世界を護る者達:毒戰寒流

蓮實長治

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第六章:Feel the Fire

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)

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 何でだよッ⁉
 ふざけんじゃね~ッ‼
 折角、温泉付きの病院で療養する羽目になったのに……。
 医者に言われた一言が……最悪なモノだった。
「筋肉もあっちこっちかなり痛めてますね。ちょっと、温めると悪化するタイプの痛め方なので……」
 おい、こちとら、東京生まれで、NEO TOKYO育ちのチャキチャキの江戸っ子だぞッ‼
 風呂ってのは熱いモノだって育ち方してんだぞ。
 クソ。
 なのに、医者の許可が出るまで、入れるのは微温ぬるめのお湯。
「あ……昨日は……すまなかったな……」
「あ……いいっすよ、気にしなくて……ははは……」
 一緒の風呂に入ってるのは……何か、ここんとこ、やたらと出喰わす対異能力犯罪広域警察レコンキスタの久留米レンジャー隊の副隊長ブルー
 どうやら、瀾の別居中の警察関係者の姉らしい。
 の……割に、何か、口調が「関東弁」っぽい気がするが……まぁ、いいや。
 ともかく、ゾンビ化しなかったのが奇跡クラスの邪気を受けたんで(まぁ、あの強化装甲服パワードスーツには、ある程度の防御魔法がかけられてたが)、勤務先カイシャからここでの療養を命じられたらしい。
「ところで、どっかで会った事ない?」
「えっ? そうっすか?」
「そう言や、何で、ここに入院する事になったの?」
「へっ?」
「ここって、クソ高価たかいんだよね?」
 畜生……流石は警官。察しが良過ぎる。
「あ……『魔法』の師匠が受けた心霊スポットの『浄化』の仕事を手伝ったら、ドジこいちゃって……あははは……」
「ああ、なるほど……」
「報酬が全部、あたしの入院費で消えちまった、って散々怒られましたは、はは……」
「大変だなぁ……そっちの仕事も……」
「ええ……」
 マズい。
 とっとと逃げよう。
 風呂から上がると……。
「あれ?『魔法使い』系にしては、いい体してるな……」
「へっ?」
「ムキムキになるような体質じゃないっぽいけど……筋肉はしっかり付いてる」
 こ……こいつ……現場ではヌケてた癖に……。
「あ……修行の一貫で山籠りも有るんで」
 まぁ、これは本当だ。
 って、何で、あんたまで風呂から上がる?
 って、あ~、畜生、これ以上、ややこしくなったら、うっかりヤバい情報与えそうだから、付いてくんなって……。
 もうやだ、と喉元まで出かけてる状態で更衣室に入ると……。
「ん?」
「あ……てめぇ……」
 そこに居たのは……全ての元凶。
 あたしの父親の家系の本家の天才娘。
 ある意味で、瀾と同じて「天才は天災」と言いたくなるよ~なクソ野郎。
「お……押えて……」
「でも……でも……でも……ッ」
「またお前か……」
「うるせえ、手前てめェのせいで何人死んだと思ってるんだッ?」
「私が史上最悪の連続殺人鬼で、お前が、その被害者遺族だとしても、ここでは、先に手を出した方が悪い。昨日は、そいつに庇ってもらって無事で済んだが、ここの職員に2度目は無いと思えと言われた筈だ」
「うるせえ~ッ‼」
「おい、小学校マトモに出てるのか? 語彙が貧弱にも程が有る」
「押えて……」
「あががが……」
 体調は少しはマトモになったが……何だよ、ここまで精神衛生的に悪い病院も、そうそう無いねえよ……。
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