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第三章:自由と平和の護り手
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「良く出来たな、こんな真似……」
韓国の筈なのに、交通標識や看板は日本語に変えられていた。
バイク・アクションのシーンは、日本より、この手の撮影の許可が下りやすい韓国で行なわれる事になった。
メインの撮影現場が北九州なのも、サブの撮影現場である韓国との行き来の便を考慮した事が、理由の1つだ。
画面の端々に写る車は……良く見れば日本では余り見掛けない韓国産の車だろうが、それを除けば、ほぼ「日本」だ。
「本当に大丈夫なんですかね? あんな無茶苦茶なシーンをCG使わずにやるなんて……」
主演の前田喬介も不安そうな顔をしている。
「コンピュータによるシミュレーションは二〇回近く、実機での検証も複数回行なってるそうです」
日本語でそう答えたのは……日系アメリカ人のスタッフだった。
一般道路を使用したバイク・アクション。
運転してるのはスタントマンとは言え、いわゆる「モブ」の車も多数。
そして……。
監督はモニターの前で無線を使ってスタートを指示。
メインカメラが積まれた撮影用車両に監督も搭乗したがっていたようだが……流石にスタッフに止められたようだ。
それは、そうだ。
上空のドローンから見ると……バイク群と撮影用車両の距離は……本の少しのミスで大事故が起きかねないモノ。
「あのさ……念の為、訊くけど……撮影用のトラックは……?」
俺は、日本語を話せるスタッフに、一応、訊いてはみた。
「バイクに乗ってるのはアニマトロニクス・ドロイドですが……撮影用のトラックに乗ってるのは生きた人間です」
「無茶苦茶だ」
「いや……もっと無茶苦茶な条件で撮影をした実績のあるスタッフだそうですから……」
「もっと無茶苦茶な条件って何だよ?」
「人工の雨を降らせて、路面が濡れてる以外は……今回と、ほぼ同じだそうです」
俺が考えていた以上の「修羅場」を潜ってきたスタッフらしい。
でも……また……何か起きるのでは無いか?……そんな不安しか無かった。
オリジナル版の「鬼面ソルジャーズ」の制作会社は、元々、時代劇やヤクザものを多く撮っていた会社で、監督も脚本家もスタッフも時代劇出身者が多かった。
そして「馬に乗った状態での剣劇」のつもりで、今、モニターに写っているのと似た真似をやった……。
更に、当時は、まだ、今で言う「スーツアクター」ではなく、俳優本人が「変身」していた。
その結果が……あの事故だ。
呼吸を整える……。
「大丈夫ですか? どうかしましたか?」
俺の様子を見て、前田君がそう言った。
「いや……大した事ない」
韓国の筈なのに、交通標識や看板は日本語に変えられていた。
バイク・アクションのシーンは、日本より、この手の撮影の許可が下りやすい韓国で行なわれる事になった。
メインの撮影現場が北九州なのも、サブの撮影現場である韓国との行き来の便を考慮した事が、理由の1つだ。
画面の端々に写る車は……良く見れば日本では余り見掛けない韓国産の車だろうが、それを除けば、ほぼ「日本」だ。
「本当に大丈夫なんですかね? あんな無茶苦茶なシーンをCG使わずにやるなんて……」
主演の前田喬介も不安そうな顔をしている。
「コンピュータによるシミュレーションは二〇回近く、実機での検証も複数回行なってるそうです」
日本語でそう答えたのは……日系アメリカ人のスタッフだった。
一般道路を使用したバイク・アクション。
運転してるのはスタントマンとは言え、いわゆる「モブ」の車も多数。
そして……。
監督はモニターの前で無線を使ってスタートを指示。
メインカメラが積まれた撮影用車両に監督も搭乗したがっていたようだが……流石にスタッフに止められたようだ。
それは、そうだ。
上空のドローンから見ると……バイク群と撮影用車両の距離は……本の少しのミスで大事故が起きかねないモノ。
「あのさ……念の為、訊くけど……撮影用のトラックは……?」
俺は、日本語を話せるスタッフに、一応、訊いてはみた。
「バイクに乗ってるのはアニマトロニクス・ドロイドですが……撮影用のトラックに乗ってるのは生きた人間です」
「無茶苦茶だ」
「いや……もっと無茶苦茶な条件で撮影をした実績のあるスタッフだそうですから……」
「もっと無茶苦茶な条件って何だよ?」
「人工の雨を降らせて、路面が濡れてる以外は……今回と、ほぼ同じだそうです」
俺が考えていた以上の「修羅場」を潜ってきたスタッフらしい。
でも……また……何か起きるのでは無いか?……そんな不安しか無かった。
オリジナル版の「鬼面ソルジャーズ」の制作会社は、元々、時代劇やヤクザものを多く撮っていた会社で、監督も脚本家もスタッフも時代劇出身者が多かった。
そして「馬に乗った状態での剣劇」のつもりで、今、モニターに写っているのと似た真似をやった……。
更に、当時は、まだ、今で言う「スーツアクター」ではなく、俳優本人が「変身」していた。
その結果が……あの事故だ。
呼吸を整える……。
「大丈夫ですか? どうかしましたか?」
俺の様子を見て、前田君がそう言った。
「いや……大した事ない」
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