一瞬だけララクを見てニコッと笑う。そして、ララクの返事も効かずに飛び出していった。
「ゼ、ゼマさん!?」
ベヒーモスに向かって猛ダッシュする彼女を見て、すぐに声をかけるが彼女は聞いていなかった。
それを見たベヒーモスは、迎撃しようとその場で片足で地面を何度か蹴る。そして、勢いを乗せて、向かってくるゼマに向かって突進していく。
そのスピードは凄まじくベヒーモス体から湯気のように半透明な赤いオーラが出てきた。
「へー、【猛烈突進】ねぇ」
【猛烈突進】はスピードとパワーを得る代わりに、安易に急停止することができない。
なので、避けるのが安定だが、ゼマは走るのを止めなかった。
「だ、大丈夫かな? えーと、【サーチング】」
ただただ真っすぐ走りあう1人と1頭を見て、心配になったのでベヒーモスの詳細を見ることにした。
名前 不明
種族 ベヒーモス
レベル 50
アクションスキル 一覧
【猛烈突進】【毒ガス噴射】【鋼鉄化】【ガードアップ】【ギガクエイク】【ウェイトアップ】【デッドバイト】
バッシブスキル 一覧
【防御力上昇】【攻撃力上昇】【突進性能上昇】【遊泳力上昇】【体力上昇】
「レベル50……まずい。ゼマさんっ!」
ララクがゼマにレベルを聞いたとき「45」と答えたことを思い出した。相手のレベルが5個上ならば、倒せないことはないが危険な戦いにはなりやすい。
ララクはすぐに助けに入ろうと、武器を作り出そうとした。
しかし、そのタイミングでゼマがアクションを起こした。
ジンドの街から少し離れたところにある大きな山だ。
キノコや山菜が育ちやすく、野性モンスターも多数目撃されている。
しかし、大型のモンスターも生息しているので、冒険者以外は基本的に立ち入り禁止である。
さらにいえば、冒険者であっても油断はできない。
人間を襲うモンスターは数多くおり、中には冒険者を狙う種族もいる。
その最たるモンスターの1つが、今回の標的と言えるだろう。
「山登りってなんかいいよねぇ~。空気が美味しいって言うか」
ゼマは深く鼻から空気を吸い込んで、勢いよく口から出した。
彼女の恰好はローブこそ着ているが、その中は言ってしまえば半袖短パンのような簡素なものだ。なので、木の枝や葉っぱで肌に擦り傷ができる恐れはある。山登りの恰好としてはなっていないが、本人は気にしていなかった。
動きやすさ重視の装備なので、歩きやすそうではあった。
「そうですね。楽しむのはいいですけど、警戒は怠らずに。
シームルグはいつどこから現れるのか分かりませんから」
「わかってるって」
セファー山でのクエストは、常に冒険者狩りの気配に注意を払いながら行わなければいけない。
そもそもクエストはあったとしても、すぐに下山できる範囲内で出来る内容の物ばかりだ。
もし頂上まで登ることができれば、より様々な資源をゲットすることが出来るだろう。
冒険者パーティー・ハンドレッドとして初めてのクエストなわけだが、ゼマからは緊張感のかけらも感じなかった。もちろん酔ってなどはいないが、鼻歌交じりに登山していた。
(大丈夫かな、この人)
そんな彼女を見て少しだけ不安になるも、実際戦っているところを見るまでは評価しづらかった。
2人は坂道を登りきると、比較的平らな場所に出てきた。
「少し休憩しますか?」
「ん? まだ大丈夫でしょ。疲れたら疲労回復してあげようか?」
「いえ、ボクは大丈夫ですけど。あのもしかして、【フィジカルヒーリング】を持っているんですか?」
「もちろん。簡単な回復スキルだったらだいたい持ってるよ」
「羨ましいです」
ララクの言った【フィジカルヒーリング】は、傷を癒すというよりは、疲れを癒すことを重視した回復スキルだ。これを使えば、疲労感が薄まるので長時間の活動には便利だ。しかし、疲労感がないと眠りにつけなかったりして体調が悪くなる危険性もあるので、使い過ぎには注意だ。
「じゃあ、もう少し歩きましょうか」
「おっけー」
2人がシームルグを探しにもう少し上を目指そうとした時だった。
どこからか、巨大な足音が聞こえてくる。ゆっくりではあるが、こちらに近づいてきた。
その音をすでに2人はキャッチしており、警戒を強めた。
能天気に思えたゼマだったが、すでに背中に携えた鉄棒に手をかけていた。
「ララク、敵っぽいよ」
「ええ、そうみたいです」
2人が注視する茂みの中から、そのモンスターは姿を現す。
見事な寸胴体をしており、横幅だけで2、3メートルはありそうな巨体をしている。その下に、野太い鉄柱のような足が4本ついている。
顔はカバに近いが、2本のサイズの違う角が生えているのでイノシシのようにも見える。
種族名 ベヒーモス。
くすんだ紫色をした凶暴なモンスターだ。
人を簡単に丸呑みできる大きな口から、ヨダレをだらだらと流していた。
黄色い爬虫類のような目玉で、すでにララクとゼマをロックオンしている。
「あーあ、完全に捉えられちゃってるよ。クエストには関係ないけど、倒さないと先に進めなさそうね」
「仕方ないです。倒しましょう」
基本的に冒険者は、クエスト以外のモンスターの討伐はしない。それ以外には、食料の調達や武器の強化などでモンスターを狩るぐらいだ。
しかし、いずれにしてもクエストを受けて行うことが多い。その方が報酬金も貰えて、余った素材は自分で使えるからだ。
生態系を壊すわけにはいかないので、むやみな狩猟は行わない。
が、自分の命が危険ならば別だ。
それに今回はまだクエストが始まってすらいない。なので、尻尾まいて下山するわけにもいかなかった。
「りょうかい。あんたはそこで見てて。私の実力、見せてあげる」
ゼマは武器の棒を抜き取ると、一瞬だけララクを見てニコッと笑う。そして、ララクの返事も効かずに飛び出していった。
「ゼ、ゼマさん!?」
ベヒーモスに向かって猛ダッシュする彼女を見て、すぐに声をかけるが彼女は聞いていなかった。
それを見たベヒーモスは、迎撃しようとその場で片足で地面を何度か蹴る。そして、勢いを乗せて、向かってくるゼマに向かって突進していく。
そのスピードは凄まじくベヒーモス体から湯気のように半透明な赤いオーラが出てきた。
「へー、【猛烈突進】ねぇ」
【猛烈突進】はスピードとパワーを得る代わりに、安易に急停止することができない。
なので、避けるのが安定だが、ゼマは走るのを止めなかった。
「だ、大丈夫かな? えーと、【サーチング】」
ただただ真っすぐ走りあう1人と1頭を見て、心配になったのでベヒーモスの詳細を見ることにした。
名前 不明
種族 ベヒーモス
レベル 50
アクションスキル 一覧
【猛烈突進】【毒ガス噴射】【鋼鉄化】【ガードアップ】【ギガクエイク】【ウェイトアップ】【デッドバイト】
バッシブスキル 一覧
【防御力上昇】【攻撃力上昇】【突進性能上昇】【遊泳力上昇】【体力上昇】
「レベル50……まずい。ゼマさんっ!」
ララクがゼマにレベルを聞いたとき「45」と答えたことを思い出した。相手のレベルが5個上ならば、倒せないことはないが危険な戦いにはなりやすい。
ララクはすぐに助けに入ろうと、武器を作り出そうとした。
しかし、そのタイミングでゼマがアクションを起こした。
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