世界を護る者達:毒戰寒流

蓮實長治

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第八章:鉄拳掃毒

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (4)

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「な……何だと……馬鹿な……だが、この程度……」
 奴は……炎で形作られた……龍か蛇に体を呪縛されているように見える。
 しかし……。
「吽ッ‼」
 奴の全身から凄まじい気合が放たれると共に……。
「う……うげ……」
 炎の龍が弾け飛んだ瞬間……奴は……嘔吐。
「な……なんだ……こ……これは……?」
「判んねえか? おめえの術を無理矢理破った奴が居る。その反動が、おめえの体に返って来ただけだ」
「だ……誰が……私の術を……貴様か……?」
「さて……? あたしは、おめえよりも、力も技量わざも劣ってんのは知ってるだろ」
「な……なら……誰が……私の術を破ったと……?」

 一瞬、ポカ~ンとした後に……奴は……どうやら……気付いたようだ。
 このフザけた真似をやりやがった、この糞野郎への怒り……。
 この人間のクズに、名前も人格も無い道具にされ踏み付けられた人々への同情……。
 それが……あたしを……師匠が言っていた「慈悲と忿怒を同じ心に同時に持つ」境地に到達させてくれたようだ。
「倶利伽羅龍は、おめえに返した。迦楼羅焔と金剛剣は……」
 あたしは仲間達を見渡す。
「こいつから奪った力を、あんたらの武器に宿らせた。あんたは……そのデカい腕に」
 あたしは、まず、レンジャー隊の副隊長ブルーパワー型イエローに言った。
「えっ?」
「あとは……おめえの長巻と手足のブレードにな……」
 続いて、相棒にそう告げる。
「なるほど……試してみるか……。不自惜身命」
 相棒は……「火事場の馬鹿力」の解放用の自己暗示と、「鎧」のリミッター解除キーワードを兼ねた言葉を唱え……。
 相棒の鎧の各部が開き……そこから余剰エネルギーが溢れ出る。
 相棒は、ほぼ助走無しでジャンプ。一瞬にして、例の鬼の真上まで飛ぶ……。
 そして、空中に居る間に、長巻を展開し終っており……。
「があああ……」
 長巻で軽く触れただけで……鬼の体と、その体に宿っていた邪気や魔物は消滅。
 通常の物理攻撃では開いてしまう「異界への門」は影も形も無い。
「おい、力はこの阿呆持ちだ。好きなだけ、派手にやれ」
「ふ……ふざけ……」
「残念だったな。元は……あんたの術だが……解除出来るのは、あんたじゃなくて、あたしみてぇ~だ。好きに使わせてもらう」
 師匠に言われた、あたしの真の力を引き出すヒント……その言葉の一節が脳裏に受かぶ。
『荒神の君は、これ、如来の権身にして、仏法を保たんが為に仮に明神と称す』
 ……どうやら……慈悲と忿怒を同時に心に抱いた時……あたしは……相手を攻撃する忿怒尊の術だけじゃなくて、相手の攻撃を、あるいは無に帰し、あるいは返し、あるいは奪う……如来や菩薩の術も使えるようになったらしい。
 とは言え……師匠が言ってたように……この状態になれるのは、一生の内で、この一回だけかも知れねえが……。
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