俺は単なる血も涙も思想もない兇悪な殺人鬼だ

蓮實長治

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俺は単なる血も涙も思想もない兇悪な殺人鬼だ

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「すいません。またしても、地元警察署の刑事部に先を越されました」
 その国では十年前に大規模なテロが起きてから、テロ対応に特化した特別警察が作られた。
 たしかに、対テロ特別警察は一般の警察に比べてやり方は荒っぽい。
 逮捕状無しに容疑者を逮捕出来る特権も与えられている。
 検察でもないのに刑事裁判の起訴権が有り、対テロ案件なら裁判は略式化され、容疑者の弁護人になれるのは対テロ特別警察が指定した法律家だけで、しかも対テロ専門の裁判官の約半数は対テロ特別警察からの出向者だ。
 有罪となったテロ犯は、一般刑務所ではなく特別刑務所……別名「収容所」……に送られる。
 そこでは、拷問その他の人権を重視する法治国家としては好ましからざる手段で、仲間や武器・情報などの入手経路を自白させらているらしい。
 ある意味で、切っ掛けとなった十年前のテロ事件の犯人の思い通りになっているのかも知れない。
 この国は少しづつ……マトモな国から異常な国へと変貌しつつ有った。
 国家そのものが民主主義と法治主義の首を……ゆっくりと、しかし確実に絞めているような状態だ。
 だが、他に方法が有ったのか?
 全ては……社会の安寧と善良なる一般国民の安全の為のやむを得ざる行為だ。
 いつか、テロリストが一掃された、その時こそ、全てはマトモに戻る筈だ。
 より大きな善の為ならば悪の存在を許容せざるを得ない場合も有り、より大きな悪が消え去った暁には悪を倒す為の悪は不要となるのだ。
 副作用のリスクが大きい治療法でしか対処出来ないケースなど、いくらでも……。
「で、被害者は誰だ?」
「与党所属の地方議員とその家族です。子供に到るまで、むごたらしく殺されていました」
 犯人はテロリストの協力者として捜査中の人物だった。
 その人物が殺人事件を起し……本来なら、対テロ特別警察の出番なのに、何故か、事件直後に地元の一般警察が犯人を現行犯逮捕してしまったのだ。
「じゃあ、所轄の一般警察に犯人を引き渡すように言え」
「地元警察は拒否しています」
「クソ……」
 当然ながら……一般警察の中には対テロ特別警察のやり方を快く思っていないどころか「警察の名を騙る国家公認の外道ども」と考えている者達さえ少なくない。
 一般警察と対テロ特別警察の共同捜査は巧くいったためしが無く、どちらの管轄かが曖昧なケースでは、一般警察はかたくなになり、対テロ特別警察に捜査権を移譲しない事など、いくらでも有った。
「しかし、テロ組織構成員の疑いが有るヤツが地方議員を殺したのなら……どう考えても、ウチの管轄だろうが?」
「ですが……犯人は『自分は単なる人を殺すのが好きなだけのシリアル・キラーだ。たまたま、今回の被害者の家が侵入し易かっただけで、殺せるなら誰でも良かった』と言っています」
「そんな馬鹿な話が有るか? 大体、似たような事が起きたのは……ここ数ヶ月で何度目だ?」
「それが……私も気になって調べてみたのですが……類似ケースのほとんどが……です」
「はあ?」

「何を言ってる? 今回のケースも含めて、大半がなモノばかりだろうが……」
「あの……ここからは私の想像なんですが……」
「何だ?」
?」
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