テンプレから外れた「生意気なメスガキ」ですが多元宇宙規模の神様を敵に回しました

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
10 / 10
異常体(バケモン)には異常体(バケモン)をぶつけんだよッ!!!!

(5)

しおりを挟む
 その時、更に別のどこかに強制転移。
「何だよ、これ? いいとこだったのに……」
 アンデッド化版の「私」が、そうボヤく。
 何も無い。
 殺風景な空間。
 そこそこの明るさなのに、太陽や月や……何かの炎のような光源が見当らない。
 地面や床らしきモノが見当らないのに私とアンデッド版の「私」は宙に浮いている。
 地面に相当するモノが見えないだけなのか、しゃがんで足下を手で探るが……何も無い。
 魔法か……別の力……それが働いている場所に私とアンデッド版の「私」は居るらしい。
「お前たちの力を借りたい」
 中年と初老の間ぐらいのとしの男のような声……ただし、人間であればの話だが。
「あたしが、あんたの思い通りにならなくなった途端に、世界ごと『凍結』したヤツがぁ? どのツラさげて、そんな事を言い出すの『神様』?」
「依頼を果たせば、望みを叶えよう」
「じゃあ、何が有っても、あたしを2度と『凍結』しない事」
「1つ訊く、こいつには別の世界に行ける能力が有るのか?」
「今まで会った『あたし』の中では……か~な~り、用心深い方だね、『あたし』」
「有る」
 クソ神から返ってきた答は……私の懸念が当っていた事を示していた。
「なら、私の世界と私の仲間の『凍結』を解け。その上で、こいつみたいな世界丸ごと滅ぼしかねないヤツが、私の世界に来ようとした時には、その事を私の世界の連中に知らせろ。あと、あんたは時間操作も出来るんだろ?」
「ああ……」
「なら、こいつみたいなのが私の世界に来る時には、それを迎撃する為の準備を整えられる時間を与えろ。そして……」
 どうせ、ロクな事じゃないのは判ってる。この「神様」が約束を破る可能性は有るが……一応は言っておくべきだろう。
「私が死んでも、私の望みを叶えろ」
「注文が多いが……いいだろう」
「で、何をすればいいの?」
「お前たちの派生体ヴァリアントを1人殺せ」
「あんたにとって都合が悪いモノが生まれてしまったんなら……お得意の『凍結』をすればいいだろ?」
「残念ながら……チャンスを逃した。私が気付くのが、人間の感覚に『翻訳』すれば……ほんの数時間だけ早ければ、その手が使えたが……今は……」
「今は?」
「私は、この多元宇宙マルチバースの『外』に有り、多元宇宙マルチバースに一方的に干渉出来る者だ。だが、今は……その者を倒すには、この多元宇宙マルチバースの『ルール』に反しない方法で倒さねばならない……」
「待ってよ、じゃあ、あたしや、こいつにやったみたいに、世界ごと『凍結』とかやったら、どうなんの?」
「判らない」
「はぁ?」
「『凍結』そのものは可能だが、その結果、どんな影響が出るかは、私にも予測不能だ」
 何か……おかしい。
 この「世界」に一方的に干渉出来る筈の超越者サマが……まるで、この「世界」で起きた事から重大な悪影響を受ける可能性が有る……そう言ってるかのようだ……。
 私の知らない裏が有るようだ……例えば、このクソ神よりも同等か更に上位の「神」が居て、そいつのせいで、このクソ神は取れる手段が限られている……とか。
「まぁ、いいや。その派生体ヴァリアントの情報を出して」
 アンデッド版の「私」が、そう言うと……。
「阿呆かッ?」
「いい加減にしろ、この無能神」
 目の前に出現した大量の文字と数字を見て、私とアンデッド版の「私」は、ほぼ同時に罵声。
「お前たちが要求した殺害対象の情報だが……?」
「あのね……殺害対象の設定値パラメーターなんか『情報』とは言わない。こんなモノ……ほんの1%違っただけで、そいつの人生や出来る事・出来ない事は大きく変ってくる。何度も懲りてる筈じゃないの? 神様の世界で言う『カオス理論』だよ」
 どうやら、アンデッド版の「私」は……このクソ神について、私が知らない事も知っているらしい……。それは……何だ?
「必要なのは……殺害対象が今までの人生がどんなモノだったかだ」
「……わかった……」
 クソ神の声は……何か疲れているようだった。
 そして……私とアンデッド版の「私」が殺さねばならない「私」のこれまでの人生が……。
「人選ミスじゃない? あたし、たしかに世界ごと滅ぼすのは得意だけど……こいつ、自分の世界を滅ぼしてでも、自分だけは生き残るタイプの奴だよ……」
「人選ミスの可能性は有る。私は……こいつに一番性格が近い派生体ヴァリアントかも知れないが……ほんの僅かな違いが有る。その、ほんの僅かな違いが、どんな結果を生み出すか……判断が出来ない」
 ……クソ……。
 私に良く似た「私」。ただし……私と違って……仲間というモノを持った事がない「私」か……。
「だが……『メスガキ』と呼ばれる原型アーキタイプから派生した者達の中で、奴に対抗出来る可能性の有る異常体アノマリーは……お前達だけだ」
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

A・l・m
2023.11.16 A・l・m

ぼんやりした知識で書くと、メタだと作者殺しとかに話が進んだりするの?
それとも殺そうとするけど作者に捕まってぐふふされる?

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

雑魚キャラ転生 おっさんの冒険

明かりの元
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。