A2:洗脳密令

蓮實長治

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第一章:毒戦寒流

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 警視庁本部庁舎で公安の刑事が飛び降り自殺。
 それも……やったのは、最後に会ってから半日経っていない相手だった。
「て……てめえら……何を……のこのこと……村上さんが死んだのは……てめえらのせいだぞ……」
 野次馬に混っていた私達を見付けた公安の刑事だが……目は虚ろになっている。足取りもおぼつかない。今にも倒れそうだ。
「知るか……手前てめえらの先輩が勝手におかしくなって、勝手に『I can fly』しただけだろ……」
「ち……チーム長……やめて下さいッ‼」
「な……なんだと……」
「聞いてるぞ。あの村上とか言うヤツ、刑事部に居た頃の渾名が『即オチの村上』だったそうだな。自分で落ちてりゃ、世話ねえよ」
 公安の刑事は、意味のない事を口走りながら……チーム長に殴りかかり……。
 だが……技量うでや体格が同じぐらいなら……ある程度とは言え、相手の体調・心理・動きを読める方が有利だ。
「ぐ……ぐへ……」
 公安の刑事は、あっさりアスファルトに叩き付けられた。
「はい、先に殴りかかったのは、こいつ。正当防衛ですよね。証人は皆さん」
「チーム長、帰りましょう」
「何でだよ」
 回りの奴らが何を思ってるかは、チーム長のような能力が無くても明らかだ。
 無理矢理、私と関口でチーム長を近くのバス停まで連れていく。
「いい大人が、何やってんですか?」
「そうっすよ」
「だってよう……あの飛び降り野郎の前科を知りゃあよう……。一応、俺だって、警察ってヤツを多少は信用してたから、この稼業を選んだんだぜ」
「へ……」
「えっと……」
 前科? 何の……まさか……。
「あいつの事を少し調べたら……死刑判決が出た事件に複数回関わってる。それも……全部、被疑者マル被は、勾留されてから1日か2日で自白ゲロしてる」
「え……えっと……それが……」
 いや……私も……喉元まで出掛かっていた。しかし……その推測を言葉にする勇気は無かった。
「あのなぁ……本人が気付いてないっぽいたあ言え、調って、嫌な予感しかしねぇよ」
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