上 下
16 / 65
第一章:Escape Plan

(15)

しおりを挟む
 夕食の後に「職場におけるハラスメント」の補講を受けたのは……俺と、そして、俺と同じ船に居た5人。
「おい、みんな、話が有る」
 補講が終り、講師が居なくなった後、俺は他の5人に声をかけた。
「何をやる気なんだ?」
 そう聞いたのは「若」。
「やっぱり、気付いてたのか?」
「ああ、俺達に何かを手伝わせるつもりだろ? その為に、俺達が何者で、どんな能力が有るかを探っていた」
「大当りだ。ここから逃げ出す」
「逃げ出せるのか?」
「細かいプランを詰めたい。時間は有るか?」
「逃げ出して……どうなるんですか?」
 そう訊いたのは……世にもトホホな「使うと寿命が縮む」能力の持ち主のおっさん。
「なあ……このまま、ここに居て……今の自分でいられる自信は有るか?」
「ない……奴らは……俺を思想改造しようとしている。駄目だ……このままでは……俺がやってきた事は間違いだと信じ込まされて……ああああ……」
 そう言い出したのは……自称「クリムゾン・サンシャイン」。
「や……やめろ……来るな……」
「どうしたんですか?」
 自称「クリムゾン・サンシャイン」のおかしな様子に気付いた「教祖サマ」だったが……。
「い……居る……あそこに……俺を狙ってる奴が……」
「あああ……見えます……僕にも見える……。ああ……やっと我が神の御姿みすがたが……」
「あのさ、何やる気が知らねえけど……この2人……外した方が良くないか?」
 「若」が当然のコメント。
「来るな……違う……お前の子供が死んだのは……俺のせいじゃないッ‼ 恨むなら……『関東難民』なんかと結婚しやがったお前自身を……来るなぁッ‼ ッ‼」
「誰だ? そりゃ……?」
 自称「クリムゾン・サンシャイン」の謎の絶叫に対して、俺は、一番事情を知ってそうな世にもトホホな「使うと寿命が縮む」能力の持ち主のおっさんに訊いた。
「さ……さあ?」
「ひょっとして、初代の『クリムゾン・サンシャイン』か『永遠の夜エーリッヒ・ナハト』のどっちかが女で、深雪みゆきってのは、その本名なのか?」
「……い……いや……どっちも男だった筈ですが……」
「お……お許し下さい……。か……必ずや貴方様への信仰を取り戻し……ああ……しばし御猶予を……偉大なるクトゥルフ様ああああッッッ‼」
「おっさん……あんたの能力で、この2人なんとかしてくれ……。この騷ぎを『正義の味方』どもに嗅ぎ付けられる前にな」
 俺は、精神操作能力者のおっさんに、そう言った。
「は……はい……」
「あ……それと、ヤクザの若旦那。ちょっと、ライター貸してくれ」
「はあ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遺伝子分布論 102K

黒龍院如水
SF
現代より、十万年以上が経過した、宇宙歴102000年、 人類の生活圏は、太陽系外の恒星系にまで広がっていた。 人類の未来の生活を、淡々と描く。 果たしてそこにドラマは生まれるのか。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

星間の旅人たち

阪口克
SF
空を覆い尽くすほどに巨大な星間移民船マザー。今から数千年の昔、多くの人々をその胎内に抱え、マザーは母星を旅立った。 未知の移住星を求めて彷徨う巨大な移民船。この船を護り未知の移住星を開拓するため、マザーセントラルには強大な力を持った護衛軍が存在する。 護衛軍探索部第3課に所属するハイダ・トール軍曹は、ある星での”事件”をきっかけに、出航時刻に間に合わなくなってしまう。 飛び立つマザーを必死に追いかけるハイダ軍曹は、指揮官の助言に従い、船の最末端部から内部へと侵入することに成功した。 しかしそこは、護衛軍の力の及ばない未知の領域だった。 マザー本体から伸びる長大な柱……その内部はセントラルの管理が及ばない世界。何千年もの歴史を積み重ねた、移民たちによる異文明が支配する地であった。 セントラルへの帰還を目指すハイダ軍曹は、移民世界での試練と人々との邂逅の中、巧みな交渉力や戦闘技術を駆使し苦難の旅路を行く。しかし、マザー中心部への道のりは険しく遠い。 果たして、ハイダ・トール軍曹は無事帰還を果たすことができるのだろうか。

アシュターからの伝言

あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。 なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。 テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。 その他、王様の耳はロバの耳。 そこらで言えない事をこっそりと。 あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。 なので届くべき人に届けばそれでいいお話。 にして置きます。 分かる人には分かる。 響く人には響く。 何かの気づきになれば幸いです。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...