1 / 1
序章
敗戦
しおりを挟む
勝てる筈の戦争だった。
だが、俺達の親父か祖父さんの時代までは「同じ国」だった隣国を再併合する為に始まった戦争は、序盤から思わぬ苦戦が続き……気付いた時には、俺の国はボロボロになっていた。
いや、戦争の前から、俺の国はボロボロだったのかも知れない。戦争は、最後の一押しに過ぎす、俺達が気付いていない内に、俺達の国は、いつ谷底に堕ちてもおかしくない崖っ縁に有っただけなのかも知れない。
政界の大物達は、大統領を裏切り、他国へ亡命し……食料は不足し……俺達の国は産油国の筈なのに、軍用車両を動かす為の燃料さえ前線に届かなくなっていった。
俺達の国の誰も「負けた」と云う実感は無いのに……俺達の国は負けていた。より正確に言うなら、自分達で始めた戦争を継続する事が出来なくなっていた。
俺達の国に進駐してきた多国籍軍はNATO中心の筈なのに……思ったよりも色んな人種が居た。
白いのだけじゃなくて、黄色いのも黒いのも……。
政府は瓦解……国会は多国籍軍の命令で解散し、総選挙が行なわれ……そして、新しい「民主的」な憲法が制定され……。
だが、旧大統領派の政治家の大半は公職追放を受けていて、立候補さえ出来なかった。
いや……それも全て後から聞いた話だ。
前線で兵員輸送車の燃料が尽きた俺達の部隊は、あっさり敵軍に捕まり……捕虜収容所にブチ込まれ、ようやく復員したのは、終戦……俺達の国の人間の多くは「敗戦」では無く「終戦」と言い続けていた……から2年近くが経ってだった。
実家に帰り着いた時……家族は誰も居なかった。
近所の連中に家族を行方を尋ねたが……。
隣の家の夫婦は、五〇代で、子供は全員、遠く離れた都会に働きに行っている筈だった。
だが……家の中には……赤ん坊が居た。
多分、1歳未満の……。
「あんたの妹の子だよ」
隣の家のおばちゃんは……そう説明したが……その赤ん坊の肌の色は……俺達とは明らかに異なっていた。
だが、俺達の親父か祖父さんの時代までは「同じ国」だった隣国を再併合する為に始まった戦争は、序盤から思わぬ苦戦が続き……気付いた時には、俺の国はボロボロになっていた。
いや、戦争の前から、俺の国はボロボロだったのかも知れない。戦争は、最後の一押しに過ぎす、俺達が気付いていない内に、俺達の国は、いつ谷底に堕ちてもおかしくない崖っ縁に有っただけなのかも知れない。
政界の大物達は、大統領を裏切り、他国へ亡命し……食料は不足し……俺達の国は産油国の筈なのに、軍用車両を動かす為の燃料さえ前線に届かなくなっていった。
俺達の国の誰も「負けた」と云う実感は無いのに……俺達の国は負けていた。より正確に言うなら、自分達で始めた戦争を継続する事が出来なくなっていた。
俺達の国に進駐してきた多国籍軍はNATO中心の筈なのに……思ったよりも色んな人種が居た。
白いのだけじゃなくて、黄色いのも黒いのも……。
政府は瓦解……国会は多国籍軍の命令で解散し、総選挙が行なわれ……そして、新しい「民主的」な憲法が制定され……。
だが、旧大統領派の政治家の大半は公職追放を受けていて、立候補さえ出来なかった。
いや……それも全て後から聞いた話だ。
前線で兵員輸送車の燃料が尽きた俺達の部隊は、あっさり敵軍に捕まり……捕虜収容所にブチ込まれ、ようやく復員したのは、終戦……俺達の国の人間の多くは「敗戦」では無く「終戦」と言い続けていた……から2年近くが経ってだった。
実家に帰り着いた時……家族は誰も居なかった。
近所の連中に家族を行方を尋ねたが……。
隣の家の夫婦は、五〇代で、子供は全員、遠く離れた都会に働きに行っている筈だった。
だが……家の中には……赤ん坊が居た。
多分、1歳未満の……。
「あんたの妹の子だよ」
隣の家のおばちゃんは……そう説明したが……その赤ん坊の肌の色は……俺達とは明らかに異なっていた。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
保健室の記録 少女失敗レポート
カルラ アンジェリ
大衆娯楽
小中高一貫の聖ヴィエルジュ学園の保健室の先生である田中総一郎はあることに疑問を持っていた。
それはこの学校の女子生徒のお漏らしやおねしょが非常に多いことである。
これはとある保健室の先生による少女の失敗の記録をつづった作品である。
ピアノ教室~先輩の家のお尻たたき~
鞭尻
大衆娯楽
「お尻をたたかれたい」と想い続けてきた理沙。
ある日、憧れの先輩の家が家でお尻をたたかれていること、さらに先輩の家で開かれているピアノ教室では「お尻たたきのお仕置き」があることを知る。
早速、ピアノ教室に通い始めた理沙は、先輩の母親から念願のお尻たたきを受けたり同じくお尻をたたかれている先輩とお尻たたきの話をしたりと「お尻たたきのある日常」を満喫するようになって……
魔法少女は特別製
紫藤百零
大衆娯楽
魔法少女ティアドロップこと星降雫は、1日かけてしぶとい敵をようやく倒し終わったところ。気が抜けた彼女を襲うのは、日中気にも留めなかった生理的欲求ーー尿意だ。ここで負けたら乙女失格! 雫は乙女としても勝利を手にすることができるのか!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
目が覚めたらクレイジーサイコレズの吸血鬼が同衾していました。
ゆっこ!
大衆娯楽
私の名前は暦。今年の4月から一人暮らしを開始した中学生。両親が海外に赴任したため、一人で日本に残ったのだ。
その翌日、目を覚ますと私の身の上に異変が起こっていた。
目を覚ますと、自室ベッドの隣で女の子(吸血鬼)が眠っていたのである。
私は思わずその子をグーで殴り、ボコボコにする。
そして、なんでこんな事態となっているかを問い質すと、私は吸血鬼に最上の血を分け与えることができる[吸血鬼の恋人]らしかった。
彼女はレムネリアは、その血液欲しさに私を襲ったのだ。
すでに私の頸筋には吸血された跡があった。
真っ青になる私!
しかし、[吸血鬼の恋人]である私は、すべての吸血の呪いをキャンセルしていて、人間のままだった。
その上、彼女、レムネリアの能力の大半も奪い取っていた。
私には、そんなチート能力があったのか!
そんな私と、吸血鬼少女の共同生活が始まった。
何の因果か能力の大半を失った私が、彼女をお世話しなければならなくなったのだ。
そんな状況下、私は奪い取った吸血鬼の能力を使い、闇夜に羽搏いていく。
こうして、最低の吸血鬼物語は続いていく。
注意:主人公は中二病を患ってかなり最低な存在となっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる