世界を護る者達:毒戰寒流

蓮實長治

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第四章:A Hard Day

アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (2)

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「次……霊力を込めた9㎜パラベラム・ホローポイント弾の効果を確認する」
 そう言って相棒は2個目の拳銃を抜いたが……。
「前から変に思ってたんだけど……お前、両手利きだっけ?」
「元は右利きだが、自分で両手利きに矯正した」
 そして、銃声。
「と言っても、銃を撃つだけなら……護国軍鬼には射撃補正機能が有るから、利き手じゃない方の片手撃ちでも、そこそこは命中あたるけどな」
 続いて、また、銃声。
 だが……。
「効いてねえぞ……貫通してるみて~だ」
「やれやれ……」
 相棒は両手の拳銃をホルスターに戻し、散弾銃を手にする。
「死体になって、そんなに時間が経ってないのに、もう体が脆くなってるのか?」
 どうやら、さっき相棒が使ったのは、命中あたった相手の体内で変形して、わざと体を貫通しにくくなる銃弾らしい。
 だが、普通の人間の体なら貫通しない銃弾でも……あのゾンビの体は、あっさり貫通した。
 そして、今度は、散弾銃の銃声。
「このゾンビどもに取り憑いてる悪霊だか魔物だかは……過去にもこっちの世界……人間が居るこの世界に出現した事が有るのか?」
「へっ?」
「魔法的・霊的じゃない純粋に物理的な攻撃で傷付くと、向こうにとって有り難い事が起きる。霊力を込めた銃弾や弓矢でも、貫通してしまうと同様。そんな特性が有るのに、体は脆くなってる。まるで、こっち側の人間にとって戦いにくくなるような『進化圧』『淘汰圧』の元で生まれた存在に思えるんだが……?」
「さて……悪霊や魔物が居る『異界』は、いくつぐらい有って、『異界』ごとに、何が、どう違うのか? とか……別の『異界』だと思われてるモノは、実は、同じ『異界』の他の場所だったなんてオチが有るのか? とか……その手の人間が考えがちな事が、どこまで『異界』でも通用する話なのか? みて~な事は、あたしら『魔法使い』系にとっても、まだまだ、謎ばかりだ」
「なるほど……ん?」
 しゃがみ込んで、倒れてるゾンビどもの「何か」を確認しようとしてたらしい相棒が変な声をあげた。
「どうした?」
「警察とトラブるのが確実なんで……傷口を確認してた。こっちが攻撃した事で出来た傷が、検死した時に『死んだ後についたもの』と判断される可能性が高いなら、言い訳の手段は色々と有ると思ってな……。けど、御覧の有様だ」
 相棒は、そう言いながら、散弾による傷口を指差すが……その傷口から立ち上ってるのは……煙。
 傷口の周囲は腐汁と化していた。
「霊力を込めた武器で、魔物や悪霊と同化しちまった奴を攻撃したら……こうなる場合は結構有るな」
「そうか……。警察の検死担当者も頭を抱えるな」
「それ以前に、剣呑ヤバい『邪気』に汚染されてる死体を解剖した奴が無事で済むか判んね~けどな」
 相棒は続いて、調べていた死体……と言うか活動停止中のゾンビの体を引っくり返す。
「嘘だろ……命中あたった散弾の半数ぐらいが、体を貫通してる。散弾に込めてる霊力の約半分は無駄になったか……待てよ」
「どうした?」
「背中側の傷口で、気になる点が有る」
 相棒は、短剣を抜くと、別の活動停止中のゾンビの制服の胸の辺りを切り裂き、更に体に短剣を突き刺し……。
「おい、霊力を込めてる武器でも、迂闊に傷付けると……」
「判ってるが、どうしても確認したい事が有ってな……やっぱりか……」
「何がだ?」
「見ろ。散弾で肋骨が砕けてる。冗談じゃないな。迂闊に傷付けたらマズい相手が……筋肉だけじゃなくて、骨まで脆くなってる」
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