Neo Tokyo Site 01:第一部「Road to Perdition/非法正義」

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
40 / 59
第三章:絶地7騎士 ― The Magnificent Seven ―

(ⅶ)

しおりを挟む
 トラックは「中央通り」を「神保町」に向かって走っていた。
「あの……石川さんのお父さんって、どんな人でした?」
 メガネっ娘がそう聞いてきた。
「えっ?」
「あの……あたしも……石川さんのお父さんに助けられたんで……富士の噴火の時に……」
「あぁ……そう……」
 こっちに移住して、すぐに「秋葉原」の自警団のリーダーに祭り上げられ……そっちの仕事が忙しくて、子供の面倒を見る事が有っても、俺より弟や妹と接する事が多かった。
「言われてみたら……親父、仕事が急がしくて……こっちに引っ越して来てから、親父との思い出が……その……」
「そうですか……いや……あたしを育ててくれた叔母さんも、そうで……」
「へぇ……」
「そう言えば、あの時、石川さんのお父さんが預かった女の子、今でも元気ですか?」
「えっ? レナの事か?」
「ええ……っと、名前は判りませんが……青緑っぽい目で、茶髪の……確か、日系ブラジル人の女の子でした」
 間違いない。レナだ。
「預けた……って誰が?」
「それが……もしかしたら、記憶違いかも知れないんですけど……」
 そう言って、メガネっ娘は、携帯電話Nフォンの画面を俺に見せた。
「おい……これって……?」
「やっぱり御存知でしたか?」
「いや、全然」
「あ~、すいませんッ‼ ごめんなさいッ‼」
「しょ~もない事で、いちいち謝るなよッ‼」
「ごめんなさいッ‼」
「だから謝るなッ‼」
「ええっと……とりあえず、ここに映ってるのは、『本当の関東』と福岡県を中心に活動している『御当地ヒーロー』通称『護国軍鬼』です。そして……あの時、女の子を1人、石川さんのお父さんに預けたのも……この『護国軍鬼』です」
 そこに映っていたのは、どこがで見た覚えが有る、しかし、何かの抗争で、そこら中にガレキが散らばっている町だった。
 いや……ガレキなんてモノじゃない。4m級の戦闘用パワーローダー……一〇年前に壊滅した「自衛隊がクーデターを起そうとした時の抑止力として設立された、もう1つの『自衛隊』」である「特務憲兵隊」が使っていた「国防戦機」が倒れていた。
 その無茶苦茶な事になった町に、何人もの……顔を隠し防御効果が有りそうな服を来た連中が居る。
 その連中の中で一番目立つのは、銀色の「鎧」……「強化服パワードスーツ」と云うより「鎧」と言った方が良い代物を着装した2人だ。
 1人は図体が異様に大きく、もう1人は……あくまで推測だが、身長一六〇㎝以下の可能性が……待て……身長一六〇㎝以下なのに、チート級に強い女なら……ついさっき……。
「これ……どこの写真だ?」
「今年の3月に『本土』の福岡県久留米市で起きた騷ぎの時の写真です。あたし達『薔薇十字魔導師会』の久留米ロッジの人間が撮影したモノです」
「ロッジって……支部の事か?『本土』にも支部が有るのか?」
「いえ……『神保町ロッジ』以外は……ほとんどが『1人支部』です……。まぁ、その、あの辺りに居る総帥グランドマスターの知り合いと言った方が……ええっと……実態に近いです」
「で……まさか……」
「ええ……その女の子を、石川さんのお父さんに預けたのは、この大きな『鎧』の人……だった記憶が……」
「ちょっと待て……どうなってる?」
「判らないんです……。『護国軍鬼』と呼ばれてる『鎧』の御当地ヒーローは……3月までは2人確認されてました……。1人は身長2mぐらいで、主に『本当の関東』で目撃されている。もう1人に比べて、目撃頻度は少なめ。もう1人は、身長一八〇㎝ぐらいで……福岡・佐賀・熊本を中心に目撃されていて、もう1人に比べて、目撃頻度は多め」
「じゃあ、これは? このデカい方が2mのヤツだとしたら……小さい方は、どう考えても、身長一六〇㎝ぐらいだぞ。一八〇㎝は絶対に無い」
「ええ、ですから……3月の騷ぎの時に、突然、新しい『護国軍鬼』が現われたんです……」
「ええっと……じゃあ……」
「そうです……。石川さんのお父さんは……『護国軍鬼』と呼ばれてる『本土』の『御当地ヒーロー』と知り合いだった。そして……その『護国軍鬼』達に、最近、何かが起きた……。3月以降、身長一八〇㎝ぐらいの『護国軍鬼』と、3人目の体の小さい『護国軍鬼』の目撃例は有りません」
「つまり……何が言いたい?」
「『護国軍鬼』は二〇年ほど前……『極東動乱』『イラク・アフガン戦争』の頃から活動している……おそらく日本最初の『御当地ヒーロー』『リアル・正義の味方』です。もし、石川さんのお父さんが『護国軍鬼』と知り合いだったとしたら……石川さんのお父さんは……『秋葉原』の自警団のリーダーになる前から、『正義の味方』『御当地ヒーロー』だった可能性は無いんでしょうか?」
「だとしたら……」
「何ですか?」
「なら……そいつらは……何故、知り合いだった俺の親父を助けてくれなかったんだ?……俺の親父が……『秋葉原』の自警団のリーダーだった時に……。俺の親父が……あんた達のリーダーに殺された時に……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Neo Tokyo Site 01:第二部「激突‼ 四大魔法少女+2‼ − Asura : The City of Madness −」

蓮實長治
SF
平行世界の「東京」ではない「東京」で始まる……4人の「魔法少女」と、1人の「魔法を超えた『神の力』の使い手」……そして、もう1人……「『神』と戦う為に作られた『鎧』の着装者」の戦い。 様々な「異能力者」が存在し、10年前に富士山の噴火で日本の首都圏が壊滅した2020年代後半の平行世界。 1930年代の「霧社事件」の際に台湾より持ち出された「ある物」が回り回って、「関東難民」が暮す人工島「Neo Tokyo Site01」の「九段」地区に有る事を突き止めた者達が、「それ」の奪還の為に動き始めるが……。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)

Storm Breakers:第一部「Better Days」

蓮實長治
SF
「いつか、私が『ヒーロー』として1人前になった時、私は滅びに向かう故郷を救い愛する女性を護る為、『ここ』から居なくなるだろう。だが……その日まで、お前の背中は、私が護る」 二〇〇一年に「特異能力者」の存在が明らかになってから、約四十年が過ぎた平行世界。 世界の治安と平和は「正義の味方」達により護られるようになり、そして、その「正義の味方」達も第二世代が主力になり、更に第三世代も生まれつつ有った。 そして、福岡県を中心に活動する「正義の味方」チーム「Storm Breakers」のメンバーに育てられた2人の少女はコンビを組む事になるが……その1人「シルバー・ローニン」には、ある秘密が有った。 その新米ヒーロー達の前に……彼女の「師匠」達の更に親世代が倒した筈の古き時代の亡霊が立ちはだかる。 同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

マスターブルー~完全版~

しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。 お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。 ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、 兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、 反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と 空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。

Neo Tokyo Site04:カメラを止めるな! −Side by Side−

蓮實長治
SF
「お前……一体全体……この『東京』に『何』を連れて来た?」 「なぁ……兄弟(きょうでえ)……長生きはするもんだな……。俺も、この齢になるまで散々『正義の名を騙る小悪党』は見てきたが……初めてだぜ……『悪鬼の名を騙る正義』なんてのはよぉ……」 現実の地球に似ているが、様々な「特異能力者」が存在する2020年代後半の平行世界。 「関東難民」が暮す人工島「Neo Tokyo」の1つ……壱岐・対馬間にある「Site04」こと通称「台東区」の自警団「入谷七福神」のメンバーである関口 陽(ひなた)は、少し前に知り合った福岡県久留米市在住の「御当地ヒーロー見習い」のコードネーム「羅刹女(ニルリティ)」こと高木 瀾(らん)に、ある依頼をするのだが……。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。(pixivとGALLERIAは掲載が後になります)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘

橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった その人との出会いは歓迎すべきものではなかった これは悲しい『出会い』の物語 『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる 法術装甲隊ダグフェロン 第三部  遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。 一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。 その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。 この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。 そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。 『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。 誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。 SFお仕事ギャグロマン小説。

青き戦士と赤き稲妻

蓮實長治
SF
現実と似た歴史を辿りながら、片方は国家と云うシステムが崩れつつ有る世界、もう一方は全体主義的な「世界政府」が地球の約半分を支配する世界。 その2つの平行世界の片方の反体制側が、もう片方から1人の「戦士」を呼び出したのだが……しかし、呼び出された戦士は呼び出した者達の予想と微妙に違っており……。 「なろう」「カクヨム」「pixiv」にも同じものを投稿しています。 同じ作者の「世界を護る者達/第一部:御当地ヒーローはじめました」と同じ世界観の約10年後の話になります。 注: 作中で「検察が警察を監視し、警察に行き過ぎが有れば、これを抑制する。裁判所が検察や警察を監視し、警察・検察にに行き過ぎが有れば、これを抑制する」と云う現実の刑事司法の有り方を否定的に描いていると解釈可能な場面が有りますが、あくまで、「現在の社会で『正しい』とされている仕組み・制度が、その『正しさ』を保証する前提が失なわれ形骸化した状態で存続したなら」と云う描写だと御理解下さい。

処理中です...