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冒険者が等級付けられてる世界でありがちな事(?)
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「やめろ~ッ‼ 何をするッ⁉ 俺はA級冒険者だぞ~ッ‼」
才能に頼らず努力でそこまで上り詰めた男には思えぬ見苦しさだった。
……いや、たまたま努力でそこまで行けたは良いが、下賤な生まれの者は、所詮は下賤と言う事か……。
「A級と言うが……正確にはAマイナスだろうが……全く」
「それでも、国や世の中の為に有益な人間の筈だ」
「残念ながら……お前が生まれた時、お前の『血』はE級と判定された。お前は妊娠可能な女と交わる事を禁じられた身の筈だ」
「だ……だが……」
「何故、お前と同じE級の……『不妊の呪い』をかけられた女で満足出来なかったのだ? 全く、お前のような穢らわしい者が領主様の娘御と交わろうとするなど……我が神ヂンサム=アン=パエの定めた掟の通り……お前は去勢刑だ」
「ま……待て……ふざけるな‼ 何かおかしいだろ? 何故、劣った『血』しか無い筈の俺が……Aマイナス級の冒険者まで上り詰める事が……」
「我が神の教えは絶対だ。我が神の教えが間違っていると信じる者は、人の身で魔法も使わず空が飛べると信じ、崖から飛び降りるも同じ。後世の者がお前のような愚か者のタワ言を真に受けて自滅せぬよう……見せしめの為に、お前は、最も惨い死刑に……」
「おかしい……おかしい……変だ……。一体、神はどんな基準で……人に等級付けを……」
「おい、拷問官、公開処刑の前に、その者が2度としゃべれぬように、いつもの手順で処置をしておけ」
我が神が、どうやって人に等級を付けているかだと? 貴様のような下賤な愚か者に教える訳にはいかぬ。
『さて、定例の会議を始めよう。先代の最高神官以来、数十年に判って同じ事を言い続けているが……今は亡き我が神ヂンサム=アン=パエの権能を受け継いだ神格は、まだ発見されていない』
魔法の遠隔会議で、我が教派の最高神官は、そう切り出した。
人の持つ様々な「等級」を判別する神聖魔法を授けて下さる神ヂンサム=アン=パエは、数十年前、どうやら神々の世界で起きたらしい戦いで消滅してしまったようだった。
そうだ……まだ子供だった頃の私がヂンサム=アン=パエの神官の道を志した時、既に、私の信仰の対象だった神は消え去っていたのだ。
だが……ヂンサム=アン=パエが消えた時点で、この世界のほぼ全ての国々は、ヂンサム=アン=パエの神聖魔法による「人の等級付け」無しには成り立たなくなっていた。
生まれの等級。
冒険者の等級。
騎士、貴族、文官官僚、職人……その他諸々。
公的・民間を問わず、あらゆる組織の等級や上下関係は……ヂンサム=アン=パエの神聖魔法が決めていた。
しかし……ここ数十年、本当は、その神聖魔法は使えなくなっている。
『主要な魔導師ギルドと他の教派も……引き続き、ヂンサム=アン=パエがまだ存在しているフリをする事に協力し続けてくれるそうだ。彼らも、社会そのものが大混乱に陥る事は望んでいないしな』
ここ数十年間、我が教派が行なってきた「人の等級付け」は……はっきり言えばデタラメだ。
しかし、世の人々の大半が、そのデタラメを真実だと信じているから、この社会は維持出来ているのだ。
私とて、まだ修行途上の身。
時に心に迷いが生じる事も有る。
本当は早い内に事実を公表し……「人の等級付け」など不要な新しい世の中を生み出すべきでは無かったのか? と……。
だが、もう遅い。
我が神への信仰と、我が神が授けて下さる神聖魔法が、単なる迷信と化していたとしても……その迷信を信じる者が居なくなった時に、世が滅ぶような迷信も、また、頑として存在しているのだ。
才能に頼らず努力でそこまで上り詰めた男には思えぬ見苦しさだった。
……いや、たまたま努力でそこまで行けたは良いが、下賤な生まれの者は、所詮は下賤と言う事か……。
「A級と言うが……正確にはAマイナスだろうが……全く」
「それでも、国や世の中の為に有益な人間の筈だ」
「残念ながら……お前が生まれた時、お前の『血』はE級と判定された。お前は妊娠可能な女と交わる事を禁じられた身の筈だ」
「だ……だが……」
「何故、お前と同じE級の……『不妊の呪い』をかけられた女で満足出来なかったのだ? 全く、お前のような穢らわしい者が領主様の娘御と交わろうとするなど……我が神ヂンサム=アン=パエの定めた掟の通り……お前は去勢刑だ」
「ま……待て……ふざけるな‼ 何かおかしいだろ? 何故、劣った『血』しか無い筈の俺が……Aマイナス級の冒険者まで上り詰める事が……」
「我が神の教えは絶対だ。我が神の教えが間違っていると信じる者は、人の身で魔法も使わず空が飛べると信じ、崖から飛び降りるも同じ。後世の者がお前のような愚か者のタワ言を真に受けて自滅せぬよう……見せしめの為に、お前は、最も惨い死刑に……」
「おかしい……おかしい……変だ……。一体、神はどんな基準で……人に等級付けを……」
「おい、拷問官、公開処刑の前に、その者が2度としゃべれぬように、いつもの手順で処置をしておけ」
我が神が、どうやって人に等級を付けているかだと? 貴様のような下賤な愚か者に教える訳にはいかぬ。
『さて、定例の会議を始めよう。先代の最高神官以来、数十年に判って同じ事を言い続けているが……今は亡き我が神ヂンサム=アン=パエの権能を受け継いだ神格は、まだ発見されていない』
魔法の遠隔会議で、我が教派の最高神官は、そう切り出した。
人の持つ様々な「等級」を判別する神聖魔法を授けて下さる神ヂンサム=アン=パエは、数十年前、どうやら神々の世界で起きたらしい戦いで消滅してしまったようだった。
そうだ……まだ子供だった頃の私がヂンサム=アン=パエの神官の道を志した時、既に、私の信仰の対象だった神は消え去っていたのだ。
だが……ヂンサム=アン=パエが消えた時点で、この世界のほぼ全ての国々は、ヂンサム=アン=パエの神聖魔法による「人の等級付け」無しには成り立たなくなっていた。
生まれの等級。
冒険者の等級。
騎士、貴族、文官官僚、職人……その他諸々。
公的・民間を問わず、あらゆる組織の等級や上下関係は……ヂンサム=アン=パエの神聖魔法が決めていた。
しかし……ここ数十年、本当は、その神聖魔法は使えなくなっている。
『主要な魔導師ギルドと他の教派も……引き続き、ヂンサム=アン=パエがまだ存在しているフリをする事に協力し続けてくれるそうだ。彼らも、社会そのものが大混乱に陥る事は望んでいないしな』
ここ数十年間、我が教派が行なってきた「人の等級付け」は……はっきり言えばデタラメだ。
しかし、世の人々の大半が、そのデタラメを真実だと信じているから、この社会は維持出来ているのだ。
私とて、まだ修行途上の身。
時に心に迷いが生じる事も有る。
本当は早い内に事実を公表し……「人の等級付け」など不要な新しい世の中を生み出すべきでは無かったのか? と……。
だが、もう遅い。
我が神への信仰と、我が神が授けて下さる神聖魔法が、単なる迷信と化していたとしても……その迷信を信じる者が居なくなった時に、世が滅ぶような迷信も、また、頑として存在しているのだ。
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