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第12話 港町バルミュー
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時は1日ほど流れて、港町バルミューにララクは訪れていた。
潮風が彼の頬をかすめる。
港には多くの船が停泊していた。
しかし今は昼前である。普通なら漁に出ているため、船は少ないはずだ。依頼内容通り、シーサペントの影響で漁に出れないようだ。
「えーと、あそこかな」
港にある小さな小屋を発見したララク。依頼主の漁師を探そうと、とりあえず行ってみることにした。
「すいませーん」
木のドアをノックする。すると中から声が聞こえてくる。
「はーい。ちょっと待ってくれぇい」
中年男性の声だった。少し言葉がなまっている。
ドアを開けて出てきたのは、漁師の恰好をした男性だった。頭にタオルを巻いており、いかにもという雰囲気だった。
「なんかようか?」
背の低い若いララクを見て、「子供が何しに来た」と思ったようだ。
「あの、シーサペントの討伐に来たララク・ストリーンと申します」
丁寧に挨拶をするララク。
それを聞いて、漁師の態度が激変する。
「おめぇがあいつを倒しにきただと!? 無理だ、見るからに弱っちぃじゃねぇか」
自分の思いを包み隠さないタイプなようだ。
【追放エナジー】で急激に成長したことを信じて貰えないことには、ここ数日間で少し慣れていた。なので、ララクは淡々と続ける。
「こんなボクですが、役には立つと思います。シーサペントの情報を教えていただけませんか?」
「……やるだけ無駄だと思うがな。まぁ、あいつのエサになるのは自由だ。シーサペントは、すぐそこの浜辺に現れる。漁をするためにそこを通るんだが、待ち伏せしてやがるんだ。
きっと、まだいるだろうよぉ」
ララクに、そしてシーサペントにイラついているのか、彼の機嫌はすこぶる悪かった。準備万端な格好をしているが、おそらくしばらくは漁に出れていないはずだ。それでストレスが溜まっているのだろう。
「浜辺ですね。分かりました、見てきます」
最後に会釈をして、ララクは小屋を後にする。
その小さな背中が気になり、漁師はしばらく彼を見つめていた。
「……あいつに、海の神の加護が宿ることを祈ろう」
漁師は胸元から十字架のペンダントを出した。これは、海の神と言われる存在を敬うものだ。海の上でモンスターに出会えばひとたまりもない。漁師というのはいつでも命がけだ。なので、このように神に祈る者は多かった。
漁師の思いをのせて、ララクはシーサペントを探しに向かった。
浜辺はとても静かだった。シーサペントのせいかもしれないが、海水浴をするような人間は1人もいなかった。浜辺のすぐそこは林となっており、木の実を宿した木々たちが並んでいる。
「さて、こういう時はアバンジャさんのスキルの出番だな」
釣り師アバンジャ。冒険者ながら、釣りや泳ぎに関するスキルを所持している一風変わった男のことだ。彼がいたパーティーは、川や海辺のモンスターをターゲットに活動している。一時期、そこにララクは加入していた。
「【ウェポンクリエイト・ハード】」
ララクがスキルで作り出したのは、鉄製の丈夫な釣り竿だ。リールもついている。これを武器と言われると微妙なところだが、【ウェポンクリエイト】で生成できる範囲内の物のようだ。
彼は釣りは素人もいいところだが、釣り師アバンジャは違う。釣りのプロと言える。そのため当然、【釣り適正】を持っていた。
これがあれば、自然と釣りを行うことが出来る。さらに、レベルに合わせてその腕前が上昇する。
「せーの」
釣り竿を大きく振りかぶり、掛け声とともに釣り糸を飛ばす。遠くに飛ばし、自分の意図する場所に飛ばすだけで、実は至難な業だ。
しかし、彼の放ったそれは、遥か先へと一直線に飛んでいった。
「ぽちゃん」と音を立てて、釣り糸が入水する。
あとは、獲物がかかるのを待つだけだ。
「っお、ビンゴかな」
すぐに手応えがあった。釣り竿がピンっと引っ張られているのだ。それに合わせて、負けじとララクは釣り竿を持ち上げる。
かなりの重量だ。
「【フィジカルアップ】」
筋肉量、そして身体能力を一時的に強化するスキルを発動する。ララクの素の力は貧弱そのものだが、これの効果で幾分かはましになるだろう。
そしてこの勝負に勝ったのは、ララクだった。
海から顔を出したのは、シーサペント、ではなく巨大なマグロだった。
「あれ、違うや」
ビッグマグロ。通常のマグロよりも脂がのっている代わりに、吊り上げるのが困難だと言われている。しかし、プロ級の力を持った彼には朝飯前だ。
勢いよく引っ張り上げて、自分の元へと持ってくる。
「うわ、あ、暴れる」
魚の対処が分からず、右往左往する。そのマグロはララクが両腕で持ってもはみ出すほど大きく、まさに手に余る状態だった。
「えーと、リリースかな。これは」
目的のものではないので、海へ返すことにした。バタバタと体を暴れさせながら、ビッグマグロは海へと帰っていく。
「もう一回」
魚がいることは分かったので、再び投げ込む。
また、すぐに獲物はヒットする。
しかし、これもシーサペントではない。
「これは、タコか」
二匹目は、トゥエンティ―・オクトパス。足が多いのが特徴的だ。こちらも、ビッグマグロと同じで高級魚だ。
それから、面白いように魚が釣れた。
エイにブリ、ウツボなど、珍しい物ばかりだ。
食べる予定はなかったので、キャッチ&リリースを繰り返す。
(これがあればボク、釣り師として食っていけるな)
あまりにも取れすぎるので、緊張感がなくなり変な妄想をしていた。
それからしばらく、ララクの大漁劇が続くのだが、それを密かに観察していた者たちがいた。
潮風が彼の頬をかすめる。
港には多くの船が停泊していた。
しかし今は昼前である。普通なら漁に出ているため、船は少ないはずだ。依頼内容通り、シーサペントの影響で漁に出れないようだ。
「えーと、あそこかな」
港にある小さな小屋を発見したララク。依頼主の漁師を探そうと、とりあえず行ってみることにした。
「すいませーん」
木のドアをノックする。すると中から声が聞こえてくる。
「はーい。ちょっと待ってくれぇい」
中年男性の声だった。少し言葉がなまっている。
ドアを開けて出てきたのは、漁師の恰好をした男性だった。頭にタオルを巻いており、いかにもという雰囲気だった。
「なんかようか?」
背の低い若いララクを見て、「子供が何しに来た」と思ったようだ。
「あの、シーサペントの討伐に来たララク・ストリーンと申します」
丁寧に挨拶をするララク。
それを聞いて、漁師の態度が激変する。
「おめぇがあいつを倒しにきただと!? 無理だ、見るからに弱っちぃじゃねぇか」
自分の思いを包み隠さないタイプなようだ。
【追放エナジー】で急激に成長したことを信じて貰えないことには、ここ数日間で少し慣れていた。なので、ララクは淡々と続ける。
「こんなボクですが、役には立つと思います。シーサペントの情報を教えていただけませんか?」
「……やるだけ無駄だと思うがな。まぁ、あいつのエサになるのは自由だ。シーサペントは、すぐそこの浜辺に現れる。漁をするためにそこを通るんだが、待ち伏せしてやがるんだ。
きっと、まだいるだろうよぉ」
ララクに、そしてシーサペントにイラついているのか、彼の機嫌はすこぶる悪かった。準備万端な格好をしているが、おそらくしばらくは漁に出れていないはずだ。それでストレスが溜まっているのだろう。
「浜辺ですね。分かりました、見てきます」
最後に会釈をして、ララクは小屋を後にする。
その小さな背中が気になり、漁師はしばらく彼を見つめていた。
「……あいつに、海の神の加護が宿ることを祈ろう」
漁師は胸元から十字架のペンダントを出した。これは、海の神と言われる存在を敬うものだ。海の上でモンスターに出会えばひとたまりもない。漁師というのはいつでも命がけだ。なので、このように神に祈る者は多かった。
漁師の思いをのせて、ララクはシーサペントを探しに向かった。
浜辺はとても静かだった。シーサペントのせいかもしれないが、海水浴をするような人間は1人もいなかった。浜辺のすぐそこは林となっており、木の実を宿した木々たちが並んでいる。
「さて、こういう時はアバンジャさんのスキルの出番だな」
釣り師アバンジャ。冒険者ながら、釣りや泳ぎに関するスキルを所持している一風変わった男のことだ。彼がいたパーティーは、川や海辺のモンスターをターゲットに活動している。一時期、そこにララクは加入していた。
「【ウェポンクリエイト・ハード】」
ララクがスキルで作り出したのは、鉄製の丈夫な釣り竿だ。リールもついている。これを武器と言われると微妙なところだが、【ウェポンクリエイト】で生成できる範囲内の物のようだ。
彼は釣りは素人もいいところだが、釣り師アバンジャは違う。釣りのプロと言える。そのため当然、【釣り適正】を持っていた。
これがあれば、自然と釣りを行うことが出来る。さらに、レベルに合わせてその腕前が上昇する。
「せーの」
釣り竿を大きく振りかぶり、掛け声とともに釣り糸を飛ばす。遠くに飛ばし、自分の意図する場所に飛ばすだけで、実は至難な業だ。
しかし、彼の放ったそれは、遥か先へと一直線に飛んでいった。
「ぽちゃん」と音を立てて、釣り糸が入水する。
あとは、獲物がかかるのを待つだけだ。
「っお、ビンゴかな」
すぐに手応えがあった。釣り竿がピンっと引っ張られているのだ。それに合わせて、負けじとララクは釣り竿を持ち上げる。
かなりの重量だ。
「【フィジカルアップ】」
筋肉量、そして身体能力を一時的に強化するスキルを発動する。ララクの素の力は貧弱そのものだが、これの効果で幾分かはましになるだろう。
そしてこの勝負に勝ったのは、ララクだった。
海から顔を出したのは、シーサペント、ではなく巨大なマグロだった。
「あれ、違うや」
ビッグマグロ。通常のマグロよりも脂がのっている代わりに、吊り上げるのが困難だと言われている。しかし、プロ級の力を持った彼には朝飯前だ。
勢いよく引っ張り上げて、自分の元へと持ってくる。
「うわ、あ、暴れる」
魚の対処が分からず、右往左往する。そのマグロはララクが両腕で持ってもはみ出すほど大きく、まさに手に余る状態だった。
「えーと、リリースかな。これは」
目的のものではないので、海へ返すことにした。バタバタと体を暴れさせながら、ビッグマグロは海へと帰っていく。
「もう一回」
魚がいることは分かったので、再び投げ込む。
また、すぐに獲物はヒットする。
しかし、これもシーサペントではない。
「これは、タコか」
二匹目は、トゥエンティ―・オクトパス。足が多いのが特徴的だ。こちらも、ビッグマグロと同じで高級魚だ。
それから、面白いように魚が釣れた。
エイにブリ、ウツボなど、珍しい物ばかりだ。
食べる予定はなかったので、キャッチ&リリースを繰り返す。
(これがあればボク、釣り師として食っていけるな)
あまりにも取れすぎるので、緊張感がなくなり変な妄想をしていた。
それからしばらく、ララクの大漁劇が続くのだが、それを密かに観察していた者たちがいた。
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