87 / 89
第八章:鉄拳掃毒
アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (4)
しおりを挟む
「な……何だと……馬鹿な……だが、この程度……」
奴は……炎で形作られた……龍か蛇に体を呪縛されているように見える。
しかし……。
「吽ッ‼」
奴の全身から凄まじい気合が放たれると共に……。
「う……うげ……」
炎の龍が弾け飛んだ瞬間……奴は……嘔吐。
「な……なんだ……こ……これは……?」
「判んねえか? おめえの術を無理矢理破った奴が居る。その反動が、おめえの体に返って来ただけだ」
「だ……誰が……私の術を……貴様か……?」
「さて……? あたしは、おめえよりも、力も技量も劣ってんのは知ってるだろ」
「な……なら……誰が……私の術を破ったと……?」
「おめえだよ。てめえ自身だよ」
一瞬、ポカ~ンとした後に……奴は……どうやら……気付いたようだ。
このフザけた真似をやりやがった、この糞野郎への怒り……。
この人間のクズに、名前も人格も無い道具にされ踏み付けられた人々への同情……。
それが……あたしを……師匠が言っていた「慈悲と忿怒を同じ心に同時に持つ」境地に到達させてくれたようだ。
「倶利伽羅龍は、おめえに返した。迦楼羅焔と金剛剣は……」
あたしは仲間達を見渡す。
「こいつから奪った力を、あんたらの武器に宿らせた。あんたは……そのデカい腕に」
あたしは、まず、レンジャー隊の副隊長兼パワー型に言った。
「えっ?」
「あとは……おめえの長巻と手足の刃にな……」
続いて、相棒にそう告げる。
「なるほど……試してみるか……。不自惜身命」
相棒は……「火事場の馬鹿力」の解放用の自己暗示と、「鎧」のリミッター解除キーワードを兼ねた言葉を唱え……。
相棒の鎧の各部が開き……そこから余剰エネルギーが溢れ出る。
相棒は、ほぼ助走無しでジャンプ。一瞬にして、例の鬼の真上まで飛ぶ……。
そして、空中に居る間に、長巻を展開し終っており……。
「があああ……」
長巻で軽く触れただけで……鬼の体と、その体に宿っていた邪気や魔物は消滅。
通常の物理攻撃では開いてしまう「異界への門」は影も形も無い。
「おい、力はこの阿呆持ちだ。好きなだけ、派手にやれ」
「ふ……ふざけ……」
「残念だったな。元は……あんたの術だが……解除出来るのは、あんたじゃなくて、あたしみてぇ~だ。好きに使わせてもらう」
師匠に言われた、あたしの真の力を引き出すヒント……その言葉の一節が脳裏に受かぶ。
『荒神の君は、惟、如来の権身にして、仏法を保たんが為に仮に明神と称す』
……どうやら……慈悲と忿怒を同時に心に抱いた時……あたしは……相手を攻撃する忿怒尊の術だけじゃなくて、相手の攻撃を、あるいは無に帰し、あるいは返し、あるいは奪う……如来や菩薩の術も使えるようになったらしい。
とは言え……師匠が言ってたように……この状態になれるのは、一生の内で、この一回だけかも知れねえが……。
奴は……炎で形作られた……龍か蛇に体を呪縛されているように見える。
しかし……。
「吽ッ‼」
奴の全身から凄まじい気合が放たれると共に……。
「う……うげ……」
炎の龍が弾け飛んだ瞬間……奴は……嘔吐。
「な……なんだ……こ……これは……?」
「判んねえか? おめえの術を無理矢理破った奴が居る。その反動が、おめえの体に返って来ただけだ」
「だ……誰が……私の術を……貴様か……?」
「さて……? あたしは、おめえよりも、力も技量も劣ってんのは知ってるだろ」
「な……なら……誰が……私の術を破ったと……?」
「おめえだよ。てめえ自身だよ」
一瞬、ポカ~ンとした後に……奴は……どうやら……気付いたようだ。
このフザけた真似をやりやがった、この糞野郎への怒り……。
この人間のクズに、名前も人格も無い道具にされ踏み付けられた人々への同情……。
それが……あたしを……師匠が言っていた「慈悲と忿怒を同じ心に同時に持つ」境地に到達させてくれたようだ。
「倶利伽羅龍は、おめえに返した。迦楼羅焔と金剛剣は……」
あたしは仲間達を見渡す。
「こいつから奪った力を、あんたらの武器に宿らせた。あんたは……そのデカい腕に」
あたしは、まず、レンジャー隊の副隊長兼パワー型に言った。
「えっ?」
「あとは……おめえの長巻と手足の刃にな……」
続いて、相棒にそう告げる。
「なるほど……試してみるか……。不自惜身命」
相棒は……「火事場の馬鹿力」の解放用の自己暗示と、「鎧」のリミッター解除キーワードを兼ねた言葉を唱え……。
相棒の鎧の各部が開き……そこから余剰エネルギーが溢れ出る。
相棒は、ほぼ助走無しでジャンプ。一瞬にして、例の鬼の真上まで飛ぶ……。
そして、空中に居る間に、長巻を展開し終っており……。
「があああ……」
長巻で軽く触れただけで……鬼の体と、その体に宿っていた邪気や魔物は消滅。
通常の物理攻撃では開いてしまう「異界への門」は影も形も無い。
「おい、力はこの阿呆持ちだ。好きなだけ、派手にやれ」
「ふ……ふざけ……」
「残念だったな。元は……あんたの術だが……解除出来るのは、あんたじゃなくて、あたしみてぇ~だ。好きに使わせてもらう」
師匠に言われた、あたしの真の力を引き出すヒント……その言葉の一節が脳裏に受かぶ。
『荒神の君は、惟、如来の権身にして、仏法を保たんが為に仮に明神と称す』
……どうやら……慈悲と忿怒を同時に心に抱いた時……あたしは……相手を攻撃する忿怒尊の術だけじゃなくて、相手の攻撃を、あるいは無に帰し、あるいは返し、あるいは奪う……如来や菩薩の術も使えるようになったらしい。
とは言え……師匠が言ってたように……この状態になれるのは、一生の内で、この一回だけかも知れねえが……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる