18 / 30
第2章:ETERAL 0 or -1.0
(3)
しおりを挟む
「こ……この男が誰か知ってるの?」
僕は、突如現われて僕達を助けてくれた謎の女にそう訊いた。
小柄だ……一五〇㎝台前半……でも妙に筋肉質。
迷彩模様のような柄の長ズボンの柔道着っぽい外見の服……そんな感じの服装だ。
セミロングの髪を首の辺りで一本に束ねてて……日本人っぽい顔立ち。
「何だ、全国ニュースにはなってなかったのか?」
「えっ?」
「お前、日本から転生したんだろ? 知らなかったのか、こいつを?」
「だから、誰だよ?」
「出身はどこだ?」
「何で、そんな事を?……一応、関東出身だけど……死んだ時は東北……」
「なるほど……こいつは、九州の大牟田って町のチンケなヤクザの組長の息子だ。私が高校の頃にニュースになったが、もう死刑になってたようだな」
「死刑?」
「保険金殺人か……何か、そんな被害の割に理由はしょ~もない殺人事件で五人か十人殺して、父親・母親・息子2人の一家全員に死刑判決が下ったヤクザの一家だ。あ、ヤクザってのは比喩じゃない。本当に広域暴力団の系列の……下の方だが、組長一家だ」
「危険人物じゃないかッ‼」
「そう、お前が思ってるよりも危険人物だ。……その一家の中でも、こいつは、元相撲取りだった」
「へっ?……そんな馬鹿馬鹿しい奴が……」
「居るから仕方ない。現実ってのは、結構、無茶苦茶だ。そして、それが……お前が、火事場の馬鹿力を出しても敵わなかった理由だ」
「どう言う事?」
「聞いた事ないか? 空手や柔道の無差別級の全国大会出場レベルでは……十両か下手したら幕下の力士にさえ敵わない。そして、こいつは、途中でドロップアウトしたとは言え、元力士だ。お前が火事場の馬鹿力を出した時の身体能力なんて、素の状態のこいつの身体能力より数段下だ。しかも、お前は武道・武術や格闘技の訓練を受けてなくて、体を効率的に使えないようだな。ますます不利だ」
「あ……あの……御二人は何を話していらっしゃるのですか?」
その時、聖女様の不安気な声。
「会話の内容を悟られないように、日本語で話してる理由を察したようだな」
えっ……。
あ……そう云う事って……待って、こいつ、これから……。
あの感覚……火事場の馬鹿力が出る寸前の……。
「助けてやった礼が欲しい。その女を渡せ。あ、チビの男の方は要らん」
「何の為にだッ⁉」
力は湧いてるのに……いつものような高揚感が無い。
何かが……おかしい。
この女は……今、気絶して床に倒れてる力士崩れより危険い奴だ……そう、僕の中の何かが告げている。
「私は……この世界に居る白人に見える者達の正体について、ある仮説を立てている。その為に、この世界の人間や……白人に見える者達の体を調べた。だが、私の仮説が正しいって確信は……9割って所だ。あと1割が足りない。どうやら、白人に見える者達の中でも純血種に近いらしい上に、しかも、めずらしい成体のメス……」
「待て……調べるって、どうやってだッ?」
「そりゃ決ってるだろ……解剖……」
サイコ女が全部言い終える前に、火事場の馬鹿力が発動。
僕は、聖女様とスナガを抱えダッシュ‼
あれ?
さっきの力士を倒した……苦痛をもたらす呪文が……来ない。
「な……何だよ、この世界の転生者は……僕以外は@#$%ばかりか? さっきの力士もサイコ女も」
「あ……あの……勇者様……あの女の方は……転生者ではありません」
「えっ? だって、どう考えても……僕と同じ世界の同じ国の出身にしか思えない話をしてたよ……。話してたのも、元の世界で僕が生まれ育った国の言葉……」
「この世界に出現する転生者は……男だけの筈なのです」
どうなってるの?
じゃあ、あの女は……?
「あの女の方は転移者です。異世界転生の仕組みを不正に使って、他の世界から、この世界に来た何者かです……目的は判りませんが……」
「どう……なってるの……?」
「それに、あの女の方が使った呪文は……この世界の魔法ではありません」
「そんな馬鹿な……じゃあ、あの呪文は……どこの世界の……?」
地下の下水道から外に出た時、僕は力尽き、膝をつく……。
頭の中は「?????」の嵐……。
そして……。
更に……無茶苦茶なモノを見付けてしまった……空に……。
理科の成績が、あんまり良くなかった僕でも知ってるモノが……。
7つの星が……柄杓かスプーンのような形に並んだ星座が……2つ。
北斗七星と小熊座だった。
だが……それで終りじゃなかった。
無数の灯りが、僕達を取り囲んでいた。
僕は、突如現われて僕達を助けてくれた謎の女にそう訊いた。
小柄だ……一五〇㎝台前半……でも妙に筋肉質。
迷彩模様のような柄の長ズボンの柔道着っぽい外見の服……そんな感じの服装だ。
セミロングの髪を首の辺りで一本に束ねてて……日本人っぽい顔立ち。
「何だ、全国ニュースにはなってなかったのか?」
「えっ?」
「お前、日本から転生したんだろ? 知らなかったのか、こいつを?」
「だから、誰だよ?」
「出身はどこだ?」
「何で、そんな事を?……一応、関東出身だけど……死んだ時は東北……」
「なるほど……こいつは、九州の大牟田って町のチンケなヤクザの組長の息子だ。私が高校の頃にニュースになったが、もう死刑になってたようだな」
「死刑?」
「保険金殺人か……何か、そんな被害の割に理由はしょ~もない殺人事件で五人か十人殺して、父親・母親・息子2人の一家全員に死刑判決が下ったヤクザの一家だ。あ、ヤクザってのは比喩じゃない。本当に広域暴力団の系列の……下の方だが、組長一家だ」
「危険人物じゃないかッ‼」
「そう、お前が思ってるよりも危険人物だ。……その一家の中でも、こいつは、元相撲取りだった」
「へっ?……そんな馬鹿馬鹿しい奴が……」
「居るから仕方ない。現実ってのは、結構、無茶苦茶だ。そして、それが……お前が、火事場の馬鹿力を出しても敵わなかった理由だ」
「どう言う事?」
「聞いた事ないか? 空手や柔道の無差別級の全国大会出場レベルでは……十両か下手したら幕下の力士にさえ敵わない。そして、こいつは、途中でドロップアウトしたとは言え、元力士だ。お前が火事場の馬鹿力を出した時の身体能力なんて、素の状態のこいつの身体能力より数段下だ。しかも、お前は武道・武術や格闘技の訓練を受けてなくて、体を効率的に使えないようだな。ますます不利だ」
「あ……あの……御二人は何を話していらっしゃるのですか?」
その時、聖女様の不安気な声。
「会話の内容を悟られないように、日本語で話してる理由を察したようだな」
えっ……。
あ……そう云う事って……待って、こいつ、これから……。
あの感覚……火事場の馬鹿力が出る寸前の……。
「助けてやった礼が欲しい。その女を渡せ。あ、チビの男の方は要らん」
「何の為にだッ⁉」
力は湧いてるのに……いつものような高揚感が無い。
何かが……おかしい。
この女は……今、気絶して床に倒れてる力士崩れより危険い奴だ……そう、僕の中の何かが告げている。
「私は……この世界に居る白人に見える者達の正体について、ある仮説を立てている。その為に、この世界の人間や……白人に見える者達の体を調べた。だが、私の仮説が正しいって確信は……9割って所だ。あと1割が足りない。どうやら、白人に見える者達の中でも純血種に近いらしい上に、しかも、めずらしい成体のメス……」
「待て……調べるって、どうやってだッ?」
「そりゃ決ってるだろ……解剖……」
サイコ女が全部言い終える前に、火事場の馬鹿力が発動。
僕は、聖女様とスナガを抱えダッシュ‼
あれ?
さっきの力士を倒した……苦痛をもたらす呪文が……来ない。
「な……何だよ、この世界の転生者は……僕以外は@#$%ばかりか? さっきの力士もサイコ女も」
「あ……あの……勇者様……あの女の方は……転生者ではありません」
「えっ? だって、どう考えても……僕と同じ世界の同じ国の出身にしか思えない話をしてたよ……。話してたのも、元の世界で僕が生まれ育った国の言葉……」
「この世界に出現する転生者は……男だけの筈なのです」
どうなってるの?
じゃあ、あの女は……?
「あの女の方は転移者です。異世界転生の仕組みを不正に使って、他の世界から、この世界に来た何者かです……目的は判りませんが……」
「どう……なってるの……?」
「それに、あの女の方が使った呪文は……この世界の魔法ではありません」
「そんな馬鹿な……じゃあ、あの呪文は……どこの世界の……?」
地下の下水道から外に出た時、僕は力尽き、膝をつく……。
頭の中は「?????」の嵐……。
そして……。
更に……無茶苦茶なモノを見付けてしまった……空に……。
理科の成績が、あんまり良くなかった僕でも知ってるモノが……。
7つの星が……柄杓かスプーンのような形に並んだ星座が……2つ。
北斗七星と小熊座だった。
だが……それで終りじゃなかった。
無数の灯りが、僕達を取り囲んでいた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる