【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平

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第9話

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 ゴブリン退治を終えたララクは、クエスト成功を報告するために冒険者ギルドにやってきていた。ここには、数多くのクエストがあるので、それを探しに多くの冒険者がやってくる。
 見た目は木造の大きな酒場だ。
 酒や軽食も提供している。
 ここで冒険者同士、交流を深めるのもこともよくある話だ。

 ララクがギルドに入ると、いつも通り冒険者パーティーがたむろしていた。テーブルで和気あいあいと喋る者たちや、次のクエストについて話し合う者たちなど、様々だ。

 ギルドの奥にはカウンターがあり、そこでクエストの受付をしてくれる。

「お帰りなさい。ララク」

 そこにいた受付嬢の女性は、ララクに向かってはにかむ。ララクは100個のパーティーに加入してた際に、ここを何度も訪れている。なので、彼女とは少し顔なじみだった。彼より少しだけ年齢は上だ。

「どうも。クエスト、成功しました」

 ララクは腰に巻いていた布袋から、綺麗に切り取ったゴブリンの角をカウンターのテーブルに置いた。
 クエストを成功した証として、倒したモンスターの一部を提出するのが基本だ。他には、依頼人と接触する場合は、依頼書にサインをして貰う方法もある。

「まぁ、凄い! 本当にゴブリンを倒せたのね。お姉さん、嬉しい」

 自分の事のように彼女は喜んでくれた。ゴブリンは低級のモンスターだが、数が多いとベテラン冒険者でも手を焼く存在だ。なので、パーティーを抜けてソロになったララクに倒せるか疑問だったのだ。

「初めて1人で達成できました。1人でもなんとかなりそうです」

「それならよかった。はい、これが報酬。今回は独り占めね」

 硬貨が入った袋を受付嬢はララクに手渡す。ゴブリン退治は安い仕事だが、繁殖期ということでいくらか上乗せされている。
 これをパーティーで分けるとなると、1人分は少ない。が、ソロの彼には十分なお金だった。

「ありがとうごいます。また、クエスト受けるつもりなので、また来ます」

「そっか。頑張ってね」

 軽く挨拶をしてララクはカウンターを後にする。
 その後向かったのは、ギルドの端にあるクエストボートの前だった。ここには、依頼書が壁に貼られており、これを見て何のクエストを行うか冒険者は判断する。

 その多くはモンスター討伐だが、薬草の採取など、その内容は多岐にわたる。

(ゴブリン退治はもういいから、強そうなモンスターを選ぼう。何がいるだろう)

 今の時期はゴブリン退治が多く貼られている。他にも、大鬼のオークや魔兎アルミラージなどの討伐依頼がある。しかし、どれもケルベアスと比べると目囮するレベルだ。

(あ、このモンスターは確か)

 ララクが目をつけたのは、「シーサペント」というモンスターの討伐依頼だった。依頼主は、ここら少し離れたところにある港町の漁師だ。


【シーサペントを追い払ってくれ!】

 船を狙うあいつが、ついにこの辺りに現れちまった! あいつは船ばかり狙う狡猾な野郎だ。港に潜んで、船員と釣った魚を奪いに来やがる。
 こいつのせいで、一向に船がだせねぇんだ!
 倒してくれとは言わないが、船が出せるように追い払ってほしい!

        依頼主・港街バルミューの漁師


(シーサペントは、相当手強かったはず。うん、これにしよう)

 ララクはこのシーサペントと戦ったことはないが、モンスター図鑑でその存在は知っている。
 沈船、という二つ名があり、いくつもの船を沈没させては、漁師たちを困らせている。海に住んでいるので、そういった相手に有効的なスキルを持っていないと、手も足も出ないだろう。

 ボードからその依頼書を剥がし、再びカウンターに向かう。

「すいません。今度はこれを受けようかと」

 そっとクエスト依頼書を差し出す。

「あら、もう決めたの? ……っえ、本当にこれやるの?」

 依頼書を確認した受付嬢は、目を見開いて驚いていた。

「ダメ、ですか?」

 それに対してララクは真顔で答える。

「ダメじゃないけど、シーサペントってレベル50は超えてるのが普通なのよ。そんな相手をあなたが倒せるとは……」

 彼女からすれば、ゴブリンしか退治したことがない少年が、無謀にも難易度の高いクエストを受ける、ということだ。心配するのは当然か。

「あーそういうことですか。大丈夫です。ボク、ケルベアスを倒したので」

 自分の実力を伝えようと、ララクははっきりとそう答える。しかし、これが引き金となり、少しだけギルド内が騒がしくなる。

「え、ララクがケルベアスを??」

 受付嬢はすぐには信じはしなかった。彼女は、これまで他のパーティーの端っこにいたララクを長い事見てきた。だからこそ、真のことだとは思えなかったのだろう。

 そしてそれは、この話を聞いていた他の冒険者たちも一緒だった。

「おいおい、聞いたかよ今の」

「ケルベアスを倒しただって、あいつが?」

 ギルド内はすぐにララクのことで盛り上がっていた。18歳の、しかも見るからに貧弱そうな少年が、森の主を倒したとは信じがたいようだ。

 それはララクの耳にも届いていたが、さほど気にはしていなかった。何故なら、ケルベアスを倒したことは紛れもない事実なのだから。

「あの、ダメなら他のを選びますけど」

「え、あ、いや、受けるのは自由だけど。その、本当にいいのね?」

 真っすぐ自分を見てくるララクに圧倒されて、受付嬢は強く否定できない様子だった。

「はい。お願いします」

 揺らぐことのないララクを見て、諦めたのか覚悟を決めたのか受付嬢は依頼書に受注印を押した。
 これで正式に、シーサペントの討伐がララクに依頼された形となった。
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