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第一章:海にかかる霧
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見世物小屋から出た途端……ある音が響いた。
「お……おい……あれ……あの音……たしか……?」
「行ってみますか?」
「へっ?」
「ここの大人気の見世物ですよ」
何なんだ一体?……そう思って吾朗の後に付いて行くと……。
「お……おい……『東京』で神社の近くに競技場って、靖國神社じゃなくて明治神宮だろ……」
「ま、そこは気にせずに……」
偽の靖國神社のすぐ隣に……今は火山灰の下の東京ドームほどの大きさの何かの競技場らしき建物が有った。
入口で吾朗がチケットを買うが……。
「そう言や、ずっと気になってたが……ここでは電子マネーやクレカは使えねえのか?」
「ここでの『遊び』はマズい代物が結構有るんで、足が付かないように現金払いが基本です。何だったら、クレカの残金を足が付かない形で現金に交換してくれるサービスも有りますよ」
「何だそりゃ? 金持ち向けのサービスか、借金だらけの奴向けのサービスか知れたもんじゃねえな……」
そして、競技場の客席では……。
「お……おい……あれ……」
「ええ……旧政府が作った4m級軍用パワーローダー『国防戦機』ですよ」
富士の噴火前、日本は2つに割れたアメリカの内のタチが悪い方である「アメリカ連合国」の「(旧政府の広報によれば)誇り高き完全属国」となった。
だが、旧自衛隊の一部に、その決定を行なった旧政府そのものを「国と国民の敵」と見做す勢力が有り……そのせいで「自衛隊が暴走した際の抑止力となる『もう1つの自衛隊』」こと「特務憲兵隊」が設立された。
その「特務憲兵隊」の「顔」こそが、今、競技場で戦っている「国防戦機」だ。
富士の噴火で旧政府が倒れた際に、「国防戦機」も、かなり「闇」に流れた……と云う噂だったが……。
「おい、ところで……あの巨大パネルに表示されてる女の子は何だ?」
「パイロットです」
「何の?」
「何のって……」
吾朗が指差したのは……。
「あの……えっと……その……まさか……」
「ええ、そう云う事です……。まぁ、何せ『ほぼ世界初の軍用パワーローダー』なので、当初は熟練パイロットなんか居ませんでしたので、搭載されてるAIが良きに図らってくれて、未熟なパイロットでも9割以上の任務を卒なく果たせたそうなので……ま、十代の女の子でも操作するのは不可能じゃありませんよ」
「これって……その……馬鹿な萌えオタの夢を実現したの? それとも馬鹿な萌えオタへの嫌がらせ?」
「どっちですかね? どうもパイロットはロボトミー手術をされてるみたいですが……」
「お……おい……待て……」
「そもそも、今時、若い女の子を誘拐する場合……」
「おい、誘拐されて、ここに連れて来られたのか、あの『パイロット』?」
「こんな危険な仕事を子供にさせる親が居る訳ないでしょ」
「あ……そりゃ、そうだな……」
「今は、犯罪組織にとっては、若い女の子なら、子供を生ませて、その子供を売るのが一番金になるんで、多分、遺伝子検査で問題が見付かったか、子供を作る能力に問題が有る女の子をパイロットにしてるんだと思いますよ」
「待て『子供を売る』?」
「犯罪組織やテロ組織の間では、健康な子供は高値で取引されてますよ。少年兵に人体実験に違法臓器移植に剣呑い『魔法』の生贄に……」
「あああ……」
「なので、売春は相対的に金が稼げなくなって……売春をやらされるのは『商品』として二級品以下の……」
「やめろ、やめて、やめて下さい、お願いします……」
「金と設備が有るデカい組織がチンピラが仕切ってる売春を潰して、『救助』した女の子に子供を生ませたりとかも……」
「だから、その胸糞悪い話はやめろ、って言ってるだろ」
その時、戦っている2機の「国防戦機」が互いを銃撃。
「あ……安心して下さい。牽制用の模擬弾みたいです。流石に客を危険に晒すような真似はやらないので……」
「あ……そ……」
俺が、かつて居た「業界」から離れていた間、世間は……と言うか世間の裏側は、かなりエラい事になっていたらしい。
「お……おい……あれ……あの音……たしか……?」
「行ってみますか?」
「へっ?」
「ここの大人気の見世物ですよ」
何なんだ一体?……そう思って吾朗の後に付いて行くと……。
「お……おい……『東京』で神社の近くに競技場って、靖國神社じゃなくて明治神宮だろ……」
「ま、そこは気にせずに……」
偽の靖國神社のすぐ隣に……今は火山灰の下の東京ドームほどの大きさの何かの競技場らしき建物が有った。
入口で吾朗がチケットを買うが……。
「そう言や、ずっと気になってたが……ここでは電子マネーやクレカは使えねえのか?」
「ここでの『遊び』はマズい代物が結構有るんで、足が付かないように現金払いが基本です。何だったら、クレカの残金を足が付かない形で現金に交換してくれるサービスも有りますよ」
「何だそりゃ? 金持ち向けのサービスか、借金だらけの奴向けのサービスか知れたもんじゃねえな……」
そして、競技場の客席では……。
「お……おい……あれ……」
「ええ……旧政府が作った4m級軍用パワーローダー『国防戦機』ですよ」
富士の噴火前、日本は2つに割れたアメリカの内のタチが悪い方である「アメリカ連合国」の「(旧政府の広報によれば)誇り高き完全属国」となった。
だが、旧自衛隊の一部に、その決定を行なった旧政府そのものを「国と国民の敵」と見做す勢力が有り……そのせいで「自衛隊が暴走した際の抑止力となる『もう1つの自衛隊』」こと「特務憲兵隊」が設立された。
その「特務憲兵隊」の「顔」こそが、今、競技場で戦っている「国防戦機」だ。
富士の噴火で旧政府が倒れた際に、「国防戦機」も、かなり「闇」に流れた……と云う噂だったが……。
「おい、ところで……あの巨大パネルに表示されてる女の子は何だ?」
「パイロットです」
「何の?」
「何のって……」
吾朗が指差したのは……。
「あの……えっと……その……まさか……」
「ええ、そう云う事です……。まぁ、何せ『ほぼ世界初の軍用パワーローダー』なので、当初は熟練パイロットなんか居ませんでしたので、搭載されてるAIが良きに図らってくれて、未熟なパイロットでも9割以上の任務を卒なく果たせたそうなので……ま、十代の女の子でも操作するのは不可能じゃありませんよ」
「これって……その……馬鹿な萌えオタの夢を実現したの? それとも馬鹿な萌えオタへの嫌がらせ?」
「どっちですかね? どうもパイロットはロボトミー手術をされてるみたいですが……」
「お……おい……待て……」
「そもそも、今時、若い女の子を誘拐する場合……」
「おい、誘拐されて、ここに連れて来られたのか、あの『パイロット』?」
「こんな危険な仕事を子供にさせる親が居る訳ないでしょ」
「あ……そりゃ、そうだな……」
「今は、犯罪組織にとっては、若い女の子なら、子供を生ませて、その子供を売るのが一番金になるんで、多分、遺伝子検査で問題が見付かったか、子供を作る能力に問題が有る女の子をパイロットにしてるんだと思いますよ」
「待て『子供を売る』?」
「犯罪組織やテロ組織の間では、健康な子供は高値で取引されてますよ。少年兵に人体実験に違法臓器移植に剣呑い『魔法』の生贄に……」
「あああ……」
「なので、売春は相対的に金が稼げなくなって……売春をやらされるのは『商品』として二級品以下の……」
「やめろ、やめて、やめて下さい、お願いします……」
「金と設備が有るデカい組織がチンピラが仕切ってる売春を潰して、『救助』した女の子に子供を生ませたりとかも……」
「だから、その胸糞悪い話はやめろ、って言ってるだろ」
その時、戦っている2機の「国防戦機」が互いを銃撃。
「あ……安心して下さい。牽制用の模擬弾みたいです。流石に客を危険に晒すような真似はやらないので……」
「あ……そ……」
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