47 / 59
第四章:非法制裁 ― Death Sentence ―
(ⅱ)
しおりを挟む北東部にあるジーダペンスという王国が、このウイプルを狙っているという情報がある。
まだ噂の域を出ないという話だけど、用心はした方がいいか。
その国は、特に邪教と絡みがある訳ではないみたいだから、近隣の同盟国も、あまり関与したがらないだろう。
しかし、ジーダペンスか。
訊いた事がない国名という訳ではないけど、数回程度耳にした事があるぐらいで、情報はほぼ皆無だ。
このウイプルからどのくらい距離が離れているだろうか。
遥か遠方の様な気もする。
特に理由など、どうでもいいか。
このウイプルに剣を向ける者達を、許しはしない。
それだけだ。
アリグルド13日
ヘールベータ地区の家にて
___________
この間、お母様の手記を見た時、違和感を覚えた所がいくつかある。
あの手記は、誰にでも見られて良かったものではないだろう。
机の上に置かれていたけれど、僕以外のものに見られてしまい、あの内容がもし、ウイプルの国中に知られてしまっていたなら、明らかな不信感を持たれてしまったのではないか。
しまい忘れたという事はないはず。
あのお母様に限っては。
そして、ページが何枚も破かれていたのは、書き間違えて、破り捨てたせいか。
どうだろうか。
そのページを、家に侵入した誰かに盗まれたのか?
否定はできないけど、違う何かを示している気がする。
あの手記が、誰かに見せようとしている様に思えたのは、何故だろうか。
あまり、家を空ける僕も良くはなかったか。
この家に戻る回数を、増やす事にしよう。
アリグルド14日
自分の家にて
___________
僕は、とても冷酷な男だと気がついたんだ。
心の温もりなど、持ってはいない。
お母様との思い出の、この家に近づく事も、止めてしまいたいと、思うくらいだ。
何処か遠くで、1人で生きていく運命なんだよ。
何も、もう何もかも失くした気分だ。
本当なら、普通の人であったなら、喜ぶだろう。
そんな事くらい、僕でもわかるさ。
そんな事くらいは。
それすらできないのなら、僕は人を語るべきじゃない。
どうしてなんだ。
教えてほしい。
幼馴染のミスルタ、君が、
君が、生きていたなんて。
それを知った、冷酷な僕は。
死んでいたと、思ったままで良かったのに、って。
そう思ったんだ。
何て、酷い男なんだ。
僕は。
人と、一緒にいる資格はない。
さようなら、ミスルタ。
僕は、自分が恐くなったよ。
アリグルド15日
ヘールベータ地区の家にて
___________
まだ噂の域を出ないという話だけど、用心はした方がいいか。
その国は、特に邪教と絡みがある訳ではないみたいだから、近隣の同盟国も、あまり関与したがらないだろう。
しかし、ジーダペンスか。
訊いた事がない国名という訳ではないけど、数回程度耳にした事があるぐらいで、情報はほぼ皆無だ。
このウイプルからどのくらい距離が離れているだろうか。
遥か遠方の様な気もする。
特に理由など、どうでもいいか。
このウイプルに剣を向ける者達を、許しはしない。
それだけだ。
アリグルド13日
ヘールベータ地区の家にて
___________
この間、お母様の手記を見た時、違和感を覚えた所がいくつかある。
あの手記は、誰にでも見られて良かったものではないだろう。
机の上に置かれていたけれど、僕以外のものに見られてしまい、あの内容がもし、ウイプルの国中に知られてしまっていたなら、明らかな不信感を持たれてしまったのではないか。
しまい忘れたという事はないはず。
あのお母様に限っては。
そして、ページが何枚も破かれていたのは、書き間違えて、破り捨てたせいか。
どうだろうか。
そのページを、家に侵入した誰かに盗まれたのか?
否定はできないけど、違う何かを示している気がする。
あの手記が、誰かに見せようとしている様に思えたのは、何故だろうか。
あまり、家を空ける僕も良くはなかったか。
この家に戻る回数を、増やす事にしよう。
アリグルド14日
自分の家にて
___________
僕は、とても冷酷な男だと気がついたんだ。
心の温もりなど、持ってはいない。
お母様との思い出の、この家に近づく事も、止めてしまいたいと、思うくらいだ。
何処か遠くで、1人で生きていく運命なんだよ。
何も、もう何もかも失くした気分だ。
本当なら、普通の人であったなら、喜ぶだろう。
そんな事くらい、僕でもわかるさ。
そんな事くらいは。
それすらできないのなら、僕は人を語るべきじゃない。
どうしてなんだ。
教えてほしい。
幼馴染のミスルタ、君が、
君が、生きていたなんて。
それを知った、冷酷な僕は。
死んでいたと、思ったままで良かったのに、って。
そう思ったんだ。
何て、酷い男なんだ。
僕は。
人と、一緒にいる資格はない。
さようなら、ミスルタ。
僕は、自分が恐くなったよ。
アリグルド15日
ヘールベータ地区の家にて
___________
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
Neo Tokyo Site 01:第二部「激突‼ 四大魔法少女+2‼ − Asura : The City of Madness −」
蓮實長治
SF
平行世界の「東京」ではない「東京」で始まる……4人の「魔法少女」と、1人の「魔法を超えた『神の力』の使い手」……そして、もう1人……「『神』と戦う為に作られた『鎧』の着装者」の戦い。
様々な「異能力者」が存在し、10年前に富士山の噴火で日本の首都圏が壊滅した2020年代後半の平行世界。
1930年代の「霧社事件」の際に台湾より持ち出された「ある物」が回り回って、「関東難民」が暮す人工島「Neo Tokyo Site01」の「九段」地区に有る事を突き止めた者達が、「それ」の奪還の為に動き始めるが……。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)
Storm Breakers:第一部「Better Days」
蓮實長治
SF
「いつか、私が『ヒーロー』として1人前になった時、私は滅びに向かう故郷を救い愛する女性を護る為、『ここ』から居なくなるだろう。だが……その日まで、お前の背中は、私が護る」
二〇〇一年に「特異能力者」の存在が明らかになってから、約四十年が過ぎた平行世界。
世界の治安と平和は「正義の味方」達により護られるようになり、そして、その「正義の味方」達も第二世代が主力になり、更に第三世代も生まれつつ有った。
そして、福岡県を中心に活動する「正義の味方」チーム「Storm Breakers」のメンバーに育てられた2人の少女はコンビを組む事になるが……その1人「シルバー・ローニン」には、ある秘密が有った。
その新米ヒーロー達の前に……彼女の「師匠」達の更に親世代が倒した筈の古き時代の亡霊が立ちはだかる。
同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)
Neo Tokyo Site04:カメラを止めるな! −Side by Side−
蓮實長治
SF
「お前……一体全体……この『東京』に『何』を連れて来た?」
「なぁ……兄弟(きょうでえ)……長生きはするもんだな……。俺も、この齢になるまで散々『正義の名を騙る小悪党』は見てきたが……初めてだぜ……『悪鬼の名を騙る正義』なんてのはよぉ……」
現実の地球に似ているが、様々な「特異能力者」が存在する2020年代後半の平行世界。
「関東難民」が暮す人工島「Neo Tokyo」の1つ……壱岐・対馬間にある「Site04」こと通称「台東区」の自警団「入谷七福神」のメンバーである関口 陽(ひなた)は、少し前に知り合った福岡県久留米市在住の「御当地ヒーロー見習い」のコードネーム「羅刹女(ニルリティ)」こと高木 瀾(らん)に、ある依頼をするのだが……。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
青き戦士と赤き稲妻
蓮實長治
SF
現実と似た歴史を辿りながら、片方は国家と云うシステムが崩れつつ有る世界、もう一方は全体主義的な「世界政府」が地球の約半分を支配する世界。
その2つの平行世界の片方の反体制側が、もう片方から1人の「戦士」を呼び出したのだが……しかし、呼び出された戦士は呼び出した者達の予想と微妙に違っており……。
「なろう」「カクヨム」「pixiv」にも同じものを投稿しています。
同じ作者の「世界を護る者達/第一部:御当地ヒーローはじめました」と同じ世界観の約10年後の話になります。
注:
作中で「検察が警察を監視し、警察に行き過ぎが有れば、これを抑制する。裁判所が検察や警察を監視し、警察・検察にに行き過ぎが有れば、これを抑制する」と云う現実の刑事司法の有り方を否定的に描いていると解釈可能な場面が有りますが、あくまで、「現在の社会で『正しい』とされている仕組み・制度が、その『正しさ』を保証する前提が失なわれ形骸化した状態で存続したなら」と云う描写だと御理解下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
カレンダー・ガール
空川億里
SF
月の地下都市にあるネオ・アキバ。そこではビースト・ハントと呼ばれるゲーム大会が盛んで、太陽系中で人気を集めていた。
優秀なビースト・ハンターの九石陽翔(くいし はると)は、やはりビースト・ハンターとして活躍する月城瀬麗音(つきしろ せれね)と恋に落ちる。
が、瀬麗音には意外な秘密が隠されていた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる