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第14話 複合

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(泳ぎで勝つのは難しそうだ。とすると……)

 ララクが空中で作戦を練っていると、今度はシーサペントが攻撃を仕掛けてくる。

 鋭くとがった何本もの牙が生えた口を大きく広げる。小柄なララクなど、これで丸呑みにできそうだ。
 そして、シーサペントの口の中で大量の水が作られていく。それは球体の形になっていく。これは、ララクがゴブリン戦で使用したスキル【ウォーターボール】だ。
 大きさは、その時の物とさほど変わらなかった。

「ジュロロロジャアア」

 シーサペントはその【ウォーターボール】を、ララクに向けて放つ。そのスピードは、弾丸のごとく速かった。

「っく。さすがに、【ウォーターボール】はあっちの方が強いか」

 【空中浮遊】を巧みに使って避けるララク。しかし、装備品に少しだけかすってしまう。シーサペントは泳ぎの他に、水系統のスキルとそれを強化するバッシブスキルを持っている。これもララクと同じだが、レベル差があるので若干シーサペントの方が強力なようだ。
 さらに、水生生物ならではの【波起こし】や牙で攻撃する【デッドバイト】に尻尾を使った【テイルウィップ】など、人間では獲得できないユニークスキルを多く持っている。
 これに勝つには、それらと違うララクの強みで戦わなくてはいけない。

「でも、この系統には弱いんじゃないかな」

 ララクは剣を握っていない方の手をシーサペントに向けて翳す。それで危機を察知したのか、すぐにシーサペントは潜ってしまう。
 水や風系統のスキルでは、海に打ち付けれれて終わりだ。炎系統などもってのほかだ。そこで、彼が放つのは水系統に強いスキルだ。

「【ダメージサンダー】」

 ゴブリンたちを一気に痺れさせた広範囲の電流だ。水系統が炎系統に強いように、水系統には雷系統のスキルが効果的だ。
 風と炎は、その威力によって相性が変わってくる。強力な風は炎をかき消すが、弱風であれば炎をさらに燃え上がらせるだけだ。
 土属性は水系統に弱く、雷系統にはめっぽう強い。
 このように、系統には相性によって効果的なものが存在する。

「ジュロロロロオ」

 水中に避難していたシーサペントだったが、【ダメージサンダー】は海を通ってその体に流れ込んでいく。
 雷系統の力によって、内側からダメージを受け、体が痺れていく。

 この効果を受けたのはシーサペントだけではなく、海にいた他の生物たちも同じだった。先程ララクがキャッチ&リリースした魚たちが、海上に意識を失って打ち上げられていく。

「ちょっとやりすぎちゃったかな。でも、これで捕まえる」

 ララクは剣を消滅させて、さっき使用していた釣り竿と同じものを【ウェポンクリエイト・ハード】で作り出す。

 そして釣り糸を放り投げる。さっきと違うのは、入水させるだけでは終わらなかった。海へと入った釣り糸は、痺れて動きが止まっているシーサペントに巻き付いていく。

「今度こそ! よいしょっと」

 めいいっぱい力を込めて、シーサペントを空中へと引きづりだす。
 大漁の水しぶきと共に、天高くシーサペントが舞い上がっていく。

「ララクの野郎、またシーサペントを捕まえやがった!」

「チャミはそれより、腹が減ったニャ」

「でも、また海逃げられるのでは?」

 トッドーリが危惧したように、このままでは海にダイブするだけだ。痺れも解けて、釣り糸も破壊してしまうだろう。

 だが、ララクはこの後のことをしっかりと考えているようだった。

「【ストロングネット】」

 彼が次に繰り出したのは、巨大で丈夫な網を作り出せるスキルだ。捕獲屋ワイカなどが所持しているスキルだ。

「捕獲する気なのか? けど、あんなんじゃ被られるのがオチだぜ」

 ダブランはこの先のことを自分なりに予想するが、上手くいきそうにはなかった。
 そして、ララクもこれで捕まえようとは思っていなかったようだ。

「+【フレイムフォース】」

 作り出した網に、特殊な力を付与することが出来るスキルを発動する。

【フレイムフォース】
 効果……物に炎系統の効果を与える。

 これを使えば、剣などに炎を纏わせて戦うことなどができる。
 しかし、これの対象は鉄や石など比較的炎に耐えられる物だ。網など、普通ならば焼き切れてしまう。

「+【耐久値強化】」

 それをカバーするのがこのスキルだ。これに炎系統に強くなるという効果はないが、元の耐久値を上げることで、炎に耐える網へと強化したのだ。

 燃えあがった網は横へと展開し、シーサペントの真下に配置された。
 空中に放り出されたシーサペントは、陸上でもある程度活動できるが、空は専門外だ。身動きが取れずに、そのまま落下していく。

 そして、灼熱の火力を持った網に接触していく。

「ジュロロロロロオォォォ」

 苦痛により泣き声をあげるシーサペント。鉄板の上に生の状態で置かれたようなものだった。徐々に、皮が焼け焦げていく。
 さらに、シーサペントが乗っているのは網だ。それに炎が加わったので、皮膚を溶かすとともに網が肉へと入り込んでいく。

 重力も合わさっているので、シーサペントの体はいとも簡単に網目状に切れてしまった。

 サイコロステーキのようにカットされたそれは、海へと次々落下していく。
 これではシーサペントの素材をはぎ取ることは不可能だが、完璧に討伐することが出来た。
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