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第三章:絶地7騎士 ― The Magnificent Seven ―

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「不確定要素が多過ぎるが……どうする? やるか?」
 ここは、「有楽町」の雑居ビルの中にある「寛永寺僧伽」のフロント企業の事務所だ。そこで、「寛永寺僧伽」のリーダー格は、俺にそう言った。
 事務所の中には、俺の部屋から運ばれた「水城みずき」が有った。部屋の様子は……如何にも普通のデスクワーク中心の会社と言った感じだ。
「その前に聞かせてくれ……。そもそも、あんた達は、何故、俺に協力してくれる?」
「言っただろ、借りが有るヤツに頼まれた」
「その『借りが有るヤツ』が誰かは予想が付く……。『神保町』の魔導師どもや、他の『島』の『自警団』であるあんた達に……俺を助けて、何の得が有る?」
「おい、餓鬼の癖に偉そうな口のきき方だな」
 どうやら、知らない内に、高木とか云うあのメスガキの口調が移ったらしい。
「まぁ、いい、その度胸に免じて教えてやるよ。『秋葉原』は、今、権力の空白地帯だ。警察も自警団も機能してない……」
「それで?」
「俺達にとっては、『秋葉原』をまとめてくれるヤツが居ると有り難い。喧嘩するにしても、仲良くするにしてもな。今の状態じゃ喧嘩さえ出来ねぇ」
「あんた達の、その勝手な都合と、俺と何の関係が有る?」
「お前は……あの石川智志さとしの息子だ……。富士の噴火の時に、百何十人もの命を救い、Site01ここでは荒くれ者どもをまとめ上げた男のな……。英雄の息子なら神輿に好都合だ」
「ふざけるな……。俺は……」
 ……いや、そうかも知れない……。今の俺は……親父の息子である以外は……何の価値も無いし、何者でも無いのかも知れない……。
「やる気が有るなら、証明してみせろ……。お前が、あの『英雄』の息子だと……。他のSiteでさえ名前を知られてるヤツの血を引くヤツだと……」
「やる気が無いと言ったら?」
「嘘吐け、やる気満々の目をしてるぞ……。それに『本土』の同業が『東京』で商売をやるのも癪だしな。『本土』のクソどもを出し抜いて、お前と俺達が、お前の弟と妹を取り戻すぞ」
「あの……」
 その時、フロント企業の社員らしい、いかにも普通の会社員と云う外見の三〇ぐらいのヤツが、おそるおそると云った感じで声を上げた。
「すいません……この強化服パワードスーツ、GPSらしきモノが仕掛けてありました」
「えっ?」
「どう云う事だ?」
 まさか……レナ達が……裏切ったのか……? いや、レナ達の仕業だとしても、裏切ったと云うのは変だが、他に言い方が思い付かない。
「俺の幼なじみが、『本土』から来てる『御当地ヒーロー』と手を組んでる……。そいつが、俺の弟と妹の世話をしてたんで……俺んの鍵を持ってる」
「まぁ、良い。どうせ平和ボケしてるお行儀がいいだけが取り柄の『本土』の連中だ。何とかなるだろ」
 その時、「寛永寺僧伽」のリーダーの携帯電話Nフォンの通知音。スキンヘッドは携帯電話Nフォンの画面を見ると厳しい表情になった。
「どうした?」
「ここには、お前んの辺りに有ったのと似た『結界』を仕掛けてる」
「それが?」
「『魔法使い』じゃないが……かなり強力な『防御魔術』を施された誰かが……この建物の中に入った」
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