39 / 89
第四章:A Hard Day
アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (2)
しおりを挟む
「次……霊力を込めた9㎜パラベラム・ホローポイント弾の効果を確認する」
そう言って相棒は2個目の拳銃を抜いたが……。
「前から変に思ってたんだけど……お前、両手利きだっけ?」
「元は右利きだが、自分で両手利きに矯正した」
そして、銃声。
「と言っても、銃を撃つだけなら……護国軍鬼には射撃補正機能が有るから、利き手じゃない方の片手撃ちでも、そこそこは命中るけどな」
続いて、また、銃声。
だが……。
「効いてねえぞ……貫通してるみて~だ」
「やれやれ……」
相棒は両手の拳銃をホルスターに戻し、散弾銃を手にする。
「死体になって、そんなに時間が経ってないのに、もう体が脆くなってるのか?」
どうやら、さっき相棒が使ったのは、命中った相手の体内で変形して、わざと体を貫通しにくくなる銃弾らしい。
だが、普通の人間の体なら貫通しない銃弾でも……あのゾンビの体は、あっさり貫通した。
そして、今度は、散弾銃の銃声。
「このゾンビどもに取り憑いてる悪霊だか魔物だかは……過去にもこっちの世界……人間が居るこの世界に出現した事が有るのか?」
「へっ?」
「魔法的・霊的じゃない純粋に物理的な攻撃で傷付くと、向こうにとって有り難い事が起きる。霊力を込めた銃弾や弓矢でも、貫通してしまうと同様。そんな特性が有るのに、体は脆くなってる。まるで、こっち側の人間にとって戦いにくくなるような『進化圧』『淘汰圧』の元で生まれた存在に思えるんだが……?」
「さて……悪霊や魔物が居る『異界』は、いくつぐらい有って、『異界』ごとに、何が、どう違うのか? とか……別の『異界』だと思われてるモノは、実は、同じ『異界』の他の場所だったなんてオチが有るのか? とか……その手の人間が考えがちな事が、どこまで『異界』でも通用する話なのか? みて~な事は、あたしら『魔法使い』系にとっても、まだまだ、謎ばかりだ」
「なるほど……ん?」
しゃがみ込んで、倒れてるゾンビどもの「何か」を確認しようとしてたらしい相棒が変な声をあげた。
「どうした?」
「警察とトラブるのが確実なんで……傷口を確認してた。こっちが攻撃した事で出来た傷が、検死した時に『死んだ後についたもの』と判断される可能性が高いなら、言い訳の手段は色々と有ると思ってな……。けど、御覧の有様だ」
相棒は、そう言いながら、散弾による傷口を指差すが……その傷口から立ち上ってるのは……煙。
傷口の周囲は腐汁と化していた。
「霊力を込めた武器で、魔物や悪霊と同化しちまった奴を攻撃したら……こうなる場合は結構有るな」
「そうか……。警察の検死担当者も頭を抱えるな」
「それ以前に、剣呑い『邪気』に汚染されてる死体を解剖した奴が無事で済むか判んね~けどな」
相棒は続いて、調べていた死体……と言うか活動停止中のゾンビの体を引っくり返す。
「嘘だろ……命中った散弾の半数ぐらいが、体を貫通してる。散弾に込めてる霊力の約半分は無駄になったか……待てよ」
「どうした?」
「背中側の傷口で、気になる点が有る」
相棒は、短剣を抜くと、別の活動停止中のゾンビの制服の胸の辺りを切り裂き、更に体に短剣を突き刺し……。
「おい、霊力を込めてる武器でも、迂闊に傷付けると……」
「判ってるが、どうしても確認したい事が有ってな……やっぱりか……」
「何がだ?」
「見ろ。散弾で肋骨が砕けてる。冗談じゃないな。迂闊に傷付けたらマズい相手が……筋肉だけじゃなくて、骨まで脆くなってる」
そう言って相棒は2個目の拳銃を抜いたが……。
「前から変に思ってたんだけど……お前、両手利きだっけ?」
「元は右利きだが、自分で両手利きに矯正した」
そして、銃声。
「と言っても、銃を撃つだけなら……護国軍鬼には射撃補正機能が有るから、利き手じゃない方の片手撃ちでも、そこそこは命中るけどな」
続いて、また、銃声。
だが……。
「効いてねえぞ……貫通してるみて~だ」
「やれやれ……」
相棒は両手の拳銃をホルスターに戻し、散弾銃を手にする。
「死体になって、そんなに時間が経ってないのに、もう体が脆くなってるのか?」
どうやら、さっき相棒が使ったのは、命中った相手の体内で変形して、わざと体を貫通しにくくなる銃弾らしい。
だが、普通の人間の体なら貫通しない銃弾でも……あのゾンビの体は、あっさり貫通した。
そして、今度は、散弾銃の銃声。
「このゾンビどもに取り憑いてる悪霊だか魔物だかは……過去にもこっちの世界……人間が居るこの世界に出現した事が有るのか?」
「へっ?」
「魔法的・霊的じゃない純粋に物理的な攻撃で傷付くと、向こうにとって有り難い事が起きる。霊力を込めた銃弾や弓矢でも、貫通してしまうと同様。そんな特性が有るのに、体は脆くなってる。まるで、こっち側の人間にとって戦いにくくなるような『進化圧』『淘汰圧』の元で生まれた存在に思えるんだが……?」
「さて……悪霊や魔物が居る『異界』は、いくつぐらい有って、『異界』ごとに、何が、どう違うのか? とか……別の『異界』だと思われてるモノは、実は、同じ『異界』の他の場所だったなんてオチが有るのか? とか……その手の人間が考えがちな事が、どこまで『異界』でも通用する話なのか? みて~な事は、あたしら『魔法使い』系にとっても、まだまだ、謎ばかりだ」
「なるほど……ん?」
しゃがみ込んで、倒れてるゾンビどもの「何か」を確認しようとしてたらしい相棒が変な声をあげた。
「どうした?」
「警察とトラブるのが確実なんで……傷口を確認してた。こっちが攻撃した事で出来た傷が、検死した時に『死んだ後についたもの』と判断される可能性が高いなら、言い訳の手段は色々と有ると思ってな……。けど、御覧の有様だ」
相棒は、そう言いながら、散弾による傷口を指差すが……その傷口から立ち上ってるのは……煙。
傷口の周囲は腐汁と化していた。
「霊力を込めた武器で、魔物や悪霊と同化しちまった奴を攻撃したら……こうなる場合は結構有るな」
「そうか……。警察の検死担当者も頭を抱えるな」
「それ以前に、剣呑い『邪気』に汚染されてる死体を解剖した奴が無事で済むか判んね~けどな」
相棒は続いて、調べていた死体……と言うか活動停止中のゾンビの体を引っくり返す。
「嘘だろ……命中った散弾の半数ぐらいが、体を貫通してる。散弾に込めてる霊力の約半分は無駄になったか……待てよ」
「どうした?」
「背中側の傷口で、気になる点が有る」
相棒は、短剣を抜くと、別の活動停止中のゾンビの制服の胸の辺りを切り裂き、更に体に短剣を突き刺し……。
「おい、霊力を込めてる武器でも、迂闊に傷付けると……」
「判ってるが、どうしても確認したい事が有ってな……やっぱりか……」
「何がだ?」
「見ろ。散弾で肋骨が砕けてる。冗談じゃないな。迂闊に傷付けたらマズい相手が……筋肉だけじゃなくて、骨まで脆くなってる」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜
蒼月丸
ファンタジー
異世界ハルヴァス。そこは平和なファンタジー世界だったが、新たな魔王であるタマズサが出現した事で大混乱に陥ってしまう。
魔王討伐に赴いた勇者一行も、タマズサによって壊滅してしまい、行方不明一名、死者二名、捕虜二名という結果に。このままだとハルヴァスが滅びるのも時間の問題だ。
それから数日後、地球にある後楽園ホールではプロレス大会が開かれていたが、ここにも魔王軍が攻め込んできて多くの客が殺されてしまう事態が起きた。
当然大会は中止。客の生き残りである東零夜は魔王軍に怒りを顕にし、憧れのレスラーである藍原倫子、彼女のパートナーの有原日和と共に、魔王軍がいるハルヴァスへと向かう事を決断したのだった。
八犬士達の意志を継ぐ選ばれし八人が、魔王タマズサとの戦いに挑む!
地球とハルヴァス、二つの世界を行き来するファンタジー作品、開幕!
Nolaノベル、PageMeku、ネオページ、なろうにも連載しています!
「悪の組織」からの足抜けを手伝いますッ♥/第一部「安易なる選択−The Villain's Journey−」
蓮實長治
SF
現実と似ているが「御当地ヒーロー」「正義の味方」によって治安が維持されている世界。
その「正義の味方」が始めた新しい「商売」である「悪の組織からの足抜けと社会復帰の支援」を利用して、落ち目になった自分の組織の「お宝」を他の組織に売り渡し、輝かしい第二の人生を始めようとしたある悪の組織の幹部(ただし、幹部の中でも下の方)。
しかし、のっけから事態は予想外の方向に……。
同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。
(pixiv,GALLERIAは完結後の掲載になります)
こちらに本作を漫画台本に書き直したものを応募しています。
https://note.com/info/n/n2e4aab325cb5
https://note.com/gazi_kun/n/nde64695e2171
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる